おおよそだいたい、合唱のこと。

ようこそお越し頂きました。
主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
やたら細かいレビューからノリツッコミまで、現状、合唱好きな方の暇つぶしには最適です。
ゆっくりしていってね!!!

2023年2月26日日曜日

【あいち混声合唱団 第6回演奏会】

<団創立10周年>

2023年2月26日(日)於 瑞穂文化小劇場


 どもども!おひさです!

気がつけば、マスク着用が一部を除いてお願いベースでもなくなり、いよいよ、アフターコロナの生活様態に向かおうというところとなってきました。となると、いよいよ、合唱人も黙っていられません(文字通り!)。これまで以上に、歌そのものが求められる環境になってこようというところ、つまるところナニが言いたいかというと、

このブログも、いよいよ更新頻度を上げていかないと見捨てられる!!

……え、もう見捨てられてる?そんなぁ……確かに、ことし一番の注目記事は「しらかわホール合唱祭」事前調査の周知だけどさ笑

そんなわけで、しらかわホール合唱祭のビラ込みついでに(言い方!)、演奏会にも伺わせていただきました。そうです、愛知にも「あいこん」はあるんです!

かれこれ6回の演奏会を数える同団、創団から数えて10周年だそうです。もうコロナ関係なく、10年でしぼんでしまった合唱団というのも多く見てきたので、その点、まず2桁活動されただけでご立派です。

ところで、ワタシ、チラシ見て、大いなる勘違いしてたんですね。なにかって、左側に「歴代曲ステージ」、右側に「メインステージ」とある。さしづめ、2ステージ制かなと思っていたんです。ミニコンサートかな、と。まぁコロナ対策が云々言っててもまだたいへんな感染症だしな、と。

ところがどっこい。

充実の4ステージ構成。残りの2ステどっから来た笑

いやぁ、これで入場無料ですかぁ。お金とっちゃってもいいんじゃないっすか!笑


・ホールについて

もう、このホールのこと、何度書きましたっけ。今日、ビラ込みでは車で伺ったところ、その後車を置いて、公共交通機関で再訪。それが功を奏しまして、隣で開催されていたスポーツイベントの影響もあってか、併設図書館も閉館に向かう中にあって、なんと駐車場は満車。って、否、駐車場はホールと図書館のものであって、スポーツイベントの駐車はだめですからね!?(実際、ビラ込み時にはユニホーム姿も確認できていたのが、いやはやなんとも)

このホール、ホント、ホワイエが狭いこと以外は非常に優秀なホールでして、もっと評価されてもいいと思うんですよね。とにかく響きは、これからしらかわホールがなくなってしまって、名古屋でクラシックを鳴らせる300席以上のホールが貴重になってくる中にあって、熱田文小や中川文小に並ぶ、クラシック向けの名ホールだと考えています。とはいえ、このホール、来年から改修工事に入るそう。もうそんなに経ったの……?

ところでこのホール、来るときに注意されたいのは、時間をつぶす場所。新瑞橋まで行けば色々なお店がありますが、チェーンの喫茶店は少ない印象があります。新瑞橋のイオンも、サンマルクカフェが気付いたら閉店していまして、ますます居場所不足に拍車をかけている印象です。もっとも、そういうときは新店開発というのもまた一興ですけどね。是非に情報お待ちしております。ちなみにワタシ、最近スタバのモバイルオーダーはじめまして、このレビュー書こうと思って検索したものの、そのスタバ空白地帯っぷりにしばらく絶句してました笑 結局、コメダ(本日2回目の入店)で書いております笑


30人程度。全員マスク着用でしたが、まず間違いなく、それは関係なかったなと思います。


そうそう、今日、なんとあまりにもフラッと来すぎたためか、ノートとペンを両方忘れるという事態に陥っていたため、レビューが主として記憶に頼ったものとなっています(いつもはレビューのためにガチガチにメモしてます)。とはいえ、こまめに入っていた休憩の間に、ノートの代わりに持っていた(?)ノートパソコンを取り出してメモしていたので、実はたいして量は変わりないという噂も……笑


あと1点。今日の演奏会、アットホームな雰囲気で、子供連れも多く、たまににぎやかな声も入っていて、とても楽しかったです。否、そこまではいいんです。子どもたちとっても静かに聞いていたと思うし(ウチの子だったら間違いなく、歌ってる途中に脈絡なく「アンパンマンのマーチ」をリクエストして勝手に歌い出す)。今日、一部のオトナな方たちが写真を撮るとか、録画をするとか、そういうのがとても気になりました。明白に禁止行為とは謳っていなかったものの(アナウンスで言ってたかな?)、それにしたって、スマホのシャッター音とか、録画時の画面の明かりとか、それだけで非常に気が散るのに、オフィシャルとも見えない人が横並びで録画するとか、あるいは入退場時の比較的静かなときにパシャパシャ鳴るだとか、そういったことは、そもそも演奏会慣れ以前の問題かと思います。表方が気付いたタイミングで、最低限、影アナなどで対処すべきだったように思います。

あと、今日オフィシャルの記録を撮っていた方の、スチルについては客席ではサイレントシャッターにしていただきたかったところ。これは、団としてちゃんとリクエストしておいたほうがいいと思いました。ざっと見た感じ、あの形状からしてα6000シリーズ、α6000を除けば、サイレントシャッターを積んでいる機材のようなので。


まぁともあれ、団長さんの陽気なアナウンスでスタートです笑 コインパーキング代を請求したら払ってくれたらしいですが、請求する人いたのかな……爆


指揮:永井佑汰、松井透*

ピアノ:村上由紀(客演・第1ステージを除く)


第1ステージ アンサンブルステージ

高井達雄(arr.信長貴富)「鉄腕アトム」(谷川俊太郎)*

宮沢和史(arr.信長貴富)「島唄」*

中島みゆき(arr. 信長貴富)「麦の唄」

上田真樹「花と画家」(谷川俊太郎)

信長貴富「木」(谷川俊太郎)


最初出てきた1つ目の音が、弱音ながら充実した和声で、まずもってびっくり。それだけで、来た価値があるなと実感させられました。

全体として課題があるとすれば、内声と外声の連絡といったところでしょうか。しばしば「聞き合い」と呼ばれるところですが、いまひとつ、リズムが揃わなかったり、和声が微妙にずれていたり、声質がずれていたりといったところで、首をかしげてしまう場面がいくつかあったのは否定できません。「アトム」の2番アタマのベースの裏とか、「麦」の鍵盤ハーモニカソロのために指揮が外れた部分とか、率直に、割とハラハラさせられました。

でも、それを凌駕するほどに、しっかり書き起こしておきたいのは、その、表現や気持ちを伝えてやろうという気持ち。往々にして、技術を伴わずにそういうことをやると、空回りして、独りよがりになりがちなんですが、これ、本当にいい意味で、気持ちだけで歌いきってしまう。理屈抜きにこういう事ができてしまう合唱団って、本当に珍しくて、これまで見たことないくらいに、気持ちが音とハマってました。なんだろう、理屈じゃ説明がつかない表現、言語化できない何か(ブロガーなのに)、刮目させられました。


インタミ10分。


第2ステージ ジブリステージ*

久石譲(arr.寺嶋陸也)「君をのせて」(宮崎駿)

久石譲(arr.白石雅樹)「いのちの名前」(覚和歌子)

加藤登紀子(arr.倉知竜也)「時には昔の話を」

Bill Danoff, Taffy Nivert and John Denver(arr.倉知竜也)「カントリー・ロード」(鈴木麻実子(宮崎駿補作))


ジブリ4曲をひとつなぎにメドレーで。原曲も決して長いわけではない曲をひとつなぎにするということで、より短く感じる、文字通りの「アラカルト」ステージでした。

さて、そんなステージ、この団としてはある意味最も得意とする領域なわけでして、それはもう非常にノリノリで歌っていたわけですが、一点、非常に気になるのが、16分音符の処理。否、別に長さが間違っていたわけではないものの、ともすると、どうも、やたら短かったような気がしてならない。多分ですが、こういった16分音符でリズムを跳ねる曲たちは、各16分音符にテヌートがついているくらいの気持ちで歌ったほうがハマる気がしています。もっと有り体に言うなら、16分音符も気持ちよく歌いこむって感じでしょうか。

多分ワタシ、ジブリステージに出会うたびに同じこといっています。なんだろう、もっと、映画の雰囲気に酔ってしまったほうがいい音が鳴るのかもしれない。逆に。


5分の換気休憩。アナウンスなしで乗り切ってもよかったかも。


第3ステージ 歴代曲ステージ

千原英喜「はっか草」(野呂昶・混声合唱とピアノのための組曲『みやこわすれ』より)*

TAKUYA(arr.井上一平)「Over Drive」(YUKI)*

信長貴富「未来へ」(谷川俊太郎・混声合唱曲集『かなしみはあたらしい』より)

まつしたこう「ほらね、」(いとうけいし・『歌おうNIPPON』プロジェクト)


団員間投票の結果選ばれた、歴代の人気曲で構成。それぞれ、第5回、第4回、第2回、第1回(アンコール)演奏曲とのこと。沈黙の第3回……(マテ

指揮者のMCで繰り返していたところ、こういう親しみやすいが「大好き」ということで、大好き、という気持ちがよく出たステージでした。ある意味選曲自体も人気投票によるということを考えると、もしかしたら、このステージが一番仕上がってるんじゃないかしらと思うくらい。――もっとも、全部歌ったことのある団員もいることを考えれば、まぁ自然なことか。

何よりよかったのが「Over Drive」。この団の選曲自体を左右する肝といってもいいかもしれない。なにより、指揮者がカウント出始めたのもいいし、その後のノリ方もいい。もっといえば、これまでのステージで気になっていた各声部のズレだったり、短い音符の処理だったりというのが、全然気にならない。そう、この曲のノリ――グルーヴをよく表現できていたのだと思います。だとすると、この団がうまく合わせていくキモは、実は90sのノリにある!?(違)

ちなみに余談かつよく知られた話(!?)ですが、最後の曲は、現在に至るまで数少ない「伊東恵司」クレジットの詩であります。え、普段は?……そういえば、周知の事実となってからだいぶ経ちましたね……(遠い目)


Int 15min

「ピエールよしお」さんからの温かい祝電……ふふふ(乾いた笑い)


第4ステージ メインステージ

信長貴富・覚和歌子の詩による混声合唱曲集『等圧線』


そんなこんなで最後の4ステージ。これもまた、「親しみやすい」タイプの曲のひとつです。気がついたら、終曲はなんだか、結婚式の定番ソングになってきているような気がしています。

同曲、特にアタマの曲は比較的しっかりと歌わせに行くタイプの音作りをすることもあって、純粋に、合唱団の実力が出るところ。そんな中にあって、この団の「弱み」というのはどうしても浮き彫りになってきてしまう。特に気になったのが、1ステから少しずつ出ていた、難しい音域に丸裸の、いわゆる「生声」が、男声・女声関係なく出てくるのがとても気になります。どうしても、ハーモニーを構築する音で、そういう響きが混ざるとノイズとなってしまうことから、今後とも鍛錬を積まれたいところです。そう、まさにボイトレ、チカラがものをいう世界のような気がします。

でも、この団、前述のとおり、表現したいことに対する明確なイメージを団員同士が共有できているから、出てくる音というのにイヤな感じは全然ない。同曲にしても、基本的には「うた」がモノをいう曲だけあって、歌うべきところはしっかりと、てらいなくストレートに表現できているから、本当にすんなりと心のなかに落ちてきます。そういう点で、まっすぐな感情を表現する「リフレイン」を歌わせると、こういう団は本当に素直な美しさをみせてくれます。

そう、そして、この団、最後の和音がどの曲も本当にキレイなんです。曲の中間部で色々あったとしても、最後のスッと美しい和音が、しっかりと会場の残響とハマってくれる。これだけで、なんだか納得させられる。


アンコール

菅野よう子「花は咲く」(岩井俊二)


第1回から大事に歌い続けているという同曲。もとフェアウェル発祥の団ということで、思えば10年前は、歌が日本を元気づけようとしていた、そんな時期でした。コロナが明ける今こそ、そんな、当時の感覚が、また思い出されるといいなと心から願っています。


・まとめ

雰囲気もアットホームで、組曲を除けば1曲ずつに拍手がついて、そして、最後は全員いなくなるまで拍手が見送る、そんな、温かい演奏会でした。

でも思えば、こういう、「日常」を感じさせる演奏会が、もともと名古屋の合唱文化に根付いていたものだったような気がしています。これは、少なからぬ大阪の中小規模の演奏会を聞いていたときにあっても、なかなか感じ得なかったところでした。当たり前ですけれど、ステージというのはどこか距離がある存在で、ハレの日に間違いないその演奏は、「舞台」と「客席」の間を隔てることによって、いわば舞台の「特別感」を演出する一要素となっていた――それに対して、この演奏会をはじめとする、愛知県の一部合唱団の演奏会は、そんな「舞台」と「客席」の間を隔てるものを、意識的か無意識か取っ払おうとする傾向にありました。個人的に、そんな手垢のついた感覚を、必ずしも全肯定してはいなかったのですが、でも、あいち混声の、そんな、いい意味で手垢のついた演奏会を聞くにつけ、ああ、こういう感覚もアリなのかな、とか、むしろ、コロナ禍で我々が失っていた感覚って、こういうものかもしれないな、というふうにも思いました。

たぶん、これからも、一定の「対策」は取られていくのだと思います。でも、演奏会のライブ中継やオンラインチケットシステムや事前入場者登録、アンケートの電子化など、コロナが収まっても続いて行きそうな文化(主としてDXの急激な進行)も数多く生まれた一方で、あえて総括してしまえば、やはり、コロナは「奪っていった」ものが多かったように思えて仕方ないです。それこそ、言葉尻を捉えるようですが、「手垢がつく」なんて、唾棄されるもののひとつでしたからね(唾棄するほうがもっとダメか)。

これから、私たちは、多かれ少なかれ「密」を取り戻していくのだと思います。ライブハウスでモッシュをするのはもっと先かもしれないけど(危険なモッシュはこのまま未来永劫復活しなくていいけれども笑)、もしかしたら、私たちの目指す「密」は、意外と早く取り返せるかもしれない、そんな希望を、少しだけ抱かせてくれたような気がします。

アットホームな雰囲気に、幾ばくか水を指すようなこと言ってしまったかもしれません。とても楽しい演奏会でした。