おおよそだいたい、合唱のこと。

ようこそお越し頂きました。
主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
やたら細かいレビューからノリツッコミまで、現状、合唱好きな方の暇つぶしには最適です。
ゆっくりしていってね!!!

2018年10月14日日曜日

【合唱団天上花火 創団25周年記念第13回演奏会】

2018年10月14日(日)於 伊丹アイフォニックホール

定価ベースにして往復7,000円あまり、と聞けば、確かにちょっと高く思える。でも、高々片道3,500円程度。例えば名古屋から内海駅まで1,000円程度ですし、名古屋から豊橋まで1,500円程度。浜松まで2,000円程度かかる。もっと言えば、交通手段を考えれば、定価ベースでも、名古屋〜大阪間は1,900円まで落とすことができる(昼行高速バス早割利用)。
いやね。思うんですよ。
名古屋から見れば、大阪は安い。
そんなわけで、先週の広島に続いて、今週は大阪です。時間はかかれど、正直、広島と比べるでもなく、全然近いので、本当に気が楽なところ。移動の車内で読書するなり、こうやってレビュー書くなりすれば、せっかくの休日が〜となることもない。ちなみに、近鉄ローカル線乗り継ぎでした。定価ベースで、大阪までは2,400円。うむ、やはり安い。
否ーー嘘です。今日は伊丹なので、行き先は兵庫県です爆

さて、今回は、大阪にいるうちに行っておきたかった団の演奏会。天上花火という合唱団があって、なかなか意欲的なプログラムを組んで活動されていることは承知していたのですが、なかなかタイミングも合わず。活動期間の長い一方で、Ken-P への新曲委嘱の履歴もある、まさに、柔軟な活動が目を見張る、前々より期待をしてみていた団のひとつでした。
今回の演奏会、もともとずっと手帳に書いてあって、行こう行こうと思っていたものの、チケットはまぁ当日でいいかなと高をくくっていた一面も。そしたら、演奏会一週間前にして、公式FBがまさかの満席予告&残券僅少の告知。こりゃイカンと、大急ぎでチケットをとったのでした。結果、蓋を開けてみれば、見事満席。文字通りの満席。素晴らしい。否然し、この時代、座席にハンカチがたくさん引っ掛けてある光景なんて、なかなか見かけませんよ笑

・ホールについて

伊丹は伊丹でも、ちがう伊丹。まだ東リに魂を売る(違)ようなマネはしていないオリジナルな名前で頑張っているホールです笑 とはいえ、位置関係としては、ほぼお隣さんといってもいいくらい、いたみホールの近所にあります。若干JR寄りですが、こっちまで来てもまだ阪急側から歩いたほうが近い様子。すぐとなりにコミュニティFMがあります。近所と一体開発されたのか、基本的に真っ白な蔵の街伊丹にあって、ブラウンの外装が街にも溶け込んでいておしゃれです。
そう、そして、これもまた気になっていたんですよ。私、実はこのホールに大阪にいる間に来たことがなかった! いたみホールには4回も5回も行っていたのに笑 1,500人近い規模を有するいたみホールと違って、こちらのホールのキャパは500人程度。でも、これくらいの手近さ、手軽さが、ちょうど使いやすいこともあるんですよね。螺旋階段を登ってホールに入ると、札幌もびっくりの絶壁笑と木質仕上げのオシャレな内装が目に飛び込んできます。そう、円形タイプのシューボックスステージは、見るにオシャレなホール。天井に光る照明は頂点からホール全体を照らし、その周りを彩る楕円の組み合わせは、さながら花開いたよう。さらに、ステージ天井の意匠は葉っぱのように、スピーカーのような灰色のキューブも、丸みのある意匠の中にアクセントを加えて新鮮です。否、すごくいい。なんでこのホールでこれまで聴いてこなかったのかと後悔するレベルです。ほら、オプションのミラーボールだってあんなに低い位置にあるし……え、なんであんな低い場所にあるの? え?
で、響きの方ですが、ホールの大きさ相応に、室内楽がよくあいます。否、これがとても重要で、見栄を張っている感じも、音がならない感じも特にない。特に今日は満席だったので、残響という意味では非常に控え目な面もありましたが、ちょうどいい残響の音が、確かなボリューム感で返ってくる。シューボックスタイプでボリュームが返ってくるというのも、これまたなかなか新鮮なホールです。否然し、上述からして、芸術を楽しむための要素は確実に揃っている。いたみホールがちょっと上級な芸術を楽しむための場所だとするなら、アイフォニックホールは、ふらっと来てちょっと芸術を楽しむのにちょうどいい。ふらっと来るだけで、確かに音楽を楽しむことのできる、この安心感。
ちなみに、今日は公演中、客電が落ちることがありませんでした。ホールの特性上、舞台照明を作りづらいのかな、という風に見えたので、その影響もあるのかも。見た感じのイメージですが、全照にしても、舞台照明だけだとちょっと暗いかなって感じでした(客電上がっているおかげで、見てる分に困ることはありませんでした)。もっとも、公演が終わった直後、何かがミスって、一瞬客電がフェードして真っ暗になったので、特に客電が落とせないというわけでもないようです笑
ところで、このホールのベル、なんだか、いたみホールと対になっているような気がしてならないんですが……気のせい?笑

Opening: ジョン・ラター「ルック・アット・ザ・ワールド〜世界はたからもの〜」(ヘルビック貴子・日本語訳詞)
指揮:根津昌彦
ピアノ:鹿島有紀子

どうもこの合唱団、団員の子どもたち有志を「ジュニア」として活動しているようで、ジュニア若干名と、そのOG若干名も含めてのステージ。満席のお客さんと、下がりきらない客電が逆に助けとなって、雰囲気はさながらファミリーコンサートのよう。ジュニアだけで歌う部分は、もっと息をしっかりと声にできるといいですね。あとは、もっとイキイキと歌いたい。否、子供らしさを追求すると言うより、もう少し勢いつけて声にしたほうが、もっとメロディが動いただろうな、というところ。子どもたちにとっては、このホールも広かったでしょうから、もっと広々とホールを使った音作りをしてみてほしかった。でも、満席のお客さんの中で、よく頑張りました。
そして、そんな、まだちょっと頼りなげな子どもたちの歌声を、大人たちが寄り添って、包み込むような温かいオープニング……。
そう! 子どもたち、このステージの大人たちのように! 柔らかなアンサンブルでありながら、しっかりと音が鳴っているさま、長年愛唱していることもあって、実にお見事な音作りでした。しかも、しっかり鳴っていながら、響きは非常に高いところから鳴っている。その音色、うん、こんなにラターをおのがものとして歌いこなせる団、そうないですよ。ある程度平易で、言ってみりゃ誰でも歌える音だけど、ラターのつまんない演奏って、結構頻繁に見かけますから(失礼)。聴かせるの難しいんですよね、ラターって。良くも悪くも、簡単だから。シンプルなものを味をもって聴かせるには、充実したレガートなんだなぁと思い知らされました。いやはや、お見事。

そして、根津さんはよく喋るタイプの指揮者でした笑 関西こんな人ばっかやな笑
初めての演奏会もアイフォニックホールだったんですって。此度堂々の凱旋公演。

第1ステージ
森田花央里・混声合唱組曲『青い小径』(竹久夢二)
指揮:大坪真一郎
ピアノ:鹿島有紀子

森田先生をレッスンだけでなく、当日の客席にも呼んでの演奏。森田花央里の名を知らしめた朝日賞受賞作「鐘」を含むこの組曲は、森田音楽の導入という意味では、音響的にも、技術的にもとても意味のある作品となっています。今現在の先生のライフワークですからね、竹久夢二っていうのも。
そう、前のステージでも指摘したところなんです。「しっかりと鳴っている」。否、このステージでは、ちょっと狙いが外れてしまったようです。特に前半2曲、女声がメロディで音の勢いを絞ってしまっていたかな、というのが残念なところでした。確かに最初の部分は強く出るようなパートでもないのですが、だからといって、勢いを失ってしまっては、音量はともかく、メロディが推進力を失ってしまうので問題です。各メロディがある程度芯を以て鳴らないと、そのメロディ同士が絡んでも迫力不足になってしまいますし。でもだから、勢いを増す3曲目は、むしろちゃんと鳴っていたというのは、象徴的な出来事のような気もします。派手な音、ってわけでもないけど、もう少し華々しい音が鳴っていてもよかったように思います。もっと伸びのある音、といいますか。確かに透明な音が似合う曲で、ゴリゴリ鳴らすよりは、ちょっと引いた音作りのほうが似合うかな、と表面的には思わされる面もある。でも、この曲、なんならこの団のもとの音にしたって、もともととても透き通った音が鳴るし、そういう風に出来ている。だったら、奇を衒う必要なぞなくて、楽譜に書かれている音を、自分たちが提供できるベストな音響で響かせることが出来たなら、それで十分なのではないでしょうか。
でも、ここで特筆しておかなければならないことがーーこの団、テナーが抜群にうまい! テナーが刻み、オクターブで下から上昇音型を支え、ときにヴォカリーズのハーモニーを作り、女声に寄り添いメロディを作るーー高い響きと、無理をしていないながらもしっかりとホールを響かせる力強さ、アンサンブルを引き締めていて非常に素晴らしかったです。否、普段テナーなんてけちょんけちょんに言われてなんぼみたいな世界で生きている自分がいうんだから、間違いないですよ、これは笑

インタミ10分。

第2ステージ・Tenhana Entertainment(T.E.T.) vol.8〜ウタッテ25〜
サザンオールスターズ(arr.信長貴富)「みんなのうた」
嵐「HAPPINESS」
次郎丸智希・編曲「ザ・ベストテンメドレー」〈初演〉
Mr.Children(arr.石若雅弥)「ヒカリノアトリエ」
ゴダイゴ(arr.石若雅弥)「銀河鉄道999」
指揮:根津昌彦
ピアノ:鹿島有紀子

で、このステージ。パンフには、その段になったら、皆で立ってYMCAやってね!とか書いてあるんだけど、まさか……ねぇ笑 と思っていたら、ステージ上に団員たちが80年代風ファッションで登場して、その瞬間から客席の笑いをかっさらってるんだから、もうイヤな予感しかしない爆
いやね、さっきのステージからの引き続きで、ソプラノとかメロディ張ってるしもっと出したほうがーーとかいろいろ考えてたんですけど、なんかだんだんどうでも良くなってきた←「HAPPINESS」では早速踊り出すし笑 あれなんですか、関西では嵐ぐらい踊れないとポップスステージもやらせてもらえないんですか←
「ーー前のステージから、随分毛色が変わるもんですね!」とか、根津さんも赤いアクセントの入った真っ白なブーツカットとか履いて言ってるけど、もうなんか、変わりすぎでしょうよ、いろいろとw こんなに説得力のない説得力のある言葉初めて見たw
「あんまり(先生に)ライト当てないで!」(根津)→「ハレーションが……」(次郎丸)とか、編曲の次郎丸先生(スキンヘッド)を上げてもやってるし、もはやなんでも有りですね、このステージ笑 3曲目の初演は、根津さんがやりたい曲を順番適当にリストアップしたものを、次郎丸先生が「その順番のまま」編曲してしまったという逸品笑 とりあえず黒柳徹子さんがあz……根津アナウンサーとともに登場したところから、その後はベストテン世代の曲を、モノマネありダンスあり指揮者のパフォーマンスにピアニストの歌ソロありとなんでもありの大団円笑 件のYMCAが始まったと思ったら客席皆で拍手よりもYMCAしているもんんだからむしろそこで拍手が止まるというぶっ飛び具合爆 大盛り上がりのまま、ミスチルでアイスブレイクしたあとに始まったゴダイゴでは、ついにミラーボールが光りだす笑 最後にはもはや、さっきのステージよりも女声が良くなっていた気がする爆
「合唱を知らない人にも楽しんでもらえるように」(根津)ポップスステージを企画する団って少なくないけど、やったとしても、ポップス歌っときゃどうにかなるんでしょ? くらいに選曲だけでゴリ押すステージもまた少なくない。そんな中で、関西ってやっぱりすごくて、この団も例外ではないのは、結構な確率でガッツリ盛り上げようとステージ構成を考えているんですよね。だから、単なる余興みたいなステージにならずに、全力のエンタテインメントが完成するんですよね。いやはや、どこよりもぶっ飛んでいた。ある種、ドラフト並の感動だった。本当に見習いたい。
……そういえば、某安積黎明と違って、ミラーボールは回してましたけど、スモークは焚いてませんでしたね?←

インタミ15分。しかも何がすごいって、この次のステージで高田三郎の宗教音楽をやるっていうことだ爆 天に召された折には高田先生から譜面台か何か投げられても何ぞ不思議ではあるまい←

第3ステージ
高田三郎・混声合唱とピアノのための『イザヤの預言』
指揮:根津昌彦
ピアノ:大岡真紀子

いや、この曲はこの曲で、尋常ではない思いで演奏している由。だからこそ余計に、演奏前はギャップが……笑 
然し、演奏が始まれば、なんてことはない。本当にすごかった。別に、ギャップがどうとか、そういうのじゃない。本当に久々に、完成された高田音楽を堪能することが出来ました。お客さんも、先のステージとは打って変わって、水を打ったように静かです。しかも、その静寂の中に、確かに緊張感を感じる。それだけで素晴らしい時間であります。
否きっと、全国に点在するとされる、高田音楽の伝道者の皆様方に言わせたら、まだまだはるかな高みを目指すことのできる部分はあるのかもしれない。でも、高田音楽に必要とされている要素ーー子音や助詞の処理、デュナーミクの徹底という面については、非常に洗練されたものを聞くことが出来ました。その点、根津さんの師匠の一人は須賀先生、高田先生の教えを現代に繋いでいる貴重な生き字引からの(本当に!)厳しい教えを守ってこられたのだと心から思います。なにも、須賀先生のレッスンを受けたというだけで、こうなるわけではありますまい。
そう、アンサンブルに込められた思いなんです。その意味もあって、特に徹底していたのは、アンサンブルにおけるデュナーミクの部分でもあります。ときに力強く訴えかけ、ときに静かに祈りを捧げる。その緩急の付け方の、細部に渡る配慮、まさに、この曲に対する理解そのものが、よく現れていました。
途中で、内声がやや濁っている部分もあったような気もします。でも、全体をして、フレーズの伸び、あるいは、表現するべき対象に対する敬意に満ちた、素晴らしい演奏でした。その中でもさらに特筆しておきたいのは、終曲の和声! 始まりも終わりも、いい脱力といい緊張感、その塩梅の素晴らしさが音に乗り、ホールを目いっぱいに鳴らす充実した音が鳴っていました。メロディの美しい音列の中に寄り添う自然で豊かな和声ーー高田音楽の真骨頂は、この、心にすっと入り込んでくる自然な心の豊かさにあるのかもしれません。
あ、とはいえ、女声も含めてアンサンブルに力が戻っていたのは、もしかしてYMCA効果だったりするのかしら←

・アンコール
ジョン・ラター「主はあなたを恵みて守り」(ヘルビック貴子・日本語訳詞)
指揮:根津昌彦
ピアノ:大岡真紀子
森多花央里・編曲「ふるさと」(文部省唱歌)
指揮:大坪真一郎
ピアノ:鹿島有紀子

イザヤは比較的厳しく強い信仰に対する思いが描写された曲。とすると、まるでラターのこの曲は、そのアンサーソングのように、いわば救済となって観客のもとに降り立ちます。そして、私達の心をもふるさとに戻す森田編曲。でも確かに複雑に絡み合い、新鮮で途切れない和声の中にたゆたう旋律ーーラターがこの団の来し方だとすると、森田はこの団の行く末であるかのような。これからの25周年をも予感させる、美しい橋渡しとなる2曲でした。

ストームはなく、そのまま終演。階段が多くてちょっと狭いのが、このホールの玉に瑕、かも。混み合うと出るのが結構大変です。

・まとめ

全力、ですよ、全力。
何事にも、全力って大事だなと、折に触れて思わされました。第1ステージでは、全力で音を鳴らすことで解決できたかもしれない課題を提示され、第2ステージでは、全力のエンタテインメントが見せうる底力を思い知らされ、第3ステージでは、全力で曲を余すことなく表現することによって、高田音楽がこれ以上ないほどの魅力を以て鳴っていた。
演奏者をして、脱力ってよく言われるじゃないですか。ちゃんとした発声を、高く澄んだ音を出すためには、全身をよく脱力する必要があるって。脱力することで、音がよく響いて、きれいな音が鳴るようになるって。
なんも間違っちゃいないと思うんです。それ自体は。でも、その捉え方を、ときに私達は間違えているのかもしれない。
違うんです。やるなら全力で、なんです。私達は、全力で脱力しなきゃいけないんです。
もはや合唱に限らないかもしれない、常に100%を出すことがかっこ悪いというか、それだといわゆるバッファがないから、80%くらいの力でものに当たる必要がありますよ、みたいな風潮。まぁそれも一理あるとは思うんです。でも、同時に思うのは、最初からそんなこと考えてたら、80%の八掛けで64%しか出せないんじゃないの、って。
なにかのタイミングで、全力を出すタイミングを作るべきなんだと思います。自分の100%を知らないと、八掛けする余裕がどこにあるかだってわかる由もない。もしそれが、真の意味でコントロールできるっていうのなら、そりゃ、八掛けでもいいのかもしれないですけれども、でも、私達ってアマチュアですし。よほどの人間でないと、八掛けを探すのにも、全力を費やさなければいけないのではないでしょうか。
創団25周年をして、30余人いる団員の中核メンバーが文字通り中年揃いな中にあって、天花のステージは、文字通り全力を目掛けていたものでした。その泥臭さを、斜に構えて見ている若者も、今や多いのかもしれません。でも、そこに大いなる輝きを見出した若者は、確かにここにいます(もはやアラサーなのは否定しませんが笑)。どうぞ、自信を持って、これからも全力で突っ走っていってください。

2018年10月8日月曜日

【コーラス・どーなっつ Go on!】

2018年10月8日(月・祝)於 広島市安芸区民文化センターホール

参加団体(掲出順):
Chorsal《コールサル》(愛媛県)
Dios Anthos Choir(高知県)
OHISAMA NOTE(岡山県)
合唱団ぽっきり西条組(広島県)
島根大学混声合唱団(島根県)
就実大学・就実短期大学グリークラブ(岡山県)
徳島大学リーダークライス(徳島県)
広島大学合唱団(広島県)
広島大学東雲混声合唱団パストラール(広島県)
安田女子大学合唱研究会Vivid Nova(広島県)
山口大学混声合唱団(山口県)
外、個人参加若干名(御芳名省略)

……初上陸です笑 このところこのブログ、遠征が続いていますが、大丈夫なんですかね(大丈夫じゃない←
ただ、行きたい演奏会があると抑えられないんですよねぇ(重症)。夜行で0泊3日の弾丸広島旅行です。今回お邪魔した「コーラス・どーなっつ」。イベントの名前は聴いていましたが、見てみるととても面白そうじゃないですか。なにせ、中国・四国という広範囲から、これだけの団が学生中心に集まるんですもの。アツくないはずがない。
今年で5回目を数えるという同イベント。このイベントは、実は単なるジョイントコンサートというわけではありません。有志の各団演奏に加えて、主役となるのは合同演奏、そして、それに至る2泊3日の合宿にあります。
そう、彼らにとって今日は合宿3日目。1日目、2日目と、合同演奏の練習の外、講師の3名による部門別講習会が開かれて、合唱の技術を磨き合います。だからこのイベント、単なるジョイントと違って、非常に仕上がりの良い状態で合同演奏を迎えることとなります。それだけに、今回の合同で設定された曲も、高い技術を要する3曲。そのイベントとしての特異性と、純然たる興味が、私を広島へと向かわせたのでした。

・ホールについて

海田市駅から歩いてすぐのところにある区民ホール。広島市の中でも安芸区は一番端にあたります。この前の豪雨災害でも、被害が酷かったところとごく近いところにあります。影響を目視したわけではありませんが、この先、代行バスが走る区間が今も残り、海田市駅を出たところには、税務署の罹災関係の税金についてのチラシが置いてあるなど、確かに被害の爪痕はあるようです。
さて、ホールの方はというと、ちょうど、名古屋でいうと文化小劇場、この前の下丸子のホールと同じような位置づけにあるともいえるホールです。保健所や図書館が入る多目的複合施設の中にあるホールは、金属板と木の立ち上がり、Pタイルにペンキ塗り……400席から500席ほどと見られる客席も含めて、そう、まさに、公共施設といった感じのホール。だから、開演ブザーも「b-----------」って鳴ります(我ながらこだわるなぁw)。とはいえ、広島駅から3区程の立地は、なかなか魅力的なのではないでしょうか。
反響板を外せばまさに、多目的に使えるホール。でも、このホール、音楽ホールとしても優秀です。何か。とても心地よく、音の鳴るホールなんですね。こういうホールだと、そもそも響かないというところや、あるいは響きはよくても、それがステージの中に籠もるということがままあるのですが、このホールは、ちゃんと響きが音量となって返ってくる。側反と正反に施された装飾のような加工が、音をよく増幅させてくれているのかもしれません。耳元で鳴るわけではない、広さは十分感じる音に加えて、短いけれども心地よい残響。たかが地方のいちホールと、侮ってはいられません。なかなかの実力です。

客席は3割程度といったところでしょうか。地方ユースだったりとか、演奏する人間がもともと興味持ちが多いと、悲しいかなこういう感じの客の埋まりになることが多いんです。否でも、キャパも相まって、いい感じに埋まっているようにも見えるかも。それに演奏者も加わって、ステージ途中までは結構埋まっているようにも見えたかも。OB/OGもお見えのようで、アットホームな雰囲気。西日本だと、こちらの方でも「○回生」っていう学年の数え方するんですね。
アットホームといえば、この演奏会にも紙のアンケートが挟んであって、書いてきたんですけれども、「ご来場いただいた理由は?」の選択肢の一つに「暇だから」との一言。……そりゃ、丸打ってきますよね、そこに笑 暇を持て余して遠路9時間名古屋からの旅路爆

エールとかそういった類のものはなく、さっそく有志各団の演奏から。

第1ステージ:単独ステージ
SUND, Robert "La cucaracha"*(Mexican Folksong)
上田真樹「強い感情が僕を襲った」「終わりのない歌」(銀色夏生/『終わりのない歌』より)
演奏:広島大学東雲混声合唱団パストラール
指揮:黒木陽介、梶原隆志*
ピアノ:子鹿日苗乃

30〜40名程度の、理想的なバランスによる混声合唱団。最初の音から、この団のポテンシャルの高さを見せつけられました。高めのサウンドがよく響き、かつ音量もしっかりありつつ、ヴォカリーズからは表現に対する意欲もよく見られる。加えて、クレッシェンドのボリュームの豊かさも十分ーー。
そう、この演奏からずっとそうなんですけど、この地域、すごくポテンシャルが高いんです。縦の響きがよくあっていることもさることながら、何より、歌うときの力・発声の土台がものすごくいい。どの団ももれなく、しっかり歌う力を持っている、あるいは、しっかり歌おうと十分な意識を傾けている。だから、揃うだけでない、立体的な音楽が、どの団も自然と出来上がる。
もちろん、この団にだってアラはあります。たとえばこの団だと、早口なところでテンポに乗り遅れることがあるようです。加えて、もともと後鳴りな傾向があるようで、早いパッセージが重くなったり、ロングトーンでピッチが下振れする原因となっているようです。1曲目や2曲目のカノン、さらにはそのバックで鳴る男声の副旋律的な主題の回想など。
でも、1曲目の終わりに拍手が思わず出るほどの楽しい演奏、この団のこの明るい発声で歌う、「終わりのない歌」の tutti での主題、いずれも、本当に素晴らしいできでした。「終わりのない歌」の、あの主題がある限り、演奏会へ向けて、この演奏はいい方向へ向き続けてくれると思います。グッとくる、ああ、終曲聞きたいわ笑

まつしたこう「ほらね、」(いとうけいし/同声3部版)
木下牧子「あいたくて」*(工藤直子/『光と風をつれて』より)
演奏:安田女子大学合唱研究会Vivid Nova
指揮:今井唯理、縄裕次郎*
ピアノ:渡子はるな、今井唯理*

12名程度。人数の割に良く音が出ていて、何より本当に各パート音もピッチもよく揃っていてハモってもいるから、ボリュームの不足感は、ホールの音響やハーモニーの豊かさでよくカバーできていたように思います。
でも、そうやって、ちゃんと歌えるからこそ、気をつけたいのは、メロディの歌い方。特に「ほらね、」では、メロディが流れてしまう傾向にありました。特に、Aメロというか、めくるめく様々な情景を見せる部分では、もっとひとつひとつの情景に思いを込めて歌えると、より魅力的かつ複層的な表現になったように思います。一方で最後の転調へと向かうクレッシェンドは見事。これだけの人数でいながら迫力のある素晴らしいクレッシェンドでした。
そして、個人的には初・縄さんの演奏となるこの演奏笑 否、でも、上に書いた、メロディが流れがち、というデメリットをうまく昇華してメリットに変えることができていました。フレーズが流れる、ということは、裏を返せば、フレーズがよく繋がる、ということでもある。「あいたくて」のフレーズ感はその意味で見事でした。よくつながっていて、その展開がよく見える演奏。どこか懐かしような、焦りのような、みずみずしい感情が見えてくるような。
なにかといえば、少人数にしてアンサンブルが非常に上手。少人数系合唱団の理想のひとつでもあります。

松下耕「音戸の舟唄」(広島県民謡/『南へ』より)
松下耕「もっと向こうへと」*(谷川俊太郎/『すこやかに おだやかに しなやかに』より)
演奏:広島大学合唱団
指揮:河村藍、菅井敬太*
ピアノ:米田好佑、笠原啓介*

男性が白ブレザーという団は多くあるものの、女性が白ブレザーを羽織る団はそうないのではないでしょうか。そんな女性は、オンステ16名あまりのうち、わずか6名。もう、いろんな意味でかっこいい。
しかし、最初のソロから全パートが合流していくところまで、音量が本当によく出ている。声の出し方は、響きが暗くなりがちな部分もあるものの、しかし、それよりもまず、この表現に対する意欲に、心から敬意を表したい演奏。安全運転な演奏が多い地域に身を置いている当方としては、本当に新鮮で素晴らしい光景でした。特に女性! 6名で歌っているとは思えないくらいに、ガンガン鳴らしまくっている男性に食らいつき、凌駕すらしかねない。それに負けじと、ソロの男性2人も、学生にありがちなビビリなソロということは全然なく、ガッツリ鳴らしにかかる。
「もっと向こうへと」でも顕著なように、各パートの絡みという意味では、ちょっととっちらかってはいました。特に、この曲では、抑えるという感情が入ったのか、ピッチの粗さが逆に目立ってしまう。でも、やっぱり、抑えたあとのフォルテには、この団の魅力が光っています。1曲目は特に、広島だからか(?)、勢いを全開にした松下耕の民謡は、最高の表現なんじゃないかと思います。
あえていうなら、少しばかりの操縦する技術があれば、それだけで、この団はあっという間に飛躍するのだと思います。でも、そんな野暮なこと、あんまり言いたくない。この団、人に言わせれば、間違いなく荒削りなんだと思います。でも、こんなにワクワクする荒削り、僕は久々に見ました。今でも鮮明に思い出す、今日イチ注目の演奏のひとつです。

Hindemith, Paul "Kyrie"(from Messe)
Gjeilo, Ola "Ave Generosa"(Hildegard von Bingen)
演奏:合唱団ぽっきり 西条組
指揮:縄裕次郎

有名団の広島大学支部的な位置付けのようで。西条組は13名程度。もちろんホンモノはもっといます(っていうのもアレか笑)
パート内で揃った音が良く鳴り、しっかりとフレーズを操れているさまは、聴いていて見事。特に、ヒンデミットのよく跳ねるフレーズをうまく描けていたのは、技術的にしっかりした合唱団の証です。
でも、この団、パートの間でのアンサンブルという面になると、まだ磨ける面があります。個が立ちすぎているというか、パートの中で閉じたアンサンブルになってしまっていました。ともすると、1曲目最後のオクターブなどは、もっと揃えると、もっと立体的な音が鳴ったような気がします。
縦の揃うイェイロのハーモニーは十分。でも、それも、少し動かすと、やはり違和感が出てきてしまう。特に、イェイロで言えば、外声がロングトーンを張りながら内声が動く時、その内声の動きが今ひとつ必然性を持って響いてこない。あ、コードが変わっているな、というイメージを、どうも持ちづらい響き方になってしまっています。内声かな?でも、それだけでもないような気がしてしまう。
もちろん、全体で合わせたら、そういう面も解消されることだってあるのかもしれません。でも、この西条組単体をしてだって、もう少し他パートに耳を傾けるようにすれば、改善してしまう問題なような気がします。だって、ポテンシャルは十分ありますから。相変わらず、しっかりピッチの高い音が鳴らせていますし。
否、実を言うと、これまで4つの中ではおそらく一番整ったアンサンブルなんですけど、でもどうも、そうなると私の判断のベンチマークが上がるから、厳しい批評に鳴るんですよね、とコメントまで笑

Mendelssohn, Felix "Herr, nun lässest du deien Diener in Frieden fahren"(from 3 Motetten Op. 69)
相澤直人「ぜんぶ」(さくらももこ/『ぜんぶ ここに』より)
演奏:Chorsal《コールサル》
指揮:大村善博

若手有志の参加。団員10名。普段はその倍くらいはいるみたい。今度は、初・ぜんぱくさんです(恐れ多い!笑)。
最初はなぜか全体的にビビってたみたいですが、ノッてきてからはいい音が響いていました。1曲目は、ドイツ語の子音に対する意識が強烈に感じられる、小技の良く光った出来。パート同士の絡みも、付かず離れずの、良いラインを良くキープできています。
あえて言うなら、母音の響きの差が、音の響きに対して悪影響を及ぼしてしまっているでしょうか。また、1曲目は特に顕著に、フレーズがつながるものの、息が続かないような、フレーズの終着点が見えないような、漫然とした演奏になってしまったようなイメージです。でも、やっぱり、そこら辺、ドイツ語だったからですかね笑、「ぜんぶ」は日本語だからか、そこら辺の問題を特に感じずに聞くことが出来ました。
身体を、目を、よく使って、自然にアンサンブルをしているのが良くわかる演奏でした。それでいて、音楽がもったりせずに、ちゃんと進行していくこと。特に「ぜんぶ」なんで、遅くなりがちで、ひどい場合だとどこかくどい演奏に鳴っていることもしばしばあるのですが、今日の演奏についてはそんなこともありませんでした。
よく音量があって、しっかり歌えていて、それでいて、柔軟にアンサンブルがつながっている。そうそう、今日の演奏において、大切なものはぜんぶここにあるのよ。特に「ぜんぶ」については、音源化してもいいんじゃないのってくらいに、理想的な演奏でした。

インタミ10分。

第2ステージ:アンサンブルステージ
縄裕次郎 "Laudate Dominum", "Lux aeterna",「狩りの歌」《初演》
指揮:縄裕次郎

さて、この演奏会、講師として参加した3人が講座を持って行われた2泊3日の合宿が一つの核となっている演奏会。そこで開催された縄さんのアンサンブル講習会についての演奏披露ステージです。なんと縄さん力を込めて作曲したのは図形譜。それを面前にした学生を中心とする若い歌い手に「対話的で主体的なアンサンブルを」することができるようにするのが目的だったとか。
3曲アタッカで演奏されました。いわばエチュードのように階名唱から始まり、ド=ソ=レと完全5度の関係の中に、動き、揃ったうちに、またクラスターを形成しながら、オーダーともども、各歌い手が独立して、客席へ降り、空間の中へ混ざり合っていきます。そして、2曲目仕切り直して、客席に座っているメンバーも一体となって、クラスターがさらに広がっていく中、独特なリズムの手拍子をしたり、その場をぐるぐる廻るメンバーも。音階を超えた遊びを魅せつつも、愈音楽はユニゾンの中へ収斂されて行きます。そして、突如として野性的な咆哮が聞こえるうちに始まった3曲目とともに、ステージへと戻った団員は、主題、通奏の後、動物的な響きを意味深な呪文とともに唱えだし、指揮者のストンプとともにそれは頂点的な盛り上がりを呈したのち、再び唱えられながら、団員ともどもステージ上手へと消えていくーー。
現代音楽への導入としての意味合いもあった同曲は、とても良く出来た作品であったようにも思います。そして、ワークショップの披露演奏、効果測定という意味でもーー確かに、この曲、主体的かつ対話的にアンサンブルを作り出すという意味合いにおいて、十分効果をなしている、非常に秀逸な試みであったのではないでしょうか。自発的に歌わないと、こんな作品、完成しませんからね笑 1曲目こそ少し荒が目立ったような気もしますが、これもまた、この講座から得られた課題をよく示していて、逆に良かったのかもしれない。非常にいいものを聞くことが出来ました。
あ、楽譜、連絡したらくれるらしいです。よかったらぜひ笑

第3ステージ:合同ステージ
間宮芳生「まいまい」(富山県民謡/『12のインヴェンション』より)
指揮:縄裕次郎
Bruckner, Anton "Os justi"
指揮:黒川和伸
三善晃「かどで」(高田敏子/『嫁ぐ娘に』より)
指揮:大村善博

そして、ステージには150人弱はいたでしょうか? ステージキャパを超えているようなきがしてならない笑、大人数で歌うーーのに適しているのは、曲ヅラとしては、本来 "Os justi" だけじゃないかしら笑
披露演奏したのは一部の団であるにしたって、各団とも、よくボリュームが出ていて、っそれでいて、高い響きのうちにしっかり歌えていた。そう、それが合わさるわけですから、非常にいい相乗効果が生まれるのは必定。いいボリューム感の中に音楽が進んでいくのが、「まいまい」から非常によく見えていました。
さらに、それが、さらに相乗効果を生んだのが、黒川先生の "Os justi"。もともとこの地域の特色とも言える、高い音でしっかりと鳴らす音作りに、各団員に純然と歌わせる正統派アンサンブルの音作りを旨とする(あってますよね?)黒川先生の音作りも相まって、文字通りの相乗効果が生まれます。そのボリューム、気持ちよく進行する音楽、そして、その中に広がる充実したフォルテ! 白鍵のみで記述されたブルックナーの「宇宙的な」(黒川)響きが、ホールいっぱいに広がります。もうこれ、合同の演奏レベルを普通に超えてるんじゃないかしら。
そんな仮説を実証したのが、ぜんぱくさん指揮の「かどで」! 演奏前の挨拶で、コーラス・どーなっつの歴史を紐解きながら、最初は音取りも怪しい段階から始まったイベント、2回目からしばらくピアノ付きの曲をやっているところ今年アカペラに再挑戦云々と申しておりましたが、否、そんな、謙遜するようなレベルは優に超えている。ジョイントの合同演奏なんて言うことをすっかり忘れて、思わず聞き惚れる程レベルの高い、芸術的で美しい「かどで」を聞くことが出来ました。お世辞抜きで、これまでで一番かも。
この曲、ある意味普通に詩を読んでいるものの、「さようなら」のモチーフの繰り返しなどの工夫によって、風景が見えてくるような作りをしているんですよね。歌いながら、メロディが、和声が、デュナーミクが、風景を立体的に現前させる。慎ましやかな喜びと、確実に残る寂寥を、その音楽の中に見出すーー。
「若手の中には、わからないなァと思いながら歌っている者もいるかもしれない。でも、それでいいと思う」とは、ステージにて、ぜんぱくさん。わからない(かもしれない)中に、彼らは、とうに演奏という形で答えを見出してしまったようです。若さって怖い。知らないがために、最短経路で答えを掴む。でも、それが答えじゃないような気がするのかもしれないな。……それはそれで、成長の契機。ともすると、やっぱり、そのままでいいのかも。
とにかく、今日の「かどで」は特に絶品でした。

encore
木下牧子「鴎」(三好達治)

そりゃもう、世の中の大学生なら、知らない人間なぞいない曲です。だからといって、ステージの上で、この曲を、指揮もなしに歌えるかというと、なかなかそうはなりませんよ笑 まさに、大学生の全員合唱かくあるべしと言わんばかりに、圧巻の「鴎」を聞かせていただきました。技術的に云々という面では、まァ、……なんていうか、この演奏の中では野暮かな、と笑 でも、そんなこと気にならないくらいに、しっかりと音楽が進んでいき、テンポが、ハーモニーが揃う、見事な演奏でした。

そのまま、全員がホワイエにたち、お見送りのうちに、終演。

・まとめ

指導者合宿に参加したときのことを、ふと思い出しました。
世の中の、指導をする大学生が中心となって連続講座を受ける、年末恒例の大学生指導者合宿。1泊2日で、様々な講習を受けながら、ルームメイトと親しくなり、パーティーで歌い、風呂場で斎太郎節を叫び、最終日には大団円のうちに講習の成果を実感するーー今、若干形が変わったと訊いていますが、概ね、そんな感じで、年末の大学生はやっぱり合唱に明け暮れます。
私自身、ミーハーな感じで参加したことが一回ありました。そこそこその中で充実した生活を送ることが出来ましたが、その中で、ちょっとした負い目があったのもまた事実。私、純然な形では学生団を卒団していないものですから。こういう言い方するとアレかもしれませんが、もともと入っていた学生団から、経験も浅いのに一般団へ「逃げた」。別の学生団には入り直したものの、正直、自分は外様であるという意識を拭いきれずに、今に至っています(今やその入り直した学生団のOBとしてデカイ顔していますが、それはまた別の話←)。
とどのつまり、なんであれ、学生ってやりなおし効かないんです。どういう帰結に終わろうと、その学生生活は一度しかない。自分も歳を取りました。その事実の重みが、どんどんと大きくなってきます。
おそらく、この2泊3日は、学生たちにとって、とても興奮する、いわば熱狂の3日間だったことと思います。本人たちは今はそうはおもっていないかもしれない。でも、いずれ思い返すと、きっと、この3日間のことを、興奮とともに、思い出すのだと思います。そう、その興奮こそ青春ーーひん曲がった青春を過ごした者として、彼らが、彼らとまじれる若手が心から羨ましい。
青春のキラメキっていう陳腐な言葉は、彼らにはなじまないのかもしれない。でも、そのときにしかない、言いようのない輝きが、確かに彼らの中にはあるんです。そのエネルギーの結実が、今日の合同演奏でした。
今年のコーラス・どーなっつの副題「Go on!」も、学生たちが考えたそうです。私からしたら、こなれてないタイトルだなぁ、とも思わなくもない。でも、このタイトルを付けて、5回目だ、これからも突っ走るぞ、と決意表明した、彼らの、ちょっと危なげな、無鉄砲な、しかし確固たる勢いに、私は、未来へ向けたとてつもないエネルギーを感じるに至りました。ちょうど、大学4年で数えれば二回り目に突入した同イベント、これからへ向けたアツい決意表明に、心からのエールを送ってやみません。Go on!ーーその、勢いとともに。