おおよそだいたい、合唱のこと。

ようこそお越し頂きました。
主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
やたら細かいレビューからノリツッコミまで、現状、合唱好きな方の暇つぶしには最適です。
ゆっくりしていってね!!!

2015年1月27日火曜日

【第22回日本男声合唱協会演奏会じゃむか関西2015】

2015年1月25日(日) 於 伊丹市立文化会館いたみホール
主幹:OSAKA MEN’S CHORUS

それでも僕はマーガリン。
元ネタ

さて、合唱演奏会シーズンですが、学生団ではなく、今日はお呼ばれした演奏会に行ってまいりました。演奏会だけでもなかったんですけどね……笑 呼んでいただいた方にはいつもお世話になっております。
男声合唱って、学生文化的側面と切っても切れない側面が強いのですが、他方で、そのOBを中心として、一般合唱団でも多くの男声合唱団がコンクール、あるいは合唱文化全体を引っ張ってきました。関西や名古屋にある学生合唱団の連盟や、特定の指揮者のもとに集まる晋友会合唱団のような組織を除けば、特に一般合唱団で、団体が互いにより合って情報交換・技術交流を図るイベントはとても少ないように思います。そんな中、1971年設立のこの「日本男声合唱協会」通称・JAMCAは団体・個人で100会員を数える非常に大規模な組織を形成して今も活動を続けています。設立の主体になったのが東京リーダーターフェル1925や東海メールクワィアーが中心となっていることもあり、段々と高齢化の波も避けられないでいる団体ではありますが、いまや上の2団をはじめ、全国から実績と実力を兼ね備えた団が揃う、まさに、名前負けしない活動を続けています。第1回演奏会は1973年。最初は決して多くない団体数での活動だったところ、その後、時代の流れから活動の幅を増やしていき、今のような規模になったとのことです。
毎回毎回、その会の趣旨に違うことなく、情報交換どころか情報を作り出す(!?)ような活動を行っている、このJAMCA。今回も、情報を作りに行くようなプログラムです。

・ホールについて
もうこのホールばっかでさぁ……笑 実は来週も伊丹詣での予定ですよ……笑
とはいえ、伊丹で1日仕事でなかったのは今回がはじめてかも。ゆっくり起きて、キャンドゥで持って来忘れたハンカチを買い、ブランチを商店街のお蕎麦屋でいただき、ヒロコーヒーでコーヒーブレイクまでしっかりしてから行きました。実をいうと結構狭い街ですが、それが逆に、兵庫の下町らしさを凝縮しているようで、いい街だなぁと思います。
実を言うと、ちょうど20年前の被害が非常にデカかった場所でもあります。阪急伊丹駅は、阪急の路線網の中で数少ない、壊滅的ダメージを受けた駅で、駅舎が全壊、その影響で、折り返し運転で急場をしのぎ、再建する際には線形を弄って、駅の場所を変えて再開に至った程です。その影響で、実は駅のある場所と中心街がややズレた位置にあります。西北以東(ゲシュタルト崩壊)で、阪神大震災の爪痕を感じることの出来る、新たなる歴史をも物語る土地でもあります。
そんな中、今も静かに、大阪のベッドタウン・自動車幹線の役割を静かに担う清酒の都。静かな場所に響かせるという意味では、関西の合唱のメッカとなるには、ちょうどいい場所かもしれません。――否、やたら男声合唱に好まれるのは、やはり酒のお陰なのだろうか笑

・パンフレット
さすが、長年社会を支えてきた層の仕事なだけはあります。祝辞に並ぶのは、JAMCA鈴木順・会長、主幹団体OSAKA MEN’S CHORUSの“Captain”有田仁一さんだけにとどまらず、藤原保幸・伊丹市長、清原浩斗・関西合唱連盟理事長の挨拶まで掲載されています。うーん、渉外力。それに、広告面の当て方・売り方が巧み。構成上空くページ・スペースには躊躇なく全面広告・枠広告を当て、読む順番に合わせてコマーシャルのように広告を展開していくさまは、雑誌と見ても違わない。広告も、近所の居酒屋や各団広告にとどまらず、大手企業の広告も、BtoCもBtoBもひっくるめて、幅広く取り扱われています。この営業力。演奏会前から圧倒されました。コネの力とひっくるめるにしても、これだけの広告を集めるのは大変なもの。それだけのことをやってのけるだけの経験と、あと意地の力に脱帽です。内容も充実。今も読んでて飽きません。書いている今でも、かなり単純な誤植を見つけてしまったりもして……笑

会場は満席に近いお客様でいっぱい。オンステだけで総勢500人近くいらっしゃいますから、当たり前と言えば当たり前……?今回は、2階席で聞いてみました。元々奥行きがそんなにないホールなので、2階席でも結構近く見えます。しかし、それにしても、持ち回りのジョイントにしたって、ステージに乗っている人が平均2~300人の環境にいるところ、圧倒されないだけ、2階席でよかったかな……?笑
進行に出てこられた司会の方。やたらアナウンスが上手いなぁと感心していたら、元NHKアナウンサーとのこと。そら上手いわけだ。強勢の使い方が非常に上手なんですよね。くどくなくて、自然に話される。僕の中ではアレも演奏の一部のようなものでした笑 そんなアナウンスでの前説。JAMCAの経緯と、この演奏会について。なんと個人会員はアメリカにも籍を持つ人がいるとか。そして、ターフェルやMEN’S CHORUSで交流があったという、台湾からの観客ゲストも紹介されました。どうも、統一した合唱団組織を作る上で参考にしたいという研修旅行も兼ねていたとのことでした。

第1ステージ
鈴木憲夫・男声合唱組曲『永久二(トコシナニ)』
指揮:樋本英一
ピアノ;佐藤季里、小介川淳子

早速、メインディッシュクラスに重い曲の登場です笑 実を言うと、この曲を生で聴くのは初めてです。
アナウンスに絡めて。以前あるアナウンス講習会で「年齢が上がって経験が増せば、アナウンスはある程度自然にうまくなる」というものがありました。何やら身も蓋もないような言い方にも聞こえますが、この曲のテーマ、神話的・言霊的な世界観を壮大するに最も必要な経験を、JAMCAは十分に備えているように感じました。壮年(にさしかかりつつある人たち)の合唱団というのは、それだけで様々な評価を受けます。齢により音域が変わるというのもひとつ、安定しているというのもまたひとつ、よくあるのは、発声の流行の変遷で、ビブラートが目立って支持されなくなってきたことでしょうか。しかし、そういったあらゆる要素が、抽象的ながら、世界観を表現する上で必要な要素であったように感じます。確かに、ビブラートがハモりを邪魔していたり、高音がもっと出てほしいと思ったり、弱音がうまく発声的に支持しきれていないように感じたり、あるいはリハーサルが多かったとはいえ、大人数のジョイントだけに、縦が揃いきっていないようにも感じられたり、挙げれば恐らくいくらでも挙げられるだろうとは思います。しかし、私たちは流行りだけで音楽を表現しているわけではない。不朽の名作、その号を永久ニ我が物たらしめる、その堂々たる主題!不朽は、不朽であるからして、不朽です。その意味で、合唱団は、使える要素を使いきっているアンサンブルでしたし、トップテナーはよく張っていた。それぞれの要素が曲と合わさり、凄みとなって現出してきたのは、それだけで、感動そのものであったように感じます。なにより、この曲が好きだ笑 1ステだけでもお腹いっぱいでした。

アンコール:さだまさし(arr.鈴木憲夫)「秋桜」
曰く、「ステージ曲と違い、みんなが「知ってる!」と顔を上げてくれるような曲」とのこと。なるほど、確かに、この曲なら多くの方が知っていそうです。永久ニ、よりは――?笑

第2ステージ
黒人霊歌
Ev’ry Time I Feel The Spirit(arr. William Levi Dawson)
Were You There?(arr. Henry Thacker Burleigh)
Little Innocent Lamb(arr. Marshall Bartholomew)
Swing Low, Sweet Chariot(arr. Leonard de Paur)
Set Down, Servant!(arr. Robert Shaw)
指揮:広瀬康夫

いつかは聞いてみたかった、広瀬先生のスピリチュアルズ!関学の新時代を引っ張る存在で、日本におけるバーバーショップの第一線に立ち続けている存在でもあります。あと、曲の終わりの切りかたが最高にカッコイイです、いつも笑
拍手も鳴り止まぬ間に演奏開始。そして、あっという間に5曲圧巻の演奏でした。軽快に駆けていく中にも、唯駆けていくだけでなく、それぞれの言葉やメロディに、韻を踏むような細かい表現が多く用意されています。それらの表現をきっちりと表現していきながら、それでいて推進力が衰えることがないのは、各団員の楽曲理解と、相互表現、そして指揮者の牽引力の成せる業といったところではないでしょうか。純粋なエンタメって、言葉に出来ないんですよね。だって、それそのものが魅力ですもの。ただただ楽しい。十分な自律性、そして言葉で表しきれない充実のtuttiが聞かせてくれました。ちなみに、個人的に好きな曲は、3曲目。

アンコール:Ride the Chariot
「知ってる人は一緒に歌ってください」と、突然オーディエンス(数名)をステージに上げて1曲!ザ・愛唱曲といった名曲。先ほどまでのアンサンブルそのままに、軽くバチッと決めてくれました。

第3ステージ
三善晃(編曲)・男声合唱とピアノのための『唱歌の四季』(鈴木輝昭・補作)
指揮:安井直人
ピアノ:岡本佐紀子、村崎愛

各種の情報によると、この男声版編曲は、JAMCA演奏会のために原稿が散財していたものが整理され、鈴木輝昭先生の補作により、演奏会に先立って出版されました。
この曲と言ったら大人数合唱ですが(意見には個人差があります)、今回の合唱は、嘗ての阪混を余裕で凌ぐ大人数!400人いたとかなんとか。ここまでの人数で男声合唱だと、冗談抜きで、地鳴りするんですね――wしかし、この人数でしっかりアンサンブルしているというのだから、本当に凄いものだと思います。その良さがよく分かる点として、オブリガードが挙げられるでしょうか。オブリガードで味のある、雰囲気の出た、アンサンブルを壊さず良さを伸ばす音が出るためには、まるでアドリブのように洗練された、それでいて心の底から歌い切る音がないことには成り立ちません。オブリガードがいいということは、編曲の仕上がりもさながら、合唱団が歌っていることの何よりの証拠でもあります。ハモリという意味も含めたら、完成度が非常に高いステージでもありました。中でも注目なのは、「夕焼小焼」の解釈でもあります。叙情的に曲が持ち上がり、1番2番を演奏したら、次に出てくる主題は童謡のようにしっかりと歌い込み、そしてそのまま、最後にふくらませていく、というもの。なんか気付いたらボリュームが大きくなっている曲、というイメージの強かったこの曲において、ボリュームの上げ方が非常に叙情的で美しい解釈だったように思います。

アンコール:中村茂隆(編曲)「ふるさと」
しかし、これは、数の暴力というにはふさわしくない、これは、数の圧倒、まさにその言葉が似合うように感じます。

インタミ25分。長い!
オケは開演前にはステージ上に既にいました。それも、楽器を温めているだけなんですが、普通舞台裏でやっていることが多いような気がします。場所がなかったのかな……笑
演奏の前に、JAMCAの鈴木会長インタビュー。「ほとんどのジョイントが一過性の集まりなのにたいいて、私たちは半年の練習期間を重ねてきた。情報交換をしながら練習を通してお互い高め合っていく過程が大事である。今後、2年後は青森・八戸での演奏会を予定。現在100会員を数えているが、今後団体・個人ともに会員を更に伸ばしていきたい。日本中の男声人が楽しんで、全国で演奏会が開けるといい。」(抄)
曲紹介、そして、チューニング。今回のオケは、大音大のホール付きオケという立ち位置でしたが、大学だけあったか、ピッチコントロールが非常に素晴らしい団でした。某オケの復活物語が話題になったこともありましたが、その時も、最初は徹底的にピッチを合わせるところからリハーサルをはじめたとか。

第4ステージ
Wagner・“Das Liebesmahl der Apostel WWV.69”(使徒の愛餐)
12の使徒:出口武、満尾拓人、萬田一樹、木村克哉、永井雄治、奥村祐一、間瀬泰得、沢田英一、橋本恒己、福田孝祝、藤川雄紀、中西純三
天上の合唱:猪名川グリークラブ。(cond.飯沼京子)
指揮:船曳圭一郎
管弦楽:ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団

めったに演奏されることのない秘曲。日本での初演も1980年の阪大男声と非常に新しく、他にワグネルや東西四連といった数少ない演奏機会を持つのみです。ジリジリと男声合唱が使徒と共に歌い上げた後、天上からの合唱(2階席下手側で演奏)を聞き、それがティンパニを筆頭にオーケストラの協奏を導き出し、華々しく、初演時、かのリストをして驚嘆させるほどの圧倒的なサウンドを聞かせて曲が〆られます。この日、日本初演メンバーもオンステしてのステージとなりました。
総論的に言えば、若干締りにかける演奏だったかもしれません。特に、使徒のアンサンブルは、プロとアマチュアの混成だったということだったのもネガティブファクタだったか、若干バラけて聞こえました。そして、世界初演は1200人(!)の合唱だったとのこと、ともすると、200人程度と想定される今回のアンサンブルですら少なく感じてしまいます。特にオーケストラが入ってからは、音は整理されたものの、ボリュームが追いつけなかった。しかし、それにしても、主題のユニゾンの迫力は圧巻です。30分程で1曲歌い続ける曲。とてつもない体力を求められる曲ですが、だからこそ、アカペラの部分でもっと聞かせたかった!非常に鬼畜な要求にも見えますが、これまでがよかったからこその要求でもあります。
いなぐり。の天上の合唱は、よく訓練されていて素晴らしかった!上の響きに豊かで、縦がよく揃った、機動的なサウンドです。以前バッカスで聞いた音そのままに、感動させてくれました。しかし、これを十分聴くなら、1階席で聞いておくべきだった!笑

アンコールはなし。そのまま終演となりました。

・まとめ
とても充実した演奏会でした。プログラムも、名作発掘が4点それも新発掘もあり秘曲もありと、奇しくもまとまりのあるものになっていたように思います。なにより、単独演奏会と違って、全てがジョイントの合唱団での構成なので、言ってみればこの演奏会は、数そのものが聴衆にとっては魅力にもなっているように思います。これだけの人が男声合唱を愛してやまず、これだけの人が伊丹に集い、これだけの人が名演を繰り広げる、それだけで、この演奏会には存在価値がある。しかも、それを22回も繰り返しているというのだから、それこそ、脱帽そのものです。しかし、この演奏会に本当に求められているのは、奏者も聴衆も、これを持ち帰ること。これを持ち帰って、これからの演奏活動に生かすこと。是非参考にさせていただきたいと思いますし、この文章が、よもや参考になるならば、レビュアー冥利に尽きるものです。

・のみーこーる
この後、伊丹シティホテルで行われたレセプションにお呼ばれして行ってきました!ええ、もちろん、合唱人の演奏会は歌って終わりなんてもんじゃありません(意見には個人差がありますが、男声合唱人の間では一致します)。「Ein Prosit」の合唱で始まり、伊丹市の条例に基づき「日本酒で」乾杯、伊丹市議会議員の方や今日の指揮者をはじめとする錚々たるメンバーの挨拶、果ては団員の会社の方も含め(!?)挨拶あり、談笑あり、そしてもちろん愛唱曲の合唱もあり、あっという間の2時間でした(歯の裏にへばりついたタルタルソースは歯を磨くまで香り続けていましたが……)。2次会を挟み、用事を済まそうと徹夜していたら、まぁ、そんなものが出来るはずもなく……用事はなんとかなったものの、古参の男声合唱人によるイベント、最後まで気が抜けたものじゃありません笑
ちなみに、もう2,3個やることがあるのですが、時間が時間だけに、ひとまずこの原稿を上げて今回は……短くしようと思ったものが長くなっているのは、そのやることのうちのひとつのためでもあります。とはいえ、Top Gearみながらダラダラ書いていたのは、さすがに時間かかりすぎの最大の要因だったか……笑

2015年1月18日日曜日

【大阪大学合唱団TEMPEST第33回定期演奏会「あなたと」】

2015年1月18日(日) 箕面市立メイプルホール

・第-1ステージ
大江戸温泉物語箕面温泉スパーガーデン
阪急箕面線箕面駅から歩いて5分のところにあります。エレベーターを使って山の中腹にある箕面観光ホテルまで行きます。そこに併設されている温泉が、一般でも入ることが出来るんですねぇ。泉質等細かいことは置いておきますが、ホールも自慢の、スベスベ美肌の湯。とろみを感じる程に濃い泉質が、身体をあっためつつ、お肌をキレイにしてくれます。そう、密度が濃いからか、ほんとに気持よく温まるんですねぇ。床が滑るくらいのヌルヌルです。サウナ好きなわたべは、風呂→サウナ→水風呂のサイクルを3回くらい回さないと元取れた気がしないのです。とはいえ税込み2,200円位とちょっとじゃないくらい値段は高め。入る価値はありますが、これが大江戸温泉物語の資本力的な側面なのでしょうか……とはいえ、有馬よりも気軽に温泉が楽しめるという意味ではお勧めですよ。ちょうど入り終わってから3~4時間経って自転車で帰ってきた今ですが、それでも、身体ぽっかぽか。沿道には、かの有名なもみじ天ぷら売ってます。結局まだ食べる勇気がない笑 そういえば箕面温泉のすぐ近くにある箕面大滝すらまだ見に行っていない!今日の午前中はちょっと生活リズムガッタガタでしたし、気になるラーメン屋もあるし(なぜか今日は行かなかった)、今度また行かないとな……!

さて、温泉でまったりした後は、そこから歩いて15分くらいでたどり着く、箕面警察署の隣へ。はい、本日は、大阪大学の合唱団の中で唯一聞いたことなかった、テンペストの演奏会でした。この壮大な前振り笑

・大阪大学合唱団TEMPEST
さて、大阪大学男声合唱団はついにこの2年間で定演伺えそうにないのですが(申し訳ないです!浅井先生の中勘助とか超聞きたい……)、音を聞いたことない、という意味では、この団が4つある阪大の合唱団の中で最後ということになりました。ちょっと上の世代の方ですと、大阪外国語大学の合唱団としてテンペストを記憶されている方も多いと思います。大阪外大と阪大の合併に伴い、大阪大学の合唱団となりました。しかし、大阪外大のサークルは、文化会・体育会ともに、合併の憂き目にあったり公認が得られなかったりで、どこも苦労したそうです。そんな中、テンペストも、阪大公認となって今年でやっと2年。団員の上回生、ちょうど非公認時代の世代が少なめなのをみると、当時の苦労が忍ばれます。現在団員数が大体25人といったところの様子。
しかし、この「阪大」TEMPEST、外大時代からのアイデンティティもよく引き継いでいるようです。拠点は今も、外大のあった箕面キャンパス。そして何より特徴なのが、その選曲。旧外大、つまり外国語学部が主体となるだけあって、世界各国の珍しい言語、珍しい合唱曲をたくさん持ってきます。さすが、本業から引き出しを無理やり増やしにかかるという、まさにこれこそ強みを生かす比較優位というべきか笑 そんなわけで、阪大云々差し置いても、ぜひとも聞いてみたい合唱団でした。

・ホールについて
昨年度末に何回か行っていますね。例の、ホールピアノがベーゼンドルファーのホールです。そういえば、Nコンの来年の課題曲が「メイプルシロップ」なんでしたっけ。
しかし、公営ホールのくせしてメチャメチャ優秀なんですよ、このホール。時間を掛けた残響がっていうことでもないんですが、逆に、ソリッドな音をソリッドなまま十分響かせてくれている。けっして押し付け感ある音でもなく、上品な音。口笛も良く響く笑 いやぁ、宝塚ホールも好きですけど、このホール、自分の中でもイチニを争う大好きなホールになりそう。席も座り心地いいですしね。問題は、やはり、ホワイエが小さいところか。ちなみに、電車アクセスは、大阪駅から40分あれば十分たどり着ける距離かと。「意外と」近いホールです。多分、吹田メイシアター行く感じでたどり着けます故。あと、乗換駅である石橋駅の構内で案外時間が潰せます笑

ところで、開演前チラシを見ていると、なにやら不思議なものを発見。何を隠そう「結月の恵方巻」のチラシ……海鮮七福巻が1,290円で予約受付中……当日はサラダ巻きも一本500円で販売予定……電話または店頭にて予約受付中とのこと……団員の子のバイト先のノルマかな……(戦慄)ちなみに、今年の恵方は西南西だそうですよ笑

ちなみに、「そういえば」組曲での演奏はなし。個人的にはフロイント以来でしょうか。それも、ポップス編曲というよりは、ガチガチの合唱曲を揃えて4ステージ。それでもしっかりとテーマを持ってプログラムを組んでくる点、緻密さが伝わる素晴らしいプログラムです。なおプログラムの団員紹介は、まるで男声合唱団のようにぶっ飛んだものだった模様笑

・第0ステージ
後藤丹・大阪大学合唱団TEMPEST団歌「世界の果てに生まれた詩」(藤見知世)

外大から阪大になる時に、新しく書き下ろされたのでしょうか。とても現代的で爽やかな曲調の光る曲でした。いい団歌と一緒に過ごしてますなぁ。ハーモニーの揃いが良く、ユニゾンもうじゃい。平板に流れていったのが惜しいところです。また、ソプラノが声圧欲しいところであまり返ってこず、逆にテナーは、メロディになると最高にいい響きなのですが、逆にハーモニーに入ると多声部を食ってしまいがち。バランスの問題、でもそこが難しいところでもあります。また、この演奏から、少し声のピッチが落ちていくような感じが怖いと感じることもありました。

入退場がとてもスムーズです。各合唱団、フェルトだの歩き方だので消音対策が優先される向きがありますが、個人的には、ゴトゴト音鳴らしてでもいいから、さくさく動いてくれたほうがよっぽど印象いいなぁという思いがあります。

第1ステージ・言葉を超えるとき
間宮芳生「合唱のためのコンポジション第1番」より〈II〉
千原英喜「よびかわし」
指揮:山本尚義

まずは、オープニング的に2曲。まさに師弟の曲をひとつずつ。あらゆる言葉を大事にして歌っている合唱団にして、第1ステージ目は、囃子的な超言語コミュニケーションから入ります。なんという皮肉笑
両曲とも、聞き入ることの出来る美しい演奏でした。特に、この2人の和声的な美学を十分に表現し切れていたのが印象的。特に縦に美しいステージでした。しかし、他方で、もっと俗になってもいいのでは、というのが、この2曲を通しての共通の思い。間宮ならかなり特徴的に囃子が入っている点から考えてみても、その部分でもっと引っ掛けることで、和声がより輝きますし、千原にしたら、意図的に仕掛けないと、「単に」和声の綺麗な曲、というふうになって終わってしまうと思います。気になる点として、外声のボリューム不足が挙げられます。特に千原は、フォルテがフォルテらしく鳴るとより千原らしい力強さが出てくるのではないでしょうか。
そして全体を通しての課題となっていた点としてひとつ。概ね、とても緊張感の高い素晴らしいアンサンブルを聴かせてくれていたのですが、だからこそ逆に、ほんの一瞬、緊張感の崩れる部分がある、っていうのが、まま感じられたのが、とても惜しいところでもあります。例えば、間宮でいったら、「バラン」っていう発声をするところ。これからも、折にふれて出てくるポイントです。
しかし、いい演奏でした。アンコンなりなんなりコンクールに持っていけば結構いい成績を貰えそうな気がします。

また、譜面の扱いですが、特に指示がなくても、先生が礼をした時には楽譜を閉じて正対しているのがスマートなように思います。指揮者が礼をしている時に楽譜を開いているのは、少し戴けない。

第2ステージ・World Weddings Wandering
Rundolf de Beer「Fiela」(南アフリカ民謡)
Veljo Tormis「Pilkelaulmine」(ヴォート地方の伝承詩)
James E.Moore Jr.「An Irish Blessing」(アイルランド伝承詩)
Béla Bartók「Wedding Song from Poniky」(スロヴァキア・ポニキー地方民謡)
Veljo Tormis「Sööge, langud!」(キーヌ島の伝承詩)
指揮;山本幸奈(学生)
ピアノ:高嶋志(学生)

これぞテンペストの真骨頂というべきか。学指揮のステージにして、この怒濤の外国曲ステージ。本当に、どこから引っ張ってきたのかさっぱりわからない曲達で、ウェディングソング特集です。トルミスという名前に謎の安心感を覚えるw「Fiela」の、掃除をする花嫁を模した動き付きのアンサンブルから始まり、最後まで色々な言語で世界の結婚の諸相を歌いました。その言語について、テンペストのTwitterで解説がなされていたのですが、特にヴォート語は、もはや話者がテンペストの団員よりも少ない程なんだとか……さらに、「Fiela」のツワナ語は文字を持たない言語とのこと、なんていういろんな情報が回ってきていて、とても勉強になりましたm(_ _)m笑
全体的に和声押し目の曲の中で、しっかり歌いこなす実力を持っている合唱団でした。そう、間宮・千原の和音も聞いていて非常に気持ちよかったですからね。ただ、このステージでも、やはり、1ステのように、表現の仕方にもっと工夫があると楽しめるステージだったように思います。特に、繰り返しの「Fiela」、決して嬉しい結婚とはいえない「Poniky」の母への恨み、さらにはお祭り感覚で騒ぎ立てる「Sööge」など、全体が明白な標題に支えられた音楽による構成ですから、その点、もっと戯曲的に歌ってしまっても良かったように思います。
いやしかし、特にヴォート語の曲なんかがそうですが、歌詞ページ見てみると、とんでもない発音の曲が続いてるんですね。これどうやって発音するの、っていうふうには中々ならないものですが、今回ばかりはもう、アルファベットで書いてあろうとなんだろうと、ついてけないものはついてけない笑 そんな曲達を、さも母語のように涼しい顔して歌っている。いやはや、別に阪大のサークルなだけあって、みんながみんな外国語学部なわけでもないけれど、こればかりは、さすがと脱帽せざるを得ない。積み重ねの力ってありますからね、言語って。

インタミ15分。このホールはホワイエが狭い(またか)
あと、周りが団体さんだったために、ちょいと肩身が狭かったというか笑
あ、そうそう、この演奏会、サブパンフの歌詩翻訳がほんとうに素晴らしかったです。とくに、後に出てくるKen-Pの曲。これは、あてつけでもなく、さすがですわ。情緒性を崩さずに素晴らしい意訳をされている様子。

第3ステージ・企画ステージ「R」
Matthew Harris「It Was a Lover and His Lass」(William Shakespeare)
坂井泉水(arr.今村康)「負けないで」(織田哲郎)
木下牧子「夢みたものは……」(立原道造)
指揮:武岡拓弥(学生)
ピアノ:山本幸奈(学生)

ああ、なんか久々!ガッツリ演出付きの、アトラクションステージというべきか演出ステージというべきか企画ステージというべきか、いい加減統一名称をくれ!w いやね、そら、ネタはそれっぽいところから取ってきてるんですけど、登場人物のところに「ロミオ」「ジュリエット」と「ハムレット」、「リア王」「コーディリア」「サオー」など、明らかに同居してはならない人々が列記されている点、パンフレットのあらすじの末尾に「※このあらすじは、実在の人物、団体、本編とは全く関係ありません。」などと書いてある点、これはもう、あらゆるものを察するしかない方向。松尾プロダクション企画。てかなんだその製作会社(単なる団内サークルのようです)。
全体の骨になる伏線が(こんなんでも)意外と壮大で、その点、深いテーマを持ちつつ(?)結局中身はいわゆる「演出ステージ」。ところどころに入るネタに抱腹絶倒w とにかくネタだらけでしたね笑 個人的には、途中、決闘シーンで入る歌舞伎調の演技が好きでした笑 ところで、今年は一貫して、しいたけを虐げる年なのでしょうか
さて、曲。シェークスピア詩の曲、すごく好きです。繰り返しに対して、推進力が段々落ちていっているようなきがするのが気になる。「負けないで」、メロディを歌う曲になると、どうしてもソプラノの弱さが際立ってしまうか。メロディをもっとしっかり歌いたかった。夢みたものは、は、もう愛唱曲ですからね。安心して聞いていられます。
あと、劇全体として、舞台展開や歌へのつなぎ方を、ぶつ切りでなく、もっとシームレスに、伏線作りながら自然につなげると良かったように思います。ちょっとぶつ切り感や、舞台展開に時間かかっている感を露骨に感じてしまう場面がありました。ネタが面白いだけに、ちょっと残念。次に期待。

さらにここでインタミ10分。そりゃ、あれだけ着込んだら、着替えなきゃいけませんからね笑

第4ステージ・遠まわりする思い―恋の風景、いくつかの―
佐藤賢太郎「Love in the Sky」(April Amante)
György Ligeti「Kállai kettõs―カッローの対舞―」(ハンガリー民謡)
Ivan Yohan「Take, O Take Those Lips Away」(William Shakespeare)
後藤丹「幸福」(山村暮鳥)
石黒晶「まやしぇこ」(波照間島の伝承詩)
田中達也「はかる」(田口犬男)
指揮:山本尚義

さて、2ステに続いて(?)恋にまつわる曲達。なにやら山本先生、恋にまつわる歌が大好きなようで(?)度々恋に加えて適当なテーマをくっつけてアラカルトを組んでいる様子。ちなみに今回は「点景」だそう。その点に対してのコンテクストとしての「遠回り」ということの様子。その「遠回り」なコンテクストの中に置かれた恋の風景を「点」として、少し俯瞰的に捉えている曲達、ということ。深い。深すぎてどうまとめようか随分悩んだ←
第1ステージで書いたような、時折無神経な音が出てしまうという欠点が割と露骨には出たのですが、それは、つまり、その他の音がすべて綿密に研究されていることの裏返しにほかならないように思います。いやらしくない緊張感のなかに確立されたアンサンブルの質はとても高いのですが、他方で、とても気持ちよく聞ける、まさに、テンペストの1年間研究してきたサウンドというものを魅せつけられた思いです。
Ken-Pは、やや内声の音の甘さが出てしまったか。また、高音に上がるとき、少し無理してのぼりにいっている印象。あくまで、印象。「Kállai」は、後半の機動性の高い部分が素晴らしい。それでいて、さすが、言葉もちゃんと飛んでくるのが印象的。ハンガリー語を結構得意としているようです。今日イチの演奏は、この曲だったのかも。「Take」最後の和音の魅力にかけて、もっと表現できたはず。特にソプラノ。この熱情的な思いの歌詩、あえて言おう、力 is Power。「幸福」この曲好き。非常に好き。『祝婚のうた』の1曲だそう。つまるところこれはウェディングソングではないのか← リフレインや和声に対して、表現的な意味合いにおける必然性を感じきれなかったのがとても残念。「まやしぇこ」2013年東混初演以来の再演だそう。石黒先生が会場にいらっしゃいました。この団の実力の良い所が如何なく出ていた用に思います。各パートの自律性と、発音に対する配慮。ベースの「ヨーイヨホホイ」は絶品。静謐さと、確かな前進。多く再演されたい。「はかる」東京で絶世の人気を誇る(?)あひる属性の人の曲← 終わりにさわやかな曲です。四声それぞれの主旋律がもっと立つとよかったところ。tuttiはキレイでしたが、途中、力尽きてしまったか?
しかし、全体、とても楽しく聴くことが出来ました。色々いうところはありましたが、力強く、そしてしっかりとハモる音の上に立脚しているアンサンブルでしたので、まずなにより、聞いていてとても気持ちよかった!整ったアンサンブルだからこそ、細かいことが気になるというところ。これを乗り越えたら、この団は、多分凄いことになる。

山本先生挨拶。まさに、この言葉が象徴的。「印象的なのは、団員間が今後の方向性についてのディスカッションをよくやっていたこと。目に見える成果がすぐ出ない活動はしんどいが、それを笑顔も以ってやっていたのをみるのはとても頼もしかった。」

・アンコール
林明日香「小さきもの」(OB編曲)
指揮:山本尚義
どうもこの団、アンコールでは毎年変わり種を持ってくるそうで(以前はまどマギ主題歌の実績もあった模様)、今年は、ポケモン映画(ジラーチ)の主題歌だそう。すんません、ポケモン映画はエンテイで時代がとまってまして……笑
アルペジオの積み方が素晴らしい!まさに、この団の得意技を魅せつけられました。気持よく響く、そして美しいメロディとハーモニー。いやぁ、いい曲ですね、これ笑

アンダーソン(arr.松下耕?)「タイプライター」
指揮:山本幸奈
例のアレです(ざっくり)。なにげに、この団の楽器の多さを見せつけられる曲でした。何より、楽しいですね、こういうスキャットだらけの曲って。どの団員もしっかり歌っているからこそ、こういう曲が歌えるってもんですよ。

団長挨拶。「これからも、「あなたと」ともに、歩いていけたら」と、きっちりタイトルフラグ回収してくれました笑
団員一礼して、会場お開き。このホールは、ロビコが出来ないホールですからね。

・まとめ
全体としてとても美しいアンサンブルでした。だからこそ、もっと出来るアンサンブルというものがあります。公式通りの演奏が出来るというのは、それだけで素晴らしいことなのですが、逆に、そういうことが出来る団だからこそ、是非もう一歩踏み出してみて欲しいところ!そうすることで見えてくる世界に、無限の可能性を感じてやみません。
そして更に、この団の最大の魅力とも言える、この独特のプログラム、是非これからも守ってほしいものです。学生団はおろか、一般団でも、ここまで尖った選曲をするところは多くないように思います。派閥的なものだったり、人気的なものに左右されずに、確固として、自分たちのやりたい音楽を追求している様子が伝わってくる良質なプログラム。一時期は冷遇されながら、しっかり歴史を紡いできた、その歴史の素晴らしさをも理解させられる選曲。そして、それらの曲をしっかり読み込んで、演奏に落としていく、演奏からも伝わるストイックな姿勢。是非、これからも、しっかり守っていってください。いや、もちろん、人気曲やってくれてもそれはそれでいいんですけどね笑、でも、勉強になりました。とても。

・メシーコール
「ラーメン まこと屋 箕面店」
財布がすっからかんになってきましたけど、ラーメン食べたいという欲求は抑えられませんでした笑
「とろ〜り半熟煮玉子牛醤ラーメン」を注文。替え玉1回。要は豚骨ラーメンを牛骨でやっちゃいました、っていうものなんですが、凄まじく口当たりがクリーミーでした。臭みもなく、美味しいのですが、他方、入っている油が若干雑味っぽく感じたり、(目の前の厨房で入れていた)大量の白い粉が、恐らく、味をボヤケたものにしてしまっているような気がしてなりません。普段出汁とって汁物作ってる僕みたいな人間には、化調のうまみって、バレますからね?笑 いや、とはいえ、美味しかったです。ちなみに、明日から替え玉無料だって。金返せ!

2015年1月11日日曜日

【近畿大学文化会グリークラブ第52回定期演奏会】

2015年1月11日(日) 於 豊中市立アクア文化ホール

皆様、あけましておめでとうございます。
昨年、当ブログにおきましては、皆様からの1万を数えるPVを頂戴することができました。他のブログ運営者の皆様からしましたら、なんだその程度、といった数でしょうが、それでも、更新数の少ない、そしてなんとも物好きなテーマをなんとも物好きな文体で書き連ねております私にとりましては、燦然と誇るべき第一歩であると自負しております。素人の譫言のような批評ながら、時にご拝読いただき、時に温かいコメントを戴き、時にご期待まで戴きましたこと、格別のご高配を賜り、誠にありがとうございました。本年は、私に取りましても又色々と変化のある年、与えられた場所で、与えられたことを必死に取り組んでいく中に、このブログがあり続けたらいいなと考えております。何卒、宜しくご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。当日、筆者敬白

……って、終わっちゃアカンがな笑

さて、今日は、ちょっと2014年を忘年できそうなテンションではなかった、近グリさんの定期演奏会でした。色々あったんですよ、ええ……外様ですけれども、少しばかり巻き込まれていました笑

・近畿大学合唱事情
 さて、以前の大学合唱コンペティションの記事をご覧になった方は、お気づきかもしれません。「近畿大学混声合唱団」という新しい団が、昨年近畿大学に誕生しました。初出場ながら輝かしい成績を収めたことは、皆様の記憶にも新しいところかと思います。また、事情通の方は、ちょうど今年度はじめに「近大合唱サークル・アプリコール」という団体が立ち上がり、いずれ近グリと混声合唱を、というような話をしていたことを覚えていらっしゃる方もいるかと思います。実は今、近畿大学の合唱界隈、変革の時を迎えつつあるのです。書けるだけ書いときます。
 前述のとおり、今年度始め、「近大合唱サークル・アプリコール」という女声合唱の団体が立ち上がり、のちに、近大グリーの下部組織に編入という形で、近畿大学公認サークルとなりました。これまでグリーしかなく、それも規模縮小に歯止めのかからない近大にとって、とうとう女声・混声の歌う場所ができたのは、それだけで十分な変革でした。しかし、その後、近大グリーに新しく入った団員が仲違いする形で、新しい合唱団「近畿大学混声合唱団」を設立し、独立して活動を進めることになりました。つまり、「近大グリー(近グリ)」と「アプリコール(アプリコ)」、「近大混声(近混)」が群雄割拠しているという状況になり、現在に至っています。近グリは、皆様知るところ、演奏会も今回で52回を数える伝統を持つ団、そしてその近グリの兄妹組織としてのアプリコール、それに対して、近混も、第1回大学合唱コンペで見事グランプリを(実はいわくつきなんですけど)勝ち取るなど、今までにない活況を、否当事者からしたらタダ事でない混迷を見せているのでした。外様からしたら、名大も早大もそういう仲違いの中からそれぞれ巨大な組織に発展してきてるんだしえーやんなんて思っちゃいますけど、そういう問題でもないですね、はい笑←

そんな中、近グリにとっても、いわば生き残りをかけた勝負の演奏会。それでも、出鼻をくじくイベントが色々あったのが今日の演奏会。ある意味、一大スペクタクルです。

・ホールについて
 実は以前来ていますね。昨年度の豊中市合唱祭を聞きに行ったのがはじめてでした。もっとも、あの時は、休憩なしのぶっ続け、明転すらなかったので、開演前やインタミ時の明るいホールというのはむしろ新鮮味すらありました笑
 天井がとても高く、いわゆる残響は無いホールながら、しっかりした音をかっちり届けてくれる良ホール。客席中央で聞いていたというのもあるでしょうか、それにしても、「柵前」と呼べるようなS席相当の位置が大変ステージと近いところにあるホールです。ちなみに、ステージ前で鳴らしたほうがよく鳴ります。つまりそういうことです(何)。それこそ、ザ・市民ホールの一角ですが、隣にギャラリー機能も存分に備えた1,300人規模の大ホールと200人規模の小ホールを備えた芸術ホールを2016年会館を目標に建設中。日本センチュリー交響楽団の本拠地、そして市内には北川昇先生を輩出したことでも知られる大阪音楽大学を擁する豊中市としては、目下一大プロジェクトでもあります。しかし、そんな中、アクア文化ホールが今も貴重なのは、小さい合唱団が演奏会を開けるような、アクアのような300-400人規模のホールが大阪市内だと本当に少ないということ。結局、今回も、東大阪市という、いわゆるミナミ側にある近畿大学の団にして、演奏会は豊中で開いている。エブノ泉の森ホール(大体500人くらい)など、郊外にいけばないことはないのですが、他方、名古屋のように各区に300-400人規模の文化小劇場があるという環境(しかも今度また増える)は本当に恵まれているなぁと思う昨今。それでも、今日のお客様は3割程度。こういう演奏会、もちろん名古屋でもいっぱいみてきましたし、関西でもちらほらありました。

団員8名。しかし残念ながら団員の一人(Bas.)がインフルエンザにつき急遽出演キャンセル。7名でのアンサンブル。なお Top Ten. が一人なのはデフォな模様←
ちなみに、団内、特に技術勢の流行はスクフェスだそうです。いまいちスクフェスとラブライブ!の違いがわかっていない老害ですんません←

・第0ステージ
樋口昌道(arr.浅井修造)「近畿大学 校歌」(世耕弘一)
オープニングで校歌を歌うことが出来るというのは、一つ公認サークルの特権のようなものがあります。なにより、楽譜が門外不出な面がありますからね。
なによりこのステージ刮目すべきは、ユニゾンの美しさ。かねがねユニゾンのの美しい団はアンサンブルがうまい団だと申し上げ続けている私としたら、それだけで大満足です。お世辞抜きで。他方で、開母音で上がる音程が少し低く鳴ったか。また、縦にハモると、内声に乱れも。それでも、最低限はめるところはちゃんとはめてくる点、関西で生き抜いてきただけはあります。なにより、発声がしっかりしているだけに、とても好印象でした。

ここで、今日のメインステージを指揮する根津先生が登場。マイクを持って何をアナウンスするのかとおもいきや、
・上記の通り団員8名のところ、1人欠席
・さらに1人高熱を押してオンステ
・以上を鑑みて、第1ステージは根津先生、さらにボイストレーナーの山本欽也先生、OB1名(本ブログの読者様笑)がヘルプでオンステ
・山本先生は別の会場での本番から駆けつけているなうですので、到着次第1ステ始めます
とのご案内。こんなこと、特に最後なんて、観客としてもはじめてなので、明転の間に思わずツイートしましたよ←
無事山本先生到着され、1ステ開演。それだけでハラハラさせられましたわ……。

第1ステージ
新実徳英・男声合唱とピアノのための『花に寄せて』(星野富弘)
指揮・高島恒一
ピアノ・平岡めぐみ

最近だと「明日へ続く道」(千原英喜)の作品で有名な向きもある、星野富弘作詩の合唱作品。でもやはり、星野富弘詩の合唱曲といったらこれって感じがしますね。定番中の定番です。実は何かと、この独特の「合唱っぽさ」が嫌いな時期もありましたが、「たんぽぽ」歌って以来は、自分の身の中にも沁みてきたような感じがあります。歌ってなんぼ、ってわけでもないですけどね。
特に、人が実質二人ほど欠けている低声周りで、ヘルプの力を感じてしまうアンサンブルだったように感じます。とはいえ、セカンドのキャラが立っていたことと、全体としてちゃんと声がハマっていたのは好印象なアンサンブルでした。意外と機能的な音を鳴らそうとしていたのが印象的。細かいところを挙げてみるとキリがないっちゃそうなのですが、例えば、3曲目のセカンドのメロディはそれでも埋もれてしまっていたこと、ダイナミックレンジがどうしてもアンサンブルの制約上狭くなってしまっていたこと、また、対位的な部分のズレが気になってしまう演奏でした。とはいえ、課題は課題、よくうたい切れていましたし、最後のハーモニーはよく揃えました。ピアノ付きの曲を10人以下でやることの大変さを思うと、若干甘目ながら、評価に値する演奏だったと評価できます。何より、トップが、プロである山本先生一人の声でなかったのが……!?

第2ステージ
木下牧子・無伴奏男声合唱組曲『いつからか野に立って』(高見順)

指揮者抜きでのアンサンブルスタイル。曰く「神は言った「今のお前たちに指揮者なぞいらない」と。/神の言葉を信じてしまった僕たちは、指揮者なしで演奏をすることになった。/今宵、神から授かった音楽を披露する。じっくりとごらんあれ。」……煽るなぁ笑
神から授かった、かどうかはよくわからないですがびっくりするくらいに上手なアンサンブルでした。下二声に声量的な面で不足感があったものの、表現の仕方や曲への理解、そして全声の掛け合いがとても素晴らしいものでした。だからこそ、普通の演奏として聞いている面も。「イ」で声が詰まりすぎてしまったり、曲の終止に対するコンセンサスの付け方はもっと厳密に決めておいてもいいのではないかなという点が気になってしまったのもありましたが、それ以上に、フレーズの美しさと、上に挙げたようなアンサンブルの妙で聴かせる演奏でした。アンサンブル形式というのも功を奏し、全員でしっかり音楽をつくり上げるというのがいい方向に働いていたように思います。もちろん、満点とは言えない部分も音程含め若干あるのですが、それ以上に、この団の方向性を示すに十分な演奏でした。こういうふうに人数が少ないと、アンサンブルのあり方すら見失って、歌うことに自発性がなくなってしまうことも少なからずあるのですが、少なくともこの曲に関しては、既に、少人数で存続の危機にすらあるような状態というのは面影も見せず、必然と、このメンバーでアンサンブルをすることを求められている一つの合唱団の姿であったように思います。何度でもいう。本当に良かった。
そしてトップ!やはり君の声はよく張っていた!一人ながらナイスリードボーカル!

インタミ10分。1ステオンステされた例のOBの方とお話をしていました。お疲れ様でした……笑

第3ステージ
アラカルトステージ 佐藤賢太郎の作品から
「雪の思い出」
「かさなる声に」
「僕が歌う理由」
「ネコのおくりもの」
指揮・根津昌彦
ピアノ・鹿島有紀子

根津先生のホームグラウンドのひとつということで。根津先生の指揮、わかりやすくて的確で、一度歌ってみたいなぁと思わせる指揮です。実際、大先生の薫陶を受けておられる。そのところも、いい影響を与えているのでしょうなぁ。この団、指導者にも恵まれているんですな、たぶん。
さて、今や空前の売れっ子っぷりな Ken-P。今日は声部を2, 3に絞った4曲を披露。「雪の思い出」は、いわゆる「雪やこんこ」のアレンジ。シンコペーションリズムでポップに楽しく。「かさなる声に」「僕が歌う理由」では、伸びやかな明るい、染み入るメロディで歌への思いを歌い、そして、「ネコのおくりもの」では、ネコが誕生日のお祝いの仕方について議題を重ねるかわいい曲。いわゆる「歌に対する歌」、言い方変えればメタな曲が多いのが、Ken-P の曲群の特徴にも思います。
メロディ系の曲というだけあって、上2パートに声量的にもコンディション的にも強みのあるこの団の特徴が光りました。しかし一方で、高声と低声いずれにも、音が時折ずれることがあったのがここでは残念。メロディを聞かせる曲では、こういうところでのズレがどうしても大きくなってきます。気持ちよく歌うという今の基本は外すことなく、聴き合うという基本は、アンサンブル以外でも外すことなく、しっかりと聞き合って合わせるというのを今一度しっかり徹底されるといいかと思います。しかし、しっかりとメロディと歌詩を歌っていること、そして、何より、この曲群に、近グリの「今」を思い返さずにはいられませんでした。歌うということの楽しさ、部長の田中先生曰く「集中することが厳しい状況」(パンフレット)。でも、この演奏は、今日、ここまでしてきた演奏は、演奏できる喜びを心の底から喜んでいるんだということが伝わってくる快演だったかと思います。

無事終演、花束贈呈。花束贈呈する人がひな壇に残る団員より多いというのは、はじめてみた光景だったように思います。

アンコール
「ネコのおくりもの」アンコールver.
指揮:根津昌彦
ピアノ:鹿島有紀子
同じ曲。でも、振り付き演出つき。根津先生の腰のあたりから何か変なものが出ているなぁと思ったら……尻尾!?それだけでなく、ラブライバー団員たちが先生ふくめみんな猫耳を被って「おたんじょびってニャンですか?」と歌う!某界隈歓喜!(マテ
間違いなく、語弊を恐れずに、精一杯頑張っているのが伝わってきた!笑
でも、この曲、こういうふうにして歌う曲なんだなぁというのをしっかりと示してくれました。みんな、楽しそうなんですよね。本当、知ってるんだけれども、シーズンの苦しさどこ行ったのよ、っていうくらいに。「歌う楽しさ」って、言葉にするとすごく陳腐に聞こえますけれども、この演奏聞けばわかります。歌う楽しさ。歌の楽しさ。同じ列で聞いていた女の子が、目にハンカチ抑えていたいたのが印象的でした。

奥華子「ガーネット」
指揮:藤井将博
ピアノ:濱本達夢
「時をかける少女」の曲。時かけ、何種類かあるけど、察して←
懐かしいなぁ、というと、何でしょうか、個人的な話ですが、僕の中では、嘗て学指揮の本番で振った数少ない曲のひとつです。アレンジこそ違いましたが、この曲、演奏会の終わりでやると、歌詞の意味がそのまんま自分たちのことになって、じんわり来るんです。
もっと、バリトンがメロディをメロディとして歌っていけると良かったかなぁと思いました。あと、指揮者が例のテナー君なので、パート分けの都合もあり、少しばかり、ボリューム不足を感じたのも事実。
しかし、僕の見ていた限り、ピアノ弾いていたの、高熱出してたって子なんですけど、トリルも丁寧にばっちりと決めてくる。すごいなぁと思いました。そこはピアニスト。指が覚えている。尚僕はピアノは弾けません←

団長挨拶。いい挨拶でした。
「今日の演奏会が出来たのは周りに助けられたおかげ」という一言。きっとそれだけが全てではないよ。クサいこといえば、君たちの頑張りによって、この団はまた1年伝統を伸ばすことが出来た。それが、何よりの、周囲の誇りでもあるんです。きっと。……クサいな←

エンディング(ストーム)
和田光司(千葉偉功・詞曲)「Butter-Fly」
デジモンの例の曲。カラオケでやると盛り上がりますね……いかん!歳がバレる!(もうバレてる)誰か、2ステの選曲をしたTMRくん(なぜ伏せた)がサイリウム持っていましたが、眩しいですわ、うん←
またしてもピアニストの強烈なアタックよりはじまり(頑張りすぎや!w)、残りの6人これはほとんどカラオケである笑卒団生二人、2番のAメロSoliでやるの羨ましいぞw
まぁ、先程とは打って変わって、文字通り楽しそうに「歌い散らかして(ある人の新年会でのひとこと)」いったのが印象的でした。みてて楽しかったし、お客さんは自然に手拍子で応えるし、もはやカラオケだわこれはw

ロビーにおける卒団生挨拶、そして、「ロビーコールは、ないんです。」という宣言の中、周りの人を巻き込んで上回生を胴上げして閉幕していくのでした。アットホームを地で行く演奏会笑

・まとめ
 割合、政治的思惑で行ったというのは否定出来ない(最近こういうの多いな……来週は考える笑)のですが、それ以上に、2ステの鮮烈なイメージが今も耳に残っています。8人が7人に減るという絶望的なコンディションの中でも、しっかり歌い切るどころか、聴かせるアンサンブルを組み立ててくれていた。いい意味で、これで8人万全の状態でオンステできたら、と悔やまれるくらいです。
 パンフレットを見ていると、なにやら、今年は厳しい一年だったとか、これまでにない危機だ、とか、厳しい言葉が並んでいました。確かに、現状分析としてその結果に至るのは一見間違いではないのですが、他方で、一つ、重要なことが見落とされているような気がしてなりません。皆さんには、こんなに素晴らしいアンサンブルをするポテンシャルがある。もちろん、これから4回生が抜けて、また恐らく日本一クラスで厳しい新歓を乗り越えていく必要があります。でも、皆さんの新歓における最大の武器は、これまで培ってきたアンサンブルだというのを絶対に忘れないようにすべきです。このアンサンブルは、少なくとも近大でならどこにも負けないんです。これから、日本随一の名演をすることができるかもしれない。その希望を、しっかり胸に刻んで、これからも努力していってください。わするるな、あの校歌のユニゾン!そして2ステのアンサンブル!

・メシ―コール
とか言う名の、大好きなラーメン屋「一福」本店行ってきましたっていうご報告です。相変わらずうまかった。ちょっと脂身が増えてきているのが心配。単純に、あそこの豚骨は、油があると邪魔なんですわ。なんか矛盾してるみたいな言い方だけど。あと、スタンプ特典のそぼろメシ旨かった。
そういえば、空港近くの人気店「みつか坊主」蛍池店が火事になってたそうですね。とうとう行けずにこの地を離れることになってしまいそうだ。悲しい。梅田に食べに行こうかな……でもその前に食べなきゃいけないラーメンをかなり取りこぼしている気がする。悔しい。