おおよそだいたい、合唱のこと。

ようこそお越し頂きました。
主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
やたら細かいレビューからノリツッコミまで、現状、合唱好きな方の暇つぶしには最適です。
ゆっくりしていってね!!!

2014年6月24日火曜日

【第63回東西四大学合唱演奏会】

2014年6月24日 於 京都コンサートホール 大ホール

大阪在住ですけど、この日、京都に宿泊しました。どうしてでしょうね……(遠い目
行きの阪急は、新1000形でした。めちゃ快適ですねアレ。素晴らしい車両だ。
さて、そんな中で行ってきました。調子乗ってS席購入したら、関係者席の次にいい席で聞けました。お金出してよかった。

・演奏会について
おそらく、世界的に見ても、同じ団同士のジョイントコンサートでここまで回数を重ねているものはないのではないでしょうか。普通にギネス狙えますよ、これ笑
合唱人界隈では「四連」というだけで話が通じる程に有名な演奏会。福永陽一郎=同グリ『月光とピエロ』などを始めとする、あまりにも有名な名演を数多く残してきた演奏会です。
毎年、早稲田大学グリークラブ、慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団、同志社グリークラブ、関西学院グリークラブの4団体が集い、歴史に名を残す名演を繰り広げる演奏会。何れも、男声合唱の世界では、歴史も長く、実力もトップクラスの団なので、ジョイントコンサートながら、単独演奏会並の重要度を持った演奏会です。チケットも非常に売れ行きが良い。今回は空席が出ていましたが……時代でしょうか。

・ホールについて
京都のホールには馴染みがなかったですが、入った瞬間、「ああ、ここかぁ!」と納得笑
「世界合唱の祭典 京都」なんかでも利用された由緒正しきホールですね。
建築意匠からして美しく、重厚かつ凛とした美しい佇まいに、ホールへと続く螺旋構造、十分に広いホワイエ、そしてきっといい音が鳴るであろうオルガン(聞いたことはないので……笑)、そして、完全に整ったコンサートホールながら、上手い具合に団旗を架けられるバトンがあるあたり、まさに四連向けな名ホールです。響きも、無理なく控えめにしっかり響く、まさに理想中の理想とも言えます。ホールの客数に対して小さめな構造なので、音量も潤沢。加えて、貴賓席なんかもあるので、ひょっこり皇室の方が来られた際も安心です。さすが京都笑。一般席も、席の硬さがちょうどいい笑
なにより特徴的なのが、半円形のひな壇。必然的に響きが中心に集まってから拡散するので、よく合ったアンサンブルに対しては非常に良い音を返してくれるホールです。加えて、このひな壇、入退場の動線がとても美しい!一度中央へ寄ってから踵を返し、ひな壇を上がる……舞台上での動きがかくも美しくなる構造というのは、初めて見た気がします。京都府民羨ましい。

0, エール交歓
早稲田:声量が豊か。ホールをちょうどよくならせていました。
関学:やや響きに欠けたか。揃い方は申し分ない。
慶應:発声が格式的(ご定番)ですが、団内でよく調和する。
同グリ:所謂主管校。やや細かい部分が揃いきらなかった。
お客様の反応は、さすがに、同志社が圧倒的で御座いました笑 曲もいいですしね、ふぉーがっ!ふぉーどーししゃっ!

1, 早稲田大学グリークラブ
多田武彦・男声合唱組曲『富士山』(草野心平)
指揮:松井慶太
1~4までが非常によかった分、5番が非常に惜しいと思わせる演奏でした。
出だしのピッチが終始不揃いなままだったこと、下降音程が妙にずれるとか、そういった程度で、それ以外、とても仕上がりのよい演奏が聞けました。だからこそ、5番目はもっとドラマチックに歌い上げられたはずです。前半4曲に比べて、スケールの小さい演奏になってしまったのが本当に残念でした。
松井先生は相変わらずの長身イケメンで(関係ない)、楽譜に忠実かつ明白な輪郭を持った鮮明な音作りをしていました。その意味でも、強弱設定には特に迷いがなかった。その意味では、合意の上だったのでしょうが、だからこそ、宇宙線富士だけはどうしても、もっと聞きたかった。
とはいえ、上述の意味で、良い緊張感に包まれた名演だったと、はっきり言えるような気がします。オープニングにしてエンディング、その意味では、あっさりと終わった宇宙線富士もまた機能的だったのかもしれません笑

2, 関西学院グリークラブ
新実徳英・男声合唱とピアノのための『ことばあそびうたII』(谷川俊太郎)
指揮:広瀬康夫
ピアノ:山形明朗
弱音で音がブレる、そんな弱みが2曲目に顕れてしまったかもしれません。
素晴らしい緊張感、刺さるような音の応酬に始まった1曲目につづく2曲目。1曲目冒頭でも感じましたが、弱音部での音の微妙な揺らぎが、曲全体の緊張感を支配してしまったかもしれません。
例えばトップがごくわずかに弱いことだったり、下3声の和音がごくわずかに噛み合わないことだったり、ほんの僅かな詰めの甘さが、曲の持つ独特の緊張感を壊してしまったのは本当に惜しいと言わざるを得ません。
広瀬先生、腕を怪我されているのでしょうか、左腕一本で振りきりました。音量については、特に完璧だったように思います。

インタミ15分。ホワイエのラウンジが大盛況でした笑
関西はいいですね。いずみホールもそうですが、ラウンジの場所が良い。愛知県のホールはラウンジが意味不明な場所にあることが多いので……

3, 慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団
Francis POULENC
“Laudes de Saint Antoine de Padoue”
“Chanson à Boire”
指揮:佐藤正浩
そつなく演奏をこなしきれていた印象。
特に目立ったアラがあるわけでもなく、特に、1曲目のベースなど、構造的な特徴がよく描写されていました。もっとも、語尾の処理など、もっと出来る部分もあるだろうとは思います。発声に対しても、特徴的だとよく言われるものですが、よくハモっていたことで非常に好印象でした。佐藤先生の厳しいリハーサルの跡が感じられる名演でした。
対して、5つ目の“à Boire”、酔った様子が非常に的確なことなど笑、色んな意味で完成された演奏でした。ただ、この曲、やはり語尾はもう少し丁寧に表現すべきだったかもしれません。
いずれも、良い意味でよく流れた演奏でした。一番よかったかもしれない。

4, 同志社グリークラブ
三善晃・男声合唱とピアノ(四手)のための『遊星ひとつ』(木島始)
指揮:伊東恵司
ピアノ:荻原吉樹・平林知子
正直、課題の残る演奏となってしまいました。
セカンドが十分に鳴っていないこと、トップが荒いこと、縦が揃っていないこと……論えば、いろいろ出てきてしまいます。むろん、実力がある団だけに、音は当たっていたとは思います。しかし、正直、音楽として成立していたかは疑問視せざるをえない演奏です。
名演になるか、駄演になるか、究極の二択を迫るのが、この曲でもあります。だからこそ、どうしても私達は名演を期待してしまいます。伊東先生の指揮も、いつも以上に気合が入っていたと見受けます。いち三善ファンとして、という意味でも、この団には、より、この曲の高みへと挑んで欲しい。未来を期待する意味も込めて、ここでは、残念だった、と言っておきたいと思います。コンクールの自由曲にも採用とのこと、是非、今後研鑽を積まれたいと思います。
なお、ピアノおふたりとも、非常に素晴らしかったと思います。なにより、相性が素晴らしい!

インタミ15分

5, 四大学合同演奏
北川昇・男声合唱組曲『まだ見ぬあなたへ』(みなづきみのり)
指揮:伊東恵司
ピアノ:水戸見弥子
さすが作詩者の指揮ですね!非常に、四連らしいサウンドが聞けたような気がします。
大声だけで押すのでもなく、数の力で乗り切るのでもなく。丁寧かつ大胆な演奏が光りました。ともすると、流れてしまいがちな曲ですが、和声を要所で収める力、そして、subito piano のキレのよさで〆る場所がよく〆られた名演でした。
もっとも、急激な変化以外にはどうしても乏しい部分はあったような気もします。旋律中心の曲である点、どうしようもないことかもしれませんが……。3曲目、5曲目の迫力は、四連ならではなような気がしています。

・アンコール
北川昇「翼」(みなづきみのり)〈男声版初演〉
指揮:伊東恵司
うってかわって、和声的に構築していく、感動的な一曲。実力の十分揃ったあの大人数でハモられると、大迫力です。特に今回、ホールが狭いので、ハモった時のボリュームが甚大なんですね。正直、ステージが狭いくらいなので、ガンガン鳴ってくれました。ああ、男声合唱って、よい笑

・ストーム(曲情報提供ありがとうございます!)
四連を聴きに来る人は、ココらへんをもっとも楽しみにしてくる、とか←
W・斎太郎節:ややテンポがユル目の演奏。とはいえ、この楽譜無視な強弱、これでこそワセグリだ!w
KG・U BOJ:うぼいうぼい!細かいところに技術を感じる、良い演奏でした。
KO・Trinklied:やや気が抜けてしまったか?主題部がハメきれませんでしたが、1番中間部から盛り返しました。
D・O Sacrum Convivium:意地を魅せてくれた!特に後半、良いハーモニーがはまっていました。

・ロビーコール(曲情報提供ありがとうございます!)
斎太郎節、Ride The Chariot、Slavnostní sbor、最上川舟唄
男声合唱のご定番曲の並ぶ演奏。個人的には、その日さいたら3回目、らいちゃり2回目でした(大阪府合唱祭の影響で……w)
もう、巧拙関係無いですし、飽きるほど皆さんが歌って来た曲。何の申し分も無い出来でした。スメタナは、ホールで聞きたかった!笑

・総評
さすがに、全体としてとてもレベルの高い演奏会でした。ただ、もともとレベルが高いことが「要求されている」演奏会だけに、ただレベルが高いだけではどうにも評価されづらい、中々主催者にとって厳しい演奏会であるのも事実かと思います。
甘えていられないんですね。よりよい演奏で伝統を塗り替えていくためには。
伝統が「権威」になってしまうと、それは、演奏そのものの死に繋がる。中々恐ろしい世界です。ただ、アマチュアで、なおもその緊張感に包まれて演奏活動を続けている学生の男声合唱団というと、もはや四連ぐらいではないでしょうか。
もちろん、それ以外の合唱団を否定するつもりはさらさらありません。ただ、他方で、なおも四連がリーダーであることにかわりはない。
だからこそ感じるプレッシャーというのは、おそらく中にいる(いた)人でないとわからないと思います。ライバルは過去の音源、しかし、その音源は、今もなお日本一の演奏と呼ばれて久しいものばかりなのです。客席には、その、日本一の演奏をしたOBたちが難しい目をしてステージを見つめている。最早、身内も敵である。
その中で今もひたむきに演奏を続けている点、それだけで、十分賞賛に値します。
今回のレビュー、各団の演奏に対しては、かなり厳しいことを書いたつもりです。しかし、これでもまだまだ全然甘いのではないかと思います。もっと厳しいことを言い募る人は、いくらでもいるでしょう(実を言うと、もっと厳しいことも書けたりします)。
ただ、そのどれもが、今後の男声合唱の発展のためにあることを、どうぞ諸氏忘れることのないよう、今後の演奏につなげて行かれることを希求してやみません。

2014年6月17日火曜日

【第53回愛知県合唱祭】

6月14日(土)・15日(日) 於 名古屋文理大学文化フォーラム 大ホール・中ホール・小ホール

全国的に合唱祭のシーズンですね!この時期になると、巷の合唱人はやたら忙しそうに色々な団で歌いまくることになります(個人差があります)。もちろん、自分の所属団ひとつに絞る人もいるわけですが、学生団と一般団を兼団している人、あるいは一般団を掛け持ちしている人は、2日間稲沢に引きこもりっぱなしになるとかならないとか。何個も掛け持ちしているガチ勢は、酷い時では県を跨いで大移動することにも……おっと、身近な聴衆の方にもいらっしゃいましたね!
そんなわたべは、1日目はあるツテを経由して、合唱連盟の当日スタッフの仕事を頂いておりました。愛知県の皆さん知ってましたか!合唱祭では、昼食場所として部屋を設けて開放しているんですよ!僕は当日、その仕事を貰うまで知りませんでした……笑今後機会があったら積極的に使っていこうと思います笑 2日目は、所属のうぃろうで歌って飲んでおりました。

そんなわけで、1日目の仕事明けのD・Eブロックと、2日目にうぃろうで歌ったHブロックとをちまちまと書き残しておこうと思います。お祭りですからね。

・愛知県合唱祭の特徴
 僕自身、4年間はこの土壌で育ってきたので、特に特異的なものを感じていなかったのですが、Facebook で今年のゲスト・相澤直人先生が書かれていたところにもよると、どうも、他県には見られない特徴があるようです。
 まずひとつは、相澤先生が挙げられていた、ワークショップの存在。講習会形式で曲が指定され、楽譜を入場パスにだれでもゲストの講習を聴くことが出来ます。1時間あまりの講習の後には、披露演奏。1時間前に集まった仲間たちで一度きりのステージに乗ります。特に大学生ワークショップは大人気で、相澤人気も相まって、今年もステージに溢れんとするばかりの受講生の演奏を聴くことが出来ました。
 そして、もう一つ、開催方式は特徴の一つに挙げることが出来るでしょう。2日間の間に、ブロックを明確に分けて開催します。日数的には京都府合唱祭よりも少ないように見受けられますが、50回の区切りに、参加団体数が増えすぎて2日間で捌き切れない、ということで、大ホールに加えて、中ホールでも並行開催するようになりました。言ってみれば、大阪府合唱祭の狭山開催と池田開催が一緒くたになったようなイメージ。しかも小ホールではワークショップが並行開催されていて、そりゃもう、盛り沢山です。今年は、全15ブロック・145団体が、朝10時過ぎから夜19時程まで歌いまくりました。
 全体合唱も、ブロックごとに行われます。合唱連盟50年の記念に、2年前から、愛知県出身の新実徳英先生にかき下ろしていただいた愛唱歌「いつまでも いつまでも」が歌われています。8分の6の、ゆったりとした、ドラマチックな歌です。

・ホールについて
 旧称・稲沢市民会館。大ホールは特にセントラル愛知交響楽団がリハーサル会場として利用しているホールとして有名です。愛知県勤労会館の閉館に伴い、合唱祭の開催を一手に引き受けてきました。大ホールは、奥行きが非常に大きい1階席のみで構成された客席が有名です。天井はあまり高くなく、多目的ホールということもあり、鳴らすという意味ではとても難しいホール。それでも、後述するように、鳴らす団は鳴らすので、そこんところ、甘えていいわけでもありません。今回は出場していませんでしたが、岡混などは、このホールでもうまく鳴らすことでしょう。と、いうのも、実は今年のコンクールは刈谷アイリスから移って、このホールになるのです。うぃろうとしても、そうそう他人事ではいられません。中ホール・小ホールを使ったことはないので、あまり詳しいことが言えませんが、モニターからの音を聞く限り、中ホールの音響は非常に良さそうです。響きのいい文化小劇場の代替として十分使えそうな感じです。
 もっとも、最寄駅の名鉄国府宮駅から結構歩くのがたまにキズ。車窓から、会館脇を通過していく様子が見えるので、団員間からしょっちゅう、ココに駅を作れ、と揶揄されるというトバッチリにもあっています笑 有料特急含め全車停車するのがせめてもの救いか。2面4線の駅で、3面2線と超過密な名鉄名古屋駅の代替に、追い越しなどの対応がされる駅でもあります。

・合唱団の構成
 大阪府合唱祭ではユニークな団の多さに圧倒されましたが、愛知県は、比較的そういった団が少ない印象があります。良くも悪くも真面目な県民性を反映しているような。嘗て全国を圧倒したような団があったり、今でも、コンクールでソツのない強さを見せたり、演奏会プログラムのストイックなユニークさで全国に名を馳せる団があったり。どちらかというと、実力がないと評価されづらい、そんな印象にあります。ストイックで、シビアな地域。逆に、こういうところでネタに走ると、結構爆発的に評価されるんですけどね。「名古屋男声合唱団」とか。今年は打ち上げ中につき聴くこと叶わず。本当に残念。2年前の大喝采、今でも忘れられません、ええ。さながらミュージカルでした。

・ワークショップ
 「ワークショップII」と「大学生ワークショップ」の披露演奏に立ち会えました。
 「ワークショップII」は、相澤直人先生作曲の「やわらかな想い」(さくらももこの詩による無伴奏混声合唱曲集『ぜんぶここに』から)。臨時記号と難しい転調が頻出の、高難度な曲で、さすがにその点での粗が目立ってしまいました。しかし、この短い時間で、十分聴けるだけの、そして、歌の雰囲気をよく湛えたいい演奏をしてくださったように思います。
 「大学生ワークショップ」では、松下耕先生の「今年」(混声合唱とピアノのための『この星の上で』から)。なにより、大曲をよく頑張った!イヨっ!大学生特権!(おばさんみたいだな……w)すごく丁寧にまとまっていました。実をいうと、音圧がもっと欲しいなぁという裏返しでもあるのですが笑、むしろ、この難しい曲をワークショップという制約下でああもキチッとまとめてきたことを肯定的に評価すべきでしょう。僕自身が学生団にいた時代は、歌詩音圧主義で和声二の次という真逆の音作りが主流だったように思う点、どこか隔世の感がございます。

・学生団寸評
D-2「金城学院大学グリークラブ」
木下牧子「夢みたものは」
youth case「ふるさと」
2曲目は、3月の再演でした。ホールに負けてしまっていた印象でした。両曲とも、このホールでも鳴らせるだけの音圧が欲しい。昨年より安全運転で、丁寧さが光る演奏だったと思いました。

D-9「名古屋市立北高等学校」
V. Youmans「Tea for two」
伊藤心太郎「恋するフォーチュンクッキー」
友森先生異動後の初舞台。やはり基礎はしっかりとした十分と聞かせてくれる演奏でした。ややテナーの音色が硬い気がしました。しかし、それにも増して、なおもバッチリ「フォーチュンクッキー」を踊る北高生、名古屋中の希望です!w

D-11「混声合唱団名古屋大学コールグランツェ」
木下牧子「もう すんだとすれば」(『うたよ!』から)
毎度乗り切らないほどの人数の割に、音が散っていたように思いました。聞こえ方としては、ちょうど大学生ワークショップと似通っていた印象。特に中間部、もやっとした音が気になりました。要所要所は〆る辺り、さすがです。

・初出場
E-2「あいち混声合唱団」
鈴木憲夫「どうしてだろうと」(『地球ばんざい』から)
Roger Emerson「You Raise Me Up」
2011年のフェアウェルメンバーが母体。もっとも、2013年卒の僕にとって年上、あるいは同級生の知り合いなんかも入ってますが(向こうが覚えていない、ともw)。昔ながらの愛知県学生サウンドを良くも悪くも踏襲した音作り。先述の通り、詩を読み込んだ演奏をすることや、音はそこそこ豊かになりますが、内声を中心にピッチが気掛かりな演奏でした。加えて、「You Raise Me Up」では、フレーズをもっと長く取ったほうが良いような気がします。しかし、大変なブロックでの初出場、お疲れ様でした笑

・全出場
E-5「グリーン・エコー」
John Rutter「Look at the world」「Golden slumber」
53年連続出場、記録更新おめでとうございます!愛知県合唱祭唯一の記録保持団体です。演奏会のプログラムが毎回新しい流れをフォローし、夏には名フィルを招聘して大曲を演奏することで有名です。この前は『鐘』などを演奏。今度は『嘆きの歌』や『ドイツ・レクイエム』を演奏するとか。メロディを特にしっかりと歌えていたのは好印象でした。声はどうしても揺れているため、ハーモニーを作るには障害になったか。特に「Golden slumber」は御手額がややダレたか。リズムパートが締まりきらないまま終わってしまいました。とはいえ、やはり連続記録は偉大。この調子で、記録更新を。

・コンクール関連団体(上掲以外・拝聴分・昨年までの出場実績による)
E-4「合唱団ノース・エコー」
Max Reger「Nachtlied」
Wilhelm Stenhammar「I Seraillets Have」
珍しくランダムオーダー。日本代表ユニな方がいました。前日に稲沢で歌ってたから負けちゃったんでしょうか
コンクールの都合で、鳴りをメチャメチャ意識しながら聞いていましたが、一番ホールを鳴らせていた団体だったように思います。発声がしっかりしているので、とどのつまり、鳴りについては発声勝負なのかなぁと踏んでいます。基礎って大事ですね。
音楽としては、内声に迷いが全くないのが見事でした。音楽の緊張感も見事。粗こそ見つからないものの、表現になおも伸長の余地が。なんてこった。

H-3「トヨタ自動車合唱部」
Ralph Manuel「ALLELUIA」
出だしが特にビビりすぎたか、始まりがぼやけてしまったのが何より残念。それを引きずったか、対位法的構造が非常に掴みづらい演奏となってしまいました。中間部との対比も、より鮮明に出したかった。全体として、もっと歌いあげても良かったのかもしれません。特にアルトが、もっと出てよかった。選曲が素晴らしいだけに、惜しい。

H-10「男声合唱団 響(ひびき)」
新実徳英「男声合唱とピアノによる『祈り』から」
未出版曲。知り合いのある方が引っ張ってきたそうですが、まぁ、すっさまじい曲でした。再演希望。全部聞きたい。音源欲しい。歌いたい笑
演奏としては、トップにはもっと圧があっても良かったと思います。全体的には、パートの独立的な旋律がより鮮明に聞こえたほうが、曲としても構成が立体的に聞こえて良いような気がします。トップに音圧、とこそ言いましたが、少し力押しが過ぎたのでしょうか。曲に対しても、演奏に対しても、ピッチやタイミングの僅かなズレが本当に惜しい演奏。緊張感を持ちたい。

H-13「豊田市少年少女合唱団」
信長貴富「第五章 ひびかせうた」(童声合唱とピアノのための『ひびかせうた』から)
表現がやや淡白だったかもしれません。主題の説得力は見事なものがありましたが、導入部のpianoがより芯のある音を鳴らせるようになると、より訴求力のあるサウンドになるような気がします。ところどころピアノに負けてしまっていたのも残念。極端には、音がスカスカに聞こえていた印象です。しかし、この曲、非常に素晴らしい作品ですね……例の、5作品初演の日に誕生した曲。また是非、出来れば全曲通して聞きたいです。素晴らしい。

・Remarks
D-1「ensemble Solaris」上手い!前々から思っていましたが、和声の揃いに強みがあります。トップはもっとアグレッシブに出していきたい。Lin Ming-Chieh「安部まりあ」様、堂々の登場←

D-5「SINGERSなも」多田武彦『中勘助の詩から』より、っていう選曲がいいですよね!!!!この曲大好きです!!!!やや重い音色ながら、タダタケらしい音がしっかり出ていました。7/21伏見ザ・コンサートホールでの全曲演奏、どうぞご盛会を。

D-6「名古屋混声合唱団」実力を持っている暖だからこそ、もっと遊んだ演奏をしてみてもよかったか。Gjeilo「UBI CARITAS」は、やや冗長に鳴ってしまいました。

D-7「東海メールクワィアー」嘗て一世を風靡した実力を持つ合唱団。以前ワンステージメンバーでおじゃましました。特にShubertということで、骨太な歌を聞けたように思います。ウ母音の鳴らし方などは気になりましたが。

D-8「名古屋合唱団」須田和宏先生に寄る爽やかな選曲が光りました。「芭蕉布」「風になりたい(THE BOOM)」よい選曲と、よい新指揮者に恵まれました。

D-10「名古屋市民コーラス」演奏は長谷先生のもとでそつなく。登録150人のこの団の後は、登録110人の名大グランツェでした笑

E-3「名古屋コール・ハーモニア」壮年の団。毎回、決して技巧的ではないが、豊かな発声からよい音楽を聞かせてくれるように思います。ところで、曲変更があったようですが、詳細を聞き逃してしまいました苦笑

H-1「あけぼの合唱団」盲者と健常者が手を取り合って歌う団。技術面の課題こそ多いものの、そもそも、目の見えない方が高田三郎「雨」を歌うなど、本当に大変なことだと思います。『水のいのち』全曲挑戦中とのこと。頑張ってください。

H-2「今池混声合唱団」あまり書くと住処がバレてしまいますが、この近くに住んでいた時期があるので、見つけて以来ずっと気になってました笑アルトがお上手なのを筆頭に、中々しっかりとっしたアンサンブルを聞かせてくれました。テンポに乗ってサクサクと進む感じ、フレージングが長めなことに好感の持てる演奏でした。適度に楽譜から目が離れていることもGoodです。

H-4「あかがめ響和国」毎度毎度、みなさんの演奏の後に歌うことになる私達の気分にもなってください!(褒め言葉w)Chilcottの『A Little Jass Mass』より「Kyrie」「Gloria」にパーカッションとコントラバスを入れることで、ジャズっぽい雰囲気が一気に強くなったような気がします。楽器隊特にGood。うた隊は、ラテン語の発音をしっかり楽器に追従してオシャレにして欲しかったデス。特に、「Gloria」「omnipotence」など。一部テナーが浮いたような感じも。中間部、うただけで訴求出来るだけの力を持ちたい。

H-6「Ensemble Famille Voix」平均点の高いアンサンブルを聞けたように思います。パートソロや対位法的な構造に弱みが見られるものの、素直な発声から素直にハモる様は注目に値します。今後の成長の鍵は、低声にアリ、か。ウタゴコロを十分に感じる、新実徳英「聞こえる」。選曲が非常に会場ウケしてました。

H-9「豊田市少年少女グレイス」アンコン優秀者の招待演奏。当たり前に点数の高い演奏でしたが、特に音量面について、音楽構成の表現に疑問が残りました。少年少女ならではの難しさもありますが、もっと自由な表現をしたい所。例えば、ユニゾンが合わせに行っているように感じました。また、低音が、母音の鳴らし方的に低い気がしました。念のためいうと、上手な団がより成長できるように、という意味でのコメントですからね!特に、ブロックの中ではダントツのうまさでした。

H-11「モーツァルト200合唱団」モーツァルト200がついにモーツァルト(KV.260)を演奏した!と、わたべの中で大盛り上がりでした← しかし、さすが、モーツァルト200にとって、モーツァルトはお手のものだった様子、とても身のこなしの軽い演奏のように思いました。

H-14「合唱団CANTUSNOVA」某ギョーカイの有名人、ドイツから堂々の凱旋笑。それはともかく。個人の力に過度に依拠した演奏が気になりました。鳴らす力は持っていますが、鳴り方が非常に微分的というか、旋律が浮かびづらく、和音が独立して、ポツッ、ポツッっと聞こえていた印象。和声全体をしっかり聞かせたい。今後の成長のヒントは、指揮者無しで合わせた、Brian Kay(arr.)「GAUDETE」にあるような気がします。