おおよそだいたい、合唱のこと。

ようこそお越し頂きました。
主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
やたら細かいレビューからノリツッコミまで、現状、合唱好きな方の暇つぶしには最適です。
ゆっくりしていってね!!!

2014年7月27日日曜日

【千里エコー第10回記念定期演奏会】

2014年7月27日(日) 於 いずみホール

今週末は、ハルモニア・アンサンブル(東京)宝塚国際室内合唱コンクール(兵庫)など、合唱人注目のイベントが目白押しでした(すっごい主題から外れるんですけど、ハルモニア・アンサンブルっていう合唱団、イタリアにもあるんですね……笑)。特に宝塚なんて近所なのに、そんな中わたべは、頑張って研究室に篭もり(捗ったとは言っていない)、色んなイベントに今回はいくまい、と思っておりました。
そんな中、唯一馳せ参じた当演奏会。なんと、男声合唱界の巨匠・多田武彦先生の新曲初演という大イベントがラインナップされておりました。それだけで入場料 1,500円払ってもええくらいや。そんな中、個人的に思い入れのある『夢の意味』をやられるということで、これはもう、行くしかないだろう、ということで行ってまいりました。
またしても、北摂の地名を冠していながら北摂で演奏会をやらないタイプの合唱団です笑 とはいえ、この団、一般団とはいえ、関西大学グリークラブのOB合唱団であるため、その点、実情が異なるといえばそうなのですが。豊中に建設中の新ホールg(ry

・予習:多田武彦について
まぁ、タダタケデータベース見てくれたらそれが一番早いんですが←
清水脩に師事、『柳河風俗詩』(北原白秋)で合唱曲を書き始め、爾来、銀行員としての本業をこなしつつ(現在は定年退職)日曜作曲家として、多く合唱曲を残し続けている巨匠中の巨匠。特に男声合唱のレパートリーが豊富で、男声をやる上で多田武彦の名前を知らない人はいないほどです。今回の北原白秋はじめ、伊藤整や草野心平、三好達治、八木重吉など、近代詩に多く付曲しており、その曲のあまりの美しさと人気から、80年代から90年代初頭というバブリーな時代に、多くのグリーメンを柳河や三崎、北陸地方などといった何ともシブい観光地へ誘った、実に罪作りな作曲家です←(半分くらいは妄想)
ちなみに、何者かによって(←)ニコニコ大百科の記事が執筆された、数少ない日本の近代作曲家の一人でもあります。
嘗て関西大学グリークラブは『水墨集』(北原白秋)を委嘱し、それが北村協一先生の指揮で音源化されたこともあるそうで、そのことを記念してか、今回の『第二』の委嘱は千里エコー側からのリクエストだったとのことです。

・ホールについて
まぁ、前の記事見るまでもなく、有名なホールですね←
今回気付いたこととしては、これまであったっけ?という、いずみホール専用の録音アナウンスの存在ですね。今回はアナウンスはそれのみでした。内容は、
i. 録音・録画・飲食・喫煙禁止
ii. 電波遮断装置の案内
iii. 補聴器の装着確認(ノイズが出ることがあり、ちょうど前日の名フィルで騒音騒動があり、こちらも問題視されました)
の3つ(たぶん)。3番目を音で案内しても……とちょっと思いつつ。もともとここは電波遮断装置なかったはずなので、おそらく最近の録音でしょう。思うことはいろいろありますが、要は、個々人の心がけの問題。ちゃんと普段から注意しておきましょうって、そういうことですね。しっかり演奏聴く人間からしたら、自分から音出すなんてのは考えられないはずですから。社交でしか演奏会行かないよって人も、せっかくの会場ですから、音楽をいつもよりしっかり聞いてみると、思った以上に美しい世界が広がっていることに気づけるかもしれませんよ!というお節介でした(ホールの案内どこ行った……w)

何やら、第1ステージは特に、入場がもっさりしていたような気がします。スカート履いてるわけでもないですし、ちゃっちゃか出てきてくださったほうが印象いいですね……笑

第1ステージ
スペインの宗教曲集
Victoria, T.L.“Tenebrae factae sunt”, “Domine, non sum dignus”
Morales, C.”O magnum mysterium”
指揮:下井田秀明

スペインといったらビクトリア。さらにモラレスの作品を合わせて1ステージ。曲間が非常に長く、入場と含めて、演奏会のテンポに緩みを与えてしまったように思います。
内声の弱さが目立ってしまい、曲全体の輪郭がぼやけてしまっていたように思いました。3曲とも、ポリフォニックに展開していく曲なので、その点、各パートが自身の旋律をしっかり歌えていないと、音楽全体がすごく不安定に聞こえてしまいますが、ともすると外声ばかりに比重が行き過ぎて、内声が聞こえづらかったような気がします。セカンドが高音で張れない、あるいはバリトンが単純に音圧が低い、など、もう少し気にすることが出来たような気がします。トップの出し方でセカンドが出せると、よくハモって音圧も出てよかったのでは。和声は全般的に素晴らしく、いずみホールの音響も借りてとても気持ちよく聞こえましたが、逆に、上のような要因からか、3曲目は最初よかったもののだんだん推進力を失い、最後のトニックが短調に突っ込みかけてしまいました。こなれた感じで聴かせるのも効果的ですが、単純に、もう少ししっかりとした声を聞きたかった。

千里エコーの「委員長」のご挨拶。楽譜販売すること(3冊買って1冊自分持ちなうです)、アンケートのお願いなど。アンケート1枚50円と楽譜収益を寄付するとのこと。多額の寄付金が誕生です。特に、アンケート課金(←)は良い試みかと思います。

第2ステージ
多田武彦『水墨集・第二』(北原白秋)〈初演〉(2013年委嘱)
指揮:下井田秀明
I. 雨上り
II. 潮鳴の夜
III. 島の日永が
IV. 初秋の庭
V. 祭のまへ
VI. 時雨日和
VII. 風

あれ、これって初演なんですか?という、非常にタダタケらしさ全開のオーソドックスな楽曲です。もちろん、多田武彦先生の書法も少しずつ変化しているようで、特に今回は、擬態語のリズムの打ち方、3拍子と2拍子の組み合わせ、7曲中3曲にソロが付くなど、非常に技巧的な面をはらみつつ、特に後半3曲が壮大な主題を持っていて、タダタケ総合力を求めてくる曲となっていたように思います。白眉は6曲目。広く愛唱されたい曲です。演奏は、さすがにタダタケの新曲というだけあって、楽曲到着から1年かけたというのを割り引いても、基本的にとても完成度の高い演奏でした。一部、2曲目や3曲目で縦のリズムが揃わないことがちらほらあったように思いますが、後半3曲、特に主題がしっかりしてくる曲の完成度はとても高かったように思います。タダタケ音楽は、初演以上に、数多くの再演によって磨かれていくものです。今後の再演にも目が離せません。それを予期させるに十分な完成度を持つ良初演でした。
ちなみに、調べたところによると、今後も2作品、タダタケ作品初演が予定されてるんですって。御年84歳にしてなお初演。わーお。

インタミ15分。ここから、タダタケ楽譜販売。限定100部のうち3部抑えてしまいました、スミマセン。1冊は公共財として供出予定です、お問い合わせはそちらまで←
隣の方のお話に聞き耳立ててたら、プロムジカ聞きに行ったそう。いいなー。気付いた時にはチケット売り切れてたんだよなぁ……(遠い目)

第3ステージ
アラカルトステージ
“When The Saints Go Marchin’In”
「夜空ノムコウ」
指揮:天野雄介
「ロマンチストの豚」
“Sometimes I Feel Like a Motherless Child”
指揮:辻本太朗
“Sound Celebration”
指揮:松原幹治

お楽しみ系ステージ。指揮者のアルファベットの頭文字とって、「ATMステージ」と団内では呼ばれていたそう。なんつー扱いだ!w
団員の司会により「千里エコー1のプリティーボーイ」と紹介された1人目の指揮者笑 1曲目、出だしコケましたねwそれ以外は、強弱の使い分け、フレージングとも、非常に好感の持てる演奏でした。曲名ではわかりづらいですが、所謂「聖者の行進」。ニューオーリンズではこれを葬儀で歌うらしく、別名「ジャズ葬儀」というとか。へぇ〜。……「へぇ〜」って古いのかそういえば← 2曲目、実は指揮がずれていたとの説が濃厚、2番の頭で音にも出てしまいました。残念。
2人目は「千里エコー1のジェントルマン」。だんだん無理くり感出てきました← 3曲目、第1ステージでの内声の弱さが露骨に出てしまう曲でした。有名な曲ですから目が厳しくなるというのもありますが、全体的にぼやけがちなアンサンブル。4曲目、頭の低声がいまいち揃いきらないまま始まりましたが、中間部のtutti、そして絶品のバリトンソロが聞かせてくれました。
3人目は「千里エコー1のオチャメなハンサムボーイ」。もはや何でもありであるw中間部の子音のタイミングがバラバラになってしまいましたが、特に最後の和声は十分!和声を聞く曲でもありますし、その点、倍音豊かな満足な音が鳴っていました。いずみで聴くこの音は、本当に幸せ。

第4ステージ
上田真樹『夢の意味』(林望)
指揮:下井田秀明

個人的なもう一つの注目。私事ながら、1年間だけ学生団で指揮してた時に演奏会曲として指揮した曲でもあります……なんと1ステに。今となったら、とんでもないことしてましたね……まぁ、うぃろうで慣れましたが←
結論としては、超辛口なことを申し上げると(本当に超辛口でスミマセン)、この曲のことを理解していないのでは?と思わされる演奏でした。技術はよかったんです。和音はきっちりハメられる団なので、実際、この曲とも本来とても相性がいいはずでした。何が問題だったか。主に、テンポ設定に難ありです。特に旧くから合唱をやられている方だと、高田三郎『水のいのち』から「雨」をすさまじい早さで演られて怒る、という方が少なからずいらっしゃるかと思いますが(何を隠そう、高田先生自身が非常にゆっくり振られていた)、ちょうど、それに近い印象を持ってしまいました。混声と含めると、この曲を聞いたことがあるのは主に3種類、ヤマカズ東混のCD、いずみ定期での大谷東混、あとCDで、清水甍会の3種類。この中だと、大谷先生が若干速めかな?という印象がありましたが、それにしても、その1.5倍近いテンポで駆け抜けていった今回の演奏のテンポは、正直、口語詩としての完成度と叙情性の高い歌詩を全く堪能出来ない出来だったように思います。また、あまりのテンポの早さから、楽譜にとても細かく設定されている数多くのテヌートやアクセント、その他標示を尽く再現しきれない要因ともなってしまいました。ディナーミク、あるいは詩への配慮、この曲は、それさえ出来れば半分は完成するはずなのです。かくも拙速に演奏する必要は、正直必要なかったように思います。若さを出すにしても、幼すぎる。ピアノも、最初から最後まで、ボリューム2段階落として十分だと思います。やや平板だったように思います。
……思い入れが強すぎるんですかね?僕自身、この曲に。

・アンコール
松原指揮・多田武彦「雨後」(『追憶の窓』から・三好達治)
下井田指揮・信長貴富「鎮魂歌へのリクエスト」(『新しい歌』から・L. ヒューズ/木島始・訳)

そう、『夢の意味』はもっと表現できたはずなんです……この2曲をここまで叙情的に表現できるんだもの!タダタケの、あまりに有名なこの旋律、そして重厚な和声、かわって、ジャジーに、しかし協和音でバッチリとハモるかっこよさをもった信長、いずれも、『夢の意味』を凌駕する十二分の出来でした。だからこそ、『夢の意味』の完成度が悔やまれる、そんな出来でした。逆に、演奏会の終わりとしては、納得して帰れる演奏。あと、口笛ウマ過ぎですwwwwwww

その他、身バレご挨拶などして、大阪城公園駅を後に。大阪城ホールでもライブやってました。

・まとめ
有意義な活動をしているOB合唱団として、その可能性について両極端な結果が出たところだと思います。とはいえ、ポテンシャルは非常に高い団だと思います、その点、しっかりとした演奏を今後とも残していって、それが関大グリーに対してもいい影響を残す演奏になると、より良いのだと思います。何より、この時代にタダタケ作品を世に問うことが出来たというのは、近代合唱史においても重要な功績です。十分に、聴き応えのある演奏会でした。まぁ、『夢の意味』は……単に僕の思い入れの問題です苦笑 失礼いたしました。

2014年7月6日日曜日

【豊中混声合唱団第54回定期演奏会】

2014年7月6日(日) 於 ザ・シンフォニーホール

トヨ(・∀・)コンでした!!

さて、大阪府豊中市に拠点をおきつつも演奏会を豊中市でやらないと評判の豊中混声合唱団でした。今度新しいホールができたら、事情が変わってくるのでしょうか笑
豊混というと、名誉指揮者に須賀敬一を据え、高田音楽の伝導者的立場としても、そして、永く関西の合唱界を引っ張ってきたという意味でも、重要なポジションを占める合唱団。西岡先生の指揮活動の中でも重要な役割を占める三善作品を始めとする、新曲や名曲の創作力は今も眼を見張るものがあります。そんな豊混、今年は二本柱、三善晃追悼と、待望の千原英喜作品初演、加えて、もちろん高田作品も忘れないという、盛り沢山のプログラムでした。

ホールについて
関西の方にはお馴染みでしょうか。福島にあるので音はいいです……っていうのはともかく(実際、大阪・福島にあります)。
座席の奥行きは狭め。座席数からしても決して狭くはないですが、円形の作りで、意図的に狭くつくろうとした当時の音響に対する意欲が感じられるホールです。ちょうど教会のような、シンプルな壁面にブラウンの落ち着いた内装、椅子のちょうど良さ(これが本当にいいんだ!)、程よく残り、そして包み込むように響く落ち着いた響き、ここで、幾多の名演が生まれてきました。
そして、表方の仕事が本当に素晴らしい!トイレにも「ご来場ありがとうございます」という手書きポップが掲出してある気の届きようです。しかも、コーヒーがすごく美味しい。ホール内とは思えない。至福の時間を過ごすことの出来る名ホールです。決して新しくないながらも、至上屈指のホールです。

上に書いた通り、前半は三善晃追悼個展、後半は、十八番と新曲初演でした。構成力にも優れた演奏会。

オープニング
三善晃「中新田町町民憲章」(宗左近)
三善晃「豊中少年少女合唱団団歌」(三善晃)*
指揮:西岡茂樹
太鼓:柏崎康平、中村優太、西真一郎
*ピアノ:西岡惠子
*演奏:豊中少年少女合唱団
三善晃作品から各作品。1曲目は、作詩作曲両氏が愛した宮城県加美郡にあった町(現加美町)への献呈曲。この町にある、バッハホールというのがとても素晴らしいホールだそうで、その縁もあり、両氏による多くの曲が生まれているとのことです。自然に囲まれた中新田町とは、こういう風景なのだろうか、まさに自然への讃歌! moll の特徴的な主旋律を男声の静かで力強いユニゾンが導き、女声がさらにユニゾンを重ね、ヘテロフォニーをきっかけに和声が分かれてホールに広がります。そして締太鼓と和太鼓が加わり、地元を祀る交歓のように活気に溢れていきます。円熟の音を鳴らす豊混によく合った曲であったような気がします。特に同曲については、できればもっと圧が欲しかったか。
2曲目は、今回賛助で乗ることになっている豊中少年少女合唱団の作品。西岡先生が引っ張る豊混の姉妹団。曰く「ダメ元でお願いしたら、ある日突然封筒で届いた作品」だそう笑 曲としては平易ながら味わい深い、そして、文筆家としても秀逸な三善先生の示唆に富んだ歌詞が秀逸な作品です。先生の子どもたちへの思いが十二分に詰められた曲なような気がしています。三善晃というと、殊現代音楽の名作に目が行くのは勿論なのですが、他方で、カワイ「三善メソード」全12巻に代表される、教育音楽への眼差しというのも、一つ重要な側面を醸します。桐朋学園学長職も合わせて、音楽教育へ三善先生が尽くされた貢献も、非常に大きい、まさにその象徴の一作とも言えそうです。

第1ステージ
三善晃・童声・混声合唱とピアノのための『葉っぱのフレディ』
指揮:西岡茂樹
ピアノ:山岸陽子
賛助:豊中少年少女合唱団
第40回大阪府合唱祭で初演された同曲。3年続きの、子どもたちとの合同演奏の、奇しくも第1回が行われる数日前、合唱祭の行われている池田アゼリアホールにも近い、大阪教育大学附属池田小学校で痛ましい事件が起きた所だったといいます。そのことから、三善先生に委嘱をお願いするときに、西岡先生が話されたというその事件の話が、「葉っぱのフレディ」への付曲につながったとのこと。子どもたちを守ることすら出来ない苛立ちと、それでも伝えられることがあるはずだという、西岡先生の信念。
全編を通して、混声と童声の交歓により歌われます。「春」全編アカペラ、大人と子供の交歓で、穏やかに春を祝う。「夏」弾むようなウキウキとした音色。夏の楽しみを、ともに元気に歌う。「秋」来る将来への不穏。運命の予期と、純粋な嘆き。「冬」哀しみの受容。その中の、ダニエルの救いの間奏曲。「雪」運命の受容。静かに、しかし着実に、美しいカデンツ。「やがて春」巡る季節、巡る命の喜びの讃歌。繰り返し、しかし、大きく、美しく育っていく。
先日、大阪府合唱祭でも再演していただけに、円熟し、完成した音楽を聴くことが出来ました。大人数ながら、アンサンブルが、各パート立ち位置を捉えた、全体としてのまとまりで響かせる力を持った秀逸なものでした。木は全体でこそ育つ。第1ステージにして、名演でした。普通だったら演奏会が終わる笑 2回めですが、何度聞いても美しい組曲です。編成的に困難こそあれ、府連にとどまらず、今後ひろく愛唱されることを願ってやみません。
備忘含め、やや、ソプラノに弱く、テナーに膨らみすぎたか。

第2ステージ
三善晃・混声合唱曲「嫁ぐ娘に」(高田敏子)
指揮:西岡茂樹
続いて、名曲の再演。三善音楽の中でも『フレディ』が後期だとしても、こちらは、初期にあたる作品です。1962年、委嘱はABC朝日放送、初演は東混。ともすると、大阪生まれといっても差し支えない作品です。多分……笑
高音がイマイチ伸びきらないことや、フレーズの終端が揃いきらない殊など、留意すべき点が幾つかある演奏でしたが、他方、三善音楽の構成美的要素は余すことなく熟知された演奏であったと評価できます。まとまった、統一されたハーモニーに加え、斬新ながら、日本語の抑揚にあわせて自然に付された音列、それに伴い現れる音楽の山と谷。強弱はそれに寄り添って付けられていきます。聞いているうちは、ややディナーミクに不足感がありましたが、今回顧するに、ちょうどよかったのかもしれないなぁとも思わされます。「嫁ぐ日は近づき」リズムパートの男声がよく輝いていました。逆に、同じ箇所では、女声の縦が揃いきらなかったように感じます。「あなたの生まれたのは」、終曲「かどで」とどこまで対比しきれたか。似通っているように聞こえてしまった。「戦いの日日」東混初演作に特有な、ソロの多い構成をも明瞭にきかせられた。「時間はきらきらと」前曲との対比が、ついていたともついていなかったとも。曲間の連続性という意味では、可としたい。

インタミ、20分。多分、20分(よく見てなかった)

第3ステージ
高田三郎・混声合唱とピアノのための『啄木短歌集』(石川啄木)
高田三郎・混声合唱曲「冬・風蓮湖」(岩間芳樹)
指揮:須賀敬一
ピアノ:中村有木子
指揮者にとっても、団にとっても、十八番。『啄木』は、はじめ独唱曲として、混声版は、豊混初演で行われたそうです。世代交代が盛んな団ですが、初演曲、再演。
計算しつくされた音楽、語頭の揃ったテキストの描写、決しておしつけでなく、心に自然に届くディナーミク。これぞ、高田=須賀音楽也。ところで本来「高」はハシゴ高である。
両曲とも、何ら過不足のない、完成された音響。現代音楽に属するにしても、敬虔なクリスチャンでもあった高田先生の音楽には、いずれも、演奏上守られねばならない厳密な掟が多く存在します。さながら、古典派を演奏するかのような緊張感が求められる。代表作『水のいのち』だけで楽譜が200刷を数えるほどの再演の積み重ねが、高田音楽の掟を伝承してきました。その代表格とも言える須賀敬一先生、そして豊混。その流れを十分汲んだ、文句の付けがたい圧巻の出来でした。
「冬・風蓮湖」は白眉。現代に高田音楽を演奏する意義を十二分に感じることの出来る、堂々とした演奏でした。

【須賀アンコール:高田三郎「街角で」(村上博子)】
高田先生、合唱曲の遺稿とのこと。高田音楽らしい、美しい旋律に溢れた曲。御大ステージの締めくくりに、着実な音響を聞かせてくれました。

第4ステージ
千原英喜・混声合唱のための『永訣の朝』〈初演〉
指揮:西岡茂樹
まずは、西岡先生と千原先生のトークショー。「作曲していると、突然、銀河系宇宙の中にいるというか、アンドロメダ系銀河の中心にいるような感覚に陥ることがある」「銀河系のはるかかなたへ祈りをこめる、そういう曲なんですよ!」(要旨)など、千原先生の宇宙観をなおも確認させられるトークでした。豊混&西岡、待望の千原委嘱、であると同時に、千原待望の豊混委嘱、だったとのこと。双方の需要が一致する、運命の委嘱初演。
壮大かつ麗美、普遍的な祈りに満ちた傑作が生まれました。「あめゆじゆとてちてけんじや」の谺の中に、今失わんとするものへの切なさを歌う1番、そして、最後の「わたくしのすべてのさいはいをかけてねがふ」という壮大な決意を堂々と歌い上げる2番。現代の作曲中の中でも珠玉の『永訣』が生まれました。
曲は、千原音楽の中でももっとも複雑かつ困難を極めます。冒頭、絡み付き、因縁のようにまとわりつく対位にはじまり、絶唱のユニゾン、そして、氷解するような和声。詩に寄り添い、音の風景は色を変え、移り変わります。絶望から祈り、決意への転化。賢治に通底する、美しいものへの憧憬。この曲を通してはじめて、千原先生の主張し続ける独特の宇宙観が、ようやく理解できたような気がします。
賢治のテキストへの付曲は、嘗てから多く行われていました。そのどれも、名曲であることにかわりはありません。しかし、賢治へのアカペラでの付曲は、中々試みられなかったように思います。肉声でのみ、というと観念めいていますが、声のみで伝えられた『永訣』の世界観、これこそ、もっとも求められていたことの一つのような気がしています。決して勢いにまさる綺羅びやかさや、がちゃがちゃと装飾ばかりに華美なわけでもなく、ただ詩と向き合い、詩の世界を音にすることのみに執心された世界観の創出。それゆえに生み出された、傑作。
1月に到着していたとは言いますが、豊混も、よく表現し切りました。2番中間部の跳躍かつ無調的な対位には苦しんだ跡が伺えましたが、それ以上に、構成にも難解な同曲にくっきりと輪郭が与えられていました。唸る西岡、それに呼応する絶唱。傑作の初演は、豊混なくしては成立しえませんでした。
関西合唱コンクールで再演とのこと。即時出版希望。大曲故、多くの団の再演を通して、この曲は磨かれなければなりますまい。祈りと決意の協和音を、全国に。

【西岡アンコール:千原英喜「夜もすがら」(鴨長明)】
すみません、練習中故、テナーがとても明瞭に聞こえます爆 今年の全日本合唱コンクール課題曲。
うってかわって、シンプルながらキレイな曲ですよね。ちなみに、西岡先生、「夜↓もすがら」ではなく、「夜↑もすがら」です!wwww

・まとめ
本当に充実した演奏会を聴くことが出来ました。プログラムからして合唱の歴史を洞察しつつ、得意なところから新しい挑戦まで、豊混という団のポテンシャルを如何なく発揮していたように思います。合唱団もプレイヤー側にいますと、何かと政治的な話が云々聞こえてきます。しかし、そんなことと、音楽の美しさは、関係ないんですよね。美しい演奏の前には、何もいうことは出来ますまい(お前これまでどれだけ書いてきたんだよ……www)
何より、本当に素晴らしい作品が世に生まれたこと、そのことが、何より、この演奏会においてであってよかった。傑作にふさわしい、名演でした。Bravi。

2014年7月5日土曜日

【第53回明立交歓演奏会】

2014年7月5日(土) 於 杉並公会堂 大ホール&YouTube LIVE&ニコニコ生放送

かがくの ちからって すげー!

いまじゃ ネットはいしんで ぜんせかいに えんそうかいを とどけられるんだと
(ネット配信協力:東京コンサートシステム、NTT東日本フレッツ光)

そんなわけで、今日は珍しく、ネット生放送からレビューを起こしてみようかと思います。ちなみに、相手がライブ配信ということで、こちらもライブ配信で書き連ねてまいります。果たしてどうなることやら。中継途切れることなく無事見切ることが出来るかしら。

御託:いつからか、というのははっきり記憶しておりませんが、明治大学グリークラブ(明グリ)が、こういった演奏会のネット配信をはじめて、以下、明グリが絡む演奏会は大体ネット配信されるようになっています。時折音声や動画が途切れたり、そもそも音質が悪かったり、会場にいた人が若干そんなんじゃないかとか色んな声が聞こえてきているみたいですが、概ね好評の様子。かくいう自分も、支持派です。なにより、男声合唱音楽へのアクセスを容易にするという意味でとても良いですし、演奏家としても、衆目に触れる形での演奏というのは、叱咤激励を通して成長する良い機会になると思います。ほら、僕みたいに変なことやりだす人間も出てくるわけだし笑
四連同様、この時期のジョイントコンサート文化を支える重要なジョイントの一つですね。回数も53回と、どこぞの合唱祭と同じような重ねています。すごいもんだ。立命館大学メンネルコール(立メン)は、歴史のある男声合唱団としてしられています。歴史数えて実に60年とのこと。いやはや、素晴らしい。彼女作りたいという質問に無慈悲な回答で合唱に誘う、非常に歌に対してストイックな団だという印象でおります。明治大学グリークラブは、Twitter界では非常に名の知られたツイ廃集団です。深夜のお散歩を実況中継したり、はては自大学の別サークルがやらかしてしまったことをネタにしてRT数を稼いだりする中々出来る集団です。たまに生放送配信したり、ブログ書いたりと、まさに、インターネット界期待の寵児であります。どうやらTLをみていると男声合唱も熱心にやっているらしく、今日はそのお披露目の機会だそうです。……ん?笑
なお、彼らの名誉のために申し上げておくと、立メンは、廣瀬量平『五つのラメント』、明グリは、多田武彦『雨』などをそれぞれ初演した、実に由緒正しき男声合唱団であります。

・ホールについて
僕はこのホールのことをよく知らないので皆さんネットで各自勉強して下さいね☆
響きが良いと評判だった記憶があります。

第0ステージ
エール交歓
Rits:やや上昇音型の勢いに欠けるか。トップに蓋の付いているような、響きの最小上界。ただ、響きの作り方、発声、和声、いずれも好感の持てる快演。
MG:内声の地声感が気になる。加えて、高い音から入るフレーズで決然さがない。決まるべきところは十分決まっている。まっすぐで良い。
演奏は同点。いずれもよく、今後の快演が期待できる演奏である。

第1ステージ
明治大学グリークラブ「友よ」
水野良樹「YELL」arr.鷹羽弘晃
佐藤賢太郎(Ken-P)「前へ」
安岡優・松下耕「言葉にすれば」安岡優)
指揮:岩倉克樹(学生)
ピアノ:松元博志

互いのアラカルトステージから入るこのステージ。まずは、ポップス系の曲で攻めていくツイ廃……じゃなかった明グリ。「YELL」の編曲者は「手紙」などの編曲でも有名ですね。休符が指定されているのでしょうか。各音止めるのが早く、フレーズが短く聞こえるのが惜しい。トップに対して内声がデカイのは、どちらが調整すべきか。多分トップでしょうが。2番のリズムパートの主従の作り方などは見事。歌詞と楽譜をともによく読めていて印象良いです。大サビが興奮しすぎてやや崩れたか。「前へ」トップの弱さが前半で出てしまったか。支点を失ったアンサンブルがやや散ってしまった印象。その後、しっかり盛り返しました。強弱の設定はお見事。よく研究されている。「言葉にすれば」彼らの一回り上の高校合唱人にとっては定番中の定番。翻って合唱人のマスターピースへ。音取りなしで臨んだところ、しっかりハマっているのは素晴らしい。その後も、全般的によく決まったハーモニーを聞かせてくれました。サビでリズムがズレて言葉が間延びしがちになってしまう曲なのですが、その点もよく克服されていたように感じます。ステージ通して、なにより、生放送特権か、学指揮の丁寧な仕事ぶりが正面から垣間見れたのもよかった笑快演でした。
こういう、ポップス系のステージの、曲間拍手は、難しいですね。結局はその場の「空気」なんでしょうが。

第2ステージ
立命館大学メンネルコール「メンネルと黒メガネの指揮者~ありのままの姿見せるのよ~」
湯山昭「日まわりの歌」男声合唱とピアノのためのディアローグ『流氷のうた』より(阿部保)
千原英喜「もう一度」「明日へ続く道」男声合唱組曲『明日へ続く道』より(星野富弘)
鹿紋太郎(arr.朝倉正一郎「やっぱ好きやねん」
指揮:内山倫史(学生)
ピアノ:上野順子

「日まわりの歌」浅学な私なぞは、湯山昭というと、「ゆうやけの歌」が思い出されます。激しい曲調の変化を、惑わされることなく、忠実に再現しきれていたように思います。子音がよく飛んでいたのが印象的。音楽としてもよく流れていました。『明日へ続く道』かつてのNコン課題曲。特に「明日へ続く道」が組曲化に際し大きく改訂されました。「もう一度」最初の和声がぼやけてしまったのが惜しい。その後はよく表現できていたか。ところどころ、パートソロを喉で押してしまっているような声が聞こえたのは留意。メロディ、トップもっと頑張れ。こここそ、押してでも表現しなければなるまい。「明日へ続く道」冒頭のピアノの、イン・テンポでのあっさりとした決然さ、非常に好感の持てる名解釈(偶然の産物だとしても)。前半部から中間部へ遷移する際の和音、内声が飛び出すぎたのが脳裏で印象を引きずる。速いテンポ解釈に負けずに、滑らずに演奏しきれているのはお見事。「やっぱ好きやねん」歌詞に対してややむさ苦しい爆せっかくのネタ枠なんだから、動け、とも言わないが、もっと大胆に表現しても誰も(?)怒らないはず。ハーモニーをキレイに納めるという第一条件をクリアしているのだから、ガツガツと表現する勇気を。その「キツく抱いてよ」では誰も抱いてもらえへんで!w
ところで、「アナ雪」はやらないんですか?w

インタミ15分。チョコでも食べよう……笑

第3ステージ
明治大学グリークラブ
新実徳英・男声合唱とピアノのための『花に寄せて』(星野富弘)
指揮:佐藤賢太郎(Ken-P)
ピアノ:松元博志

前半のお楽しみ感とは打って変わって、各団の本気が試されるステージ群。特に観客からの目線も厳しくなるのが常です。個人的には、Ken-Pがいつもの真っ黒赤ネクタイで日本語曲を振るというだけで新鮮な驚きを感じます。「たんぽぽ」内声の音の迷いが気になりますが、他方で、主旋律、副旋律の描き分けが非常に鮮明に現れた演奏。何より、Ken-P織りなす空気感が素晴らしい。「ねこじゃらし」もう少し軽い演奏が聞けると良かったかもしれない。ややこの強弱は、楽譜に「張り付いて」しまっているような。より楽譜から自由な表現を試みられたい。裏でオブリガードがややズレたことにあえて言及。「しおん」語頭を強く、というKen-Pの指示(が多分ある)を浅い所で解釈してやいないか。ヴォカリーズの表現に重みが見られたことが、この曲の消化不足感を想起させる。音は非常に忠実である。「つばき・やぶかんぞう・あさがお」このイントロいいですよね……笑 頭のユニゾンをしっかりハメてくるポテンシャル。モノフォニーは時にポリフォニーより難しい。この曲は上手く消化できていた。最後のヴォカリーズも、よく耐えた。「てっせん・どくだみ」低声のヴォカリーズが何か、低い所でうごめいているように聞こえて鮮明さを欠いた。もう少し、旋律を歌う声に優しさが欲しい。救いを。後半の収まりは非常に良い。「みょうが」高声、もっとちゃんと揃えたい。歌い上げる終止和音は聴き応え十分。「ばら・きく・なずな−母に捧ぐ−」トップがこんなに無邪気に歌う歌なのだろうか。全声に言えることではあるが、声が生のママなのはやや気になる。これはこれで聞けるのだが。中間部のユニゾンは、もっと揃えるという心意気を。終曲として、捧げ物としての十分な落ち着き。後半からは、満足の行く音が鳴っていたのではないか。最後の和音にこの曲全体にわたる救いを感じる。
しかしまぁ、この指揮姿、惚れる人が多いのも納得だわ笑

第4ステージ
立命館大学メンネルコール
佐藤眞・男声合唱のためのカンタータ『土の歌』より(大木惇夫)
指揮:山口英樹
ピアノ:上野順子

奇しくも、この時期にこの曲をやるということ。といっても、この曲、2011年震災直後に再演されたりもしているので、そもそも再演回数が多いだけ、という話もありますが笑 合唱をおやりでない皆さんも、終曲「大地讃頌」はご存知かと思います。「土」を通して垣間見る、反戦への祈り。男声版の成立はつい最近。2008年です。見譜。「農夫と土」主客の逆転が主題部で見られたのが気になります。あくまで抒情詩として淡々と。そのあっさりとした演奏も、また乙。さらっと進んでこその魅力のある曲。「祖国の土」音量。もっとあってもよいのでは。いや、これ以上は厳しいか笑 ところどころ、入りがミスしているように聞こえるのが気になる。勢いの中に冷静さを。「死の灰」前半の、疲れの抜け切れていないような音作り、「文明の不安よ」の入りのボリュームがやや大きいこと。細かいところが曲全体を支配する。呪の音作りにしては若いか。再現部の音作りは評価出来る。「もぐらもち」なんと止まっている間にリロードしたらバッファの都合で聞けず。一番好きな曲なのに。なんてこった。「天地の怒り」前半は良く揃いきっていたか。「Wow Wow」部のパートバランスならびに音程は再考の余地あり。テナー、より突き刺さる音を。そして、強い曲だからこそ、弱音により配慮を。「地上の祈り」出だし強い。より繊細に。中間部は及第点。鳴るべきベースが良く鳴っている。「大地讃頌」組曲を通して演奏すると解釈が変わる、童謡「シャボン玉」のような曲。前節までをよく捉えた解釈になっていたのではないか。演奏としても、迷うことなくしっかりと響かせきった。安心して聞くことの出来る、祈りの終曲。……後半、やや和声ぶれましたけどねw
ただ、全体として表現が若かったか。山口先生の指揮が安定していただけに、もっと応えきれたのではないか。

インタミ15分。

第5ステージ
明治大学グリークラブ・立命館大学メンネルコール
多田武彦・男声合唱組曲『わがふるき日のうた』(三好達治)
指揮 佐藤賢太郎/Ken-P

男声合唱、珠玉の名曲。叙情的で美しいメッセージ性と高い難易度が、数多くのグリーメンを魅了し、そして翻弄してきた。1977年、明治大学グリークラブ初演曲。歴代の名曲を、Ken-Pという、アメリカで修行した新進気鋭の指揮者が振る、歴史の偶然。乃至必然。音取りは音叉。「甃のうへ」頭の進行はもっと明瞭でもよかったのではないか。全体として音の明るい団のジョイント、この曲向きといえるのではないか。とはいえ、「をみなごに花びら流れ」がやや浅いか。音の円熟が欲しいところである。「湖水」解釈の問題。やや重いテンポ使い。それに引きずられるように冒頭の音もはっきりとしなかったのがよりネガティブに鳴ってしまったか。高音の弱さがどうしても気になる。「Enfance finie(過ぎ去りし幼年時代)」和声を積む冒頭、僅かな音のズレ。極限の緊張感を。中間部「約束はみんな壊れたね」以降、の叙情性、いつまでも聞いていられる美しさ。ソロ、Bravo. マクロの完成度は非常に高い。「木菟」Ken-Pの指揮とも良く合った、軽い入りに好感。より/m/を飛ばしても良かったかもしれない。中間部の美しさよ!「郷愁」出だしから洗練されている。後半に行くにつれ洗練されていくアンサンブル。広がる和声に対して過剰に華美にならないのもまた、洗練された演奏の証左。残る音に対して乗るメロディの雰囲気がちょうど一致しているこの快感。「鐘鳴りぬ」楽に出ているようで、この音圧、そして、適切なバランス。完璧。中間部出だしにもう少し繊細さこそ欲しい所だが、最初の印象は、重く、重要である。「われは征かん」以降の重めのテンポ設定、個人的には好感が持てる。なにより、後半との接続がこのテンポだと焦らなくて良い。しかし、主題、トップ、もっと頑張りたかった。ここまできて、それは、惜しすぎる。「雪はふる」ここまで名演を重ねて、この曲にいうことこそあるまい。降るべくして、雪は降るのである。迎えられるべくして、名演は迎えられるのである。ソロがここまで叙情的に歌い上げられるのであれば、そして、切々と合唱が和声を積み重ねられれば、それ以上のものは、いらないのである。
この曲でちゃんと歌詞が聞こえてくるというのは、最低条件にして、Ken-Pに振られるべくして選ばれたような気もする。抜群の相性であった。
(だからこそ、「鐘鳴りぬ」の主題……)

どうやらセレクションがあった模様。

・アンコール
佐藤賢太郎(Ken-P)「僕が歌う理由」〈初演〉
指揮:佐藤賢太郎
うってかわって爽やかな和声。まさにこの声質に、そしてこの年齢の団によく合った曲です。まるで、『わがふるき日のうた』に対するアンサーソングのようにも聞こえます。演奏にも過誤なく、非常に素直に聴くことが出来ました。素晴らしい演奏会の締めくくりに。Bravo。

・ステージストーム
学生(明グリ)「斎太郎節」
「そこそこ」楽譜に忠実な演奏笑 何時聞いてもいいですね、この曲は笑 言うことはございますまい笑
学生(立メン)「Ride the Chariot」
こちらも、ご定番中のご定番。演奏の巧拙にいうことはない。というか、歌い慣れの都合、ここらへんの曲の方が完成度が高いこともしばしば……笑今回は、そんなこともなく(!?)どちらも大満足です。

配信はここまで。もちろん、ロビーストームは会場の皆様だけのお楽しみです笑

・まとめ
全体としてとても充実した演奏会でした。ジャンルとしてカヴァーしていない範囲は宗教曲程度ですし(否、『土の歌』は如何せん……?)、また、特に後半3ステージは、男声合唱名曲総覧のような充実したプログラムでした。実力としてはいずれも均衡した団二つだからこそ見せられる、単独演奏会にも比肩する充実の「音声」。これぞ、まさに、この時期のジョイントの魅力と言えるのかもしれません。何より、ストリーミングをして伝わってくる、演奏の圧力!細かい所に過誤こそあれ、それを全体評としては無視してよいでしょう。素晴らしい演奏会でした。とくに「わがふるき日のうた」は絶品!現代の名演を生み出してくれたようにすら感じています。しかし、それにも増してこの生放送、私達はよい時代に生まれました笑 ただ、回線の都合、どうしても、途切れてしまう(しかも大抵いいところで!)のは、残念。それこそ、会場行けという話ですかね。なお、レビューとしては、生よりも若干厳しいことを書き連ねる傾向にあるようです、この期に及んで勝手申し上げるようでなんですが、ご理解いただければ幸いです。
ちなみにKen-P、明日も演奏会ですね。しかも名古屋。大変だ……ご盛会を笑

・追記
「レビュー生放送」にお付き合い頂いた皆様、ありがとうございました笑