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主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
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2017年3月29日水曜日

【名古屋市立向陽高等学校合唱部 Spring Concert】

2017年3月29日(水)於 昭和文化小劇場
(2回公演・1回目によるレビュー)

さて、チラシ込みのためにお休みを貰いつつ、ついでに髪切りに行ったりして、せっかくだしなぁとばかり、真っ昼間から演奏会。高校の合唱団を聞きに来るのもだいぶ久々です。
この団、今年でこそ遂に全国大会出場という快挙を成し遂げた、充実したシーズンを過ごしましたが、実は数年前までは休眠状態にありました。「60ン年ぶりの全国大会出場!」なんていう風に騒がれもしましたが、それが復活した要因の最たるところが、これまでも多大なる功績を残してきた友森美文先生の赴任によるところがあります。なんかそういうのも、かたや残された子たちにとっては残酷かしらといつも思わされるのですが、否、今歌っている子達に罪はありますまい。全国の舞台を踏むに留まらず、このホールのこけら落とし公演シリーズの舞台も踏むなど、地域活動にも積極的に貢献している合唱団、一年の総括には、やはり「地元の」ホールを選びました。向陽があるあたり、瑞穂区との区境だったりするけれども←

・ホールについて
文小の中でも一番新しいところです。なんてたって、この間の12月に開館したばかり(!)。初めて入るホールにして、実は家から近所だったりするものだから、かなり親しみがあったりします(在所がバレる!w)。川名駅からのアクセスもよく、近くには広い公園もあるので、演奏会前に日向ぼっこを楽しむことも出来ます(?)。
真四角のハコ型のホールに、黒背景と木製ルーバー、さらに長尺シートに留まらず、要所要所にあしらわれたカーペット貼りが印象的な内装。天井の反響設計は一部に抑えられていることもあり、加えて、暗転すると驚くほど暗く出来るので、どちらかといえば演劇向きと言えるかもしれません。しかし、このモダンな内装、僕は嫌いじゃない。なにより、この新築の香り笑
もっとも、上述のようなことからも、響きについては必ずしも優秀とは言い切れません。舞台設備がむき出しで各所に配置されていることに加え、コントロール室が大きく客席中央後方上部に張り出していることもあり、場所によっては音楽を聴くには満足いかない部分もあるかもしれない。残響時間も短い。しかし、このホールのいいところは、響かないなら響かないなりに、ステージとの音響的な距離感は保たれていることにあります。汚れた響きにならないのはもちろんのこと、ちゃんと、遠いところから聞こえてきているな、という音が鳴っている。港文小などはその点、間近で鳴るので若干疲れる面もあるのですが、そういったストレスとは無縁でいられるホールです。あと、ステージがメチャメチャ広い。反響板がうまくラッパ型に開いている証左といえるかもしれません。

本日はほぼ満員御礼! ちなみに、ビデオ撮影は許可つきで OK とのことでした。学生団よのぉ。

指揮:友森美文
ピアノ:戸谷誠子、友森美文**
パーカッション*,**:中村新、間野英里、ギヨルギエウ美郷

・エール
「名古屋市立向陽高等学校校歌」

力強いユニゾンが特徴的。そうだった、名古屋サウンドはそういえばこうやって作られていたのだった。ハーモニーを重ねてもその勢い衰えることなく作り上げるのは、さすがと嘆息するところです。
ところで、なんとこちら、無意識だったけどアカペラ版。隣の人が話していたのに聞き耳立てていて気づいたけれど、考えてみれば校歌って普通ピアノ伴奏ですよね。。。さながら大学合唱団のような心持ちです。頼もしい。

第1ステージ
石若雅弥・混声合唱とピアノのための『ひとつの歌にも』(谷川俊太郎)

その、力強さ、という意味に合っては、やや男声が立派すぎるのかな、とも思わんでもないのですが笑 ウ母音とか、響きを口の中で持ち過ぎなのも気になるところです。もっと開いた発音のほうが、個人的には好き。
全体として、表現が単一的過ぎたような気がします。例えば、1曲目はもっと軽やかに行きたかったし、全体として、言葉の収め方が、極端に子音の響きを消しすぎていて不自然だったのも気になるところです。総論として、歌が意思を持っていることで出来る表現は素晴らしかったように思います。例えば、2曲目の「愛なんて言葉はいらない」というテキストの出し方にははっとさせられましたし、4曲目の、ゴチャゴチャしそうな音響をスッキリ整理したものなどは、さすがの実力と唸らされたものです。つまり、裏を返せば、そうでないところは、やや平板というか、持っている一つの武器に無理に頼りすぎていたような気がします。もちろん、それでいい場合もあるにはあるのですが、いかん場合は、表現に限界があって、どうしても、足りない、もっと欲しいと思わされる事になりました。ともすると、指導からうまく遊離した、「こう表現したい!」という意思が織りなす表現となれば、この団はよりうまくなるのではないかと思いました。
否しかし、全体として、非常によかった。なにより、その風格が――ネ。
ところで、石若センセってこういうマジメな曲書くんですね← 否いい意味で←

舞台転換は、舞台上の男声も手伝って……否、これが違う、彼らはプロ集団なんです。
というのも、愛知県合唱連盟において友森先生が率いる高校合唱部はお手伝いの常連。毎回、イベントごとに、多くて30人にも及ぶ「大お手伝い団」を結成し、ありとあらゆる場所で活躍してくれています。舞台バラしは常に、この向陽の男手が活躍します。そう、だから、むしろ本職というべきか笑 むしろ、大人たちも含めて模範となる活動を見せてくれています。

第2ステージ・思い出のコンクール
Kodaly, Z. “Szép könyörgés” (B.Balassi)
Karai, J. “De profundis”
戸倉俊一(arr. 米本皓亮)「ペッパー警部」(阿久悠)

コンクール報告演奏。え、変なのが混じってるって? 否、これは全国審査待ちの時間に向陽が披露して拍手喝采を受けた(らしい)佳曲でございますよ笑
課題曲はG2。何より、出だしのユニゾンは、声質と非常によく合っている笑 /e/で響きが広がりすぎているような気がしましたが、さすがに概ね良いアンサンブル。男声が落ち気味なのもそうですが、気になるのは、動学的な表現の構成。縦のライン=静学的な表現は非常によく出来ているように思うのですが、横の流れ=動学的な表現構成については、まだまだ足りない。理知的なアンサンブルではあったものの、この情熱的な詩に対して非常に淡白に収まってしまったのが残念なところです。
自由曲。ソリストすげぇ笑 あとベースすげぇ笑 長音符の通奏で少々音色が崩れそうになる部分があったような気がするのですが、むしろそんなもの、バチバチ決まってなんだかピーヒョロなっているような気がするすばらしい倍音に支えられているカデンツで大体吹っ飛んだ笑 もう少し弱音の表現に緊張感があると良いのかしら? なんにせよ、細かくて大したことない部分ばかりです。総じて、いい演奏でした。
ペッパー警部は……まぁいいや笑 言えることは色々ありそうだけれど、ここでいうのは野暮ですよね?笑 あえていうなら、ちゃんと手拍子で応えてあげたかった。うーん。

インタミ10分。そう、この団は、仕込みが大変なんですw

第3ステージ・今年度のお気に入り**
Webber, A.(arr. E.Lojeski)「マスカレード」(『オペラ座の怪人』より/C.Hart)
Hamlisch, M.(arr. A. Kerr)「ONE」(『コーラスライン』より/E.Kleban)
Bruckner, A. “Locus iste”
Ives, G. “Name that tune”
 a cappella ensemble
Tosti, F. “Addio!” (G.J.Whyte-Melville)
 Tenor: 坪井一真
 Pf.: 戸谷誠子
渡辺岳夫(arr. 信長貴富)「ゆけゆけ飛雄馬」(東京ムービー企画部)〈男声〉
穂口雄右(arr. 壺井一歩)「微笑がえし」(阿木耀子)〈女声〉
星野源(arr. 米本皓亮)「恋」
 Pf.: 米本皓亮

アラカルトにして、この圧倒的なボリューム! これを2回やる生徒の気持ちにもなってみろ!……あ、逆に嬉しいかもって? まぁ、そうかな……笑
1曲目は、目のマスクを付けて、定番だというオペラ座の怪人。ソロダンスにまず拍手。この曲に限らないのですが、細かい音符が流れてしまいがちなのは改善すべきポイントか。あと、繰り返される主題に対しては、それぞれ違うアプローチを見せたかったところです。2曲目のコーラスライン、これは非常に素晴らしかった! 歌も、踊りも、これからの向陽の代名詞となって欲しいような、おしゃれで綺麗なアンサンブル。3曲目は、国文祭の高校合同ステージで披露した曲。ミュージカル2曲に対してビクビクしすぎたかしら? でも、発音は、最後の子音 /st/ までバッチリです。4曲目は、アンコンのうちの1団体が披露。友森先生の「なんかつまらんナア」という指摘から振りが付けられることになった由。この団がアンコン出演でリハーサルしている時、実は当方、計時スタッフとして従事していたのですが、この団体のパフォーマンスに笑いを堪えるのに必死だったんだ、闘牛のモノマネ(ウシ込み)から不謹慎芸まで、なんでもかんでも(真顔で)演ってしまうもんだから……w 今回は、思いっきり苦笑させてもらいました!(あれ?) 4曲目は団員ソロ。というのも、なんとこの子、現役で東京藝大声楽科に受かってしまったそうな。わーお。というわけでプログラム外の披露演奏です。ホールとの相性の問題か、然し、母音の響き方は正にプロ顔負け。加えて、合唱の経験に裏打ちされたアンサンブル能力の高さはもうプロの域といったところか。持ち上げすぎ? 否、クレッシェンドの高揚の付け方などは、今後の学究生活でより伸ばしてくれることでしょう。期待の持てる、頼もしい演奏でした。
その後は、男声女声にわかれてアンサンブル。この曲、寡聞にして知らず、飛雄馬とは名ばかりの、飛雄馬→タイガーマスク→アタックNo.1と遷移していく曲。しかも、最後のカデンツはバッチリ、アタックNo.1で決めてくれる……えと、飛雄馬、じゃなかったっけ?笑 挙句、女声に「アツいというより、暑苦しかったですよね、あの演奏!」と明るく言われてしまったら会場大爆笑です。かたや女声の側は、昭和感丸出しの振り付けで、ポンポン持って、最後にはハートマーク作っちゃったりしちゃう感じのキャンディーズ。曰く、「この人達がわかるということは、人生の先輩ということになりますが――」余計なお世話じゃ!w
最後の曲は、この団がやらないといけないでしょうとばかりの、恋ダンス。友森先生はタンバリンを持って、友森先生の教え子による編曲で、もちろん、恋ダンスは歌いながらのフルダンスです。コール・ドラフトのようなことを平然とやってのける。そうです皆さん、これが友森軍団の実力なんです……スゴいんですよね、この、ダンスが。あの難しい振り付けが、完璧なんですもん。脱帽ですよ、脱帽。

ふたたびインタミ10分。そりゃ、これだけ盛り沢山だったからねぇ……w

第4ステージ*
arr. 源田俊一郎・混声合唱のための唱歌メドレー『ふるさとの四季』

最後は、パーカッションと共に定番どころを。とはいえ、打楽器が奏でるサウンドスケープから、マリンバの美しい響きに導かれ、さらに、打楽器がリードしながら様々な世界観を織りなしつつ、その上に唱歌を載せていくという、新しいスタイル。
そう、なにより、この打楽器陣が本当に素晴らしい演奏でした。否、もう、この手の曲とこの団の声が合うことなんて、とっくにわかりきっていたことなんですよ笑 丁寧な仕事でありながら、決めるところはちゃんと怖じることなく決めに行く。高校生に対して妥協するでもなく、簡潔かつ豊かな響きでしっかりと鳴らしていくアンサンブル。情景の見えるような美しい響き、音画。書くことが薄っぺらいのは、もう、ずっと、打楽器の仕事ぶりを眺めていたからにほかなりません。響きに対する徹底した仕事ぶり。勉強になりました……あれ?w

団長挨拶を挟んで、アンコール。まだ夜間の部もありますからね、泣いたりはしませんよ、男の子だもん←

アンコール
信長貴富「夕焼け」(高田敏子)

少し駆け足の演奏だったかしら? 欲を言えば、もっとじっくり歌いたかったところです。否、でも、アンコールだし、この曲、しっとり歌うとどこまでもねちっこく歌える曲だから、これいくら位で寧ろちょうどいいのかも。
曲の終わりのカデンツ鳴る中、緞帳が降り、拍手を受けながら、終演と相成りました。

・まとめ

向陽に留まらず、はじめて、どっぷりと友森サウンドに浸かる2時間半(!)を過ごしました。このサウンドが、これまでの名古屋を牽引し、これからの名古屋を作っていくのだと思うと、なんだかとても頼もしい。
そう、「頼もしい」んです。音の作り方もさることながら、先生の主導する面こそあれ、その選曲スタイルだったり、表・裏に関わらず積極的に活動に参加する姿勢だったり、まして、進路にまで音楽を選ぼうという意思のある青年を生み出したりもする。それがすべてというわけでもないけれど、皆合わせて、その理想のすべてが、この団にあるような。
前述の通り、この団の今後の課題は、表現の自発性にあります。ある意味では、世の高校合唱団すべてに言える過大なのかもしれません。でも、裏を返せば、ものの3年で、この団はそんな領域にまで辿り着いてしまった。3年で入れ替わるのが高校合唱団の定めとは言え、先輩から代々受け継がれるものもあるなかで、短期間でその環境を作り上げた彼らには、刮目するものがあります。
高校の団が3月に演奏会をやるというのは、春休みというメリットがあるものの、長期離脱していた3年生にとってはやや負担がかかることなのかもしれません。でもだからこそ、この時期の演奏会というのは、逆をいえば、新年度への新たなスタートとしてもおあつらえ向きな面もあります。その意味で、今日の演奏会は、来年への活動への期待もかかる、素晴らしいスタートだったのではないでしょうか。
……そうそう、今度の合唱祭では、是非、その、恋ダンスをひとつよろしくw

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