おおよそだいたい、合唱のこと。

ようこそお越し頂きました。
主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
やたら細かいレビューからノリツッコミまで、現状、合唱好きな方の暇つぶしには最適です。
ゆっくりしていってね!!!

2015年6月21日日曜日

【東海メールクワィアー第58回定期演奏会】

2015年6月21日(日) 於 愛知県芸術劇場コンサートホール
[福永陽一郎生誕90年・没後25年記念「福永陽一郎 編曲集」

いやぁ、今日午前中の雨男っぷりはすごかったですねぇ……

なにせ、伊東先生でしたからねぇ……笑
全国で様々な演奏会がある中で、この名古屋での演奏会、プログラム的にも、伊東先生の本気モード全開でしたね……笑

・福永陽一郎について
合唱、こと日本の男声合唱を作り上げてきた巨星中の巨星。日本の合唱史を語る上で、欠くことの出来ない最重要人物のひとりでもあります。
1926年の神戸に生まれ、福岡で幼年時代を過ごします。4歳よりバイオリンの教育を受け、終戦直前に現在の東京藝術大学にあたる東京音楽学校・本科ピアノ科へ入学します。その後、召集を受け、復学ののち、1948年に東京音楽学校を退学。その後、藤原歌劇団を皮切りに音楽活動を再開しました。
1952年には畑中良輔とともに職業男声合唱団・東京コラリアーズを設立、さらに1979年には北村協一とともにメンバーシップ制混声合唱団・JACを主宰するなど、常に合唱とのつながりを欠かすことの出来ない福永陽一郎。一方で、父親が関西学院大学グリークラブの所属だったこともあってか、福永陽一郎自身も関学グリーへの在籍を通じて深い関わりをもっていたのをはじめ、当初からアマチュア合唱とのつながりも深いものがありました。1959年、法政大学混声合唱団(現・法政大学アカデミー合唱団)、西南学院グリークラブ・指揮者、1961年、同志社グリークラブ・技術顧問、1971年、小田原男声合唱団・指揮者、1977年以降、早稲田大学グリークラブで指揮を振るなど、アマチュアにこだわった合唱活動を生涯継続した人物でした。1989年12月の同グリ85回定期を最後に、翌1990年2月に逝去。その生涯において、合唱に人生を捧げ、現代の合唱においてもなお、伊東恵司に代表されるように、さまざまな形で残るその影響力は計り知れないものがあります。
福永陽一郎の足跡は、その指揮・演奏活動だけにとどまらず、評論や編曲活動についても目覚ましいものがあります。特に編曲については、自身の初演を中心として多くの歌曲・混声、女声合唱曲、民謡を編曲して、男声合唱団のレパートリーを飛躍的に増大させました。馴染み深いところでは、『グリークラブアルバム』全3巻(第2集は福永の単独編集、第1集、第3集は福永・北村共編)における「Shenandoah」「U Boj」「Ride the Chariot」「五つ木の子守唄」をはじめとする膨大な楽曲のアレンジが挙げられます。ほかにも、マーラー『さすらう若人の歌』、ショスタコーヴィチ『十の詩曲』より「六つの男声合唱曲」、モーツァルト「Ave Verum Corpus」、中田喜直『海の構図』、三善晃『三つの抒情』、團伊玖磨『岬の墓』など、古今東西の名曲を縦横無尽に編曲し、男声合唱団の演奏会レパートリーは彼をして飛躍的に充実しました。その充実の証として、本演奏会は、全曲福永陽一郎の編曲によるもの。まさに、日本の男声合唱史の総決算が、彼の個展をして成立してしまう――現代に作品をして、なお福永陽一郎は合唱界にその名を響かせているといえるでしょう。

東海メールクワィアーもまた、福永陽一郎をはじめとする多くのマエストロによって、時代を駆け抜けてきた団のひとつ。1946年に創団、1960年代の全日本合唱コンクール3年連続優勝を皮切りに、定期演奏会、委嘱活動、レコーディングなどを通じて、高田三郎音楽との邂逅を中心として、合唱史に残る活動を続けてきました。現在としては、団員の高齢化による弊害も顕在化しているというものの、JAMCAの中心メンバーとして、さらに単独でも信長貴富『くちびるに歌を』男声/ピアノ版を全編成に先駆けて初演するなど、なお若手世代に追従し、また、範となりうる先鋭的な活動を続けています。

以上本稿、本日の、東海メールクワィアー『第58回 定期演奏会』パンフレット(2015)、特に福永先生の稿の大部分をそのうちのp.8-11、曽我雄司「福永陽一郎の生涯〜今日まで続く問いかけ〜」ならびに附表「福永陽一郎 男声合唱主要作品(編・作曲)一覧」に依ったことを特記しておきます。このパンフレット、単に演奏会パンフというなかれ、資料的価値をも併せ持つ珠玉の28ページです。

・ホールについて
以前もこのホールで書いたことがありましたね。名古屋においてはもっとも大きいコンサートホール……というと、本当はもうひとつ、オペラ対応の愛知県芸術劇場大ホールがあるのですが。とはいえ、あのホール全然オペラやっていないような……←
最近、特に名フィル定期を中心に補聴器のハウリングが問題になっています。補聴器による特定の周波数が同期してしまい、キーンという特徴的な高音が断続的になってしまうとされる問題です。今のところ、補聴器をつけている方に対応を求める形で、今回の会館アナウンスをはじめとして様々な場所で、補聴器の装着確認を行うという形で注意喚起がされています。特に、問題が観客の指摘により顕在化した名フィルでは、特設のタペストリーをホワイエに設置するなどして、客席における聴取環境向上の取り組みとして、周知徹底されている問題です。
今日も、演奏を聞いていると、そのハウリング音と思われる音が。個人的には、(普段からガサガサとうるさいところで聴くことにも慣れているので笑)特に演奏を聴くには気にならない程度ではあったのですが、キーンと、特徴的な音が鳴っていたのが今でも記憶に残っています。ただ、どうしても引っかかるのが、そういった音が「途中から」鳴っていたこと。もちろん、補聴器を装着された方が途中から入ってきた可能性も考えられますが、それというのも何か都合がよすぎるような。ただ、今回の演奏会で、ハウリング音が鳴った状況と機を一にするのが、「鳴り始めたステージから外部マイクが使われていた」という点。レコーディング用の合唱団向けスタンドマイク以外に、3ステでは指揮者用のハンドマイクが、4ステでは演出のナレーション拡声用のマイクがそれぞれ使われました。あくまで仮説にすぎないのですが(名フィルでは客席吊りマイクを下ろすくらいで、外部マイクを使わない公演もおおいのですし)、ハウリングの原因のひとつに、もしかしたら外部マイクの影響もあるのではないかな、と思いました。それか、バブル時代の建物ですし、単に空調設備の劣化か……笑 しかし、この問題も突然出てきましたよね。

今日は3列オーダー。ワンステージでは4列。入場の、上手と下手から入れ違いに整列するさまが非常に素晴らしいものがあります。もう少し歩くのが早いと、さらに偶数、奇数列でそれぞれ入場を揃えられるとベスト……って、まぁ、そこは、「高齢化の弊害」……(マテ)指揮者やピアニストは、何故か全ステージ上手側から入場。普段は、ステージマネージャーがいる下手側、つまり客席から見て左側から出てくるので、少々特殊なステージの使い方です。

編曲:福永陽一郎

第1ステージ・日本抒情歌集
山田耕筰「青蛙」(三木露風)
-「この道」(北原白秋)
-「あわて床屋」(-)
本居長世「婆やのお家」(林柳波)
山田耕筰「帰ろ帰ろ」(北原白秋)
中山晋平「砂山」(-)
指揮:伊東恵司

まずは近代の歌曲小品から。これと「黒人霊歌」のステージをそっくり入れ替えてもいいかなと思いましたが、これはこれでバランスが取れているような感もあります。とはいえ、軽→重という意味では、こちらの方がバランスが取れているか。
早い話、どちらかといえば、現在の基準では音は当たっていない方になります。内声は外声の影に隠れてしまっているし、特にこの編曲においては、半音の下がり方が全般的に難あり。もう少し緊張感が出ると良かった。また、音楽表現という意味では、「あわて床屋」ではもっと子音を飛ばしてもよかったですし、「帰ろ帰ろ」ではユニゾンの響きをもっと効果的に作れると、和声部でより効果的な音楽表現が期待できたとも思います。
ただ一方で、この団の魅力は一貫して、長きにわたってつむがれてきたその音楽性にあります。ステージ全体をやさしく包み込むような、ふんわりとした響きが、このステージにおいては大きな特徴。たかが主観、たかが雰囲気と侮る無かれ。様々なステージを聴いてきましたが、こういう「雰囲気」を作ることの出来る合唱団というのは、本当に数少なくなってしまっています。このステージは、まずもって、演奏会という環境に観客を引っ張り込む意味でも、ムードがとても良いステージとなりました。

第2ステージ・黒人霊歌
Go Down Moses
Ride the Chariot
Deep River
Ain’-a That a Good News
Steal Away to Jesus
Soon-Ah Will Be Done
指揮:伊東恵司

「Go Down Moses」ディナーミク、ならびに最後の和音を特筆。「Ride the Chariot」もう少し上向きの発声だとなおよかったような気がする。早さはゆったりしているが、絶品のソロが掻っ攫っていくこの様!「Deep River」殊「Deep」の/i/が扁平すぎたか。最後の和音はもっと内声を聞かせたかった。「Ain’-a」各音への食付きがもっと早くてよい。アンサンブルのベクトルはこの曲とよくあっていた。「Steal Away」全体としてもっと音楽が進行していくと良かったというのが、最後の和音のピッチの明らかな低さに出てしまったか。「Soon-Ah」ステージ全体の中で最もよかったと思われる。
愛唱曲とよばれる佳曲たち。だからこそ、もっと軽く歌えると本来は良いのだろうか。しかし、すべての曲が歌として、いきいきと表現されているのはこの団ならでは。特に、フレージングという意味では、その要諦を決してはずさない。「古き良き」という言葉では済ませられない、これらの曲の表現のあり方がしっかりと提示されていました。

休憩20分。名古屋だし、そろそろ虚勢を張って(?)インタミっていうのやめようかな……なんて特に思わないですけど←

第3ステージ・ワンステージメンバー参加ステージ
中田喜直・男声合唱組曲『海の構図』(小林純一)より「II 海女礼讃」「IV 神話の巨人」
團伊玖磨・男声合唱曲『岬の墓』(堀田善衛)
指揮:伊東恵司
ピアノ:山下勝

いまやお馴染みとなってきた、東海メールのワンステージメンバー。実は僕も、第1回の伊東先生による『月光とピエロ』にオンステしたのでした。あのステージがない限り、たぶん男声合唱に開眼するのはもっと遅くなっていたという点、感謝してもしきれない……?笑
『構図』と『岬の墓』の間には伊東先生恒例(?)のトークタイム。「福永先生のアレンジは本当に曲数が多い。日本、世界の民謡や合唱曲をアレンジしたものなど、他編成の曲を男声アレンジすることも多く、男声が歌うと効果が高い曲をピックアップしていた。『海の構図』『岬の墓』は、まさにそういう曲。特に『岬の墓』では、男声合唱のやわらかな部分をも表現している。」
『構図』2曲。特に言葉による、あるいは言葉とリンクした表現が本当に素晴らしい。「巨人の疲れはてて寝入るのを待つしかない」の一節のピアノは、ただただ素晴らしい。詩をして、曲をして、また歌として、この一節に、この曲のすべてが込められていました。『岬の墓』最初のカデンツと、それに導かれるピアノの壮大で爽やかなアルペジオ、そして強烈な主題の提示に至るまで、一連の流れが、團の音楽の鮮やかさに観客を一瞬で引き込む精緻な出来。弱音で集中力が途切れなかったのがまさにこの演奏の素晴らしい点。これでこそ強い音が活きるのです。福永陽一郎が最後に同グリと演った曲のひとつが、この『岬の墓』。その遺志にも残るものでは。
3曲とも、充実した響きの中に、情景が浮かぶような演奏です。「表現」という言葉の真髄に、まさに、この目に浮かぶ絵画性というものがあるのかもしれません。共感覚というのは簡単でこそあるものの、要素分析に収まらない音楽の魅力が随所に詰まった演奏は、聴く者を圧倒しました。実質的に、ワンステージで音量が上がった、というのはもちろんありますけれどもネ笑

ワンステージメンバーアンコール
中村八大「遠くへ行きたい」(永六輔)
流行歌。ともすると、トップがもう少し明るめの声でもよかったかも。落ち着いて聞いていられる、軽い作りでした。

第4ステージ
シグムンド・ロンバーグ、男声合唱組曲『ニュー・ムーン』(オスカー・ハマースタインII世、構成・補曲=都築義高)
「Softly as in a Morning Sunrise」
「One Kiss」
「Wanting You」
「Lover Come Back to Me」
「Stout-Hearted Men」
指揮:濱津清仁*
ピアノ:山下勝
ソプラノ:二宮咲子
ナレーション:渡辺美香
*「濱」の旁、正しくは、うかんむりに「屓」。

なにから語ったらいいかよくわからないんですけど、すごく豪華なステージですよね……! ナレーションの渡辺さんはCBCアナウンサー。『ノブナガ!』などで有名です(!?)。そりゃもう、いままで合唱演奏会の中で聴いてきたうちでも一、二を争うレベルで素晴らしいアナウンスだったのですが、いかんせん、このホールは、アンプでの拡声にめっぽう弱いんです……残響が良くて、声がホール中に響いてしまうんですね。そのため、アンプで拡声すると、どうしても音が散ってしまう。だからといってボリュームはすでに十分大きいので、悩みのタネといったところ。
そして、さらに特記すべきはソプラニスタでしょう。二宮先生、そこかしこで有名ですね。そりゃもう、オペレッタとして作曲されたこの曲の性格が性格なだけあり、ガッツリと入るソプラノのソロは、もはや二宮先生をして一つのステージを作り上げていたような圧巻の出来。納得の曲間拍手です。
そして合唱含め、全体をしてとても華やかな作りでした。歌いあげられるべきところでしっかりと歌いあげる、これは、相当な覚悟がなければ出来ませんが、そのことをしっかりこなすというのもまた、基本的なことのような気がして、何かと音の精緻化のお題目の元に隠れてしまいがちな本質的な問題。技術的な問題は色々なくもないのですが、敢えて書かない、いや、書きたくない。マクロの印象が音楽をそのまま作り上げていったという意味で、このステージの記憶はとどめておくべきような気がします。逆に、それでいい、だからこそいい――ラストを締めくくるのに本当に素晴らしい曲でした。

アンコール
チャイコフスキー「Nur Wer die Sehnsucht Kennt(ただ憧れを知る者のみ)」(ゲーテ)
否何よりですね、選曲、演奏ともに、最終ステージのアイスブレイクにはちょうどいい……聴くのすら大変でしたからね、最後のステージは笑

ロビーストーム
「我が歌」
「いざたて戦人よ」
「野ばら」
ここのロビーストームは気をつけないととてつもなく混雑することになるのですが、今日はそんなことはなく安心。しかし、この手の曲をガンガン歌って楽しくなるというのはいつの時代の歌い手も変わらないようで……笑

・まとめ
全体をして、とても「音楽をしていた」というのが印象的な演奏会でした。前述したように、高齢化もあってか、技術的にどうしても克服できない問題が散見されます。しかし何より、音楽を進める、前へ動かすという熱い意志が、このステージ全体を彩りました。
最近なにかと、和声や音程を第一優先に置く合唱団が増えてきました。それそのものは否定できませんし、何より、音楽の三大要素は「メロディ・リズム・ハーモニー」です(黄色い楽典とかそこらへん参照)から、なにも間違ったことは言っていないはずです。しかし、そういった演奏は、midiのような演奏、これならボカロでも出来ると揶揄され、ときに敬遠される。そういうった声を前述の団はまた敬遠する、という、ちぐはぐな悪循環が合唱界全体に蔓延してしまっています。
今日の東海メールの演奏は、その悪循環に、ハッキリと、「否」の字を突きつけます。音楽の三大要素をクリアするのは当たり前で、その先に音楽上の表現があるのは言うまでもないのですが、今日の演奏は、逆に、これらの三大要素を用いて如何に表現するか、ということを、一種、転回して考えた表現であったように思います。音楽を多方面から立体的(ここでは、音楽の三大要素の三次元に加え、歌詩を含めた四次元的観念)に分析し、そして、再構築していく――その過程は、膨大な文量がある演奏会パンフレットからも垣間見ることが出来ます。構築された表現がそのまま歌になるという段階に至ったとき、それは、本物の音楽として、聴くものの心を打つ音楽ということになるのです。
壮年の団と侮る無かれ――その経験と、思索と、苦悶の日々は、確実に、音に、響きに反映されていき、名演を生み出す原動力となっていきます。見習いたいものです。

2015年6月15日月曜日

【第54回愛知県合唱祭】

2015年6月13日(土)・14日(日) 於 名古屋文理大学文化フォーラム 大ホール・中ホール・小ホール

色々あったんですよ……

元々、前日も全曲聞く予定だったのが、諸事情により聴くことが出来ず、
……
諸 事 情 に よ り
聴くことが出来ず(強調)、日曜日、自分が参加したHブロックとIJブロックだけ聴くという結果に。色々ありましたが、お小言含め、心当たりのある方はどうぞ直接お申し付けくださいませ……苦笑
贖罪代わりに、HとIJは全曲レビューです。……否、いつもやってるか笑

ともあれ、合唱祭でした。昨年もレビューしましたね。今年はかの方は2日間とも愛知県だったようですが、やはり県外含め飛び回っている顔もちらほら。みんな元気だよなぁ……ん、自分の言えたことやないやろって?……せやな笑

・合唱祭について
毎年、一般向けに2つ、大学生向けに1つ、講師の先生を呼んでワークショップが開かれます。今年のワークショップ講師は……今をときめく佐藤賢太郎先生、通称・Ken-P!一般向けには、自身が作曲した『夜空の記憶のどこかに』を2つに分けて4曲全部、大学生ワークショップでは「前へ」が課題曲になり、特に大学生ワークショップでは史上空前の大盛況、あの広い稲沢のステージに乗り切らない程の大学生とそうじゃない人たちで盛り上がりました。
加えて、Ken-Pは講評講師としても登場です。今回は、普段講師が講評をしている大ホールAブロックだけでなく、翌日の中ホールNブロックでも講評が行われました。もちろん、講評が行われるブロックでは、友森美文先生による講評もついてきます(妙に失礼さが滲み出る書き方)。お得ですね!笑
さらに、今回、1日目の最後は「クロージングコンサート」ということで、Ken-Pが指揮する大合唱で締めくくられました。それ以外のブロックで行われる全体合唱でも、「いつまでも いつまでも」以外にも様々な曲が採用され、特に中学生主体のBブロックでは「あすという日が」、さらに大学生が主体のFブロックでは(待望の!)「鴎*」が採用されました。なんでも噂によると「鴎」は導入に際して「長くて難しすぎるのではないか」という不安の声があったとかなかったとか。蓋を開けてみれば、そんな不安は勿論杞憂です笑 愛知県でも変わらず、大学生たちの愛唱曲として定着しています。
なお今年もグリーン・エコーさんは全出場を継続中です。おめでとうございます。
*端末上の問題に伴う新字体利用ご容赦ください。正しいタイトルは旧字体によります。

・ホールについて
昨年と変わらず、もちろん稲沢です。もうおなじみになってきましたね。なにせ僕が大学1年生だった時が最後の勤労会館世代だったというのですから……時代は変わるものです笑 ちなみにパンフレットの前書きによると、理事長の長谷順二先生が1973年に初めて『第12回愛知県合唱祭』を聞いた時も愛知県勤労会館。……歳取ったなぁ(若干の錯誤)
それこそ昨年も書いたのですが、本当にこのホール、鳴りません。そりゃ、勤労会館だって全然鳴らなかったホールですし、鶴舞も稲沢も、合唱祭が開かれている理由はひとえにホールを3つも抱えるその広さにあるので、その点ホールの採用そのものにはなんの異論もないのですが、否それにしても全然鳴らない。とはいえ昨年もノースはちゃんと鳴らしている。今年だって鳴らしてる団はちゃんと鳴らしている。
とどのつまり、昨日(執筆時現在)も思ったのですが、ちゃんとガンガン鳴らす団に歌ってもらえば、どんなホールでも鳴る事にはなるのだろうと。ましてこのホール、ちゃんと声を出せば鳴らしますよ、とホールが言っていることにほかならないのではないかと思います。……エグいホールですなぁ笑
アクセスの遠さ?……もういいよ、それは笑 稲沢市民病院の位置が、駅の南側からホールのすぐ南側まで移りました。前からだったか、なんにせよ、昔の建物は取り壊しされていました。これから市街地の中心地も南側に移っていくのでしょうか。なら尚更駅を病院近くに作ってもらって……え、無理?笑 そういえば今年は歩いている途中にカエルさんの声が聞こえてこなかったなぁ。どうしちゃったんだろう。

・各団レビュー
今年は垂れ流しレビューといきましょう。ええ、色々面白い合唱団の揃うブロックでしたから歌い手としては中々大変でした……

Hブロック
1. あけぼの合唱団
高田三郎*『水のいのち』から「水たまり」(高野喜久雄)
ボヘミア民謡(arr. 江口泰央)「おゝ牧場はみどり」(中田羽後)
普通客席と階段を行き来する形でステージに上がる愛知県合唱祭。この団体は数少ない、ステージ下手脇からステージに登場する団。目の見えない方と健常者が寄り添って歌うというコンセプトで活動を続けられている団です。つまり半分程度は目の見えない方ということで、目の見えない方が見譜する際は点字を指で追う形になるわけです。昨年は「雨」に挑戦、今年はその次「水たまり」。まして、指揮者の指示など見えようもない状態において、「水たまり」はテンポ変化の激しい難曲。何より、その曲をちゃんとステージに乗せるくらいまで完成させられているというのが見事です。あと3曲。壮大な5年プロジェクトです。次の曲「おゝ牧場はみどり」、中々良く鳴っていました。今度は目の見えない中でアカペラをやるというのだからこの団何気にすさまじいかも……!? より横にメロディを流すアンサンブルが出来るとより気持ちよく聴けるような気がします。実は、わたべのここ最近注目の合唱祭出演団体は、この団だったりします。

2. 今池混声合唱団
Webber, A.Lloyd「memory」(T.S.Eliot, 浅利慶太・訳)
水野良樹(arr. 鷹羽弘晃)「YELL」
「memory」下3声の音がしっかりしている一方で、逆に浮き気味という課題も。もう少しソプラノが対抗できるならよかった。「Yell」は一方、よく歌えているものの、もっと縦のラインが揃えられるかも。全声部が独立して聞こえるのが2曲通しての課題。パートはよく歌えているからこそ、全体のアンサンブルに気をつけたい。

3. トヨタ自動車合唱部
Lauridsen, Morten「Ubi Caritas et Amor」
各パートの音量にばらつきがあって、メロディをうまく受け渡し切れていなかったり、聞き所がぼやけてしまう側面があり、結果、聞き所がわからなくなってしまいました。各々がしっかり歌える団。だからこそ、引きどころや出しどころをもっと明瞭に歌いきれるとなおよいような気がする。

4. みどりの会
信長貴富『風の季節・花の季節』から「だれも いそがない村」「移る季節」(岸田矜子)
メロディが伸びよくしっかり歌えているからこそ、細かい部分の崩れが気になります。しかし、フレーズ感自体は充実していたのでしっかり聴くことが出来ました。さらに、言葉がしっかり飛んでくるならもっとよかったと思います。――しかし、ピアノはやたら難しそうだったけどお上手でした笑

5. コーメ・プリーマ
中田喜直(arr. 猪間道明)「さくら横ちょう」(加藤周一)「サルビア」(堀内幸枝)
フレージングがよく、まとまりたいところでしっかり音楽がまとまったところは高評価。和音もよく鳴りました。一方で、音楽の独特な風合いをもっと表現できるとよかった気もします。総じて、もっと表現の側面で遊んでも良かったのではないかと思いました。

6. 女声合唱団ピーチ・エコー
湯山昭『葡萄の歌』から「みずの流れの歌を」「葡萄の歌」(関根榮一)
フレージングに加え、アルトの和声が充実しており、音楽をよく聞かせてくれました。1曲目の歌詩がもっと聞かせられるとよかったか。一方で、2曲目は中々充実したアンサンブルだった印象。よく聞かせてくれる演奏と選曲だったようにおもいました。

7. 合唱団花集庵
arr. Hogan, Moses「My soul's been anchored in the Lord」
高田三郎*(arr. 今井邦男)「くちなし」(高野喜久雄)
1曲目でドンと出したところで圧倒される、本格味のあるサウンド。英語が極端にカタカナになっていたのが残念な一方で、アンサンブルの有機性に非常に富んだ演奏。鳴らしつつハモって、かつ音をここまで軽く動かせるのは本当に見事の一言。「くちなし」は、高田音楽ということで、もっとうねらせても良かったような気がする一方、やはりしっかり整った充実のハーモニー。やはり最大の問題は、ステージとしての盛り上がり方的には曲順が逆だった点にあるだろうか笑

8. TFM合唱団
Villalobos, Heitor「Ave Maria」
Rachmaninoff, Sergei「Ave Maria」
1曲目の音楽の立ち上げ方が重くなくかつ充実していて見事でした。逆に展開部の女声はもっと揃って鳴って欲しかったところ。必要なところはちゃんと揃っている点、もっと細かいところにも目を向けるとかなり充実したアンサンブルに鳴る気がしました。マクロ的な意味での音楽設計は十分。充実したハーモニーでした。

9. 男声合唱団 響
荻久保和明『IN TERRA PAX』から「花をさがす少女」(鶴見正夫)
何が目立つって、一切自重しないトップ笑 逆に言えば、もっと低声は出さなければならない。フレーズ全体というよりは、音の礫がそのまま独立して飛んでくる感じが、イマイチ曲の世界観や歌詩の意味を飛ばしづらい感じになってしまいました。ウマイんだけどなぁ。メッセージ性の強い曲、もっとその曲のメッセージに思いを致したかった。

10. 桜花学園高等学校合唱団
米米CLUB(arr. Tsing-moo)「君がいるだけで」
瑞慶覧尚子「チャンスは必ずある」(みなづきみのり)
学生指揮での新年度ステージ。響きを残しかつ明るめのハーモニーが開場に華を添えました。踊りを入れても響きがブレずに軽くハモれるのはまさにその実力の示すところ。随分前のことにはなりますが、その時よりアンサンブルが軽くなったような気がします。フレージングでしっかり聞かせるというのは、割と今の潮流の中では珍しい気もする一方で、響きも乗って音楽を立体的に構築することが出来るのは、全国クラスの団の共通項。素晴らしいアンサンブルでした。ただ、あえて気になった点を挙げるとすれば、ユニゾンがもう少し集中力を高めて歌うとよりよくなるような。まぁでも、それくらいです。

11. 合唱団 うぃろう
筆者所属団につき省略。
桜花さん弊団初演曲の再演ありがとうございました笑

12. グランフォニック
湯山昭「河童のうた」(宮沢章二)
清水脩『青い照明』から「不香天子」(宮沢賢治)
歌全体がよくまとまっていたのが印象的。内声がぼやけるという、なぜか壮年団になると目立つ(本当になぜだろう……)課題が解消できるとより良い一方、音楽の動的な構成はよく表現できていました。特に「不香天子」の集中力は、合唱祭にして中々見ることの出来ない優秀なものでした。

13. 女声合唱団 コール・AI
信長貴富『不可思議のボルトレ』から「歌はどうして作る」(与謝野晶子)
低声にもっと勢いがほしいところだったが、逆に言えば、高声は十分出ていたというイメージ。弱音部で細かい音程のミスが出る一方で、盛り上がるところではアンサンブルも揃う。アンサンブル全体の勢いをそのままに、もっとアンサンブルを揃わせるという方向性がほしいところ。

IJブロック
1. アンサンブルコンテスト招待演奏「ウニ」
佐藤賢太郎「つながり」
George and Ira Gershmin(arr. Christopher Clapham)「I got rhythm」
音楽全体の構成がよく出来ているものの、少し終末に向けて勢いを失ってしまったか。もっと歌いあげてしまってよかった。「I got rhythm」特に縦のラインで目に見えてズレているところがあり、響きも前曲同様乗り切らないところも見られたのだが、この演奏が金賞だった理由は別のところ――つまり、そのグルーヴ感にある。受賞するアンサンブルにありがちな、整っているけれどもつまらないアンサンブルというものからは一線を画した、あくまで音楽感を第一優先にするその姿勢!

2. キンダーコール鳩笛の会
J.W.Ziegler『Oratio Angeli』から「Jubilate Domino」「Gloria」「Credo」「Agnus Dei-Amen」
音程のハマり方がとてもよい! ただ、何か、歌っているという感じが伝わってこない。音をハメることに意識が向きすぎているのではないか。協和音時に回帰していないように想起される部分があったのも、そのところによるか。いくら宗教曲とはいえ、もっと楽しめたんじゃないかなぁ? 全編にわたり平板に終わってしまったのがなにより惜しい。

3. 室内合唱団 Alitheia
G.P. de Palestrina「Amor, Fortuna」「Ne spero」「Alla riva del Tebro」
全編にわたり響きの後鳴りしているところが残念だが、動くパートでよく動かせているのはまさにパレストリーナの音楽では評価されるべき点。ただ、パートごとによく動けていたものの、各パートが独立していて、各パートの聴かせどころは見えづらかった印象。美しかったが、それ以上の訴求力を音楽に求めたい。

4. コール・フロイデ
W.Geisler「バイオリンは歌う」(小林光雄)
arr. 松平敬「かくれんぼ〜通りゃんせ〜かごめかごめ〜一番星みつけた」
信長貴富「一番星見つけた」
1曲目のユニゾンからよく聴くことが出来た。ただ、もう少し高音にしっかり音が当たると良いか。加えて、動きで指揮から目が離れたときにテンポが歪むのはなんとかしたかった。縦にうまいが、表現がもっと大胆であっても良かった気がするところ。ただ、信長「一番星」のようなクラスタ音の積み上げについては、より集中力のあるアンサンブルをする必要も。平均点が高いからこそ浮かび上がる課題。

5. ヴォーチェ・アミーケ
山田耕筰(arr. 永友博信)『AIYANの歌』から「かきつばた」「AIYANの歌」「気まぐれ」(北原白秋)
響きがすごく明るくハマっているように思われる一方、全体としてはハーモニーが崩れたか。――低声が低すぎるのか、高声が明るすぎるのか。声のベクトルがずれていて、うまく合流出来ていないようにも思われました。「AIYAN」は一方で、高声のとても高いピッチによる表現が独特で面白かった点、その方向で全体的に表現をつけるとよいのかも。相反するようだが、ピッチが全てというわけでもないのだなぁ……。

6. クール・ジョワイエ
川村結花(arr. 若林千春)『雪白讃五題』から「夜空ノムコウ」(スガシカオ)
Janácek, Leos「Láska opravdivá」
「夜空」全体としてボリュームはよく出ていたものの、曲調が変わったところを中心に、縦が揃わなくてはボリュームが大きいものも効果半減といったところか。あと、ジャジーなパートはあまりリズムを固く意識したために何か怒っているように聞こえてしまい残念。加えて、若い曲であるため、「ウ」母音はドイツ風に深く入れる発音ではなく、もっと日本語的に若い発声であって欲しかった。「Láska」は申し分なし。このハーモニー感をうまく「夜空」に繋げたかった。大きな流れの中に、テンポの弾む音楽をしっかり対置させるだけで、大仰な表現はいらなくなるはず。

7. コーロ・エミーナス
P. チマーラ(arr. 永友博信)「Stornello」(A. フラテイリ)
S. ガスタルドン(arr. 永友博信)「Musica proibita」(F. フロック)
響きが明るく、よく流れた音楽。少々平板に聞こえてしまったか。普通に歌うと流れてしまう曲だけに、もっと表現で訴求するべき。その意味でとても惜しい演奏――全体の音楽構築としてはこれほどにないくらいに優秀な出来だったのだから!

8. 中部電力合唱団
松下耕『この星の上で』から「今年」(谷川俊太郎)
高声が張れないとこの曲は辛いところ。ピッチが少々低めなところもあり、特に和声上の輪郭がはっきり見えてこなかった。ディナーミクの幅も、今想定されているものから一段大きい物でなければならないと思われます。つまるところ、スケール感不足といったところか。おもいっきりドラマチックに仕上げてしまえばいいような気がします。

9. 名古屋市立向陽高等学校合唱部
arr. Dawson, William L.「Ev'ry time I feel the spirit」
Rutter, John「The Lord bless you and keep you」
1曲目。僕はこの曲を見ると、メモに「タイ米」と書いてしまいます……定番の空耳でしょ?笑 そんなタイ米は、テヌート過ぎて勢いが失われてしまったのが残念か。マルカートの演奏に慣れすぎているだけかしら。鳴りについては申し分ないが、もっと遊んだアンサンブルでもおもしろいと思う。男声が少し低めなのも、その意味で気になるが、一方、ラターはその意味、当たりの選曲だったと言えそうです。

10. 名古屋ビクトリア合唱団
T.L. de Victoria「Vere languores」
木下牧子「ELEGIA」(北園克衛)
なんと実は初出場。演奏会もなんだかんだ聴きに行けずに、どおりで聞いたことないよなと笑 ボリュームがありながらよく音楽が流れていて、フレーズの作りも美味い。なにより各フレーズで音が減衰することのない点、これでこそ當間先生が創団した団だけはあります。その長所が特に出たのが名にも冠するビクトリア。一方で、「ELEGIA」ではもっと言葉が飛んできて欲しかった。すると、言葉に見合った声質を各所で検討して欲しいところ。

11. 合唱団ピンクエコー
相澤直人「なんとなく・青空」(工藤直子)
Gerry Goffin and Carole King(arr. Roger Emerson)「The Loco-Motion」
「なんとなく・青空」この曲をこの時期に名古屋で再演されたというのがこの曲のファンとして何より嬉しいところ。コンパクトながら、主題部のメロディの大きさが美しい、メリハリのある演奏。構成としては問題なかったものの、出だしをもっとぱっちりと出してしまってもよかったかもしれないです。
一方毎度おなじみのダンスコーナーでは、会場の拍手を巻き込んでこのブロック一番の盛り上がり。センターを中心にノリノリの団員たちの中で、舞台上手側で少し遅れて友森先生がたどたどしい感じのダンスをしているのがちょっとおもしろかったです笑
しかし、河辺副理事長も最後の挨拶で「青春時代を思い出した」と取り上げるこの選曲、その歌だけにとどまらず――みんな踊りウマイよなぁ、ほんと笑

12. 混声合唱団 VoxMEA
Clausen, René「All That Hath Life & Breath Praise Ye the Lord!」
Foster, Steven「Nelly Bly」
なによりクラウセンのファンファーレ的な出だしの見せ方が本当に素晴らしいところ。全体としてよく鳴っていたのが何より印象的で、素晴らしいハーモニーを見せていまいた。一方で、1曲目の男声の勢い不足、ソロの裏でのハーモニーの揃い方含めクラウセン中間部の表現には再考の余地があるだろうか。しかし、男声は2曲目のボリュームは十分。このボリュームを1曲目でも。そして、なにより、フォスターの最終部のクラスタを聞くにつけ、和声構築能力はこれまた十分といったところ。ブラボー。

2015年6月4日木曜日

【名大祭特別企画ステージ 合唱と弦楽オーケストラの協演】

2015年6月4日(木)於 名古屋大学豊田講堂

ブログではお久しぶりです。4月以来ですね。ブログにいない間は名古屋ユースに参加してたり真面目に(?)練習してたり、歌う側に勤しんでおりました。明日はKKRということで……なんて思いきや、関西ではなく名古屋にいて、そんでもって大してお金もないものですから我慢我慢……ああ、お金こそすべて。ライフ・イズ・マネー。
って、世知辛い話はおいといて、名古屋だって負けちゃいませんよ! 今日から4日間名古屋大学・通称名大(めいだい・明大ではない)で「名大祭」が開かれています。その企画の一つとして企画されたのが今回の演奏会。年齢無制限の公募メンバーにより構成された特別合唱団による演奏で、披露されるのは厨好みいぶし銀の名曲・ドブロゴスミサ! ドブミサとかドブマスとか、果たしてこの綴りでどう読もうといったところですが(笑)なにせ、大学祭ですよ、大学祭! 豊田講堂の前に堂々とメインステージが置かれていた以外は特に大学祭を感じられなかったのはご愛嬌← 平日の1日目ですからね←

・ホールについて
名古屋大学のメイン講堂です。「とよだこうどう」と読みます。名前の由来は、名古屋ですし、まぁお察しください←
講堂というだけあって、横に幅広く奥行きに少し狭いステージは、多目的にカンファレンスから演奏会まで何でも出来る感じのホールです。なにせ、ヤマハのコンサートピアノが置いてありますからね(笑)CFシリーズではないだろう、という感じ。よかった←
さすが何でも出来るだけあって、照明系の設備が充実しているこの講堂、ステージ中央には大きなプロジェクターも準備されていて、名大の入学式・卒業式はいずれもここで開かれます。そんなここ、演奏会ホールとしての実績もしばしばあって、昔、グランツェが演奏会をやっていた実績もあります。改装に伴い壁面材が取り替えられた(んでしたっけ?)影響もあるのか、打ちっぱなしのコンクリに映える明るいブラウンの反響板がオシャレです。そしてなにより、ここは講堂のいいところ、簡易の机がある! レビュアー歓喜! 楽譜見ながらドブミサ聴ける(実際楽譜開いてた←)!
ただ、響きという面で見ると、さすがに講堂、天井が低いのもあり、なかなか響きが客席に返って来てくれません。響き方そのものは上に明るくさわやかなだけに、その点はなんとも惜しいところ。ちなみに器楽という意味では、鳴らした音はしっかり返ってきますが、器楽ですら、鳴らないと返ってこない、中々大変なホール。名大はここでリハーサルやってるから強いのかな……(笑)

指揮:川口昂彦
ピアノ:野村七海

本日は合唱団2段オーダー。幅広のステージを活かすにはこのオーダーがいいといったところでしょうか。弦楽オケは Cb 1人ほか 2人の9人+Pf。小編成ですが、合唱団の規模もそこまで大きいわけではない(約50人)ため、これくらいでちょうどよかったといったところでしょうか。

Steve Dobrogosz"MASS"
Introitus
Kyrie
Gloria
Credo
Sanctus
Agnus Dei

本日のメインステージ。最初からクライマックス(笑)なことで有名のこの曲です。とりあえず最初のKyrieがトコトン有名です。福島で流行った時代があるようで、その時を中心に様々な録音が残されています。中にはピアノリダクション版を某強豪高校の校内合唱コンクールで取り上げられた音源がリークされたことも……w
演奏全体として、表現のドラスティックさがもっと欲しかったように思いました。特に最初の「Kyrie」のテンポが少々落ち着いたところから始まったのは、表記上は良くてもいささか疑問の残る場所。勢いという意味では、もっとあそこでガツガツいってもよかったのかも。あとは全体に鳴りに苦しいホールということもあり、中々音が飛んでこなかったところがあるのは残念。ハーモニーという点ではもっと合わせられるというのは公募合唱団のご愛嬌、かたや、全体的に緊張感のあるパートでしっかりとアンサンブルが出来たというのは、この曲が好きな人達で集まる演奏会なだけはあったのではないかと思いました。
以下、楽譜を見ながら聞いていたことによるお小言みたいなものをつらつら笑
まず弦楽アンサンブルによる「Introitus」、最初のピアノの音に聴き惚れます。聴き惚れました(大事なこと)。最初楽器を温めておく暇がなかったのか、特に低弦を中心に音が低くなっていたように思います。リズムは秀逸でしたが、コンミスの最後のソロはもう少しルバートでもよかったかな?「Kyrie」は組曲中最も有名な曲。ピアノ、そして女声の突き刺さる緊張感の中に、明るく印象的な主題が高揚感を盛り立てます。今日は割とゆっくりしたテンポからはじまりました。もう少し早いほうが個人的には好みです。さらに言うなら、その勢いをもってして、もっと骨太のアンサンブルが聞きたかったか。全体としてソプラノの下降音型が投げ捨てがちになってしまったところとか、テナーが割に自由に、しかし欲しいところでは出てきてくれなかったりとか、あるいは低声の対位旋律があまり活きてくれなかったところとか。もちろん、ただいたずらに興奮してKyrieを歌うわけではないものの、出来ることなら、もっともっと充実の音で聞きたかったといったところ。「Gloria」最初の女声の旋律で、臨時記号の音がいずれも外れてしまったのは残念。緊張感こそよかったものの、楽譜上にも記載されている、段々と増していくパワーをどこまで表現しきれたか。この曲の正念場はここから先にあるとも言える。最終部、男声の「Patris」の副旋律にもっと集中力が欲しかった。そしてピアノのソロが素晴らしい。「Credo」最初の男声で「e」のピッチが落ちたのが残念。長い曲だからこそ、前半部は音が揃う瞬間をもっと大事にしたかったか。そして、鳴りがもっとも問題となったのはこの曲。鳴らないホールだからこそ、ディナーミクをもっと付けないと音が飛ばない! その点、もっともっとドラスティックに変化させて、音量の頂点をもっと高いところに持ってくるとよかったのでは。全体としてあっさりしていて、壮大な物語を語る表現という意味で、ある種の「Credo らしさ」は少なかったものの、66小節アウフタクトからの男声と弦のtutti「Et iterum venturus est cum gloria」を境に、演奏全体としていい音が鳴り始めたように思います。ここは、チェロが非常に良い働きをしました。最後の和声はベースが Good。「Sanctus」この勢いの半分くらいを Credo に欲しかった!笑 音が大きくなるとハモリが悪くなってしまったものの、この曲の表現という意味では十分な音だったのでは。でもだからこそ、この曲に出てくる「Kyrie」からの回帰は、もっと言葉を飛ばして表現したかった。加えて、104小節以降の内声はもっと合うとよかったか。「Agnus Dei」組曲を通して一番よかったのはこの曲だろうか。入りの弦楽アンサンブルから十分素晴らしく、全体として歌の推進力がもっともあった曲。ただ、21小節「pacem」に指示された「very calm」が少々分かりづらかったり、何度も出てくる「qui tollis peccata mundi」の描き分けが十分だったかなど、仔細に気になる箇所は散見される。いずれも、表現の機微に関わる部分、この曲の難しさが露呈したか。あともうひとつ。ピアノが本当に素晴らしかった(本当に大事なこと)!

ここでドイツ産ブロッコリーこと指揮者の川口さんが喋ります。この方、名大の研究員でもある手前、自分の研究室公開の宣伝をされつつ(そういえば名大祭ですもんね笑)、ドブミサについてのエピソードを披露。「9年前、名大グリーンハーモニーで下振りをしていて、今日は本番を振れるということに興奮していた」。そして、「日本ですので、ラテン語で終わるのもアレなので日本語を――」とおっしゃりながら、次にやる曲を披露。……半分ドイツ語やんけこの曲!笑

信長貴富「くちびるに歌を」(Cäsar Flaischlen(信長貴富・訳)、混声合唱とピアノのための『くちびるに歌を』より)

今日のもうひとつのステージ。この企画を初めて知った3分くらいは、オーケストラ版をやるものだと勘違いをしていましたが、普通の混声ピアノ版。解せぬ。実に解せぬ。管がいないのならエレクトーンを使えばいいじゃない← むしろオケ版だったら自分はオンステしていた可能性があるぞ(あれ?)
最近のこの曲のはやりの着想は「ねちっこい演奏」にあるのだと思っていますが、今日は打って変わって、あっさりとしたテンポ早めの演奏。日本語に入るとさらに加速(笑)愛唱曲のようなテンポでさわやかに駆けていったイメージ。長い曲ですけれども大人気な曲ということで、ある意味こういうテンポで歌うのもありなのかもしれません。もっとも、ドイツ語再現部で音が合流してタメルところは、強烈な協和音である上、実際いい音がなっていたから、もっと長さが欲しかったなぁと思います。逆に歌い慣れによる音の外れたところもあったけれども、演奏としてはこちらのほうがミサの大人しさより好きだったかなぁと思いました。何より、大学祭っぽさがありますからね。そしてテナー! 最後ガンガン飛ばしていたのはともかく、「言葉を」の高音部はもっと鳴らさなアカンでしょうが!w

・まとめ
大学祭で音楽というと、メインステージでのバンドライブやアカペラライブ、ダンス、あるいはのど自慢(?)、それにくわえてオケ部や吹部が演奏会をやったり、あるいは合唱団も演奏会を開いたりといったところ。あとは合唱団がチュロス売ってたりはしますけれども、どうしてもクラシック系の音楽はバンド系の音圧に押されがち。そんな中今回の企画は、大曲を公募でやってしまおうという意味でとても画期的なものでした。合唱人が集まるところで一般公募合唱をしようという企画はあるものの、色んなものが混ざり合った大学祭という場所で(それもメインステージの裏で笑)弦楽を交えながら演奏会を開くというのは、ひとつ画期的な企画だったように思います。様々な立場のお客さんが入り混じりながら、ひとつの音楽を聴くというイベント、これもまた、合唱にとどまらず、大学という場にあるべきものなのかもしれません。選曲も爽やかで、大学祭のオープニングに相応しいイベントだったように思います。

しかしおかしいなぁ、こんなにねちねちとしたことを言うつもりはなかったのだけれども……楽譜を見ながら演奏を聴くというのはこういうところでよくないのですね(苦笑)