おおよそだいたい、合唱のこと。

ようこそお越し頂きました。
主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
やたら細かいレビューからノリツッコミまで、現状、合唱好きな方の暇つぶしには最適です。
ゆっくりしていってね!!!

2018年3月25日日曜日

【岡崎混声合唱団・岡崎高校コーラス部第39回定期演奏会】

2018年3月24日(土)於 刈谷市総合文化センターアイリス大ホール

予定って、基本、先着順で入っていくものですよね。特に最近、土日がとてつもなく忙しいことになってたので、どうしようもなく入ってしまう予定から順番に入れていっていたんですよね。全国でも知らない人はいないくらいの団の演奏会、そりゃ、チケット買ってと言われたら、買いますよ。やっぱり、蓋開けてみたら文句なしの満席ですもん。
でね、そしたら、やっぱりあるんですよ。
チケット買ってた演奏会の日に、練習が入っている、とか←
……午後・夜間でやってたので、夜間はちゃんと行きましたからね?笑

そう、今日も忙しかったんですよ。ビラ込みにクルマで行って、レンタカーだったから一旦帰って、また電車で出直す感じで。そう、でも、電車で行ける場所。なんでクルマで行ったんだって言われそうですけれどもね、理由がちゃんとあるんです。
なんでって、2団体分持ってってるから爆
しめて2,500部程度。スーツケース最初持ち上がらなかった……笑

・ホールについて

そんな、クルマでのアクセスもバッチリなこのホール、車の駐車場は非常に充実しています。5〜6層くらい駐車場あって、身障者専用のスペースもある。駅前は再開発で走りやすいし、名四国道の交通量は、なにより利便性の良さを証明しています。帰り名古屋方面渋滞してて少々焦ったけど笑
このホール、立地については言うことないんですよ。名古屋市の外にあるとはいっても、快速で1〜2駅だし、鈍行で行っても名古屋駅から20分くらいあれば十分辿り着く。むしろクルマの方が時間かかるくらいで、駅前すぐそこにあるし、コメダは2件あるし、飲み屋はそこまでないような気もするけれど、でも、住むにもいいし、聞きに来ても、素晴らしい残響のある響きに包まれることが出来る。天井の高さと会場の広さ、そして、それに十分応えてくれる響き。中にリハーサル室をたくさん取ることも出来るし、ここまで、いうことない感じ。
そこで、唯一?のデメリット。バスを停めるのが大変っていう点。例えば愛知県でコンクールをやろうってなると、一番の問題点が、大量に来る中高生のバスをどうやって捌くか、という問題。確かにこのホール、駐車場はいっぱいあるのですが、その駐車場はすべて立体駐車場。ホール前にバスを貯めとくことの出来る場所がないから、コンクールのような場合だと、それを捌くのが大変なことになる。実は、県コンクールが一回だけこのホールで開かれているんですが、一回だけで終わってしまった理由は、ひとえに、このバスの問題をクリアできなかったことにあります。動線さえクリアできれば、このホール、絶対にコンクール向きのホールだと思うんだけどなぁ……とはいえ、尋常じゃない量来ますからね、あの手のイベントでは。

で、全国クラスの団。非常にいい席を用意して貰って、さぁ、楽しむぞといったところだったわけなのですが。

第1ステージ
arr. 信長貴富・無伴奏混声合唱のための『三つの南九州民謡』
指揮:近藤惠子
演奏:岡崎混声合唱団

なんていうか、この演奏を評価している人もいたところでなんなんですが、アレ、岡混、どうしちゃったの、というのが正直な感想。
否、そりゃ、普通じゃないことを普通にやってしまう、すごく上手な団なんですよ。そんなことわかってる。でも、岡混、これはさすがに、練習不足なんじゃないの、というのが正直な印象。もともと、響きを合わせるというより息を合わせるタイプの合唱団だから、時折響き方がズレていrかな、という部分は正直目を潰れるんです。でも、時折聞こえてくるミスした音が、あまりに準備不足なような気がしてならない。他にも、男女のボリューム差が気になるとか、テナーがうるさいというべきか女声が小さいと言うべきか。いずれにしてもバランスがっとなわない。出しやすい音を出しやすいように出すというのは、時に芸術性を失った音を作ってしまう可能性もあるのだと思います。
否、うまいんですよ、決めてくるべき和音はちゃんと決めてくるし、今回はその意味では、叙情性のある歌については比較的よくハマっていたような気もします。あと、あえていうなら、3曲目は非常に完成度が高かったとも言える。でも、そんな中にあるからこそ、どことなく滲み出ている気がしてならない細かい部分の詰めの甘さが非常に目立つ。それも、民謡的な破綻とか、そういう、意図的なものではなくて、本当に無意識な、不注意、というべきもの。そんな状態にあるからして、つまりいえば、このステージは勢い不足と言わざるを得なかったし、準備不足と言わざるを得なかった。

団員、演奏が終わると上手に捌ける。そう、入れ替わりで入ってくるのが、この演奏会の特徴ですね笑

第2ステージ
信長貴富・無伴奏混声合唱のための『After…』(谷川俊太郎)
指揮;藤田魁人、小川実侑香
演奏:岡崎高校コーラス部

1曲目が今年の課題曲でした。私にとっては、札幌以来のこの曲。
否、岡崎高校の音のイメージと比べると、だいぶ明るい音を出しているな、というのが正直な印象です。暗いとは言わずとも、比較的しっかりと鳴らすタイプの音を持っているようなイメージを持っていたのですが、ともすると、リトルスピリッツのときのように、ちょっと明るすぎて深刻さが足りない、という印象も考えられる。事実、このステージに関してはその向きもあったような気がします。特に、後半になってくると疲れもあったのか、少しずつ深刻さを失っていくのがちょっとばかり気がかりでした。
でも、この団のスゴいのは、そんな懸念を、技術でカバーできてしまうという点なんですよね。特にすごかったのが、分散和音を各パートが鳴らして縦に構築するアルペジオ。あんなに同じ音質で、同じ音量で、同じ流れの中にあるアルペジオを、なによりあの速さで、さも自然に鳴らしているというのは、最早奇跡といってしまってもいいくらい。そして、この組曲の中でもっとも完成度が高かったのは、2曲目。完璧にクラッシュした縦の和音が、束になって迫ってくる。リトルスピリッツとアプローチは違うけれども、それでも確かに、この団の特徴を活かしきって、この団ならではの咆哮を生み出しました。
さすが、非常に安定した演奏でした。キレイ過ぎかな?と思わんでもないけれども、そこは、高い演奏技術で見事にカバーできている。それこそ、リハーサル時間はあるもので笑

インタミ15分。
も、あったのに、「準備ができるまでの間〜」とかいって、開演前に幕間はじめちゃう。

・幕間
「民衆の歌」(『レ・ミゼラブル』より)
演奏:岡崎混声合唱団東京支部

アンサンブルってきいていて、最初は確かに8人くらいからはじまっていたんですが、気付いたら少しずつ人が顕れてきて、気付いたら壇上には2〜30人程載っていて、フランス国旗をたなびかせながら舞台上を占領している。否、見事な大団円。しっかり団員皆さん歌えるから、聞いていても非常に力強く、見るに美しいアンサンブルが魅力的でした。

で、終わったら、急いで指揮台準備している笑 幕間する時間あるなら正直もう少し早く始められただろう!(無粋
以降、合同演奏。

第3ステージ
arr. 三善晃・『唱歌の四季』
指揮;近藤惠子
ピアノ:平林知子(客演・pr.)、水野みか(客演・sec.)

この演奏会唯一のピアノ登場。それも二倍増し笑 アタッカでつながれて5曲。
全体的にかわいらしく、美しい表現が光ります。何、この団に歌わせてしまったら、これくらい、小品みたいなものですからね笑 特に後半2曲はすごかった。何かって言うと、やっぱり、技術力なんですよね。あんな高速で、それでもガッツリハマっていく4曲目、そして、あんなりゴリゴリと鳴る5曲目のhiCなんて、世の中絶対ここぐらいでしか聞けませんよ笑 ほんと、hiCがうるさいくらいですからね笑
まぁでもその一方で、もう少し前3曲は歌い込んでも良かったのかなと思います。アッサリとした感じで、悪くはないんですけれども、でも、ほんとにアッサリと終わってしまったような印象。もっとフレーズ歌ってしまってよかったような気がします。何か、淡々と歌いすぎてしまったのが気がかりです。それか、単に人数の問題で表現の幅が広がらなかったりしたのかなぁ。否、でも、活かしてこそ、この人数でしょう。

第4ステージ
Penderecki, K.
"Agnus Dei"
"Иже херувимы"
指揮:近藤惠子

否、ある意味、淡々とし続けていたのは、このステージのためだったのかもしれません。
淡々とミニマルな展開で、あるところでぱっと展開し、とてつもなく巨大なクラスタを作り出す。
音圧、フレーズ、そのまとまりと表現のみせる深刻さ、シリアスな音楽。ベースの通奏が見せるたっぷりとした響きが見せる、そこはかとない音楽性。
コンクールで扱ったから、とかではないのだと思います。本当に、完成度の高い演奏でした。特に、この曲のテーマは何より深い。そのテーマと十分向き合っていることが本当によく分かる演奏でした。今回の演奏会では、割と浅めの響きが鳴っていたような気がしましたが、一方で、この演奏では、非常に深くて、非常に重くて、非常によく鳴る、充実したサウンドが鳴っていました。この曲聴いたのは初めてなんですが、それでも、この曲がどういう構成で、どういう流れで音を作り出しているかというのがよく分かる演奏。非常に、整った演奏である一方で、形式の中に、感情がうまく内在している。否このステージ、本当良かった。ようやく、岡混の演奏だ、と思わせられる演奏でした。……合同だけど笑
そして。
ありがとうございます文吾さん!!
文吾さんのおかげでこの記事にこの曲名載せることが出来ました!爆

・アンコール
三善晃「子どもは・・・」
arr. 信長貴富「あんたがたどこさ」
武満徹「さくら」

そして、この曲数の多さ。前は5曲くらいやってたような笑
で、このステージが一番良く分かるんですよ、団の実力が。コンクール課題曲と、おそらく何度も歌っているはずの楽曲たち。だからこそ、この曲達の仕上がり、ホントに素晴らしいんですよね。特筆すべきは、「あんたがたどこさ」。これ、アンコンでは何度聴くことになるかわからないくらいにありふれた曲なんですけど、例によって高速で動いていきながらも、すっごく整理された音が、取りこぼしもなく進んでいく。わざとらしさもなく、正に、歌われるべき音としてす歌われていく。この曲で一人ブラボーを叫んでいましたが、一人だというのが信じられないくらい。

最後、団員退場……とみせかけて、やっぱり戻ってくる。
何かと思ったら、近藤先生、来年の日程を発表してから終わる予定だったんですって笑 来年は3月16日土曜日、会場はやっぱり刈谷だそうですよ!

・ロビーコール
「ふるさと」
「Every Time I Feel the Spirits」

……だったらしいです。否、あまりの大行列に、ホールから出た頃には既に終わってた……苦笑

・まとめ

とはいえなぁ、なんかもやもやするんですよねぇ。
決して下手くそな演奏会ではなくて、そりゃ、間違いなく日本一うまいクラスの合唱団がガッツリ上手い合唱を披露してくれる演奏会だったはずなんですが、で、それは間違っていないんですが、なんだか、心の中では、妙に、満足できていない感じがある。
このブログを通して、色々な演奏に出会ってきています。その中で、少しずつ、合唱に対する価値観って、変わりつつある。良い意味では、耳が肥えてきたとも言えますし、悪く言ってしまえば、余計なこといって良いものを素直に鑑賞する心を失っているのかもしれない。
でも、たといそうだったとしても、自分の感情には逆らえないというのも正直なところ。今回の演奏、4ステは間違いなくよかった。でも、外のステージでは、必ずしも満足したとは言い切れませんでした。4ステは良いんです。更に言うなら、学生たちは今年だって努力が音になってちゃんと顕れていた。
何かって言ったら、結局、1ステの印象が、いつまでたっても足を引っ張ってしまう。否、決して、極端に下手くそなわけではないというのは、先程からずっと書いていること。でも、正直、もともと上手いことが分かっている合唱団って、聴く側としてもそのハードルを上げてしまうきらいがある。その意味では、結構損な立場できかせ始めることにはなる。
とはいえ、です。上位団なら、その期待に答えきって欲しいというのも、観客としての偽らざる素直な思いです。
しかしまぁ、贅沢な悩みではあるんですけどね。でも、こんなもんじゃないんでしょ?って思ってるんです。そうでなきゃ、演奏者として、追いかける側としても、張り合いないですもん。

2018年3月12日月曜日

【リトルスピリッツ 10th Anniversary 3rd Concert】

2018年3月10日(土)於 札幌サンプラザコンサートホール

琴似、通過。
同団マエストロが愛してやまないという琴似を背にして、いしかりライナーで小樽まで向かう電車の中で、レビュー書き始めであります笑
一昨日のセントレア鉄道橋封鎖で指定便に乗れなかった折はどうなることかと想いましたが、なんとか飛ぶことが出来て、それもちゃんと間に合って、何よりです。お陰で、昨日小樽へ行く計画はぶっ潰れましたけど←
しかしながら、やっぱりどうやら風邪だったようで笑、レビューを飛行機までで書ききる計画は途中で頓挫。遅くなりました。その割には道中、サッポロクラシックを2杯と藻岩山でランチコース食べながらハスカップワインと富良野ワイン飲んだりしているんですけどね← やっぱほら、全力で楽しまなきゃ←

さて、なんで北海道へわざわざ来たかと言えば、演奏会のため爆
実は、東海道線沿線上から離れて演奏会に来るのは、これが初めて……否嘘、このブログ書くキッカケは仙台の「遠い帆」だわ← とはいえ、アマチュアの合唱団を追いかけて飛行機乗ったのはこれがはじめてかしら。
わけあって YouTube で当団初演動画を漁っていたら、「かなでるからだ」を演奏するリトルスピリッツの動画に遭遇。で、それが、聞いてみたらめっちゃいい。音が爽やかにピッチが高く揃っている上に、フレージングも豊か。抜群に上手いわけでもないけれども、同時に、素晴らしい可能性を感じる。そのさまに心惹かれ、気づいたら北海道旅行かねがね行こうかとなって、突然の北海道上陸です笑
さて、タイトルの如く、10周年を迎えたという同団。それも、指揮者の情報を見る限りでは、多分同い年。団員はそれよりも若く、大学生〜新社会人が多い程度ということ。嘗ては大阪の貝掛混声に近いメンバー構成で、それが成長してという意味にあっては、まさに同世代同学年という点にシンパシーを感じます。それでも、演奏会は3回目。団が出来たら2年に1回は演奏会をしないと気がすまない愛知県民にとっては、驚くべき演奏会の少なさですが、それは逆に名古屋のホール事情が恵まれているからなのか、それとも、悪い意味でもなく、単なる惰性によるものなのか……
否、しっかしまぁ、わざわざ名古屋からお客さん呼んだからには貴団、なかなか失敗出来ませんよぉ(勝手に来ただけだろお前←

・ホールについて

当然ながら初めてのホール笑 地下鉄南北線北二十四条駅至近の北24西……えっと、なんだっけ(コラ)交差点すぐ近くにある「公共の宿サンプラザ」という、会議室メインのホテルに隣接したホール。公共施設ということもあってか、入口にある施設名のフォントがやけにカワイイのがまず何よりの見どころです。しかし、道民、ってか札幌市民スゴいですよね。こんな意味の分からないくらい数字で何もかも表現している地名の中に過ごして道に迷わないっていうんだから……ホント、来る前から尊敬してましたけど、ここまで意味分からないとは思わなかった笑
で、このホール、入ってまずびっくりするのが、なにより、そのあまりの絶壁さ。全部1階席ではあるものの、1階席の終端と反響板の天井が同じ高さという、とてつもない急勾配。最早すり鉢、否漏斗笑
でもその御蔭で、どの席からでもステージが非常に見やすい構成に鳴っています。ステージは間口が広くて奥に行くと狭くなる。今回は3間ウィングでしたか、それでステージがいっぱいいっぱいになるくらいなので、中規模の合唱団なのにまるで室内楽でも演っているかのような、ある意味理想的なオーダーになります。ちなみに、ひな壇は割と珍しい(?)、積み木式というか、下からブロックを積み上げていくような構成になっています。
間口が広く、絶壁ということで、客席にもよく音が飛んで来るというのが印象的なホール。5〜600人の規模にして、これだけ音がしっかり鳴っていれば十分ではないでしょうか。もっとも、響き自体はステージに篭もるのか、残響という意味ではあまりいいホールではありませんが、多目的に使うには決して悪くないホール。少し、いくらなんでも高すぎる最後列などは少々気になるところですが。
構造、内装、すべて旧い形。でも、それであるからにして、この地域の文化の一端を担ってきたのが、手に取るようにわかるホール。そう、この音も、あまたの開演を見守ってきたに違いありません。安心の、「b----------------!」←

ところで、入場が、前2列→後1列。こういう場合、名古屋だと後ろから先に入れて前を後に入れる方が多いような気がしますし、実際、そちらのほうが下手側で動線が被らずに都合良く歩けることが多い。少し検討されたいところです。幾分、団員数50人超の、比較的大所帯ということもありますし。

ちなみに、この演奏会、YouTube に動画が上がり始めてます!
(なんで演奏会聴きに行ってんだとか言わない←)
上がっているものについてはリンク貼付けてみました。是非お聞きください!

・オープニング
森田花央里「春の手」(竹久夢二)
まずは小品とばかり。とはいえ、そんな、ポツッとやるような難易度の曲でもないとは思うんですが、まぁよくおやりになる……笑
最初の弱音で入る箇所は、少々息の量が足りなかったか、頼りなさげな声にも聞こえましたが、そこを越えてからは、当初より当方が目していたフレージング能力は間違いじゃなかった、抜群のウタゴコロで楽しませてくれました。特に女声のリードと男声の応答により構成されている同曲では、この曲に限りTSABとオーダーされていることも相まって、非常に効果的に音が鳴っていたように思います。
でも何より、本当に各人が自由に表現しているんですよね。その自由な表現の中でも、皆同じ方を向いていて、音として合っている、それが手に取るようにわかる。その晴れやかな表情。

その後のトーク。「札幌にはまだ早い春」――否、意外と、春もすぐそこに来ているような気がしました。
1ステの紹介にそのまま移っていきました。何やらお出ましのお二人に通り名があったような気がしますが……まぁ聞かなかったことにしておきましょう←

第1ステージ
森山至貴・混声合唱とピアノのための『かなでるからだ』(みなづきみのり)
指揮:北田悠馬
ピアノ:藤村美里(客演)
https://www.youtube.com/watch?v=mloGgyX-GYA

いわばこの曲を聞きに来たといっても過言ではありません。初演もあるのに笑
生で聴くとイメージが変わる、みたいなことって、時折合ったりもしますけれど、今回についてはそんなことはありませんでした。否、本当に素晴らしいの一言! 寧ろ不肖倅なんぞよりも余程楽曲について理解して歌えていたのではないのでしょうか。
本当、全編に渡って、前に進めようという意欲に溢れた演奏でした。そりゃ、時折、ピッチのズレだとか、わずかにリズムの揃わない部分もありました。特にシンコペーションは難しい。正直、そういう観点で見ようと思えば見えるのかもしれません。しかし、そんなことよりも、私は、この団が披露した、この曲の解釈と自由に伸びていくフレージングを、なにより買いたい。こんなに爽やかに歌える合唱団、中々ないですよ。唯一無二と言っても良い。
北田さんの指揮も良い! 多分私と同い年なんですけれども、同い年でこんなにバトンの上手い指揮者見たことがない。的確に叩きながら、曲の解釈を歌う前からしっかりと明示できる。それに合わせて音が出ていくというのが、確かに分かるんです。かといって、過度に指揮に依存しているわけでもなく、各々が思い思いに表現しながら、それがしっかり合っているというのがよく分かる。特に、1曲目に出てくるモーツァルトのモチーフは絶品! 縦が柔らかく揃いながら、それも手掛かりにして、しっかりと前へ進む活力を持つ。特にこういうところって、無意識に、不注意におそくなるみたいなことがになりがちですけれども、今回テンポが少し緩んだのは、明らかに意図的なもの。それも、それがしっかり効果的にフィードバックされている。
否、絶品のひとこと。良いとしか書いてなくてこの項困ったくらい。最高の再演に出会えて、初演団体の一員として本当に幸せな気持ちになれました。

2ステを前に、客演指揮者へインタビュー。指揮者の北田さんが合唱と出会った中学校の恩師。プロフィールによると、三度のNコン全国出場を経験しているという実力者。この団名をつけた張本人でもあるそうです。
「リトルスピリッツという名前をつけてもらって10年。」
「あの時はもう、まだ生えたばかりの雑草みたいなもの。若いのにそれでいて壮大な意気込み――目標というより、意気込みを持っていた。教え子に合唱団を作った子はいっぱいいるが、その中でも一番若いくらい。それが立派に育って、客演に呼ばれるまでに至った。感慨深い。」
「このステージについて」
「プログラム読んで下さいって感じ(笑)。歌い手たちは、結構怒られた感じかしら。美しい高校生のための曲を、オトナになっても瑞々しく歌って欲しい。わかりやすい曲達、楽しんで聞いて戴けたら。ちょっとした笑いも取れたら、なんて!?」

第2ステージ・Nコン課題曲アラカルトステージ
高木東六「赤い機関車」(高田敏子)〈昭和45年度高等学校の部〉
野田暉行「みぞれ」(伊藤民枝)〈昭和58年度高等学校の部〉
三枝成彰「あしたはどこから」(平峯千晶)〈平成15年度高等学校の部〉
指揮:阿部和佳代(客演)
ピアノ:石井ルカ(客演)
Stage encore:
寺島尚彦「夢みる大三郎」(榎本不二夫)

そんなわけで、このステージ。普通のNコンステージと比べると珍しく、古き良き課題曲を聞かせていくステージ。この世代の曲だと、和音を合わせるというのも確かに重要な一方で、何よりしっかり歌い込める力が必要。今の世代だと、ペールに納めがちな流れも多いので、その点、歌いこなすのが逆に難しくなっている側面も否定出来ないように思います。
否センセイ、教育の成果(怒った効果!?)、しっかり出ていますよ!笑
勿論、指摘する場所がないかと言えば、さすがに嘘になる。ピッチが揃っていないところは徹底的に揃っていないし、特に、Sop. の高音部の苦しさ、これはまだいいにしても、テナーの自由さなんて、どの団もホント一緒なんだなぁと思い知らされるところ笑 低声は逆に、もう少しボリュームがあってもいい感じか。
とはいえねぇ、皆が同じ方向向いて音楽をしているというのかな、特にこの曲群、しっかりと歌に支えられつつも小技が利いている曲達。小技をしっかりと、しかしさり気なく応えつつ、その歌心にしっかりと応えて音楽にできるというだけで、聴き応えがあります。
何より、歌っている様子が気持ちよさそうで、ちゃんと、歌を歌うっていうことに執心していて、その思いがそのまま音に顕れているような歌い方。明るい音使いが目立ちますが、それはとどのつまり、教育されたものというより、心の底から自然に出てくるものといえるのかもしれません。
あと、あえていうなら、ステージアンコールの笑いの取りどころで、失笑程度で終わってしまったところか笑 大三郎さん、お疲れ様でございました←

インタミ10分。もとからいたのかしら、この時初めて来札の信長先生をお見かけします。否しかし、最近ちょっとオーラが出てきたような気もするんですけど、相変わらず一般人にしか見えないこのビジュアル、本当、どのホールにいても気付かない時は全然気付かないんですよねぇ……笑 一般のお客さんとして来てても目立つ人っていうのもいるのに笑

3ステ前の曲紹介。そう、この日は3月10日。さすがに東北から離れているだけあって、被災地ムード、というわけではありませんでしたが、それでも、思いを致すところはある。コンクール課題曲としても使った同曲を、然し3月10日に菜園するという意味。「皆様の生きる力となりますよう」。

第3ステージ
信長貴富・無伴奏混声合唱のための『After…』(谷川俊太郎)
指揮:北田悠馬

コンクール課題曲というだけあって完成度は高い……と書こうと思ったけど、なんか違うな。否、完成度は決して低くはないのだけれども、その言葉で演奏を形容するのは、ちょっと違うような気もする。
一番最初聞いた時は、もともと持っている楽器の影響もあってか、ちょっと音色が明るすぎるかな? と思ったのが正直なところ。でも、この団、前述の通り、思いが入ると、逆にスゴいんですよ。
特に、2曲目「絶望からしか希望は見えない/生まれない」の絶唱。文字通りの絶唱。ややもするとあんなことしてたら音ブレちゃうんじゃないのってくらいの、動作にすら顕れた絶唱。そんな事気にしてられないくらいに、心の底から顕れた咆哮が、見るにも美しく、そして音としても、本当に魂がこもっている。そして、それがあるから、3曲目が対称的に美しく収まるのではないでしょうか。
そう、信長先生、時折、最後から1曲目に美しさのピークを持ってくることがありますから、4曲編成の終曲のスタンスって、すごく難しいことがあるんですよね。今回の曲も「そのあと」、ある意味、深刻な音使いで希望を歌い上げる、非常に難しい曲に聞こえるのですが、この団の明るい音があるから、逆にそこまで深刻にならずに終わっている。これ、解釈が分かれるのだと思います。深刻なものは深刻なまま終わったほうが良いんじゃないかって人は、必ずしもいる。でも、僕は、これでいいんじゃないかと思います。これがあるから、明日への活力にできるような音が鳴るんじゃないかと。ここまでくると、単に解釈の問題とも言えるのですが。
すごく、リアリティがあるんですよね。何にしろ、歌に。心の底から共感して歌っていて、それが伝わってくるから、本当に、絶望の中から希望が湧き出てくるような気がします。

インタミ10分。ところで、こういう旧いホールだと、「休憩◯分」と打ち出すことの出来るようになっている電光掲示が大体あるんですけど、これが使われている様子というのをあまり見たことがない。今日もご多分にもれず使われず。あったらあったで親切だとは思うんだけどなぁ。否、この演奏会に限った話でなく、ね。

さて、初演前には北田さんを聞き手にして信長先生インタビュー。
北田「リトルスピリッツと会ってからについて。私とは、旭川で最初に会った記憶がある」
信長「音源を聞いたりして、若いなとは思っていたが、こんなに――子どもだとは笑 オトナがいないっていうか、予想外の若さ。今までのプログラムを見ながら、その延長でありつつ、それを越えて行くような作品を作った。団としても私としても、今まで演ったことのないことをやりたいと思った。ラテン語を使いつつ、ピアノを使った曲。大変なハードルになったと思う。」
北田「いい曲だが難しく、今日が楽しみだった。この曲を通し成長することが出来れば。」

第4ステージ・10周年記念委嘱新作初演
信長貴富『交響する二つのグロリア〜混声合唱とピアノのために〜』〈初演〉
「地平線上のグロリア」
「水平線上のグロリア」
指揮:北田悠馬
ピアノ:石井ルカ(客演)
Gloria のテキストを使い、アイヌの「日蝕のときの呪文」を参照しつつ、和声的に響かせていき、段々と跳躍する平行和音が不気味な響きを、そしてそれが荘厳さへと昇華されていく一曲目、そして、琉球旋法による主題を基本にして、広がりゆく和音と、ヘテロフォニックに響く女声を中心として、水平線が現出し、又淀み、ポリフォニックに徐々に美しい和声が回復し、再び琉球旋法と共に、大団円のAmenで締めくくられる2曲目。
いずれも、実験的でありながら、アイヌと琉球といういわば対極的なものを結ぶというコンセプトのもと作られた同曲。ひとつのテキストでありながら、そのアプローチを変えつつ、まさに対極のように異なる二つの祈りが鳴っている。しかしそれが全く交わらないかというと、そういうわけでもなく、かすかにその結節点を見いだせるような気がする。非常に難しい作品でありますが、何度も聞いてみたい、スルメのように魅力が浮き出てくるだろう佳曲。多くの再演を以てその解釈にも磨きがかけられることを期待したい曲です。特に1曲目はすごく好き。
しかし、難しい作品だったんだなというのが、演奏からもよく見えてしまいました笑 否、概ねよく再現できているのだと思いますが、細かい言葉のつぶやきとともに、和声を積み上げる場所――リーダーシャッツの「一番星見つけた」のような――は、非常に苦労している様子が垣間見える。そりゃそうですよね、難しいですもん、一つのパートだけでなくて、全体のパートが同じような音色で同じような音量で出すことが出来ないと大前提として揃わないパート。一つの音にすらするのが難しいパート。
とはいえ、初演としては十分成功していたのではないでしょうか。この難曲を、ノーヒントの中、一から作り上げるっていうのは、非常に体力のいることだったと思いますが、それは確かに、この楽曲に込められたエネルギーの再現として良く成立していたのだと思います。特に、tutti になるとすごく強い。だから一曲目により魅力を感じられるのかも。斉一的に動いて、一つのスピリッツを示すそのサマよ。

拍手のうちに信長先生が呼ばれて、そのままどうなるのかと思ったら、まさかのアナウンスとともに、アンコール。

・アンコール
小田美樹(arr. 信長貴富)「群青」(福島県南相馬市立小高中学校平成24年度卒業生(構成・小田美樹))
指揮:信長貴富(客演)
ピアノ:石井ルカ(客演)

信長先生が指揮、という、だいぶ珍しい形でのアンコールが実現! アンコールとはいえ、ワークショップなどではなく、演奏会という形での指揮は、大変珍しいのではないでしょうか。
しかし、この日、この曲です。多分、彼らよりもっと若い人たちのために書かれた曲なのかもしれませんが、この曲がこんなに映える演奏を出来る団も本当に、少ないような気がします。すっごく明るいし、みんな演奏会なのにノリノリなの。アンコールだから、とかじゃなくて、全編通してそうなんだけど、ここでは余計に。本当すごいことだと思います。

信長貴富「ブギ・午前一時」(木島始)
指揮:北田悠馬
ピアノ:石井ルカ(客演)、藤村美里(客演)

で、バトンタッチしてこの曲。何度も歌ってきたという同曲は、群青にも増して、全員がステージ上に広がってもまだ、まるで練習からそのまま持ってきたような、そのノリノリのアンサンブル! 特に男声なんか、互いに目を合わせながら華麗にスウィングしてくのが本当最高! 否これはブラボー! 最後ピアノが静かめに終わるので躊躇しちゃいましたが←、勢い次第では完全に声出してたレベル。最高に楽しい演奏で、本演奏会大団円となりました。

・まとめ

色々考えて、最近この「まとめ」を一番最初に書くことも多いんですけど、今回は、言葉が見つからなかった。色々書いていくうちに見つかるかな、と思ったけど、やっぱり見つからなかった。上述の通り、欠点がないとは決して言わないし、この団の伸びしろというのは随所に隠れているんですが、それでもやっぱり、この言葉に終始するのだなぁというのを思い知らされる。
もうね、最高に楽しかったです、というほかないんです。本当に楽しくて仕方なかった。他のどんなに上手い合唱団よりも、この日のリトルスピリッツの演奏は、心の底から光っていた。
このブログ、もとは、当方が大阪に在住していた時、知り合いの名古屋の人宛に、大阪の合唱事情ってこんなで、こんな面白い活動してるんですよってのを紹介する意図で始めているんです。だから、有名団の演奏会だけでなく、地域のいぶし銀の合唱団にも十分にスポットをあてて、面白い活動している団がこんなにいる、というのをしっかりと紹介する、いってみれば、マイナーな団でもしっかり取り上げることに注力してきました。名古屋に戻ってきて、その役目というのが徐々に薄れてきているなとは感じていましたが、それにしても、メジャーな演奏会だけに終始すまい、という心だけは忘れずにいたつもりです。
この団の演奏会に導いた動機は、全く純粋な興味によるものです。でも、そうであるからして、この団は、本ブログの趣旨に十分に沿った実力を持つ、素晴らしい合唱団でもありました。
北田さんの意思にもあるようですし、道内では様々なジョイントコンサートを開かれていて、地域の若頭的存在に鳴っていくのかしら。その意味では、これからさきもどんどん、札幌に留まらず全道に渡りその力を発揮して欲しいと思いますし、本州にいる人間からしたら、仙台、なんなら青森だっていい、どんどんと道外にも活動の幅を広げてほしいなと心から思ってやみません。地域を捨てろ、という意味ではない。こんな良い合唱団、道内に留まっているなんて惜しすぎる、否、北海道の人が羨ましすぎる。
今、必要とされている若手合唱団なのだと思います。各地でいろんな合唱団が結成され、それなりに悩んだり落ち込んだりしながら、必死にその生き残りをかけ演奏活動を続けている。この団とて例外ではないのだと思います。もしかしたらそんな落ち込みが音にすら顕れかねない中、しかしそれでも、この団が持つ明るい音色は、この団の特徴であり、私たちの希望の光です。こんなの、お世辞でもなんでもない。実感です。これからも、どんどんと、全国へ向けて、そのリトルスピリッツを輝かせて戴けたら幸いです。

2018年3月10日土曜日

【法政大学アカデミー合唱団演奏旅行名古屋公演】

2018年3月9日(金)於 名古屋芸術創造センター

ボールペンvsカレーの仁義なき戦い
いやー、つけるものはやっぱり提供ですよ(何
アンケートについているのはペグシル……ではなく、なんとパイロットの提供による「アクロボール」0.5mm。なんだ、ボールペンなくてもよかったのか(何)その代わり、ノートと思って出してみたら岐阜聖徳のサブパンフだったりしたけど(何)

そんなわけで、名古屋に珍しく演奏旅行がやってきてくださいました。ほんとに珍しいですよ、なにせ、東京―大阪間よりも東京―名古屋間の方が距離があると信じてやみませんからね←
おいで戴いたのは法政大学アカデミー合唱団。福永陽一郎の傘下に1962年創団。その翌年から演奏旅行を始めているという、旅行にはじまり旅行に終わる合唱団。六連、サマーコンサートと合唱祭、さらには定期演奏会と、通常運転にみせつつ比較的演奏機会を増やしている合唱団。否、お外だと学生団でも演奏本数ってこんなもんなんですよ名古屋の皆さん?← とはいえ、これに加えて、最後は毎年演奏旅行でその代を締めくくるという、比較的タフな合唱団といって差し支えないのではないでしょうか。ちなみに、名古屋公演は8年ぶり6回目の演奏とのこと(実は結構来ていただいているのね笑)。この演奏会のために渉外スタッフは名古屋に1ヶ月前から詰めているというのだから驚きだ……笑
そんな努力の成果は、キャパ7割程度。うーん、渉外さんはでも、本当に頑張った結果だと思う。最近の名古屋人、内向きさに磨きをかけているから……←

・ホールについて

個人的に思い入れの強い同ホール。やっぱり、今行くときもワクワクします。19号挟んで隣の病院とは、もう迷わなくなりました笑 幾分、現ヤマザキマザックが嘗て自走式立体駐車場だったころから知っていますからね笑
さて、このステージ、例によって響かない、鳴らない、と、決して条件自体は良くないホール。ちなみに、地下にあるリハーサル室では、無響室にすら近いくらいの全く響かない空間でのリハーサルというのを楽しむことが出来ます。是非、機会がありましたら笑 ホワイエも古く、トイレも古い。なにもかも古い。なんなら、ラウンジのバーカウンターではなく、誰でも入れる場所に喫茶店があるのも、まぁ、古い(悪口ではない)。
でも、その古さにも魅力がある。このホール、栄から歩けて、新栄町駅からだと徒歩5分足らずで辿り着くという絶好のアクセスに加えて、すごく街に馴染むんです。建物の外壁を照らすようにしてオレンジの光が当てられてぼやっと暗いうちに浮かぶホールは、中々見るに芸術的なホールです。ヘキサゴンの中身に合わせるように、外見も中々面白い形をしていて、階段に向けて張り出すカーテンウォールは、これから鑑賞と言う時にとてもワクワクさせた気持ちにさせてくれる。
過去の記憶かもしれません。でもやっぱり、どんな品質であろうと、このホールには、ワクワクさせられっぱなしなんです。憎めない、嫌いになれない。ほんと好きなホールです。

・エール
「法政大学校歌」(佐藤春夫)

暗転の中入場、指揮をピンスポにし、団員列より歩み出て一例、その後、音を取り、音が出たところでカットインで全照。そうそう、こういう細かい演出は、名古屋ではめったにないのでね、なんだか県外に来た気分です笑
ホールのせいもあってか、イマイチ鳴っていないのは気になったところ。でも、これはさすがに聴衆の慣れの問題かなぁ。とはいえ、やや全体的に投げ飛ばすような音が飛んでくるものの、よくまとまってはいて決して悪くない。ちょっとこじんまりとした感じは気になるところ。

団員数80名程度のこと、そんな中、オンステは50名程度か。ちょっとした舞台転換のまどいもありつつ、本編へ。

第1ステージ・武満徹の「うた」
「翼」(武満徹)
「◯と△の歌」(武満徹)
「明日ハ晴レカナ、曇リカナ」(武満徹)
「小さな空」(武満徹)
「島へ」(井沢満)
指揮:菊間翔太

まずは、小技を色々と要求されるこの曲。聞いている分には聞き馴染みがいいんだけど、歌うとなると大変なんですよ、この曲……笑
エールから引き続き、この曲も、比較的よく整理されていて好感の持てるところ。寄付上のデュナーミクが異様に多いのも、武満、あるいはこの世代の音楽の特徴ではありますが、そんな中においても、結構しっかりと再現できていたように思います。で、音も、ちゃんと、あるべきところに収まっているように思えたので、その意味でも良しとしたところ。込み入ったところでは時折崩れてはいましたけどね、さすがに笑
とはいえ、何より気になってしまったのが、「心ここにあらず」といった音が飛んでくる点。今思えば必死だったのかもしれませんが、言ってみれば、黒か白か、物凄くベタ塗りの音が鳴っていたように思います。特にソプラノ。非常によく鳴らしているものの、他3パートと比べて非常に浮いた音が鳴っていたように思います。これは特に鳴らし方の問題が一因にあるような気もしますが、一方では、音に柔軟性が失われてしまっていて、他のパートと交わることが少なかったように思います。技術でしっかり表現しに行けることは当然評価されるべきですが、それでもなんだか、寂しい音が鳴ってしまっていたように思います。特に、「◯と△の歌」。音の端々から、事故らないようにという配慮ばかりが見えていた。崩れてしまっていいから、もっと歌い込んでも良かったんじゃないかなぁ。
次の音へ向かうワクワク感が少ないのが非常に残念だったところ。その意味で、この曲の音源で一番出回っているのは東混だから、難しいところでもあるんですがね。あの団、音を進めることについては一級の実力を持っていますし。

第2ステージ
千原英喜・混声合唱とピアノのための組曲『みやこわすれ』(野呂昶)
指揮:増田茜音
ピアノ:久邇之宜

そして、続いては、最近の千原の流行りどころの一つ。順徳上皇の佐渡流しにまつわる「みやこわすれ」という花をめぐるファンタジーとも言える同曲。美しいメロディとともに、叙情的に切情が語られるという意味では、千原英喜の最近の作風によくある流れとも言えます。でも、この流れ、本当好きなんですよねぇ……様々な文化における信仰心を取り扱ってきた千原英喜だからこそわかる、万物に対する共感の念。これがこんなにもわかりやすくパラフレーズされているというのがなによりの魅力といったところです。
でも、そんな中でも、やっぱり気になってしまうのが、表現の硬直性というべきか。確かに非常によく音に出来ているんですが、切るところがザクッと切れてしまっていたり、音符の中での柔軟性というのが失われてしまっていたり。なんだか、確かに表現はされているものの、あくまで言われたことの範疇を出ていないというか。
その点、必要以上に「完成形の追求」に心を取られっぱなしなのではないかと思ってしまうところです。完成形って確かに、楽譜を全てさらった先にしかないとは思うのですが、完成形は決して、楽譜を全てさらったまさにそのところではない。もっともっと先にあるのだと思います。逆に言えば、この団、楽譜をさらうことは出来ているのです。現に、聞いていて少なくとも違和感があるような音は鳴らさない。でも、もっと先の方へ行ってもいい。
例えば、各パートのブレンドというところから始めても良いのかもしれません。パート内での響きは非常に良く合っているので、今度はその先、各パートの音をよく聞き合って、和音がよりひとつの音として鳴るようにもっと工夫をこらす。例えば、ユニゾンからはじめてみるのが良いのかもしれません。響きが揃った、という実感をまず得ることが大事かと思います。

インタミ15分。

第3ステージ・賛助出演ステージ
団歌「グランツェ、それは愛」
相澤直人「チョコレート」(『小さな愛、4色』より)
松本望「Tempestoso」(『天使のいる構図』より)
*Whitacre, E. "Leonard dreams of his flying machine"
*, **相澤直人「カレー作りなんて簡単さ」「おかわりのうた」(『僕らのカレークエスト』より)
信長貴富「リフレイン」(『等圧線』より)
演奏:混声合唱団名古屋大学コール・グランツェ
指揮:伊東恵司*・山崎浩
ピアノ:阿部夏己・近藤千紘**

さて、地元合唱団の演奏。というには、随分土臭くない(?)合唱団の演奏です笑 幾分、全国金賞ですからね、ええ、地元の誇りですけん(どこの土地のもんだお前)。団歌を皮切りに、この前の演奏会のベストセレクションとばかりに抜粋。そのうちウィテカーを除くすべての曲がグランツェ初演ときたものだから、さすが10年の積み重ねです。
演奏会直後という意味では、よくも悪くも、演奏会のクオリティそのままに。とはいえ、今回のオンステは約半数(80人程度←)、それでもこれだけのクオリティを確保しているのだから、スゴいものです。噂では、会場キャパ入らないから、必然的に練習が半分半分になってアンサンブル練習状態だとか←
でも、何がスゴいかっていったら、やっぱりこの団の魅力はアンサンブル力にあるんですよ。この前の演奏会のレビューでは、確かに、もっとアンサンブルを、と言ってみたものの、規模がよかったのか、或いは単なる相対論に過ぎなかったのか、必ずしも正確に歌えているわけではない部分も、しっかりと音楽を進めようと全員の息を合わせるから、いつまでも聞いていられるし、次の展開に向けて耳を、意識を持っていくことができるんです。ワクワクする演奏。完璧ではないにしろ、そこへ向けての意識を向け方は、やっぱり、ホンモノなんだなと思います。
ちなみに、後ろのオジサマ方が、「やっぱり、卒業間近の子がオフステなのかねぇ」みたいなこと仰っていたんですが、私、見ちゃったんです。なんか、今年 M2 を修了するヤツが、そのステージに乗っていたのに……笑

第4ステージ・Oh sing unto the Lord a new song〜近代イギリスの合唱曲〜
Rutter, J. "A Choral Fanfare"
Stainer, J. "God So Loved the World"
Walton, W. "What cheer?"
Delius, F. "To Be Sung of a Summer Night on the Water I"
Rutter, J. "Cantate Domino"
指揮:小久保大輔

そして、このステージ。イギリスといえばクラシック不毛の地、というのは、そろそろやめにしたいところ。特に合唱曲に関して言えば、ラターに限った話でもなく、非常に多くの曲、ジャンルで楽しませてくれる地域です。そんな、イギリス曲のセレクション。
このステージにおいても、先述していたような音の硬さの問題は残っていました。英語の発音も、もう少しクチを柔らかく、多彩な母音の表現に力を注ぎたかった。まぁもっとも、そりゃ、その意味ではこの団の音色は硬い音にあるという意味では、そう簡単に変わるものでもないのだと思います。
ただ、特に "What cheer?" や "Cantate Domino" のあたりでは、その硬い音が逆にいい方向に働いていたようにも思います。硬い音が逆に、こういうキャッチーな曲だと、音のハマるべきリズムを明確にして、しっかりと聴かせてくれる。ある意味では、イギリス音楽の特色なのかもしれませんが、非常にいい意味で典型的な音が鳴るから、リズムをハメると非常に効果的に音楽が進行していく。その意味で、この団にとって非常にいい選曲となったのだと思います。
小久保先生の指揮も、ある意味、団員を解き放ってくれた面があるのだと思います。音に対して、音楽としては、前半よりもよく流れていたのが印象的です。思いっきりノッていて、それでいて非常によく叩く小久保先生の指揮、非常に歌いやすそうだなぁという印象。そう、全体で揃えるのは非常に上手い団。指揮が良いと必然的に音も良くなっていくという意味では、非常に素直な音を鳴らす団なのだと思います。ソプラノの音なんて、まさにその典型と言えるのかもしれませんね。

・アンコール
法政アカデミー×小久保
「Hey Jude」
合同×伊東
「ここからはじまる」

まずは、法政の単独で。この曲ともなると、ロンドン・オリンピックでもそうですが、やっぱり、大団円しなきゃいけないんですよね笑 最後のスキャットに手拍子で楽しんでいると、ホワイエからグランツェの面々が入場。皆ステージに上がって、大団円となりました。いやぁ、気持ちよさそうだ笑
そして、そこで伊東先生にバトンタッチ。伊東先生と言えば、同グリの出。そう、同グリといえば、福永先生。その親近感に思いを馳せて、時代や地域を越えた繋がりに、思いを込めて、これもひとつの大団円。なんだか、ひとつの思いのもとに見事昇華されていった印象です。

・ストーム
1曲目(曲名情報募集中)
Sinatra「My Way」
指揮:増田茜音、菊間翔太
ピアノ:久邇之宜

ステージストーム。1曲目はごめんなさい、どこかで聞いたことあるような曲ですが……2曲目も、「S◯NGのアレ」みたいなメモが残してある程度です←
2曲目では、熱い思いを歌い上げる団員。そう、当代最後のステージですものね。聞いているこちらが次第に引き込まれていく、控え目ながらとても美しいステージであったように想います。

・まとめ
考えてみたら、中々体力の要ることをやっているなぁと思います。
幾分、それこそ福永陽一郎の名前が出て来るくらいには歴史の長い団。積み重ねてきた歴史と自負、充実したマネジメント体制と手厚い支援。そしてなにより組織力。その全てが自分たちの手によるものではないにしても、この団が持つ底力には凄まじいものがあります。演奏面でも、当初は少し硬かったのが、段々とほぐれてきて、第4ステージでは自分たちの音楽を見せてつけてくれました。
なにせ、名古屋です。下手したら大阪よりも遠いと目されているだろうこの土地に、おそらくそこだけでなんでもできるであろう土地からわざわざ出向いて、しかもそこが最終学年の最後のステージとなる。昔からやっていることだとしても、中々出来たものではありません。まして、渉外なぞ3名も1ヶ月前から現地入りして、そのうちオンステはわずか1名。それだけの努力と犠牲をはたいてこのステージを完成させたことに、まず何より心からの敬意を表せねばなりますまい。
なにせ、学生団です。それは、合唱団である前に、部活であり、サークルであります。サークル然としていよ、という意味ではない。ただ、イベントごと自体にこそ、重要な意味を持つというのは、サークルである以上、およそ間違いのないことではないでしょうか。そして、それは絶対に、本人たちの血となり肉となり、今後の人生において得難く、かつ絶対に活きてくる経験となるでしょう。
残念ながら今回の演奏会は――日取りも原因ではあったか――満席というには少しさみしいお客さんの前での演奏でした。でもこんなの、彼らの熱意に応えられない名古屋のオトナたちが悪いのです(本当、つれない地域でごめんなさい←)。最後には非常にスッキリと終わっていき、そして熱い涙の中に大団円を迎えたこの代の皆様に、心からのエールを贈りたいと思います。どうもお疲れ様でした!

そんなわけで、名鉄遅れで乗れず振り替えた飛行機で執筆、札幌市内某ホテルにて上梓。
今から、合唱団の演奏会行ってきますよ〜!

2018年3月5日月曜日

【混声合唱団愛知学院大学グリークラブ第53回演奏会】

2018年3月4日(日)於 熱田文化小劇場

いやぁ、弊団に宣伝でお越しいただいた際にですね。貰ったわけですよチケットを。
それもたっぷりと、占めて10枚程度。
なのにね私、家出る時急ぎすぎてね、
全部忘れてしまってね

……まぁそりゃ、払いましたよ、500円笑

・ホールについて
否、もう、何度書いたかわかんない感じになってきましたし(と思ったら、わずか3回しか書いていなかった模様……まぁいいや←)、どんどん書くこと減ってくるんですよねぇ……ということで、周りの知り合いに、何書いたら良いか聞いてみました←
◯団旗つけられない問題
そう、学生団だと、結構大事な問題。普通だと、天反と正反の間からバトンを降ろして団旗をかけますが、このホール、反響板がホール組み込みのこともあってか、この形で団旗がかけられないんです。学生団たるもの、団旗かけとかないとOBとかうるさいですからね(コラ)。そんなわけで、このホール、普通の団だと、ロビーにある間仕切りのある場所に団旗をかけていることが非常に多い。そんな今回はどうしたかというと、ステージ上にボードをおいて、そこに団旗を掲示。なるほど、愛知県合唱祭でも似たような形でやっていますが、この手があったか……笑
◯椅子がいい感じで座りやすい
というのを以前わたべが書いていて、確かに今回座りやすさを感じた、と言われたのですが、で、過去の当方の記事を見返してみたのですが、うん、やっぱり、そんなこと、どこでも書いた記憶がない……←
そうそう、今日、なんか割と響きに助けられていたような気がします。ステージのあたりでフワフワしていましたけど、やっぱり、残響時間は充実している。その意味で、一番最初に書いた、響いている気分を味わうという意味では、やっぱり優れたホールなんだよなぁ……。

・エール
「我が歌 Das Lied」
「愛知学院大学校歌」

一番最初の段階で、くぐもってしまっているような声が聞こえ、低く聞こえるのが気がかりです。上がったら上がったで自然に上がっていないで、喉を締めているように聞こえる。勢いが足りないのかなぁ、と、この段階で思い立つ。もっとも、以前よりはよく整理された音には聞こえるのですがね。

第1ステージ:アラカルトステージ
信長貴富「しあわせよカタツムリにのって」(『旅のかなたに』より・やなせたかし)
田中達也「レモンイエローの夏」(『レモンイエローの夏』より・みなづきみのり)
BUMP OF CHICKEN(arr. 牧戸太郎)「花の名」
石若雅弥「ありがとう」(『ありがとう』より・谷川俊太郎)
指揮:間瀬奈月
客演ピアノ:天野穂乃香

そう、勢いだけが全てではないんですが、きれいに音を揃えられる団は、皮肉にも、勢いだけで解決できる問題というのを抱えていることもあるのです。以前とあるところで「息の少ないリコーダーという例えをしたことがあります。リコーダーって、息を少なくして、か細い音を出すと、音が低く聞こえることがあります。そして、息を充実させるという意味では、音を出すのを躊躇すると、その分息のスピードが減衰し、テンポへの食いつきが悪くなったり。
息の流れとか、頭声の響きで、とか、色々ない異様がありますが、とどのつまり結論としては、それは単なる「勢い不足」とすら言えてしまう問題かもしれません。
この演奏もね、比較的キレイだったんですよ。キレイにしようとする、そのことを十分意識しようというのも、よく見える演奏とも言えます。でも、逆に言えば、特に高声、綺麗さを意識する余り、丁寧に出そうとして、皮肉にも息のスピードがどんどんと落ちてしまう。
でも、「ありがとう」の歌詩に対する表現は目をみはるものがありました。特に「ありがとう」という言葉の扱い方が非常にうまく、しっかり言葉として聴こえてくる上に、アンサンブルでもうねりがよく聞こえてくるのは秀逸でした。その意味では、この曲に関してはしっかり息が流れていたといえるのかも。

第2ステージ:学生指揮者ステージ
信長貴富・寺山修司の詩による6つのうた『思い出すために』(寺山修司)
指揮:間瀬奈月
客演ピアノ:大本絢子

勢い、と、その意味では親しい問題なのかもしれません。この曲に関して最大の課題は、ピアノに負ける、その一点でした。特に一番最初とか。小さい中で徐々に存在が知覚されていくように、声が上がってくるこの組曲のオープニング。この効果が最大限発揮されるためには、声も声でちゃんと聞こえてきて、ピアノの中から這い上がってこないと効果とならないわけですが、それが負けてしまっていたのが残念でした。20人はいる合唱団。決して、人数の問題とは言えません。結局、欲しいのは、音圧であり、勢いである。
勿論、叫んで良いわけじゃないし、がなってどうにかなるものでもないけれども、皆で息を合わせて、大きな声を出すことで解決できる問題というのが、しっかりあると思うんです。それを証明する場面というのは、皮肉にもこの組曲中にあって、比較的勢いの出しやすい「思い出すために」は、比較的音圧豊かに聴くことが出来る。それより前の、弱めの音が続く楽章で、しっかり歌いきれるかどうかというのが、一つ要となってきそうです。
その将来形を垣間見ることができたのが、「種子」冒頭にあるソプラノのヴォカリーズ。しっかりと鳴りながらも、自然に高い響きが鳴っていたのは、非常に安心できるものでした。
否それにしても、この曲、なんかすっごく久々に聞いた気がするなぁ。なんだか、物凄く最近の曲のように思っていますけど、軽く見積もっても15年近く経ってるんですよね、この曲が出来てから……すっごく歳取った気分だと、周りで話しとりました笑

インタミ15分。

第3ステージ:同声ステージ
・女声
久石譲(arr.白川雅樹)「風のとおり道」(『スタジオジブリ名曲集』より・宮崎駿)
大中恩「うたにつばさがあれば」(『うたにつばさがあれば』より・春口雅子)
木下牧子「きんいろの太陽がもえる朝に」(『愛する歌』より・やなせたかし)
・男声
多田武彦「月から見た地球」(『月に寄せる歌』より・北原白秋)
タケカワユキヒデ(arr.猪間道明)「銀河鉄道999」(「アニソン・フラッシュ」より・奈良橋陽子、山川啓介)
指揮:間瀬奈月
客演ピアノ:天野穂乃香

2年前、うちのブログで確か、ポップスだけで時代も変わったなぁとか書いたんですよね。そしたら、なんか、ちゃんと合唱曲も並べていて……なんか、別に僕として間違ったこと書いたつもりもないのですが、妙な罪悪感が笑
女声合唱1曲目は、独特な雰囲気から自然に膨らむ音が見せるフレージングがいい感じ。でもって、全体として女声合唱響きが明るく、非常にしっかりとした音が鳴っていて、好感が持てました。なんか、混声のときよりも鳴っていたような気がする……笑 むしろいっそのこと、その音圧を活かして、特に後半2曲はもっとしっかり歌い込んでやってもよかったかも。これは以前のステージからそうで、少々淡白と言えるのかもしれません。
そして男声……えっと、「さて、ここからは宇宙旅行の時間です」とかブチ上げるから、こちとら笑えてきて(失礼w←)まともにきけなかったやないか←
どうしても協和音でゴリゴリ攻めるタダタケだけに、内声がバラけている様子が手に取るようにわかるのがとても残念。もっと聴き合ってアンサンブルしたかった。加えて2曲めでは、どしょっぱから遅れていっていたのが本当に惜しい。もっと食らいついて行きたい。そして、勢いとはいえ、怒鳴っちゃいけないよね、というのもまた、2曲目。高音が思いっきり喉に上がっているのはいただけない。無鉄砲な勢いとは、ちゃんと縁を切っていくべきか。うーん。

4ステ始まる前に、石若先生と団員でプレトーク。愛学のことを、「音源を聞いて、とてもキレイでクリアな音を出しているイメージ。少人数ながらしっかり歌えている」と評したこのトーク……えっと、軽妙に用意していない(褒め言葉)インタビュアーによる、愛嬌だけでどうにかしようとする(褒め言葉←)巧妙な掛け合いが笑 上の石若先生の言葉に、「ほめられすぎている」と団員、そして石若先生がひとこと「――ここでケナしてもネェ」……御意←

第4ステージ:客演指揮者ステージ
石若雅弥・無伴奏混声合唱曲集『風のマーチ』(谷川俊太郎、与謝野晶子、新川和江、伊藤一樹)
客演指揮:石若雅弥

さて、石若先生、コールドラフトに顕れるような、ガッツリとした総合芸術(!?)にも顕著なように、作曲でもキャッチーな路線に留まらず(否ドラフトはキャッチーだけどさ←)、比較的色々なことをすることの出来るマルチさが故か、非常に豊かな表現の引出をもっています。その表現の引出の多さが非常によく生かされていたように思います。で、何がよかったかというと、その表現の引き出しの多さを、非常に秀逸に整理されている点。表現がこれからどこへ向かって、どう着地して行くのかを、音がなる前のアインザッツで着実に表現できていた。だから、最初の音から最後の響き方まで、ちゃんと管理された中で自由な表現で音が鳴っている。
「楽譜に書いてないこと」に対する表現、解釈が、非常にしっかりしていたんですよね。だから、でも、しっかりと準備してから鳴らさなきゃいけないから、漫然となる音がないんですよね。鳴らす前から準備が出来ている。だから、最初から勢いのある音が鳴っている。――とどのつまり、先程から申している「勢い」っていうやつは、事前準備って言うことなのかもしれません。
事前の準備したことを、思いっきり表現するためには、音の一番最初から最後まで表現を載せ切らなきゃいけない。それが、結果として音楽としてしっかりなるようになる。石若先生の指揮は自由でありながらにして、しっかりと鳴らすためのヒントに満ちていたように思います。そして、実際に、そのヒントを、知ってか知らずか拾えていたのが、このステージであったように思います。

団長挨拶を経て、アンコールへ。

・アンコール
石若雅弥「夕暮」(谷川俊太郎)
指揮:石若雅弥
瀧廉太郎(arr. 信長貴富)「花」(武島羽衣)
指揮:村瀬輝恭(技術アドバイザー)
信長貴富「歌になりたい」(一倉宏)
指揮:間瀬奈月

そして、学生団。アンコールになると、途端に演奏が良くなる、という噂――否、今回に関して言えば、石若先生の指揮に引きずられてか、アンサンブルの自律性が少々増していたように思います。だからか、だいぶ表現が豊かになっていたように思います。しかし、そろそろ、「花」を聴くに良い、穏やかな季節になってきましたねぇ……

・ロビーコール
「いざたて戦人よ」
北川昇「翼」(みなづきみのり)

「翼」は、コンクール自由曲。愛知県コンクールの結果は銀賞。否、選外でも、どの賞がつくかって意外と大事。しっかりと銀賞を持ち帰ってくるのは、やっぱり、十分、努力の証なんです。

・まとめ

不思議なもので、こういう演奏会って非常に多いんですよ。
何か、客演の先生が出てくるまでの間は、どうも煮え切らないヤキモキしたものを感じつつ、いざ客演の先生が出てくると、会心の演奏をしてしっかりと締めてくるみたいなところ。なんだ、この団、ちゃんとこういうことできるんじゃなの、と感心させられながらも、一方で、なんでこれより前のステージでは、このアンサンブルができなかったんだろうと、頭に少し疑問符を浮かべてしまう感じの、結局なんとも煮え切らない感じで終わる演奏会。
否、ある意味スッキリしてはいるんですよ。どう考えたって上り調子で終わってくれるから。多分、団員たちの爽快感も良いものがあるだろうし、それはそれでいいんですけれどもね(特に学生団だし)。でも、正直に言えば、この、先生との演奏から学んだことを、他のステージで応用できないのかな、というのを、ちょっと思ってしまうんです。
今回の演奏会も、ご多分に漏れずそんな感じ。しっかりと勢いのある音を鳴らせていた最終ステージに対して、他のステージ。ここで、ちゃんと、客演ステージのような音が鳴らせていれば、演奏会全体で、もっと音を引き締められたはずなんです。
否なにせ、もう終わった話だし、最終ステージが楽しめたからいいじゃないのと言われれば、ぶっちゃけ確かにおっしゃる通りではあるんです。でもなんか、もったいないようなきがするんですよね。だって、それができるのにやっていないっていうのは、そりゃ、潜在能力って言えば、聞こえは良いんだけど、さ。
客演の先生ってやっぱりスゴいねってところから、さらに一歩上にいくためには、とどのつまり、客演の先生から教わったことを、次にどんどん応用していく、その力が大事であるのだと思います。学んで、よかった、でおわるだけじゃない、それを、次に活かすことの出来る。そうすることで、自分たちでできることがどんどん増えていくだけでなくて、先生からも、もっと深いことをどんどん引き出せるようになる。
否、潜在能力はあるんです。だからこそ、これからもどんどん伸びていって欲しい。その願いがあるからにして、この演奏会はとても示唆的なものだったのだと思います。
否、いい演奏会でした。それだけはしっかり最後に申し上げておきましょう。

2018年3月3日土曜日

【岐阜聖徳学園大学Voice Harmony第20回記念定期演奏会】

2018年3月3日(土)於 大垣市スイトピアセンター学習館音楽堂

久々に、電車の中で執筆です。……とはいえ、名古屋在住にして、大阪へ行く道すがら笑 行きは18切符を使って、大阪へ弾丸日帰りの飲み会であります笑 そして、アップロードは帰りに。結局、近鉄特急で戻ってくるという。滞在時間わずか3時間弱……笑
そんな中途中下車して大垣へ。以前当団の演奏会を宣伝しに行った際に「逆情宣」された演奏会に伺ってみることにしました。岐阜聖徳学園大学、キャンパスはキレイですが、大垣駅からバスに揺られて終着までいったところで辿り着く、周りには田んぼと少しの住宅が広がる大学。岐阜県の大学合唱団と言えば岐阜大学コーラスクラブ通称「岐コラ」というイメージはいやが上にも強いのですが、そうはいっても、他の大学合唱団だって頑張っているのです。そんな頑張っている大学合唱団の一角、岐阜聖徳学園大学ボイスハーモニー。……正直、岐阜聖徳といえば合唱というくらい、岐阜聖徳のことを知らなくて困っている……苦笑 とはいえ、宣伝に行ったくらいで、当方がここまで合唱団に関する前情報もないまま演奏会聞きに行くのは久しぶりかも。幾分、情宣しに行ったときも練習終わりで非常に人数少ない中でやってたし←

・ホールについて
スイトピアには以前も興文混声の時に書きましたね。大垣市の複合施設の中にある音楽専門ホール。控え目なシューボックスが見せる響きは、地方ホールの中でも屈指の実力です。しかし、サラマンカホールといいなんといい、岐阜には良いホールが多いもんです……笑
このホール、響きだけに留まった話でもなく、鳴りが非常に良い。その印象はどうも間違っていなかったようです。以前の興文の時にどうやって書いたっけと思いながら記事を読み返していたら、実際に、そのようなことが書いてありまして……笑 意外と、自分の耳って間違ってないんだなと、ちょっとだけ自信を持ちました←
さて、このホール、大垣駅から徒歩圏内ではあるのですが、ちょいとばかし歩きます。時間を合わせられたらバスで行ったりすることもできるのですが、歩くと実際20分くらいかかるかしら。結構頑張って歩く必要があるので、実際は車で行くって人が結構多いのではないでしょうか(車があるなら、ネ)。
そんな中、皆様に是非オススメして起きたいのは、この演奏会に「電車」で行く可能性。最寄駅は実は、大垣駅ではないのです。真の最寄駅は、歩いて5分程度のところにある、養老鉄道・室(むろ)駅。地域ローカル鉄道の中でも随一のブランドを持つ(当社比)この路線。一部列車には自転車と一緒に乗ることもできるというのが特徴です。近鉄から切り離されて子会社として養老線を持っているこの鉄道、全線電化ということで乗り心地も快適ですよ! 大垣駅からはわずか一駅、便利ですね!
……え、自分?……今回「も」徒歩で……否、養老線、いいんだけどさ、一時間に一本くらいしか来ないし……←

団員数2〜30人。色々見てきましたけれども、学生団って、ちょうどこれくらいがいい規模なのかも。

・オープニング
木下牧子「おんがく」(まど・みちお)
指揮:志茂絵里歌

まずはエールに代えて、演奏はじめ暗転→曲進むに連れ明転という演出、この曲何かとしっくり来るものがあります。
とても素直な発声が非常に印象的な演奏。ソプラノの音圧を弱めに、テナーの音圧を少し抑えた方がバランス的には良いような気もしましたが、それにしても、内声が安定しているから、アンサンブルが引き締まっていて非常に好印象。

指揮者から挨拶があり、第1ステージの開演と相成りました。
発声に力を入れてきたという言葉の通り、確かに、鳴らすこと、奏でることについて、非常に配慮の行き届いていた印象。

第1ステージ「つなぐ」
AI「Story」
miwa「結〜ゆい〜」
槇原敬之「僕が一番欲しかったもの」
コブクロ「今咲き誇る花たちよ」
ゴスペラーズ「言葉にすれば」
(編曲者未公表)
指揮:冨田圭哉
ピアノ:夏目広大

実を言うと、「イ」を中心に母音が少々潰れていたかな、というのが気にはなったのですが、否それにしても、この選曲を見るに、むしろそれがいい効果をなしていたような気もします。全曲ポップスで編成された同ステージ、特に「Story」では、言葉が非常に明るく飛んできているのが印象的でした。そして何より、どの曲も、非常に発声が明るい! 上昇音型も下の方にくぐもることなく、躊躇なく上昇してくから、非常に爽やかなサウンドが鳴り、アンサンブルがまとまります。
ただ一方で、フレーズ感については少し課題というべきか。どの母音も等価に、平板に聞こえるというのは、時によってはいい効果をみせることこそあるものの、特にポップスのようなメロディのしっかりした曲たちについては、逆に、非常にのっぺりした仕上がりになってしまいます。楽譜は追えているけれども、表現としては少し不足している。
例えば、印象的な言葉――「結〜ゆい〜」だったら例えば、「信じること」とか、なんでもいいです――をひとつきめて、その言葉にどんな思いを込めるかから考える。その込めた思いをたっぷり音に込めて歌ってやる。それだけで、フレーズ感って、変わるんです。突き詰めれば色々理論的な部分というのもあるにはあるのですが、まずは、思いを込める、その有り様を追求することから始めても良いのではないでしょうか。
しかしそれにしてもこの団のスゴいのは、「歌が好き!」という思いが、歌を通じて否応なく伝わってくること。これは本当にすごかった。心の底から、歌いたいように、気持ちよく歌って、お客さんに私たちの歌声を届けてやろうと、その意欲が、決意が、しっかり伝わってくるんです。確かに、私たちも普段歌が好きで歌っているのですが、それがしっかり伝わってくるというのは、実は意外と少ないこと。上記と相反するようですが、歌が好きな余り、溢れた思いが抑えきれずに「言葉にすれば」のアンサンブルは途中で崩壊してしまっていた部分も。でも、それで良いような気すらしてくる。だって、こんなにしっかり歌ってるんだもん。その思いを無駄にはしたくない。

興奮さめやらぬまま、インタミ10分。

第2ステージ「Soul Singers〜我ら魂声合唱団〜」
V6「WAになっておどろう」
中島みゆき「銀の龍の背に乗って」
松任谷由実「春よ、来い」
杉本竜一「BELIEVE」
松井孝夫「マイ・バラード」
監督・演出:鬼塚竜次、稲見佑太
ピアノ:富永祐弥

……誤字じゃないですからね?笑 新設合唱団によるはじめての演奏会までの姿を追ったドラマ。練習前に勃発した「魂」のこもった歌についての議論と、それに対する答えを見つける、合唱団員の姿を追いかけます。演出上、男声団員からの提案→女声団員からの提案、と続いたので、この箇所はそれぞれ男声・女声合唱にしても良かったのかもしれません。ってのはさておき。
演技面で非常に良かったのは、主役でない周りの細かい演技に対する配慮。ただ突っ立っているだけでなく、しっかり演技して、リアクションを取れている様が非常に印象的でした。
最終的な答えは、「音は心、心は音」。心の底から歌うことが魂の歌声だ、ということですが、もう既にこの団は実現できてしまっているんではないでしょうかね笑 このステージでもいたるところで「歌が好き!」というのを感じ取ることが出来ました。特に賞賛したいのは、「マイ・バラード」。幾度となく聴いてきたはずですが、こんな胸のすくマイ・バラード、はじめてだったような気がします。しっかりと明るい発声と明るい顔で、心の底から「みんなで歌おう」と歌いきれているのは、この団の何よりの強みであるような気がします。
しかし、このステージ、だいぶスッキリと終わっていったなぁ笑 なんせ、演出が付いて、5曲もやってるのに、正味30分程度で終わってるんですよ笑

インタミ15分。3ステ始まる前、祝電披露がありました。……と、聞こえて来たのが、思いっきり個人様からの祝電。いやぁ、本当に心の底から祝電が届いていたんですねぇ。。。愛されてるなぁ笑

第3ステージ OB・OG合同
松下耕『信じる』(谷川俊太郎)
指揮:志茂絵里歌
ピアノ:伊藤昂大

そして、メインステージ。各パートOB・OGの力を得て合計4〜50人程度比較的充実した人数で歌うことが出来ている中、テナーはなんと現役のみ!笑 否、それでも十分な人数が確保できているパートではあるのですが……笑
比較的優しい曲集とは言え、なにかと込み入った部分も多く、色々な配慮が求められる曲でもあります。特に「ふるさとの星」での歌い上げなど、思いが溢れすぎて、声が散ったり、喉まで響きが上がってきてしまったりして喉声になるなどして、アンサンブルどころではなくなってしまう部分が要所要所に見られるのは、特にこの曲に関して言えばなにより残念なところか。幾分、「くり返す」では比較的整ったアンサンブルが聞けているだけに、残念な部分も多い。特筆すれば、「高音部で喉声になってしまう点については、今後十分に研究されたいところでもあります。逆に「泣けばいい」ではもっとスウィングに乗ってしまっても良かったような気がする。もっとゴリゴリとスウィングしてしまったほうが、この曲の一種シニカルな感情を効果的に表現できるような気もします。
否それにしても、この団の演奏する終曲「信じる」は、絶対にいい演奏だと思っていました! 否、本当に素晴らしかったです。メロディも骨太に、何より主題部の歌い上げは、この曲に対する愛情で溢れていました。気持ちの良いメロディを、何の気の衒いもなく、気持ちよく歌いきることが出来る。そう、この団は本当に、歌うことを愛している。そして、その感情を惜しげもなく顕すことが出来る。そういう意味で、この「信じる」は、心の奥底から楽しむことの出来る、抜群の名演でした。

指揮者・ピアニストへの花束贈呈を経て、イケボ団長による団長挨拶。紆余曲折を経て「歌うことが好き」と涙を流しながら語るその様、正に、この団の、この演奏会の象徴といえるでしょう。

・エンディング
筒井雅子「あなたへ―旅立ちに寄せるメッセージ―」
指揮:志茂絵里歌
ピアノ:伊藤昂大

最後まで朗々と、そして、男声が、涙を流しながらもまっすぐ正面を剥いて歌い上げている、その心意気に心の底から拍手したい!

ロビーコールは、「マイ・バラード」をアカペラで。一緒にカウントを取りながら歌い上げる若々しい歌声。思わず、ワクワクしてしまい、彼ら・彼女らの明るい将来に思いを馳せる、温かい演奏でした。

・まとめ

否、みんな、嫌いななか歌ってるわけじゃないと思うんです。歌が嫌いだったら、少なくともそれが趣味なならば、やめちゃえばいい。世の中娯楽なんかいっぱいあるんだもの。みんな、歌が好きなんだけれども、少しばかりうまくなろうと思ったら最後、うまく歌おうともがき苦しみ、時に自分の意に反する音を出したりして、なんとかごまかしながら、キレイな音とは何かについて考えて、趣味なのに妙なストレスを抱えながらなんとかその場しのぎに歌っていたりする。否それは言いすぎなのかもしれませんが、必ずしも、歌が好きというだけで歌いきれるわけでないのも、悲しいかな事実だったりします。
正直、プログラムを見たときには、うわ、ポップスだらけだな、と思ったりもしました。でも、この演奏会終わってみて感じた一番の感情は、ああ、この演奏会、来てみて、聴いてみて、すごく良かったな! 正にその一点だけでした。みんな本当に楽しそうに歌っていて、歌が大好きで、その歌をお客さんに届けたくて、技術は荒削りで物足りないかもしれないけれど、それでもなんとか届けようと一生懸命頑張っている。
決して同情だとか老婆心とか、憐憫の情とか、そういうのでもないんです。共感。まさに、私も、同じことを考えているはずなんです。私だって彼らと同じくらい歌が大好きで、お金ももらえないのに歌の世界に生きてその享楽に思いを致している。でも、楽しいから歌っていて、楽しいから聞いている。そんな感情の、もっとも初心の初心を思い出させてくれたのが、この演奏会のように思います。
決して、レベルが高い合唱団というわけではありません。正直。でも、このステージ、きっとすっごく気持ちよかったと思うし、聞いている私だって気持ちよかった。力いっぱい歌って、声を合わせて、そんな中で生まれる、一寸響きがズレている、でも、確かに、息の、心意気のあったユニゾンが、この合唱団の答えです。大人になるにつれて段々と忘れていく、あまりにピュアで脆い、歌が好きというシンプルな感情。その感情に真正面から向き合って、大好きな歌を最後まで歌いきろうというその心意気に、心の底から楽しむことが出来ました。
言葉にするだけじゃ物足りないのかもしれない。「歌が好き」とか、「やっぱり歌だよね」とか、アトラクで何十回みたところで、彼らの、声に、顔に、自然に揺れる体に顕れる「歌が好き!」って感情には、勝てないんです。
本当に、良い物見せていただきました。今後共がんばってください。本当、応援したくなる。これからも、愛される合唱団でいてほしいと願ってやみません。