おおよそだいたい、合唱のこと。

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主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
やたら細かいレビューからノリツッコミまで、現状、合唱好きな方の暇つぶしには最適です。
ゆっくりしていってね!!!

2018年8月26日日曜日

【愛知県男声合唱フェスティバル2018】

2018年8月26日(日)於 刈谷市総合文化センターアイリス大ホール

そういえば、軽井沢もさることながら、今週末は愛媛でおかあさんコーラス全国大会だったみたいですね。
……なんという対照的な色合いのイベント!
否そりゃ、全日本合唱連盟でも男声合唱フェスティバルってやってらっしゃいますけど。

そんなわけで、文句なく男臭いイベントです笑
愛知県下の男声合唱がこれでもかと揃い、一つのステージを作り上げます。3回のジョイントコンサートを事前企画に、隔年開催その2回目。私は初めて伺いました。出演団体数、実に14団体。それで全てというわけでもないのですが、愛知県の男声合唱団が一堂に会して、およそ4時間半にわたり熱演を繰り広げます。まさに、三和音の倍音に浸る4時間半……
そう、4時間半笑 プログラム転記するだけで一時間かかりました爆
なんていうの、そりゃ、名前の通り、合唱祭みたいなものだから、正直そりゃそうなんだけど、通しで聞くには長い笑 まァ確かに、バッカスよりは短いんですがね、アレは昼休みもなくぶっ通しですからね笑
え、私?
そりゃ、出されたものは平らげますよ笑
豊中市合唱祭のときは休憩取ったけど←

・ホールについて

刈谷アイリス。つい最近来たのは……私事ながら、スキマスイッチのライブでした笑(もちろんレビュー未掲載)
このホール、音楽にも非常に強い多目的ホールで、確か開演ブザーの音も多彩にあったと記憶しているんですが、今日はなぜか「b--------!」って鳴らしてました。なんでだろ?
今日は、いってみれば合唱祭ということで、人数の多い団から少ない団まで多彩な演奏会でした。そこで、途端に問題になってくるのが、ホールの鳴りの問題。このホール、音の響きはいいのですが、こんなに散ってしまうものなのですね。たといある程度鳴らせる団であったとしても、響きに散っていき、音圧は低くなってしまう傾向にある。鳴らそうとするためにはどうしたらいいかと言ったら、その響きの力を借りながら、全体をならしていく意識が必須。要するに、ちゃんとした発声を磨いて、しっかりと歌うこと。またの言い方を、レベルを上げて物理で殴ればいい。辛辣←
そうそう、今日行ったわけではないんですが、ここの喫茶店兼レストラン、なかなかオススメですよ。昼や夜はパエリアを貴重としたおしゃれなカフェ飯を楽しめる上、14時〜17時のスイーツタイムが見もの。かくいう私も、スイーツタイムにしか行ったことがないのですが、700円出すと、見た目におしゃれな美味しいケーキと、ドリンクバーが楽しめます。そう、ドリンクバーなんです。コーヒーメーカーはちゃんとしたものが入っているので遜色なく、ティーも各種取りそろえ、冷えたコカ・コーラの飲み物がほしいならそれもどうぞ。レギュラーの飲み物ももちろんありますが、それに加えていろんな飲み物も楽しむことができる。いろいろな楽しみ方ができるあたり、さすが、市民会館のカフェって感じじゃないですか。いいことだと思います。

今日は全団体レビューで行きます。合唱祭系は原則全団体レビューしていないんですが……まぁ、全団体20分のステージやってますからね。それに敬意を込めて。
2階は暗かったので締切でしょうか。1階8割超。前列は参加者用に開けてあり、それだけでのべ350人(!)いるので、実際の割合はもう少し少ないかも笑 実態に合わせ、壮年が多め。然し、この世代の集客に対する情熱はすごいものです。

1.男声合唱団 響
多田武彦・男声合唱組曲『北陸にて』(田中冬二)より
「きつねにつままれた町」
「みぞれのする小さな町」
松本望「3」(男声合唱とピアノのための組曲『回風歌』(木島始)より)
指揮:後藤行央
ピアノ:戸谷誠子

主に関東地方の方向けに。「ひびき」と読みます。徳島にも同名団があると伺っております。響は、この中では若い方の団に入りますね。代表格のひとつ。特にコンクールの部門が組み変わる前は、中部大会進出もしばしば。
内声が充実しているので、アンサンブルはよく整っています。然し、逆を言えば、外声、特にトップは、もう少しパリッとさせたいところです。特に三和音で、ちゃんと開いた音がカーンと鳴ったほうが、緊張感が出ていいと思います。いずれの曲も、キマる三和音はもっとはめたいところですし。こう、倍音が鳴って、景色が、ぱっと明るくなる、みたいな。決して悪い音ではないのですが、ピッチを、より精度高くしたいところ。
とはいえ、さすが、人数の割に非常によく鳴らせています。

2.男声合唱団 トワイライトシンガーズ
清瀬保二「球根」(男声合唱組曲『原體剣舞連』(岡本廣司)より)
富山県民謡(arr.安達元彦)「コキリコ節」*
まつしたこう「ほらね、」*(いとうけいし)
指揮:鈴木裕康、田代真司*
ピアノ:鈴木まどか

地元枠……って、みんな愛知県下の合唱団だからそりゃそうなんですが笑、刈谷からの参加です。
人数にしてはボリュームがよく出ていて好印象。そして、高音がよく当たる。内声はやや音がこもりがちであるが、特に2曲目の牧歌的な空気感にはよく似合う、やさしい音使いのできる団。
だからこそ、時折高音で出てきてしまう、やや無理をしたような高音は慎まれたいところです。常日頃から、息の量を増やして、それを着実に音にしてやることで、より骨太な音も鳴らせるようになって、音のバリエーションが増えるのだと思います。3曲目など、優しい音を優しく出すのは、本当の優しさとは言えないのではないかと思います。
理想としたいのは、それでも、その3曲目の最後の三和音。目がさめるような、いい音が鳴っていました。

3.男声合唱団「昴」
熊本地方民謡(arr.福永陽一郎)「おてもやん」
宮崎一章(arr.福永陽一郎)「島原の子守歌」
南部地方民謡(清水脩・作曲)「牛追い唄」
宮城県民謡(arr.竹花秀昭)「斎太郎節」
指揮:樅山英機

どこまでも明るい音作りが印象的。広く場所を使って鳴らしているなというイメージは好印象です。
ただ、もっと地に足をつけた様な、低い響きも活かした音が使えるように鳴ると、より良い音となりそうです。明るい音という方向性自体は非常にいいのですが、ともすると、やや喉を鳴らした音を使いすぎでしょうか。
また、音程については、出した音が伸ばしているうちに下がることがあるのはさすがに問題。出した音には最後まで責任をもって上げたいものです。また、和音の部分では、もっと耳を使ってハーモニーを楽しみたいところ。
否ーー最たるはこれかもしれない。語りや掛け声は、もっと盛大に行きましょう。結局は、勢いですよ、特に男声合唱という編成は笑

4.男声合唱団 ダンディライオンズ
清水脩・男声合唱組曲『月光とピエロ』(堀口大學)より
「月夜」
「秋のピエロ」
「月光とピエロとピエレットの唐草模様」
指揮:樋口真一

名古屋出身の明立出身者が集った合唱団なのだそう。拝見した限りでは、Ken-Pが指揮者になる前のメンバーが中心……まぁ、そりゃそうか←
最初の勢いのある音、それが理想であり、逆にそこからどんどん離れていってしまったのが残念でした。最初の和音の印象がすごく良かっただけに、本当に残念な演奏になってしまいました。特に、弱音かつ低音にいく部分で耐えきれなかったのでしょうか。せめて、勢いが戻ってくる部分でちゃんと音楽を進められないと、ダラダラと流れていってしまいます。今回、終曲も、あの出だしの音のままに鳴らすことができたら、どんなによかったでしょうか。デュナーミクが悪かったわけではないのですが、テンポ的にも音的にも、最後の曲が流れてしまったこと。それならせめて、強弱無視して、がっついてほしかったな、というのも本音。

5.豊田市民合唱団(男声部)
「にほんのうた」
・筑波山麓合唱団
・ボーイズ・ビー・アンビシャス
「こどものうた」
・バスのた
・おなかのへるうた
・おうむ
・バナナを食べる時のうた
・すっからかんのかん
指揮:都築義高
ピアノ:竹内理恵

混声で活動している団体が、有志で。さらに今日は、そのうちの有志がカエルの変装で登場。さらにその後、お召替えを挟んで、さらに有志が、バナナを着て最後まで。なんだこりゃ笑
最初から最後まで、身体を使った軽いアンサンブルで、伸びやかな音で、観客を笑わせにかかりました……語弊があるな笑 相対的にトップがもっと出るといいかな、とか細々としたことはあるものの、最初から最後まで、観客の空気を温めて、穏やかな笑顔の中終わらせたのは見事。上のバナナなんて、バナナ着ながらステージ上練り歩くし、なんか「ウーッ!」とか叫びだすし笑
言葉がもっと立ってるとより良くn……否、そんな、この演奏に指摘だなんて、野暮だな笑 照明が暗転して、指揮者が合図するまでそのポーズを取り続けた徹底っぷりにも、改めて拍手です。

インタミ15分。

6,名古屋グリークラブ
arr.三善晃『唱歌の四季』
指揮:大隈健治
ピアノ:今村洋平

名工大OB系。ピアノの熱演もあって、音楽自体はよく流れていました。途中、一箇所ずれましたけど笑 素朴で、しっかり歌いこまれた主旋律が印象的でした。
とはいえ、表情がどの曲でもさして変わらなかったのが残念なところ。アンサンブルの範囲が練習室の範囲に収まっていたように聞こえました。「雪」のリズムなんか顕著で、もっとガッツリと音を立てに行きたかったところです。そして何より終曲。普通に歌っていても手の余る壮大な「夕焼け小焼け」を歌うには、もっと、ホールの広さを感じて、広々と歌いたかったところです。楽譜からもっと目を離す、っていうことだけでも、ずいぶん変わるのかもしれません。

7.クール・ジョワイエ
若林千春・伊東静雄の詩による交声曲『曠野の歌』より
「夜の葦」
「わがひとに與ふる哀歌」
指揮:高橋寛樹
ピアノ:江上敦子

コンクールにて初演した曲の再演。まずは中部大会での再演が決まっています。それだけに、ほぼ初演ながらにして非常に高い完成度でした。切ない情景の中に広がる、透明な夜。そのさりげない明るさを、三和音が可視化するかのような「夜の葦」、そして、地に足をつけ、抑えきれぬ感情を咆哮するエレジー「わがひとに與ふる哀歌」。いずれも、組曲の完成が待ちきれない、新時代の男声合唱組曲を予感させる、非常に美しい曲たちでした。
演奏の出来も、さすがに、そつなく、それでいて迫力のある演奏だったと思います。個人的好みとしては、もう少し強い音は鳴らしに行ってもいいかな、といったところ。特に、このホールが散りやすいホールだったからかもしれません。とはいえ、バリトンがメロディを語る部分の音楽の進みも申し分なく、完成度は非常に高い。
ただ、「い」母音で現実に戻される場面がいくつかありました。それも含め、集中力が問われる曲。デュナーミクは今を維持するか、あるいは進歩させつつ、より細かい部分を詰めることで、表現全体の完成度が高くなりそうです。

8.愛知メンネルコール
高田三郎・男声合唱組曲『水のいのち』(高野喜久雄)より
「雨」
「川」
「海よ」
指揮:安藤正和
ピアノ:野口夏菜

グランフォニックから賛助が入っての演奏。逆にグランフォニックにも愛知メンネルからの賛助あり。曰く、この団員交流も、このフェスならでは。然り。
特に表現の面で、非常にできの良い演奏でした。何かと伝説的に、高田三郎だかその信奉者だかの表現に対する思い入れが伝わってくるこの作品。まして人気曲だけに様々な人の耳が肥えている中にあって、その要諦をしっかり学ぶ態度に溢れた演奏でした。
一方、トップがより張れると、もっと音楽が引き締まったか。また、「海よ」に顕著か、「あ」母音が開きすぎるというのは善処されたい。表現にもまた、集中力が問われる曲。最後のクレシェンドも、集中力を持ってすれば、もっと前の方から音量を高めても良かったかなとも思います。
とはいえ、最後に客席から聞こえてきた「ブラボー」、あれは決して御世辞ではないと思いますよ。素晴らしかったです。

9.尾北男声合唱団
arr.高須道夫『山田耕筰作品集』より
「二十三夜」
「粉屋念仏」
「げんげ田」
「かえろかえろと」
「捨てたねぎ」
「木の芽ごろ」
ゆず(arr.田中達也)「栄光の架橋」(北川悠仁・作曲)
指揮:柴田冨造
ピアノ:片多千愛

メロディから流れる、穏やかで優しい空気が印象的な演奏。弾いているそばでピアニストの口が動いているのも、まさに、この団からあふれる歌心の象徴と言えるかも。
とはいえ、トップにはやはり、もう少し音圧が必要かもしれません。音楽の輪郭がもう少しはっきりさせた方が、より映えた気もします。また、早いところでは、全パート、もっとカクシャクと口を動かされたいところ。加え、内声ももっと高音を混ぜたパリッとした音を鳴らしたいところです。「かえろかえろと」は、ソロと、ヴォカリーズの絡みが美しく、お見事。
「栄光の架橋」はエレキギターと。記譜もそうなっているのかしら。然し、接触不良のようで、目立ちが悪く終わってしまいました。しかし、そんなことにも負けない骨太な合唱、まさにこの曲にぴったりだと思います。

10.グランフォニック
クロード・ミシェル・シェーンベルグ(arr.小島聡)・ミュージカル『レ・ミゼラブル』(訳詩・岩谷時子)より
「プロローグ〜一日の終わりに」
「星よ」
「彼を家に」
「カフェソング〜民衆の歌」
指揮:小島聡
ピアノ:はやせようこ

華々しいミュージカルを、独自編成で。高音やtuttiで出る場所を、思い切り鳴らしに行く雰囲気がよく出ていて、非常に素晴らしい演奏となりました。
tuttiの部分は、よりパートの息を揃えてバチッとはめた方が、メロディの始点が見えやすく鳴ってよかったかと思います。どうしてもダレがちな内声も、そうするだけで迫力をつけることができる部分もあるような気がします。
この中でも特に、3曲目のゾリは非常に美しい。そして忘れてはならないのは、それに寄り添うヴォカリーズ。
動きはもっとあってもよかったのかもしれない。演奏会では、実際にミュージカルしたのでしょうか? それにしても、その世界観に心から魅せられました。なにより、最後の「民衆の歌」の迫力は、ぐっと来ました。思わず出たブラボー! 演奏に集中していた、その直後の爽快感も、また醍醐味です。

インタミ15分。非常に珍しく、男性トイレに長蛇の列笑
そういえば、同じ数が来てもどうしても混むからっていうことで、最近の公共施設では女性トイレを広めに取る傾向があるそうです。アクティブ・アクションに近いでしょうか? 違うか←

11.合唱団「男声合唱を楽しむ会」
高田三郎(arr.須賀敬一)男声合唱とピアノのための『啄木短歌集』(石川啄木)
指揮:向川原愼一
ピアノ:はやせようこ

黒シャツにカラフルなネクタイがおしゃれ。
よく鳴らせているイメージ。しっかりと地に足を付けて音を鳴らしているから、高声は特に、高い音へ行っても無理がない音が鳴っていました。一方で、内声は、もっと高めの響きでカラッと鳴らしたほうが良いのではないでしょうか。
また、上昇音型はいいのですが、オブリガードは細くなりがち。これもまた、しっかりと響かしてメロディと対峙させたほうが印象が良くなると思います。メロディも、対旋律も、両方共。
全体としては、弱い音に対する推進力がもっとほしい。全体が弱くなったときに見せる力強さは、刹那的な力強さを持ちます。味わいのあるメロディを歌う合唱団には、ぜひ意識されたい、「強いピアノ」を、レパートリーを拝見する限り、この団では特に身につけてほしところです。
しかし、長いステージとはいえ、よく集中力を持って演奏されました。ご立派。

12.ensemble Solaris
松下耕「Cantate Domino in B♭」
高田三郎・男声合唱組曲『水のいのち』(高野喜久雄)より
「水たまり」
「川」
Rahman, A.R. "Wedding Qawwali"*
(with Piano and percussion*)

当方の主観で、尤も期待されるべき合唱団の一つ。数少ない若手男声の雄と思っています(否、この際、ここの年齢のばらつきには目をつむりましょうぞ←)。
音量は、人数にしてはよく出ていますが、今日はホールに嫌われてしまったか。散ってしまっていたのが残念でした。むしろ稲沢のほうがよく鳴らせている気がする。
一方、強弱で音量問題はよくカヴァーできています。特に発声に無理なく駆け上がっていくフォルテは見事です。アンサンブルも、非常に軽いんですよね。指揮なしで、機動的にカチカチと雰囲気を変えていけるから、音楽がどんどん進んでいく。なんたって、水のいのちを指揮なしで進行できるくらいですからね、相当です笑
そして、最後の曲ーーえ、この団、踊るタイプの団なの?!っていう笑
確かボリウッド系の曲だったので、動くこと自体は自然なのですが、あんなフルで踊るとも思っていなかったので、びっくりです。なんというか、こういう離れ業もできる団なんですね……もっとお硬いアタマかと思いこんでいたので、認識新たにさせられました。終わったら、ブラボーの「黄色い声」! 否これは新しい笑
えっと、この曲については、なんというか、もっと細かい部分でもちゃんと言葉がきこえてくるt……あの、その、なんでもないです←

13.東海メールクワィアー
ジグムンドロンバーグ(arr.福永陽一郎)男声合唱組曲『ニュー・ムーン』(オスカー・ハマースタインII世)より
「朝日の如くさわやかに」
「恋人よ 我に帰れ」
「勇敢な男たち」
構成・補曲:都築義高
指揮:鈴木順
ピアノ:津野有紀

たとい次が東海メールだろうと、あの演奏の次にはさぞかしやりづらかったことだろうと笑
こうやっていろいろ並べてみると、意外と柔らかな音を出すことの多い団なんですね。その意味ではこの曲もご多分に漏れず、柔らかな音が印象的。
ただ、メロディのしっかりしたミュージカルピースというだけあって、もっとガッチリはめた音を鳴らせたほうが、この機会では良かったような気がします。音量はちゃんとある。なんというか、音の密度とでも言うべきでしょうか。響く音なんだけれども、いまいちボリューム不足。なんと逆説的な。
メロディがパリッとしてくるだけで、アタマの中で解決してくるものがあったと思います。特にこの層の団は、内声の響きが低く混沌としがち、だからこそ、余計に、メロディではしっかり勝負したい。
しかし、その中でも、最後のまとめ上げはさすが! しっかりと爽やかに当てるさまは、今もなお、この地域で独特な存在感を放つだけのことはあります。

14.男声合唱団 SINGERSなも
岩代浩一編曲による『日本のメロディー』より
弘田龍太郎「雨」(北原白秋)
杉山長谷夫「出船」(勝田香月)
弘田龍太郎「浜千鳥」(鹿島鳴秋)
本居長世「七つの子」(野口雨情)
多忠亮「宵待草」(竹久夢二)
山田耕筰・中山晋平「砂山」(北原白秋)
指揮:安田健

明るい発声を持っている一方で、ガッツリ出すことも厭わないサウンド。非常にバランスが良い。しかし、トップはその中でも弱め、否、頼りなげとも言ってしまえるかも。「七つの子」の「カァ、カァ」というカラスの鳴き真似よりも弱く聞こえるというのは、さすがに考えものです。
全体としては、ホールをよく使うことができていて、表情豊かで、味のある音が鳴っている。ノスタルジックな中にも、各曲の特徴を良くつかめていました。それだけに、音量バランスの悪さが本当に残念な演奏となりました。もちろん、トップがもっと出す方向で合わせてほしいですが、ベースにも、もっと高い音とブレンドする、高い響きを使ってほしい。あと一歩。だからこそ、いい演奏だったのに高評価が出しづらい。本当に惜しい演奏。

15.合同演奏=多田武彦作品集
「花火」(男声合唱組曲『雪と花火』(北原白秋)より)
「月夜を歩く」(男声合唱組曲『雪明りの路』(伊藤整)より)
「雨」(男声合唱組曲『雨』(八木重吉)より)*
指揮:高津眞司(グランフォニック)、高木秀一(東海メールクワィアー)*

タダタケ逝去に思いを込めて。この演奏については、コメントするようなものではないのかもしれない。否、非常にいい意味で。
350名が、花道も含めてステージ上に勢揃いし、一心に多田武彦を奏でる。その迫力たるや、きっと、往時の男声合唱って、こういう風だったのかな、と、ある種新鮮な思いで眺めていました。ある意味、今の四連でも見るのが難しい光景かもしれません。
そして何より、眼前にいるのは、タダタケに親しんで来た人たちばかり。なぜかこれだけの人数が揃うと、各団でアレだけ問題だった高音だってバッチリキマるし笑、どのパートも本当によく整っている。人数多いのに、寧ろ。客席から振らなければならないほどの大人数なのに、どこよりも沁み入る「雨」を歌い上げる。そのハーモニーを揃えさせるのは、皆様のタダタケに対する思い……或いは、これをこそして、「伝統」というべきものなのかもしれませんね。

当初の予告どおり、6時過ぎに終了。休憩を除いたとしても、4時間の長丁場。本当にお疲れ様でした……その、聴衆も笑

・まとめ

考えたんですよ。そりゃ、14団体も男声合唱団が集まって、しかも最後は350人の大団円で、多田武彦の定番どころをガッツリ歌って終わっていく。それ自体とても美しいことだし、どの団も工夫を凝らした演奏でよかった。愛知の男声合唱の奥深さ・幅広さを感じられてとてもいいイベントだったーー。
否、違う。何かが足りない。
上に書いたこともまったく正しいけれど、それだけじゃない。圧倒的に、アレが足りない。
そう、「若手」が足りない。「若さ」とか「若々しさ」とかじゃない。「若手」が圧倒的に足りない。
何も、上の世代を否定するつもりはありません。間違いなく、愛知県の男声合唱界隈は特に、シニア世代が引っ張っている。今日だって、白髪の御爺がガッツリ高音を鳴らすサマをたくさんみてきました。ときには、まるで大学団のように、否、大学団よりも若いような爽やかなサウンドを鳴らしていたりもする。その、頼もしく力強い様が愛知県の合唱界を支えていることについて、何ら否定するつもりはありません。
でも、です。文化の深みという面ではどうか。正直、今の現状としては、マスにいるのは間違いなくシニア世代。そこになんとかついていった40代の現役世代と、物好きの20代が少々とか、もうそんな感じになってしまっている。どうしても、若い人がいる場面って、あるんですよ。今日だけで何回、もっとトップが張れれば、って思ったことか。
男声合唱というくくり自体は、決して年齢に縛り付けられているものではありません。然し、様々な不幸が重なって、気がつけば、愛知県下から大学男声合唱団がすべてなくなってしまった、そして、その結果としての、本日の参加者の現状に、上の世代へのリスペクトと同時に、現在の愛知県男声合唱界が抱える悲哀を感じずにはいられません。
若手が一つ、二つ増えたらなんとかなるとか、そういった世界ではないのかもしれない。でも、私自身、希望を感じることのできる話をいくつか伺っていますし、このイベントの外でも、合唱、こと男声合唱が、新たな形を見せようとしている萌芽は、いくらでもある。その可能性に、未来を託すことができるか。言うまでもなく、愛知県の男声合唱文化は、今、その存亡をも賭けた重要な岐路に立っています。
いつか、その存続に希望を見出すような光景が、このイベントで見れることを祈って、本稿の締めとします。それが、私の、愛知県の男声合唱に対する注文に他ならないのです。どうか、愛知県男声合唱の将来が明るくあることを。
ーー否、今の現状もそれはそれで、非常に頼もしくはあるのですけれどもね笑 こんなに情熱を持って合唱やっている人間が揃うの、滅多ありませんから笑

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