おおよそだいたい、合唱のこと。

ようこそお越し頂きました。
主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
やたら細かいレビューからノリツッコミまで、現状、合唱好きな方の暇つぶしには最適です。
ゆっくりしていってね!!!

2014年9月29日月曜日

《新増沢方式で遊んでみる》その1:ルールについて

どうもこんばんは。わたべです。

例の「はじめに」から凄まじい日にちが経ってしまいました。実は、記事のバッファをつくろうとしたのですが、まぁ、お察しです。
気付いたらそろそろブロック大会が終わろうとしてしまっているので、備忘兼ねてアップしておきます。
ひとまずこの記事で、新増沢とはなんぞや、みたいな話は終わってます。間違い等が多分にあるかもしれませんので、そこら辺はお察しください。なお、途中から具体例の説明がありますが、わたべは関係諸団体の関係者ではありませんので、あしからずご了承ください。

【本日の内容】
・新増沢方式とはなにか
・新増沢方式の決定の仕方について

・新増沢方式とはなにか
 まず、そもそも、合唱や合唱コンクールと関わりない人にも分かるように、新増沢方式ってなんだよ、という問題について。合唱人に占めるコンクール人口の割合だけとっても、必ずしも多いわけではないですからね。
 「新増沢方式=新増沢式採点法」とは、「全日本合唱コンクール」で利用されている審査方式です。調べた限りでは、新増沢方式は、「全日本合唱コンクール」と一部を除く支部大会・県大会、また、それを模した制度が「NHK全国学校音楽コンクール」で利用されている程度です。もっとも、意外と多くの大会が審査方式を非公表にしているので、情報そのものが乏しい分野です。他分野の審査について情報お持ちの方いたらご一報ください。
 もともと、「音楽コンクール(音コン、毎コン、現・日本音楽コンクール)」で利用されていた「増沢方式」が改良されたものとして、全日本合唱コンクールに輸入されたことがきっかけです。ルールに不公平な部分が見られるということで、増沢方式を改良する形で、新増沢方式が考案され、全日本合唱コンクールでは利用され続けてきました。ちなみに、現在毎コンでは、嘗てのフィギュアスケートのように、審査員の最高得点と最低得点を足切りする形での得点方式を採用しています。
 増沢方式が、事実上「決選投票付き多数決方式」の繰り返しに過ぎないのに対し、新増沢方式は、意見が割れた場合、より慎重なアルゴリズムで決定を行う制度に設計されています。ここで、説明の都合上、2つ、投票制度を紹介しましょう。

*決選投票付き多数決方式(Plurality with runoff rule)
 新増沢方式のベースになる制度です。割と耳馴染みのある制度かと思います。具体的には、まず多数決で全体の票をあつめ、集まった票の上位で、もう一度多数決をして、最終的な勝者を決定する方式です。ふつう、決選投票に残れる対象は2つになることが殆どですが、新増沢方式では、この、決選投票に残れる対象が「全体の過半数を占めるグループ」になるのがミソです。

*コープランド・ルール(Copeland rule)
 簡単にいえば、所謂、リーグ戦方式です。ボルダ・ルール(Borda rule)と並んで、この分野の研究が進んでいる制度の一つで、こんな仰々しい名前がついています(多分、その一端を追々紹介することになります)。順位を元に、全団体を総当りで対決させて、取得した勝ち点の最も多い団体が勝ちます。周知の通り、サッカーのグループリーグが似たような制度を活用しています。但し、ここで、勝ち点は普通、勝ち=1点、負け=0点、引き分け(ある場合は)=0.5点、で計算されることが多いようです。負けを-1点、引き分けを0点とすることもあります。引き分けがある場合、引き分けの点数の割合次第で結果が変わることもありえます。ここでは、最初に書いた、勝ち=1点、負け=0点、で考えて頂いて構いません。

 この2つの制度を使って、新増沢方式を「分解」してみます。

  1. まず、審査表が作られます。審査表とは、審査員がそれぞれの団体の評価を順位にして提出したものを、一覧にしてまとめたものです。実務の都合上、ほとんどの場合、物理的に一覧にまとめられます。
  2. まず、審査表の第1位を見て、得票数がまとめられます。ここで、過半数を超える得票を得る団体が現れた場合、その団体がそのまま全体の第1位となります。
  3. もし、2.で決まらない場合、得票数の多い団体が、合計で過半数を占める団体の数だけ選ばれます。例えば、審査員が9人だとして(全国大会ですね!)もし団体Aが3票、団体Bが1票、団体Cが2票、団体Dが2票、団体Eが1票、他の団体が0票となった場合、団体A、団体C、団体Dが選ばれることになります《例1》。また、もし団体A〜団体Eが1票、団体Fが4票を、他の団体が0票となった場合、団体A〜Fは、この段階ではすべて選ばれます《例2》。
  4. 《例1》のように、3団体選ばれたうち、下位2団体(団体C,団体D)の得票が同一の場合、この2つの団体で多数決が行われます。審査表から、団体C,団体Dの順位をとってきて、それぞれの審査員がそれぞれどの団体が高い順位を付けているかを集計し、その結果で多数決をします。ここで勝った団体が、今度は最多得票の団体Aと、同様に決選投票を行います。
  5. 《例2》のように、選ばれた団体のうち、下位団体が複数にわる場合、この団体でコープランドを使い、勝者を決定します。4.と同様に、選ばれている団体の順位を審査表からとってきて、その順位を使い、コープランドルールを使って勝者を決定します。ここで勝った団体が、上位の団体と決選投票を行います。
  6. もし、審査員の数がもっと多く、より多くの団体が3.で述べた決選投票のグループに割り振られる場合、下位の団体から順番に、4.と5.のプロセスを繰り返して、勝ちあがり戦を繰り返し、順位を決定していきます。なお、上位得票団体が複数に渡る場合は、コープランドルールで勝者を決定することも、勿論ありえます。
  7. 以上で決まった第1位を抜いた順位表を元に、今度は同様のプロセスで第2位を決定していきます。このように、決まった団体を順位表からどんどん抜いていき、最後に、すべての団体の順位が確定するまで続きます。第2位以降の決定の中で、それまでに決まった上位団体の順位が動くことはありません。
 ……ややこしいですね!笑 新増沢方式って何?というと、こういう長い説明をすることになります(これでも、卒論よりは説明うまくなってるんですよ……?笑)。わかりづらいので、「新増沢方式を解明する」という全日本合唱連盟(JCA)のサイトでも、例を使いながら説明することが殆どです。JCAの説明における例はそちらを見ていただくとして、今回はせっかくなので、別の例を見てみたいと思います。わたべが勝手に「金城学院の悲劇」と呼んでいる、2012年度全国コンクール中学同声部門で実際にあった審査表です。


 ちょいと見づらいかもしれません。順位表は、『ハーモニー』のほか、合唱倉庫さんでもチェックできます。さて、上の順序にあわせて、この審査表を計算してみましょう。

  1. 審査表は、ご覧のとおり。史上稀な珍審査表だと思っています≒計算が鬼……。全国など、大きめの大会ではパソコンを使って計算するようですが、手計算組は、ここで、長い道のりになることを覚悟します。焦って計算ミスすると、間違ったとこからやり直し。おーこわ。
  2. 全体の第1位を決めましょう。まず、各審査員の第1位に注目します。それぞれの審査員の得票を集計すると、陵北1票、栄東2票、武庫川女子2票、金城学院1票、陽南2票、清泉女学院1票です。したがって、多数決では決めることが出来ませんでした。
  3. 上位グループを抜き出します。ここでは、2票を取った団体が3団体で合計6票、これで、9人の審査員の過半数を取れるので、栄東、武庫川女子、陽南がそれぞれ選ばれます。
  4. 下位団体が存在しませんし、上位団体も2団体より多いので、多数決では解決できません。残念。
  5. 3団体が同じ得票を持っているので、この3団体がコープランドルールで争うことにより、全体の第1位が決定します。まず、東栄vs武庫川女子。6対3で、東栄に勝ち点1。次に、東栄vs陽南。6対3で、東栄に勝ち点1。武庫川女子vs陽南。4対5で、陽南に勝ち点1。そんなわけで、勝者は、東栄です。
  6. これで、全体の第1位は、東栄に決定です。
  7. これを、延々繰り返していきます。筆者は2年前くらいに手で全部確認しました。なれてないと、発狂しそうになります←
 さて、あえて新例として挙げたこの審査表、とても不思議な結果が出ている表です。武庫川女子が第1位に2人も選んでいるのに第10位というのも十分不遇な感じありますが(他の審査員の順位が低いとこの傾向があります)、ここで注目したいのは金城学院。金城学院に色付けした審査表を見てみましょう。
 寺嶋陸也先生が第1位をつけている一方、藤井宏樹先生は最下位をつけています。その他の審査員の方の評価はいまいち振るわなかったものの、7人全員最下位はつけていない。この中ではもっとも「審査の割れた」団体といえそうです。で、総合結果を見てみる。なんと、最下位になってしまっています。第1位をつける審査員がいて、最下位を付けた審査員が1人しかいなかったのに、総合では最下位になってしまうのです。
 念のため言っておきたいのは、「誰も悪気があってこんなことやっているわけじゃない」ということです。自分の意思どおりに審査をして、それをルールどおりに並べてみたら、こうなっちゃった、ということです。実際自分も、演奏を聞いたわけではないので、この年の金城学院がどうだったのかとか、あるいは、桜山、仲井真、安田女子など、最下位を2票得ている団体と比べて演奏がどうだったとか、そういったことは言えません。しかし、あくまで、順位表には、こういう結果で出てしまっている。このルールのもとでは、中々結果を操作することが難しいことが一般的に言えるので(「少なくとも増沢方式よりは」)、その意味で、別に利益供与があったとは考えづらいでしょう(もっとも、最下位に仕立てる結果操作というのは普通に考えても余りありえないですが)。
 そんなわけで、審査表だけ見ると、これは十分「悲劇」といえると考えているのでした。何度も申し上げておきますが、この審査表に出てきたすべての方に、この審査表の限りにおいて、わたべが個人的な感情を持っているわけではありませんので、その点あしからずご了承ください。

 そんなわけで、新増沢方式の採点方法について、ご納得いただけたでしょうか? あくまで、このブログですべて分かるような簡単な制度ではないので、ぜひ、このブログをきっかけにして、県コンクールやブロックコンクールなど、気になる審査表をご自身で計算してみてください。正直、実務的な問題としては、それが一番、新増沢方式に慣れるための手っ取り早い方法です。「コーラス・ガウス君」などは、計算に慣れた玄人が使うためのツールです(すっとぼけ)
 次回は、世の中に存在するいろいろな投票ルールについて紹介してみたいと思います。といっても、世の中にごまんと存在する決定様式、紹介できても一部です。せっかくなので、色んな投票方式で、「金城学院の悲劇」を順位づけたらどうなるか、でもやってみましょうか(卒論でやっていない内容=死亡フラグ)。
 では。

(よろしければ、ご意見ください)

2014年9月18日木曜日

【東京混声合唱団いずみホール定期演奏会No.19】

2014年9月17日(水) 於 いずみホール

お久しぶりです。
なんだかんだ、愛知県コンクール以来、暫く、合唱から遠ざかった生活を送っていました。といっても、別に何を狙ったわけでもないのですが笑
そういえば、某連載が序文だけ書いて止まってたりしますね。気にしたらダメです←
さて、そんな中、久々の合唱活動は東混の大阪定期でした(お前パナムジカの倉庫いたよな、とかいうのも気にしたらダメです←)
またしても今年も、招待状を頂いてしまいました。委嘱会員になることを、強いられているんだ!

・Pick up:信長貴富
 合唱界隈ではお馴染みの、そして、非合唱クラスタの皆様にとっては「信長?織田?」な、そして、東混にとっては実は意外と馴染みのない、作曲家・信長貴富。自身の上智大学での学生団の活動を端緒に、朝日賞受賞などを通し作曲家の道を進みます。ピティナ課題曲などの器楽曲の他、自身の経歴も相まって合唱曲を特に多く手がけています。『新しい歌』『旅のかなたに』『初心のうた』『くちびるに歌を』など、耳馴染みよく聞ける初期作品、『食卓一期一会』『廃墟から』「銀河鉄道の夜」「Fragments〜特攻隊員戦死者の手記による〜」など、深淵に迫る近作のほか、「こころようたえ」「群青」など、心に迫る音楽を多く作られています。アマチュア出身なこともあるためか、東混では取り上げられる機会が少なく、既存作の再演も、過去一回にとどまっていました。そんな中、「東混 八月のまつり35」で委嘱され、東混初の信長委嘱となりました。ある意味で、待望された、ある意味で挑戦的な、「東混ルネッサンス」のマイルストーンとなるような、とてもセンセーショナルな出来事です。

・ホールについて
……もう3回目ですし、いい、ですよね?w
収録はビデオが下手側に2台、マイクが合唱団に3本、ピアノに2本1セット、吊りマイクという構成でした。リリース用か、記録かは不明。だいぶスッキリとしているもののリリースにも対応できる録音体制に感心した次第。
ちなみに、アラーム音周りで言いますと、今回は、時計のアラームが最後に鳴っていました。さすがに、電波を遮断してもなってしまう音。とはいえ、気になってしまうものでもあります。
今回はなんと、柵前の、中央列。特等席で聞かせていただきました。もちろん、最高の席で、最高の音が返ってくる席なのですが(残響が絶品!)、とてもとても、このような若輩者にとっては居心地が悪い席でした、その、負い目的な意味で笑
とはいえ、いずみホールは、出来る限りいい席で聴く、というのが、一番の聴取環境を得られるようです。身も蓋もないホールだ……笑

指揮:山田和樹
ピアノ:斎木ユリ(2,4)

4月の山田和樹音楽監督就任公演の再演が2つ、学校公演の披露が1つ、そして、大阪初演が1つ、と、とてもバランスのよいプログラム構成でした。大阪定期は、東京定期と比較して、東混の先進的なプログラムも、耳馴染みのいいプログラムも両方楽しめるのがポイントでもあります。

ヤマカズ先生、本番前に出てきてトーク。一つ目は、CDの宣伝(購入者特典付きw)、二つ目は、Facebook ではアナウンスされていた、曲順の変更。レビューのとおりになりました。最後が信長作品初演。

第1ステージ
Clausen, René(2011)『二重合唱のためのミサ曲(Mass for double choir)』

まずは、東京定期の再演から。さながら、大阪初演という向きもあります。2回目ともなると、曲の輪郭を捉えつつ聴くことの出来る感もありました。ヘテロフォニックな構成、群衆から沸き上がるような Kyrie、3部構成の典型的な、二群の応酬により構成される Gloria、壮大な絵巻としてキリストの伝説を見せる Credo、快活な、そして、Soli からこぼれ落ちる美しさが印象的な Sanctus、そして、地の底から沸き上がるような祈りの Agnus Dei、いずれも、曲週末の残響が本当に美しい、協和音に特徴的な快演でした。白眉は、Sanctus。絶品でした。音量バランスも、大きすぎず小さすぎず、ちょうどいい、いずみホールとよく合った上品なサウンドでした。指摘する点として、特に Kyrie の最初が、少しピッチが低かったか。とはいえ、終始最初のピッチを保っているのは、さすがの音感、と思わせるところがあります。さすがに長大な曲(特に Credo は8分超え!)だけあり、1回だけでは構成を把握しきれない向きもある曲ですが、他方で、何回でも聞きたくなる、全く疲れを感じさせない円熟の演奏でした。
クラウセンと、鳥獣戯画の入った、東京定期の音源が、9月26日に販売されるようです。会場で先行販売していたので、思わず購入。主目的は、演奏会後にあるミーハーイベントだなんて、言えない、言えない。
しかし、今CDで聴きながら書いているのですが、否、壮大な曲です。本当に。

第2ステージ
鷹羽弘晃(2013)「混声合唱のための『歌い継ぎたい日本の歌』」より
「みかんの花咲く丘」(加藤省吾/海沼実)
「思い出のアルバム」(増田とし/本田鉄磨)
「おもちゃのチャチャチャ」(野坂昭如(吉岡治)/越部信義)
「幸せなら手をたたこう」(木村利人/スペイン民謡)

学校公演の定番ナンバーから4曲。かねてから何かと、こういったポップスへのリクエストも多く、最近プログラムに組み込まれることが増えました。技術的にしっかりした演奏で聴くポップスというのは、アマチュア合唱団が歌うそれ以上の感動があります。以前は東混と全国の学校を周っていたこともあるヤマカズ先生、楽譜を紹介しつつ、「えっと、次何やるんだっけ」という小芝居茶目っ気も披露。こちらも、さながら少年の心持ちで聞いていました笑
まずは、クラウセンの複雑なミサ曲から開放するように、落ち着いた盤石のハーモニーをみせる「みかんの花咲く丘」、思い出の高揚感と共にじんわりと、感動的に訴える「思い出のアルバム」、一転ジャジーな構成で、声の楽器を巧みに操りおもちゃの喧騒を表現する「おもちゃのチャチャチャ」、定期演奏会でもガッツリ参加型、みんなで楽しむ「幸せなら手をたたこう」、学校公演の雰囲気そのままに、楽しむことが出来ました。特に「思い出のアルバム」の聴かせ方と「おもちゃのチャチャチャ」の対比は、作品としても十分評価されるものでした。斎木先生のピアノもノリノリ。「おもちゃのチャチャチャ」の低音パート、これからのおまつりの始まりに、ゾクゾクしちゃいます。円熟の演奏に、演出。これをタダで聞ける学生達は幸せものですなぁ……(本日のおまいう)

インタミ15分。近大人に包囲されてました←

第3ステージ
三善晃(1984)「混声合唱のための『地球へのバラード』」(谷川俊太郎)

新表紙でのオンステ。といっても、特にカワイは新表紙に変わってかなり経ちましたが……。最近音友が新表紙になりましたね。
ヤマカズ先生曰く「逝去から一年。戦後の作曲家、詩人は、多く、生死について問いかける作品を書いてきた。そのうちの一つとして。」
4月定期と比べ、より精密な演奏が聴くことの出来た印象があります(といっても、初めて聞いた人に聞くと「はっちゃけていた」印象があるようですが。いい意味でw)特に、テンポが、1曲目は少し早めに、5曲目は落ち着いたものになった一方、いずれの箇所も、わずかばかり気になっていた細かい入りや5曲目のアッチェレランドが揃ったものに修正されていたり(ただし、ちゃんとaccel.している)、楽しむことが出来つつ、骨太に聴くことの出来る演奏になっていました。名演により磨きがかかり、スキのない演奏に。快演、そして、この曲が東混の新しい愛唱歌たることをアピールするに十分なものがありました。それこそ、2ステのような曲で磨かれてゆく、細かい演技的表現も光りました。今聞いているのが、作品集所収の合唱団OMPによる件の音源ですが、ああいう、細かい表現の歌い分けは、やはり、東混、そしてヤマカズ先生ならではなのかなぁという思いがあります。そして、相変わらずヤマカズ先生は終曲で楽しく跳ねていました。そう、これは、そういう気分でやっていく曲なのです笑
もう一度聞きたい、と思いつつ、26日発売CDには収録されていません。残念。とてもとても残念。今度お財布の様子見ながら大谷盤を買おう。

4ステ前には信長先生を客席から招いてプレトーク。信長先生、毎度お得意なことに、客席にしっかり紛れていました。そんな、一般人然としていなくても……そっちの方が落ち着くのかしら←
四連(の打ち上げ)で会っていた際には打ち解けるという程の機会は得ず、震災後、NHK(2011)の委嘱作「風をください」の初演を通し、信長作品を取り扱い、今回の作品へ。「はじめて「しっかり」信長作品に向き合うことになった」とは山田和樹先生。「合唱団が同じで指揮者が違うというのは初めての経験。楽しみ」とは信長先生。それぞれの挑戦になる今回の初演でした。「東混というと複雑な曲が出来上がる事が多いが」との山田先生の問いかけに、「複雑にしようという欲もあったが、今回は、八月のまつりのプログラムに合わせてちゃんと収まる作品を書いた」と答えた信長先生でした。さて、作品や、如何に笑

第4ステージ
信長貴富(2014)「混声合唱とピアノのためのエレジー『歌と石ころの転がる先に』」(和合亮一)〈2014年委嘱作大阪初演〉
これぞ、東混で聞きたかった信長サウンド!特に後半は、信長和声の信長らしさが十分に聞ける素晴らしいものでした。「涙が泣いている」という言葉の応酬に象徴的な、苦悩の滲む前半部、そして、「涙を拭きながら……夜明けの始発を 待とう」という決意の後半部。音楽界隈だと新実徳英「つぶてソング」としてはじめ紹介された、和合亮一さんの震災後の多くの『詩の礫』から、象徴的な言葉を抜粋しつつ、詩の世界を音像の風景として描写する、最近の信長先生の得意技。ライナーノーツに「非被災者たる自分を含む「私たち」に厳しく突きつける作品を書こうと息巻いていた」とあるように、ピアノから、合唱から、時に絶唱的なモチーフから、その断片がグサグサと突き刺さってきます。しかし、「福島をふるさととする人たちを悲しませない作品にしたい」、その思いから来る、力強く立ち上がる「ふるさとは夕暮れ」のモチーフ。逡巡する思いが、立ち上がり、そしてまたもとの風景へ収束していく。作中にも出てくる、新地駅の、行き先のなくなった歪んだレールに、日本の未来を投影したというこの作品。震災直後和合さんが眺めたこの風景も、信長先生が現地に赴いた際には、レールは片付けられていたとのこと。もしかしたら、この作品の静寂への収束は、3年の時の隔絶をも包含しているのかもしれません。とても深く、美しい作品です。
さて、演奏面ですが、東混作品としては難易度は決して高くないですが、最近の信長作品の音数の多さを感じることが出来ました。これをいいことと捉えるか悪いことと捉えるかは、作曲技術論なのでここでは差し置くとして、少し、音の多さを処理しきれているか、特に中間部に疑問の残る点こそありましたが、前半のヘテロフォニーの展開の繊細さと、終盤の盛り上がりは、一度は聞いてみたかった「東混の信長」です。ヤマカズ先生もはじめて扱う作品ながら、十分曲を把握し、いつもどおり、要所を抑えたシンプルかつアツい指揮で魅せてくれました。そして何より、斎木先生のピアノでこの曲を聞けてよかった!最初の突き刺さるピアノなくして、この曲の世界に私達を惹きつけることはなかったと思わされるほど。
そんなわけで、
答:これは、確かに名曲名演だが、十分に複雑な作品だぞ……?
「アマチュアでもぜひ」と、プレトークで両氏。ぜひその程、楽譜(出版されたら……されるでしょう!)でご確認ください笑
……あ、委嘱会員になれば、楽譜を手に入れることは出来るのか……←

・アンコール
三善晃「夕焼小焼」(草川信/中村雨紅/文部省唱歌)〈『唱歌の四季』より〉
もう、定番ですね。初演だとどうしても反応しづらいお客さんでも、反応上々です。特に、中間部、バリトン・セカンドテナーの隆起からの盛り上げ方は、東混、そしてヤマカズ先生ならではです。2台ピアノ版での録音を聞いていたこともあり、是非生で聞いてみたかった作品。本当に、聞けてよかった。出だしの女声 tutti から、一本の針が通ったように、はっとさせられるハーモニーです。

・まとめ
大阪への音楽監督披露公演ということで、プログラムの被り的には、もしや、自分はお呼びではなかったかしら、などと思ったり思わなかったりしましたが、否、それぞれの曲へのアプローチの違い、そして、それ以上に、学校公演の披露演奏や、何より、信長貴富大阪初演に触れられたのが、何よりよかった!
初演作、さながら、東混が信長作品に邂逅したということが何より大きいような気がしています。もっとも、以前に1作品再演があったのですが、それにしても、アマチュアでの人気に比べ、東混にとって信長作品はとても縁遠いものだったような印象があります。そんな中、ついに、東混が信長作品を初演するという事実は、あらゆる意味でセンセーショナルな出来事でした。信長作品の評価が一定した、とも言えますし、東混が新しい音の世界に出会ったということも出来る今回の「ルネッサンス」、素晴らしい相性に迎えられているような気がします。東混としても、信長先生としても、今後の活動に展開が十分期待できる内容でした。そして、(仮に演奏が至難だとしても笑)『歌と石ころの転がる先に』は、今後多く再演され、広められていくべき作品のような気がします。
公演としては、2ステも重要。学校公演の内実が日々明らかになっていく(笑)中、東混中もっとも公演数の多い演奏ではこのような曲が演奏されているのか、ということ、そして、歌い慣れも含めたレベルの高さを触れることが出来るのは、もはやオジサンとなってしまった筆者をはじめとする聴衆(巻き込んでゴメンナサイw)にとっても、いい刺激になります。否、小学生・中学生が羨ましい。これだけの質の高い合唱を聞いて育つことが出来るというのは、日本にとって財産ですし、何より幸せなことです。これからも是非、続けていって欲しい事業だと再認識しました。如何でしょうか、全国の先生方、学校に東混を呼ぶとか、あるいは、公演で使われる曲も入ったCDとか笑

・終演後は
CD購入者限定・山田和樹サイン会!名古屋以来2回目のミーハーになってきました。先行販売のCD、盤面が白く、サインにはおあつらえ向きでした笑 何やら、とあるお知り合いの方に色々弄っていただきましたが、まぁ、なんと畏れ多いことやら……苦笑

・メシーコール
肉を食べようと思い家を出た。昼はラーメンだった。夜はなぜか……
財布の中身が軽くなった!←

あと、なぜか、こんなド早朝に更新している!w