おおよそだいたい、合唱のこと。

ようこそお越し頂きました。
主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
やたら細かいレビューからノリツッコミまで、現状、合唱好きな方の暇つぶしには最適です。
ゆっくりしていってね!!!

2018年8月26日日曜日

【愛知県男声合唱フェスティバル2018】

2018年8月26日(日)於 刈谷市総合文化センターアイリス大ホール

そういえば、軽井沢もさることながら、今週末は愛媛でおかあさんコーラス全国大会だったみたいですね。
……なんという対照的な色合いのイベント!
否そりゃ、全日本合唱連盟でも男声合唱フェスティバルってやってらっしゃいますけど。

そんなわけで、文句なく男臭いイベントです笑
愛知県下の男声合唱がこれでもかと揃い、一つのステージを作り上げます。3回のジョイントコンサートを事前企画に、隔年開催その2回目。私は初めて伺いました。出演団体数、実に14団体。それで全てというわけでもないのですが、愛知県の男声合唱団が一堂に会して、およそ4時間半にわたり熱演を繰り広げます。まさに、三和音の倍音に浸る4時間半……
そう、4時間半笑 プログラム転記するだけで一時間かかりました爆
なんていうの、そりゃ、名前の通り、合唱祭みたいなものだから、正直そりゃそうなんだけど、通しで聞くには長い笑 まァ確かに、バッカスよりは短いんですがね、アレは昼休みもなくぶっ通しですからね笑
え、私?
そりゃ、出されたものは平らげますよ笑
豊中市合唱祭のときは休憩取ったけど←

・ホールについて

刈谷アイリス。つい最近来たのは……私事ながら、スキマスイッチのライブでした笑(もちろんレビュー未掲載)
このホール、音楽にも非常に強い多目的ホールで、確か開演ブザーの音も多彩にあったと記憶しているんですが、今日はなぜか「b--------!」って鳴らしてました。なんでだろ?
今日は、いってみれば合唱祭ということで、人数の多い団から少ない団まで多彩な演奏会でした。そこで、途端に問題になってくるのが、ホールの鳴りの問題。このホール、音の響きはいいのですが、こんなに散ってしまうものなのですね。たといある程度鳴らせる団であったとしても、響きに散っていき、音圧は低くなってしまう傾向にある。鳴らそうとするためにはどうしたらいいかと言ったら、その響きの力を借りながら、全体をならしていく意識が必須。要するに、ちゃんとした発声を磨いて、しっかりと歌うこと。またの言い方を、レベルを上げて物理で殴ればいい。辛辣←
そうそう、今日行ったわけではないんですが、ここの喫茶店兼レストラン、なかなかオススメですよ。昼や夜はパエリアを貴重としたおしゃれなカフェ飯を楽しめる上、14時〜17時のスイーツタイムが見もの。かくいう私も、スイーツタイムにしか行ったことがないのですが、700円出すと、見た目におしゃれな美味しいケーキと、ドリンクバーが楽しめます。そう、ドリンクバーなんです。コーヒーメーカーはちゃんとしたものが入っているので遜色なく、ティーも各種取りそろえ、冷えたコカ・コーラの飲み物がほしいならそれもどうぞ。レギュラーの飲み物ももちろんありますが、それに加えていろんな飲み物も楽しむことができる。いろいろな楽しみ方ができるあたり、さすが、市民会館のカフェって感じじゃないですか。いいことだと思います。

今日は全団体レビューで行きます。合唱祭系は原則全団体レビューしていないんですが……まぁ、全団体20分のステージやってますからね。それに敬意を込めて。
2階は暗かったので締切でしょうか。1階8割超。前列は参加者用に開けてあり、それだけでのべ350人(!)いるので、実際の割合はもう少し少ないかも笑 実態に合わせ、壮年が多め。然し、この世代の集客に対する情熱はすごいものです。

1.男声合唱団 響
多田武彦・男声合唱組曲『北陸にて』(田中冬二)より
「きつねにつままれた町」
「みぞれのする小さな町」
松本望「3」(男声合唱とピアノのための組曲『回風歌』(木島始)より)
指揮:後藤行央
ピアノ:戸谷誠子

主に関東地方の方向けに。「ひびき」と読みます。徳島にも同名団があると伺っております。響は、この中では若い方の団に入りますね。代表格のひとつ。特にコンクールの部門が組み変わる前は、中部大会進出もしばしば。
内声が充実しているので、アンサンブルはよく整っています。然し、逆を言えば、外声、特にトップは、もう少しパリッとさせたいところです。特に三和音で、ちゃんと開いた音がカーンと鳴ったほうが、緊張感が出ていいと思います。いずれの曲も、キマる三和音はもっとはめたいところですし。こう、倍音が鳴って、景色が、ぱっと明るくなる、みたいな。決して悪い音ではないのですが、ピッチを、より精度高くしたいところ。
とはいえ、さすが、人数の割に非常によく鳴らせています。

2.男声合唱団 トワイライトシンガーズ
清瀬保二「球根」(男声合唱組曲『原體剣舞連』(岡本廣司)より)
富山県民謡(arr.安達元彦)「コキリコ節」*
まつしたこう「ほらね、」*(いとうけいし)
指揮:鈴木裕康、田代真司*
ピアノ:鈴木まどか

地元枠……って、みんな愛知県下の合唱団だからそりゃそうなんですが笑、刈谷からの参加です。
人数にしてはボリュームがよく出ていて好印象。そして、高音がよく当たる。内声はやや音がこもりがちであるが、特に2曲目の牧歌的な空気感にはよく似合う、やさしい音使いのできる団。
だからこそ、時折高音で出てきてしまう、やや無理をしたような高音は慎まれたいところです。常日頃から、息の量を増やして、それを着実に音にしてやることで、より骨太な音も鳴らせるようになって、音のバリエーションが増えるのだと思います。3曲目など、優しい音を優しく出すのは、本当の優しさとは言えないのではないかと思います。
理想としたいのは、それでも、その3曲目の最後の三和音。目がさめるような、いい音が鳴っていました。

3.男声合唱団「昴」
熊本地方民謡(arr.福永陽一郎)「おてもやん」
宮崎一章(arr.福永陽一郎)「島原の子守歌」
南部地方民謡(清水脩・作曲)「牛追い唄」
宮城県民謡(arr.竹花秀昭)「斎太郎節」
指揮:樅山英機

どこまでも明るい音作りが印象的。広く場所を使って鳴らしているなというイメージは好印象です。
ただ、もっと地に足をつけた様な、低い響きも活かした音が使えるように鳴ると、より良い音となりそうです。明るい音という方向性自体は非常にいいのですが、ともすると、やや喉を鳴らした音を使いすぎでしょうか。
また、音程については、出した音が伸ばしているうちに下がることがあるのはさすがに問題。出した音には最後まで責任をもって上げたいものです。また、和音の部分では、もっと耳を使ってハーモニーを楽しみたいところ。
否ーー最たるはこれかもしれない。語りや掛け声は、もっと盛大に行きましょう。結局は、勢いですよ、特に男声合唱という編成は笑

4.男声合唱団 ダンディライオンズ
清水脩・男声合唱組曲『月光とピエロ』(堀口大學)より
「月夜」
「秋のピエロ」
「月光とピエロとピエレットの唐草模様」
指揮:樋口真一

名古屋出身の明立出身者が集った合唱団なのだそう。拝見した限りでは、Ken-Pが指揮者になる前のメンバーが中心……まぁ、そりゃそうか←
最初の勢いのある音、それが理想であり、逆にそこからどんどん離れていってしまったのが残念でした。最初の和音の印象がすごく良かっただけに、本当に残念な演奏になってしまいました。特に、弱音かつ低音にいく部分で耐えきれなかったのでしょうか。せめて、勢いが戻ってくる部分でちゃんと音楽を進められないと、ダラダラと流れていってしまいます。今回、終曲も、あの出だしの音のままに鳴らすことができたら、どんなによかったでしょうか。デュナーミクが悪かったわけではないのですが、テンポ的にも音的にも、最後の曲が流れてしまったこと。それならせめて、強弱無視して、がっついてほしかったな、というのも本音。

5.豊田市民合唱団(男声部)
「にほんのうた」
・筑波山麓合唱団
・ボーイズ・ビー・アンビシャス
「こどものうた」
・バスのた
・おなかのへるうた
・おうむ
・バナナを食べる時のうた
・すっからかんのかん
指揮:都築義高
ピアノ:竹内理恵

混声で活動している団体が、有志で。さらに今日は、そのうちの有志がカエルの変装で登場。さらにその後、お召替えを挟んで、さらに有志が、バナナを着て最後まで。なんだこりゃ笑
最初から最後まで、身体を使った軽いアンサンブルで、伸びやかな音で、観客を笑わせにかかりました……語弊があるな笑 相対的にトップがもっと出るといいかな、とか細々としたことはあるものの、最初から最後まで、観客の空気を温めて、穏やかな笑顔の中終わらせたのは見事。上のバナナなんて、バナナ着ながらステージ上練り歩くし、なんか「ウーッ!」とか叫びだすし笑
言葉がもっと立ってるとより良くn……否、そんな、この演奏に指摘だなんて、野暮だな笑 照明が暗転して、指揮者が合図するまでそのポーズを取り続けた徹底っぷりにも、改めて拍手です。

インタミ15分。

6,名古屋グリークラブ
arr.三善晃『唱歌の四季』
指揮:大隈健治
ピアノ:今村洋平

名工大OB系。ピアノの熱演もあって、音楽自体はよく流れていました。途中、一箇所ずれましたけど笑 素朴で、しっかり歌いこまれた主旋律が印象的でした。
とはいえ、表情がどの曲でもさして変わらなかったのが残念なところ。アンサンブルの範囲が練習室の範囲に収まっていたように聞こえました。「雪」のリズムなんか顕著で、もっとガッツリと音を立てに行きたかったところです。そして何より終曲。普通に歌っていても手の余る壮大な「夕焼け小焼け」を歌うには、もっと、ホールの広さを感じて、広々と歌いたかったところです。楽譜からもっと目を離す、っていうことだけでも、ずいぶん変わるのかもしれません。

7.クール・ジョワイエ
若林千春・伊東静雄の詩による交声曲『曠野の歌』より
「夜の葦」
「わがひとに與ふる哀歌」
指揮:高橋寛樹
ピアノ:江上敦子

コンクールにて初演した曲の再演。まずは中部大会での再演が決まっています。それだけに、ほぼ初演ながらにして非常に高い完成度でした。切ない情景の中に広がる、透明な夜。そのさりげない明るさを、三和音が可視化するかのような「夜の葦」、そして、地に足をつけ、抑えきれぬ感情を咆哮するエレジー「わがひとに與ふる哀歌」。いずれも、組曲の完成が待ちきれない、新時代の男声合唱組曲を予感させる、非常に美しい曲たちでした。
演奏の出来も、さすがに、そつなく、それでいて迫力のある演奏だったと思います。個人的好みとしては、もう少し強い音は鳴らしに行ってもいいかな、といったところ。特に、このホールが散りやすいホールだったからかもしれません。とはいえ、バリトンがメロディを語る部分の音楽の進みも申し分なく、完成度は非常に高い。
ただ、「い」母音で現実に戻される場面がいくつかありました。それも含め、集中力が問われる曲。デュナーミクは今を維持するか、あるいは進歩させつつ、より細かい部分を詰めることで、表現全体の完成度が高くなりそうです。

8.愛知メンネルコール
高田三郎・男声合唱組曲『水のいのち』(高野喜久雄)より
「雨」
「川」
「海よ」
指揮:安藤正和
ピアノ:野口夏菜

グランフォニックから賛助が入っての演奏。逆にグランフォニックにも愛知メンネルからの賛助あり。曰く、この団員交流も、このフェスならでは。然り。
特に表現の面で、非常にできの良い演奏でした。何かと伝説的に、高田三郎だかその信奉者だかの表現に対する思い入れが伝わってくるこの作品。まして人気曲だけに様々な人の耳が肥えている中にあって、その要諦をしっかり学ぶ態度に溢れた演奏でした。
一方、トップがより張れると、もっと音楽が引き締まったか。また、「海よ」に顕著か、「あ」母音が開きすぎるというのは善処されたい。表現にもまた、集中力が問われる曲。最後のクレシェンドも、集中力を持ってすれば、もっと前の方から音量を高めても良かったかなとも思います。
とはいえ、最後に客席から聞こえてきた「ブラボー」、あれは決して御世辞ではないと思いますよ。素晴らしかったです。

9.尾北男声合唱団
arr.高須道夫『山田耕筰作品集』より
「二十三夜」
「粉屋念仏」
「げんげ田」
「かえろかえろと」
「捨てたねぎ」
「木の芽ごろ」
ゆず(arr.田中達也)「栄光の架橋」(北川悠仁・作曲)
指揮:柴田冨造
ピアノ:片多千愛

メロディから流れる、穏やかで優しい空気が印象的な演奏。弾いているそばでピアニストの口が動いているのも、まさに、この団からあふれる歌心の象徴と言えるかも。
とはいえ、トップにはやはり、もう少し音圧が必要かもしれません。音楽の輪郭がもう少しはっきりさせた方が、より映えた気もします。また、早いところでは、全パート、もっとカクシャクと口を動かされたいところ。加え、内声ももっと高音を混ぜたパリッとした音を鳴らしたいところです。「かえろかえろと」は、ソロと、ヴォカリーズの絡みが美しく、お見事。
「栄光の架橋」はエレキギターと。記譜もそうなっているのかしら。然し、接触不良のようで、目立ちが悪く終わってしまいました。しかし、そんなことにも負けない骨太な合唱、まさにこの曲にぴったりだと思います。

10.グランフォニック
クロード・ミシェル・シェーンベルグ(arr.小島聡)・ミュージカル『レ・ミゼラブル』(訳詩・岩谷時子)より
「プロローグ〜一日の終わりに」
「星よ」
「彼を家に」
「カフェソング〜民衆の歌」
指揮:小島聡
ピアノ:はやせようこ

華々しいミュージカルを、独自編成で。高音やtuttiで出る場所を、思い切り鳴らしに行く雰囲気がよく出ていて、非常に素晴らしい演奏となりました。
tuttiの部分は、よりパートの息を揃えてバチッとはめた方が、メロディの始点が見えやすく鳴ってよかったかと思います。どうしてもダレがちな内声も、そうするだけで迫力をつけることができる部分もあるような気がします。
この中でも特に、3曲目のゾリは非常に美しい。そして忘れてはならないのは、それに寄り添うヴォカリーズ。
動きはもっとあってもよかったのかもしれない。演奏会では、実際にミュージカルしたのでしょうか? それにしても、その世界観に心から魅せられました。なにより、最後の「民衆の歌」の迫力は、ぐっと来ました。思わず出たブラボー! 演奏に集中していた、その直後の爽快感も、また醍醐味です。

インタミ15分。非常に珍しく、男性トイレに長蛇の列笑
そういえば、同じ数が来てもどうしても混むからっていうことで、最近の公共施設では女性トイレを広めに取る傾向があるそうです。アクティブ・アクションに近いでしょうか? 違うか←

11.合唱団「男声合唱を楽しむ会」
高田三郎(arr.須賀敬一)男声合唱とピアノのための『啄木短歌集』(石川啄木)
指揮:向川原愼一
ピアノ:はやせようこ

黒シャツにカラフルなネクタイがおしゃれ。
よく鳴らせているイメージ。しっかりと地に足を付けて音を鳴らしているから、高声は特に、高い音へ行っても無理がない音が鳴っていました。一方で、内声は、もっと高めの響きでカラッと鳴らしたほうが良いのではないでしょうか。
また、上昇音型はいいのですが、オブリガードは細くなりがち。これもまた、しっかりと響かしてメロディと対峙させたほうが印象が良くなると思います。メロディも、対旋律も、両方共。
全体としては、弱い音に対する推進力がもっとほしい。全体が弱くなったときに見せる力強さは、刹那的な力強さを持ちます。味わいのあるメロディを歌う合唱団には、ぜひ意識されたい、「強いピアノ」を、レパートリーを拝見する限り、この団では特に身につけてほしところです。
しかし、長いステージとはいえ、よく集中力を持って演奏されました。ご立派。

12.ensemble Solaris
松下耕「Cantate Domino in B♭」
高田三郎・男声合唱組曲『水のいのち』(高野喜久雄)より
「水たまり」
「川」
Rahman, A.R. "Wedding Qawwali"*
(with Piano and percussion*)

当方の主観で、尤も期待されるべき合唱団の一つ。数少ない若手男声の雄と思っています(否、この際、ここの年齢のばらつきには目をつむりましょうぞ←)。
音量は、人数にしてはよく出ていますが、今日はホールに嫌われてしまったか。散ってしまっていたのが残念でした。むしろ稲沢のほうがよく鳴らせている気がする。
一方、強弱で音量問題はよくカヴァーできています。特に発声に無理なく駆け上がっていくフォルテは見事です。アンサンブルも、非常に軽いんですよね。指揮なしで、機動的にカチカチと雰囲気を変えていけるから、音楽がどんどん進んでいく。なんたって、水のいのちを指揮なしで進行できるくらいですからね、相当です笑
そして、最後の曲ーーえ、この団、踊るタイプの団なの?!っていう笑
確かボリウッド系の曲だったので、動くこと自体は自然なのですが、あんなフルで踊るとも思っていなかったので、びっくりです。なんというか、こういう離れ業もできる団なんですね……もっとお硬いアタマかと思いこんでいたので、認識新たにさせられました。終わったら、ブラボーの「黄色い声」! 否これは新しい笑
えっと、この曲については、なんというか、もっと細かい部分でもちゃんと言葉がきこえてくるt……あの、その、なんでもないです←

13.東海メールクワィアー
ジグムンドロンバーグ(arr.福永陽一郎)男声合唱組曲『ニュー・ムーン』(オスカー・ハマースタインII世)より
「朝日の如くさわやかに」
「恋人よ 我に帰れ」
「勇敢な男たち」
構成・補曲:都築義高
指揮:鈴木順
ピアノ:津野有紀

たとい次が東海メールだろうと、あの演奏の次にはさぞかしやりづらかったことだろうと笑
こうやっていろいろ並べてみると、意外と柔らかな音を出すことの多い団なんですね。その意味ではこの曲もご多分に漏れず、柔らかな音が印象的。
ただ、メロディのしっかりしたミュージカルピースというだけあって、もっとガッチリはめた音を鳴らせたほうが、この機会では良かったような気がします。音量はちゃんとある。なんというか、音の密度とでも言うべきでしょうか。響く音なんだけれども、いまいちボリューム不足。なんと逆説的な。
メロディがパリッとしてくるだけで、アタマの中で解決してくるものがあったと思います。特にこの層の団は、内声の響きが低く混沌としがち、だからこそ、余計に、メロディではしっかり勝負したい。
しかし、その中でも、最後のまとめ上げはさすが! しっかりと爽やかに当てるさまは、今もなお、この地域で独特な存在感を放つだけのことはあります。

14.男声合唱団 SINGERSなも
岩代浩一編曲による『日本のメロディー』より
弘田龍太郎「雨」(北原白秋)
杉山長谷夫「出船」(勝田香月)
弘田龍太郎「浜千鳥」(鹿島鳴秋)
本居長世「七つの子」(野口雨情)
多忠亮「宵待草」(竹久夢二)
山田耕筰・中山晋平「砂山」(北原白秋)
指揮:安田健

明るい発声を持っている一方で、ガッツリ出すことも厭わないサウンド。非常にバランスが良い。しかし、トップはその中でも弱め、否、頼りなげとも言ってしまえるかも。「七つの子」の「カァ、カァ」というカラスの鳴き真似よりも弱く聞こえるというのは、さすがに考えものです。
全体としては、ホールをよく使うことができていて、表情豊かで、味のある音が鳴っている。ノスタルジックな中にも、各曲の特徴を良くつかめていました。それだけに、音量バランスの悪さが本当に残念な演奏となりました。もちろん、トップがもっと出す方向で合わせてほしいですが、ベースにも、もっと高い音とブレンドする、高い響きを使ってほしい。あと一歩。だからこそ、いい演奏だったのに高評価が出しづらい。本当に惜しい演奏。

15.合同演奏=多田武彦作品集
「花火」(男声合唱組曲『雪と花火』(北原白秋)より)
「月夜を歩く」(男声合唱組曲『雪明りの路』(伊藤整)より)
「雨」(男声合唱組曲『雨』(八木重吉)より)*
指揮:高津眞司(グランフォニック)、高木秀一(東海メールクワィアー)*

タダタケ逝去に思いを込めて。この演奏については、コメントするようなものではないのかもしれない。否、非常にいい意味で。
350名が、花道も含めてステージ上に勢揃いし、一心に多田武彦を奏でる。その迫力たるや、きっと、往時の男声合唱って、こういう風だったのかな、と、ある種新鮮な思いで眺めていました。ある意味、今の四連でも見るのが難しい光景かもしれません。
そして何より、眼前にいるのは、タダタケに親しんで来た人たちばかり。なぜかこれだけの人数が揃うと、各団でアレだけ問題だった高音だってバッチリキマるし笑、どのパートも本当によく整っている。人数多いのに、寧ろ。客席から振らなければならないほどの大人数なのに、どこよりも沁み入る「雨」を歌い上げる。そのハーモニーを揃えさせるのは、皆様のタダタケに対する思い……或いは、これをこそして、「伝統」というべきものなのかもしれませんね。

当初の予告どおり、6時過ぎに終了。休憩を除いたとしても、4時間の長丁場。本当にお疲れ様でした……その、聴衆も笑

・まとめ

考えたんですよ。そりゃ、14団体も男声合唱団が集まって、しかも最後は350人の大団円で、多田武彦の定番どころをガッツリ歌って終わっていく。それ自体とても美しいことだし、どの団も工夫を凝らした演奏でよかった。愛知の男声合唱の奥深さ・幅広さを感じられてとてもいいイベントだったーー。
否、違う。何かが足りない。
上に書いたこともまったく正しいけれど、それだけじゃない。圧倒的に、アレが足りない。
そう、「若手」が足りない。「若さ」とか「若々しさ」とかじゃない。「若手」が圧倒的に足りない。
何も、上の世代を否定するつもりはありません。間違いなく、愛知県の男声合唱界隈は特に、シニア世代が引っ張っている。今日だって、白髪の御爺がガッツリ高音を鳴らすサマをたくさんみてきました。ときには、まるで大学団のように、否、大学団よりも若いような爽やかなサウンドを鳴らしていたりもする。その、頼もしく力強い様が愛知県の合唱界を支えていることについて、何ら否定するつもりはありません。
でも、です。文化の深みという面ではどうか。正直、今の現状としては、マスにいるのは間違いなくシニア世代。そこになんとかついていった40代の現役世代と、物好きの20代が少々とか、もうそんな感じになってしまっている。どうしても、若い人がいる場面って、あるんですよ。今日だけで何回、もっとトップが張れれば、って思ったことか。
男声合唱というくくり自体は、決して年齢に縛り付けられているものではありません。然し、様々な不幸が重なって、気がつけば、愛知県下から大学男声合唱団がすべてなくなってしまった、そして、その結果としての、本日の参加者の現状に、上の世代へのリスペクトと同時に、現在の愛知県男声合唱界が抱える悲哀を感じずにはいられません。
若手が一つ、二つ増えたらなんとかなるとか、そういった世界ではないのかもしれない。でも、私自身、希望を感じることのできる話をいくつか伺っていますし、このイベントの外でも、合唱、こと男声合唱が、新たな形を見せようとしている萌芽は、いくらでもある。その可能性に、未来を託すことができるか。言うまでもなく、愛知県の男声合唱文化は、今、その存亡をも賭けた重要な岐路に立っています。
いつか、その存続に希望を見出すような光景が、このイベントで見れることを祈って、本稿の締めとします。それが、私の、愛知県の男声合唱に対する注文に他ならないのです。どうか、愛知県男声合唱の将来が明るくあることを。
ーー否、今の現状もそれはそれで、非常に頼もしくはあるのですけれどもね笑 こんなに情熱を持って合唱やっている人間が揃うの、滅多ありませんから笑

2018年8月24日金曜日

【三大学サマーコンサート】

2018年8月22日(水)於 東海市芸術劇場 大ホール

スミマセン、
平日演奏会をその日のうちに、っていうのは、なかなか難しくなってきました苦笑
え、回転寿司食ってたって?……なんのことかなぁ(すっとぼけ
さて、この演奏会シリーズ。てっきり、同グリを幹事として、毎年必ず寒梅館でやるものだと思っていました。なんか最近、別の地域でやることもあるみたいですね。ということで、今年は名古屋で。そういえば、数年前には金城で行われたこともあったようです。
幹事が幹事だけに(同グリ……といいつつ、今年はグランツェかしら?)、実力を持った団が揃う傾向にあるこのジョイント。今年は名古屋開催。名古屋ではめったにないタイプの、「関西型」ジョイントコンサートです。

・ホールについて
何回目かのこのホール。最近中京テレビ「PS」で紹介されたという門池は、今日は行きませんでいた笑
なんていうかこう、多目的に使えて、木目調で、2階席はバルコニーみたいになっていて、そういう意味では、ある種寒梅館みたいなホールですよね(何)。とはいえ、こちらの方が響きます。さすがに笑 あと、客電を上げるとホール側面でさり気なくワンポイントが光っていておしゃれです。電波遮断装置もあり。さすが、オープン若干年の新しいホールだけはある。
残響が豊かなホール。それでいて広い。それ故、悪く言えば、音が散り気味に鳴ってしまいます、固めて出さないと、音量が飛んでこない。鳴らすのが大変なホールです。それは、大人数だろうとなんだろうと変わらない。結構に難しいホールだなと思います。
そういえば、反響板のしまい方って見たことあります?あれ、ステージの上に吊るだけだって思ってませんか? 普通の反響板って、おおむね天反、側反2枚、正反に分かれていて、大体、それぞれ吊るすだけですよね。……なんでこんなこと話し始めたかって言うと、それだけに限らないから笑 例えば、このホール。反響板の形からして、側反、天反がセットになっていて、そのまますべての反響板を奥にずらすと格納されていくスタイル。例えば、熱田文小でも、面白いしまい方をしています。いろいろ見てみると、奥が深いですよ、反響板も。

今日のひな壇は7壇。さすがにこれだけの人数乗せるためですからね、これくらいないと笑

・エール
グランツェ:団歌・小林秀雄「グランツェ、それは愛」(峯陽)
金城グリー:「校歌」(森田松栄)
同グリ:Wilhelm, Carl「DOSHISHA COLLEGE SONG」(W.M.Vories)

この演奏会最大の難関……その、整列とか、そういう意味で笑 とはいえ、割とスッキリと並んでくれました。さすが、どの団も本番慣れしているだけはありますね。ジョイント文化も学生団のうちになくなって来た現在、名古屋圏でエール交歓を見ることのできる、非常に貴重な機会となりました。ちなみに曲間には握手付き笑 各団。
グランツェ:グランツェの語尾は、テヌートでななくちゃんと切ってほしいところ。全体として、内声が雑になりがち。特にオープンハミングが課題。上澄みを使おうとするところとがなる声がダブる。やるならいずれにしろ、徹底的に。
金城:この人数でこの声量は十分。とはいえ、その声量自体は少し力が入っていたか。聞こえはいいものの、音に深みがない。もう少し柔らかく、かつ音量のある響きがほしい。
同グリ:この曲を愛知県でやってくれたというだけでオジサン感動です!本当、カレソン大好きなんです。同志社関係ないけど自分笑 指揮の方が打点の打ち方が遅め。ただ、演奏の速さが心地よい。このよく開いたア母音には、目が覚める思い。/r/は普通まかないけれども、寧ろ巻いているくらいの勢いがちょうどいい笑

グランツェは退場せずそのままオーダーして、第1ステージ。いちいち捌けてると、大変ですからね笑

第1ステージ:混声合唱団名古屋大学コール・グランツェ
松本望「アポロンの竪琴」(『歌が生まれるとき』より・みなづきみのり)
松下耕「狩俣ぬくいちゃ」(『八重山・宮古の三つの島唄』より)
信長貴富「リフレイン」(『等圧線』より・覚和歌子)
指揮:谷敷優希
ピアノ:小寺翔子

指揮者として2人ラインナップされていましたが、1人となった由。世の中いろいろあるもんです。
この団、最大の魅力が、人数が多いこと。人数が多いから、ある程度なにやっても映えるし、なにやってもサマになるし、なにやっても形にすることができる。変な話、総団員数の半分であったとしても、十分、巨大な合唱団とは呼ばれるものですから。
でも、それが問題なんです。この団、ある程度なにやってもどうにかなるから、中途半端な状態で演奏されていても、意外と気づかずに演奏されている(否、気づいてはいるかもしれないけれど)。実はスタッフ入りしていたコンクールでも演奏を少し聞きましたが、この団、好意的に言えば過渡期にある。それが、非常によく見えてしまっている。
何かと言えば、このステージも、非常に漫然とした演奏が目立ってしまっていました。楽譜は非常によく辿れているのだと思います。ただ、それ以外のなんでもない。1曲目では、メッセージ的に訴求する弱音部で音楽が止まってしまっているし、特に閉母音の響きの悪さが、それに拍車をかけている。さらに、比較的慣れのある2曲目でも、肝心のストンプで勢いを欠いてしまい、いまいち乗り切れない。挙げ句、3曲目に至っては、表情が悪い。否、難癖でもなんでもなく、それが為、特に一番ではピッチが落ちてしまっていた。
しっかりと、これからの演奏のあり方を見直すべきなのだと思います。厳しい言い方すれば、この団は、人数の多さだけでどうにかしようとして、どうにかなるフェーズをとうに終えている。もっと、音楽的にいい表現とはなにかについて、考えていくべきときが来ている。多分、普通に聴いている人にとっては、十分満足できる内容だったと思います。ただ、この手の詰めの甘さは、聞く人に聞かせたら、バレますよ。

第2ステージ:金城学院大学グリークラブ
【本田美奈子.の世界】編曲:小林啓一
太田美知彦「つばさ」(岩谷時子)
アメリカ伝承歌「アメイジング・グレイス」
Holst, G.「ジュピター〜組曲『惑星』より」
指揮:小原恒久
ピアノ:酒井志野

名古屋からもう一団体。あんまり意識してなかったんですけど、瀬戸線沿線とはいえ、ここ、名古屋市内なんですね←
比較的、低声が充実しています。とはいえ「低声部」が充実している、という意味にとどまります。高声はそこまで響きが豊かに出来ていないことからして、もう少し、豊かな響きで鳴らせるといいのだと思います。
主旋律はいいのですが、それ以外のパートについては、少し音が薄い。主旋律ばかり浮きだってしまっていて、非常に淡白な演奏に聞こえます。特に、上記のことからして、ハイソプラノのオブリガードがもっと骨太だと、聞きやすいような気がします。下の響きがよく入ったハーモニーだと、低声によくブレンドされて良いのではないでしょうか。
どの曲も美しくて、キレイなメロディが並んでいます。でも、美しいメロディって、それだけだと、冗長になってしまう。美しいことがいけないわけではなくて、美しいメロディが様々な表情を見せるさまをもっとしっかり描写したかったところです。特に、広さ故響きやすいものの散りやすいホール。
なんにせよ、音がもっと集められて、鳴らせると良かったのだと思います。音量がしっかり出れば、相対的に、弱音はちゃんと聞こえるようになりますから。特に高音。まず、ちゃんと鳴る音があってこそです。
とはいえ、人数が20人あまりと少ないながら、グランツェとも遜色ないくらいの、しっかりした音が鳴っていました。

インタミ15分。祝電は、名古屋関係のみ。もっとも、関西だとあまり祝電文化が残っていないので、まぁさもありなんと言ったところか。

第3ステージ:同志社グリークラブ
多田武彦・男声合唱組曲『雪と花火』(北原白秋)
指揮:八木和貴

入場は割とゆっくりと。腕をしっかり振っていたのが印象的。ちょっとカクカクしていたような気もしますが笑 前より一列ずつオーダー。別の団ながら北海道のときはステージが狭かったので、やや苦しそうでしたが、今回はそんなこともなく。
なにより、トップが見事。軽くかつ芯のある高音が、しかも音にちゃんと当たる。他にも、フレーズのとり方や三和音など、音楽を構成する要素はそつなくクリアできている。さすが関西の雄。見据えているのは、楽譜にかかれていることのそのさきにいます。
その上で。この演奏、やや集中力に欠ける点がありました。特に、弱音部に張り詰めた空気感が見られない。私から申し上げるでもなく、タダタケ音楽においては何より大事な要素の一つかと思います。特に、音の末端に対する意識。音の切り際が雑になってしまいました。それ故、曲全体としても、繰り返しの多い曲、一部冗長になってしまった箇所も多くあります。
その実、曲の終わりについては問題ない。1曲目のセカンドはトップと比べて少し勢いが無かったのですが、終曲のパートソロは非常に素晴らしかったと思います。そして、何より、最後の爽やかな終曲のカデンツ! もはや大学の男声団がなくなって久しい名古屋にあって、この若々しい男声アンサンブルが聞けるのは、もはや貴重な機会と言えます。しっかりと出ている音量の中に響く、優しい三和音。心に沁み入りました。

第4ステージ:三大学合同ステージ
高嶋みどり・混声合唱組曲『私は空に手を触れる』(みなづきみのり)

そして、最終ステージ。あえて書いておきたいのですが、ステージ上では歌い手は客に背を向けないこと。否実は、誰のことかといえば、私の知り合いについて言っているのですが、絶対に御法度です。歌う前に伊東先生が少しトーク。最近この人、躊躇なくみなづきみのり作品のことを「私が書いた」というようになっていますね笑
人数としては、グランツェが過半数で、200人弱。でも、音としては、間違いなく、グランツェでは聞かれなかった音が鳴っていました。この、強音のインパクト、これは、この日のグランツェでは得られなかったものでした。そして、音楽が非常によく進む。でもこれは何より、歌い手全員がちゃんと意識した結果。200人という大人数であろうとなんだろうと、どういう音楽を奏でたらいいか、皆が理解して歌っているから、ちゃんとアンサンブルが進行する。
ただ、流石に、この人数であるからして、ディティルには荒かった部分もあります。特に、弱音に対する集中力。そう、奇しくも、三団体とも苦手だった部分です笑 その点、3曲目や4曲目はもっと研究されたい。指揮・ピアノピンスポ以外の照明を50%に絞った3曲目は、そのムードを、演奏の集中力を高める事によって、もっと磨くことが出来たのではないでしょうか。
大人数は、少人数アンサンブルの集合体。その意味では、もっと集中力の高い演奏ができたと思います。然し、音楽的に意味のある合同ができるというのは、実力あるからして、ですね。どの団も。その点、各団のポテンシャルを再確認させられた、いい演奏だったと言えそうです。

「うまく合唱しようというのもそうだけど、合唱が、人を育んでくれたらいい。」と、伊東先生のありがたいお言葉を頂戴しつつ、アンコール。

・アンコール
まつしたこう「ほらね、」(いとうけいし)

そして、この演奏……うまいんだけど、なんだか、ちょっと怖かったよ?!笑 表情だけでも、もう少し崩してもいいような……なんだかんだ、表情って、演奏に出ますし。

・ロビーストーム
女声:木下牧子「ロマンチストの豚」
男声:竹花秀昭「斎太郎節」
混声:木下牧子「夢見たものは…」

まさか、ロビーでやるとは!笑 人数的に、ちゃんと乗るんですね……広さ的に、「鳴り」では、ロビーの方がよかったりします笑
何より白眉は斎太郎節。せっかく関西の方々もいるし、ということで、手拍子にブラボーも個人的にご発声しておりましたが……拍手五割弱、ブラボーは見事に浮く……かなしい。否、こんなだみ声どんちゃん騒ぎを文化とのたまってたまるか! っていうお声はご尤もかと思いますが、でも、個人的にはやっぱり、この曲は、お祭りなんだよなぁ笑

・まとめ

形容するのが難しい演奏会です。どの団も、決して悪くなかった。ただ、どの団も、今一つパッとしない要素を含んでいる。それは、この三つの団の積み上げて来たものを回顧すれば、もっと出来るはずだ、という、期待からくるものなのかもしれません。
その意味では、期待を裏切らないでいてくれたのが同グリでした。否、決して、100パーセントとはいえない演奏でしたが、やはり、あのしっかり当たる高音は、訓練された男声ならでは。片や、名古屋の混声二団の方は、正直、もう少し出来たのではないかという、ちょっと悔しさにも似た思いがあります。
突然ですけど、ポケモンのカスミって覚えてます?ハナダジムのリーダーです。って、このネタ、最大の問題点は、今の大学生だと知らないかもしれないのとなんですけど、まぁそれはいいや笑
あのカスミ、ゲームで話しかけると、自分のポリシーについて話すんですね。みずタイプのポケモンで攻めて攻めて攻めまくることだと。単一タイプに加えて攻勢一方という、これまた非常に危ういものの考え方ですが、しかし、カスミは強かった。フシギダネ使いでピカチュウ→ライチュウ育ててたのに強いと思ってた。少なくとも初見では序盤最大の関門ですよね、あそこ。
で、なにが言いたいかっていうと、ポリシーですよ笑 否決して、各団がポリシーを持っていないわけじゃない。だけど、そのポリシーをちゃんと共有して、伸ばそうと努力出来ているかなって話。中途半端になってしまうと、それは、中途半端な何かにしかならない。しっかりと最後まで、その思いを実現することに精力を傾けられているか。たとえば、グランツェなら、上澄みの音をキレイにハモらせることだったり、金城なら、低めの響きを豊かに聞かせることだったりするのでしょうか。自分たちの強み・伸ばしたいことはどこにあるのかを見直して、その強みがより伸びるように仕向けていく。
もちろん、簡単なことではないし、不十分かもしれない。でも、漫然と歌うよりは、聴きどころが明白になって、「面白い」演奏になると思います。

2018年8月19日日曜日

【合唱団もんじゃ 4th Concert】

2018年8月18日(土)於 大田区民プラザ 大ホール

〈本日の旅程〉
名古屋市内→豊橋(18きっぷ東海道線)→浜松(遅延)→静岡(やっぱり遅延)→熱海(諦めて新幹線利用)
→品川(鈍行グリーン車利用)→蒲田(京浜東北線)→下丸子(東急多摩川線)→本件
→蒲田(東急多摩川線)→川崎(京浜東北線)→立川(南武線)→甲府(中央線)→宿泊

〈明日の予定〉
甲府→富士(身延線)→東海道線経由で帰名

……もうね、あえてこういう言い方してしまうと、
一体何しに来たんだかわかんない笑
ちなみに、検討していたプランの中には、飯田線各駅停車長野方から乗り通しなんていうプランもあったりしました。なんていうか、勢いって大事ですね←
そんなわけで、割と勢いで聴きにきました。とある事情から、勝手に親近感を持っていまして、ずっと聞きたかったんですね。理由? まぁ、私の所属団を知ってしまっている方もいるでしょうし……アレですよ、だいたい、似たような構えしてるじゃないですか、うちの団の名前笑
嘗てはなにかあったとかなかったとか聞いたり聞いてなかったりしてますが、終局、私とは特に関わりのない話なので、結局、本当に勝手に親近感持ってるだけみたいな格好です。その意味では、念願叶ったり、一度来てみたかった演奏会。そういえば、「プロ」とか「初演」とか、そういう理由つけずに来た関東の演奏会という意味では、もんじゃが初ということになりました。多分、自身通算をしてもなかったはず。あえて言うなら大昔に出演したついでに聴いたTOKYO CANTATくらいかなと。乃至、まぁその、ただ聞きに来たつもりがビデオ係やらされたとか、そういう感じのやつ←

・ホールについて

東急多摩川線下丸子駅より徒歩すぐ。蒲田から来たときは、すぐに踏切を渡りましょう。さもないと……迷うと結構果てしないです(体験談←
区民用の多目的施設の中にある、キャパ800程度のホール。古さもちょうどいい感じの、池田アゼリアと同じくらいの大きさでしょうか。狭すぎず、広すぎない、手頃な感じがちょうどいいホールです。多目的ホールにして、内装は石材系と金属系の組み合わせという珍しい形式。しかも床はフローリング。全体的に白を貴重としている中で、紅白の椅子と合わせて、足元の暖かなアクセントが非常に印象的です。クロークとして使われていたカウンターも、飲み物くらいなら出せそうな感じ。非常に使いやすそう。
そう、このホール、非常に使いやすそうでした。その、非常に使いやすそうな、多目的ホール。なにせ、ブザーはやっぱり、「b----------------!」ですし笑 実際のところ、残響というのはいまいち望めません。
でも、そこがポイント。残響以外の部分については、とても素直な素晴らしいホールです。鳴らしたまんまの音が、素直に部屋の大きさのままに帰ってくる。鳴っていることを殺すこともなく、そのまま返ってくるというのが貴重です。音楽でこれなんですもん、本当の意味で、多目的、なんだと思います。ほらだって、客照落とすと、完全に真っ暗になって、レビュー用のメモとか書けなかったですし笑
しかし、ピアノはスタインウェイ。多目的なのに。東京ってすごいわ……笑

集客は6〜7割、下手側舞台前には親子優先席がありました。そのさりげない配慮の素晴らしさ。
ひな壇は、ちょっと多めの4壇。でも、70人あまりが乗ったら、案外いっぱいになっていました。そして、この人数ならやっぱり、もっと入場はサクサクしたいですね。女声より男声が遅いというのは、ちょっと。

Opening stage
指揮:佐々木孝康
ピアノ:高橋人富

まずひとつめに、驚いた! 何にって、すごく、爽やかな音を出すことに。
否、勝手なイメージを持っていたんですよ、関東の人たちって、すっごく、発声がしっかりしていて、その発声を頼りにして、ゴリゴリと音を鳴らすところで満ち溢れてるんじゃないかって。良くないですね、こういう、勝手な思い込みって。
そういう音の良し悪しはさておいて、ここは、ノンビブラートで、音圧というよりは、各人がアンサンブルに溶け合うようにして、透明な音を鳴らしていく、なんだか、個人的には落ち着く感じの音笑 ただ、このステージに関して言えば、まだ声が温まっていなかったのか、特に高音への跳躍など、ピッチが正確とは言い切れない感じでした。高音への跳躍についていえば、どちらかといえば、届いていない、という方が正しいかも。各パートの中での微妙なピッチの揺らぎも、アンサンブルに悪影響を与えてしまっていたか。そう、こういうタイプの音作りを目指そうと思うと、ピッチも、寸分違わず揃えなきゃいけないんです。
でも、この曲、さわやかでええ曲なんですよ……歌詞もまた、この団によくあっていて。このあとの演奏会への期待感を否応なく見せてくれました。

1st stage:もんじゃの新定番! アラカルト
ELBERDIN, Josu "Ubi caritas et amor"
木下牧子「にじ色の魚」(村野四郎)
信長貴富「それは」(長田弘)
相澤直人「あいたくて」(工藤直子)
上田真樹「あなたのことを」(銀色夏生)
指揮:佐々木孝康
ピアノ:嶋田理子

このステージ、音取りは音叉で。少なくとも、この指揮者もプロではない。なんだか、すごい人が一杯出てきているものだなぁ……
1曲目は本演奏会唯一(!)の外国語曲。とはいえ、ラテン語だからそこまで極端に神経質にならなくても歌えちゃいますけどね。……とか言ってると、今回も、母音がバラけて音が少し散ってる気もしたのだけれども←
最初の方は、下三声の和声のピッチが、前のステージを引きずっているのか、かなり不安に聞こえました。あと、強弱に対する意識が今ひとつ真剣味にかけるというか、もう少し「なぜこの部分はこの強弱なのか」といった司祭にも意識を向けられると良かったなと思います。ただ、この1曲目からして、すでに萌芽が見えていたのは、メロディに対する意識の秀逸さ。
日本語に入ると、そのメロディの秀逸さに合わせて、演奏もどんどんブラッシュアップされていきました。2曲目「にじ色の魚」なんて、このところアンサンブルコンテストのスタッフ入りなんかしたりして嫌という程聞かされていましたけど(失礼)、言葉が立つとこんなにも美しく聞こえるんですね! 大人ってすごい。
そして、なにより白眉だったのが、5曲目「あなたのことを」。私としては、昨年あい混の初演に出会って以来。その当時は、どうしても『終わりのない歌』の初演に耳が引きずられていましたが、今日は、この曲の良さを再確認させられました。否、この再演を通して、この曲が成長した瞬間を目の当たりにした、という方が正しいかもしれない。この曲に至ると、うびかりで難しい顔してた人たちもみんな笑顔ですもんね、上田真樹ってすごい笑 あんなに心から幸せそうに「あなたのことを考えてたよ」って歌われちゃうと、もう、ホントに心に染み渡る。語り継がれていい再演でした。
一方、ひとくちにメロディといっても、3曲目「それは」のように、ちょっとテンポ的に揺らされたりすると、テンポに引きずられていってしまったりもする。まだまだこれから、という課題を抱えつつも、その歌心と素直な音に、未来への可能性を感じさせる演奏でした。

インタミ10分。

2nd stage:Monja Summer Festa!!〜もんじゃと過ごす夏のひととき〜
桑田佳祐(arr. 信長貴富)「希望の轍」*
RAG FAIR(arr. 壹岐隆邦)「恋のマイレージ」(土屋礼央作詞/豊島吉宏作曲)a cappela ensemble
ZONE(arr. 森友紀)「secret base〜君がくれたもの〜」(町田紀彦作詞作曲)
森山直太朗(arr. 田中達也)「夏の終わり」(森山直太朗・御徒町凧)**
ゆず(arr. 石若雅弥)「夏色」(北川悠仁作詞作曲)
指揮:佐々木孝康、関口智史*、飯間葉子**
ピアノ:高橋人富

お次は、巷では、演出付きステージとかアトラクとか呼ばれる……要するに、寸劇ステージですね笑
全曲ポップスで固めていながらにして、しっかりと技術面でも合唱を追求する、良プログラム。2曲目は少人数アンサンブルに手拍子も加えて、3曲目・4曲目は女声・男声合唱でそれぞれうたっていきました。役の方のセリフはピンマイクをつけて拡声。ただ、アンサンブルの音圧がどうしても小さくなっていたところでいうと、セリフはアンプラグドでやったほうが良かったのかもしれません。
寸劇に無駄な力が入っているというわけでもなく、青春第一のストーリーをさりげなく(ときおり強引に……お汁粉とか←)提示しながら、全体として、音楽がちゃんと通底している雰囲気が印象的でした。寸劇のために音楽がおざなりになることって、こういうステージだとよくあるんですよ。音楽がただのBGMになっちゃってるみたいな。
ストーリーは、10年前の甘酸っぱい恋物語の回顧と、青春の再現のような、再会の物語。最後の再会は、ゆずの「夏色」で、思いっきりはっちゃけて締められる。だからこそ、特に、1曲目から2曲目〜導入から出会いまでは特に、「夏色」くらいに全部はっちゃけた音があってもよかったかなぁと思います。特に人数が減る2曲目〜4曲目まで、どうしても音圧が少なくなってしまって、ボリューム不足のような感じがしてしまいました。特に、男声ステージは、もっとトップが張ってほしかったなぁ。一種の、伝統芸能みたいなものですが。
否しかし、本当に、甘酸っぱくて、なんだか正視できないくらいだった笑 しかし、そんなストーリー、最後の「夏色」を歌うときにひな壇に上がった主人公とヒロインの間には、たまたまだろうけど、団員が一人挟まっている。なんだか、ちょっと歯がゆい感じ、これも又青春!?笑

そしてインタミ10分。やっぱり、インタミは短いに越したことはないんです。長くても、終わりが気になって、何も出来ないこと、結構ありますから笑

3rd stage
三善晃・混声合唱のための『地球へのバラード』(谷川俊太郎)
指揮:近藤一寛

で、このステージこそ、白眉! 自然に流れる音楽を、自分たちのテンポの中に落とし込んで、ちゃんと表現できている。勢いの中に、ちゃんと音の跳躍もできているし、それでいて、1曲目の「くやしさといらだちの」といった、細かい表現も、しっかりテンポを止めて音にすることが出来ている。全体として、表現がダレることがないから、2〜4曲目のテンポの緩い曲も十分な音の中に表現出来ている。で、やっぱり、その爽やかさを生かして、テンポの跳ねる1曲目や5曲目では、自分たちの持ち味を生かして、思いっきり音を鳴らしているなっていうのがわかる。なんだ、これまでちょっと感じてた問題って、本当に声が温まってなかっただけじゃないのって思っちゃう笑
3曲目の表現は、最初、だいぶ明るめに入りました。明るすぎないのかな、って思ったけれども、改めてその目で歌詞を読んだら、そういうわけでもないんですね。空に結びつく鳥の無知と、その無知の真実なるを知らない人の愚かさ。そういう意味では、私も人間の目を持ってしまっていたのかもしれない。でも、そうすると、語りの音は、もっと朴訥と、かつ、重厚に読んでいたほうがいいのかもしれません。否、十分、素晴らしい朗読だったのですが。
合唱にしても、4曲目にかけては、アンサンブルが長かったという面もあって、少し声が浅くなっていたような気がします。そうでなくても、特に4曲目は表現としても深い声が求められる曲かと思います。その辺。もっと重厚に鳴っても良かったのだと思います。
然し、それにしても、若い! 爽やか! それだけで、この曲をここまで捉えることができるものなんですね。無鉄砲さというか、天真爛漫というか。いろんな難しいこと捨象して、それくらいにさっぱりと捉えるのも、この曲の楽しみ方なのかもしれません。

encore
松下耕「今、ここに」

テンポ変化は近藤さんが合わせつつ、それ以外は全員が息を合わせてのアンサンブル演奏。これぞ、今日の演奏会の真骨頂と言えるかもしれません。ちょっと遅くなりすぎな部分こそあったものの、何もしなくても勝手に音楽が進む。目指している音楽が明白だからこそして、やっと完成できる演奏。まさに、今、ここで、私が歌っているからしてでないと、この演奏は出来ないのです。

ストームはなく、そのまま終演。ロビーでの歓談もなんだか爽やかな感じでした笑

・まとめ

「音楽に正解はない」なんていう言葉があります。確かに、そう言えるような気もします。発声的・技術的に正しいと思われる音が鳴っているのが間違いない演奏であったとしても、全然感動できないものもあったりする。逆に、そういった部分で明らかなボロが見えていたとしても、ものすごい良演っていうのはまま見られる。
何が、その違いを作るのか。正直、つかめるようなものではないともいます。「名演の作り方」がわかるなら、誰だってやってるはずですし。では、そこに、技術ではない何かが介在しているのだとしたらーーとどのつまり、あるとするなら、「ヒトの心」って、名演には、欠かせない要素なのだな、と思わされました。
今日の演奏も、正直、劇的にうまかった、というほどにも言い切れない。でも、今日の演奏、すっごく良かった。特に『地球へのバラード』、特に「地球へのピクニック」なんかは、皆の思いが詰まっている。
思うに、「どう歌うか」ということについては、技術はとても雄弁なんです。でも、「何を歌うか」ということについては、人間がいないと、やっぱりわからない。「何を歌うか」ということが決まっていれば、そこから逆算的に、フレージングをはじめ「どう歌うか」は決まってくる。でも、どんなに楽譜を眺めていたとしても、解釈は最終的には多様だし、それをどの解釈で、どんな文脈で、どんな曲順で歌うかで、伝えるメッセージは変わりうる。
過度に気持ちが入りすぎれば、それは独りよがりになってしまう。でも、ギリギリまで技術を突き詰めたあとにようやく顕れる人の心は、寧ろ音楽の真実に近づいているのではないかと思います。その答えが、あのときわたしたちが共有した、爽やかな風のようなものだったのではないかと思います。何も出来なかった昔の自分と、やっぱり何も出来ない今の自分、その愚かさや、無鉄砲や、健気さや。どんなに無力であったとしても、今ここにいて、ここで歌う事実は変わらない。その事実と向き合うときの、誠実な、心からの合唱は、どこまでも伸びやかなのだと思います。
私達の音楽が、まさにこの瞬間に力を持つのを垣間見るとき、それだけで、今回、聞きに来た価値は、あるのだと思います。とても、後味が爽やかな、キレイな演奏会でした。