おおよそだいたい、合唱のこと。

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主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
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ゆっくりしていってね!!!

2017年2月20日月曜日

【混声合唱団名古屋大学コール・グランツェ第39回定期演奏会】

2017年2月19日(日)於 東海市芸術劇場 大ホール

・メシーコール
門池「大橋みそカツセット」
2度目の制覇です。今度は比較的ラクでした笑
なんだかもう、このホールに来ると、来なきゃっていう義務感すら生まれつつありますね笑 今後共門池通いが続くのかも笑 それだけみそカツを食べる機会も増える……?w

そんなわけで、グランツェです。今年は、「メルヒェン」です、メルヒェン。そんなわけで、比較的定番どころに近いものが並んでいるはずなのに、最初から最後まで飛び道具でした。これだからグランツェは(褒め言葉)
グランツェというと、弊団の母体となる団なのですが、近頃、段員の所属する一般団の行き先がバリエーション豊かになってきました。弊団としては(正直w)少し悲しいところではあるのですが、他方、そのことによって音楽観のバリエーションが増えるのは、それはそれで良いことなんじゃないかなって思ってます。だからこそ、かしら。今回の演奏会が「メルヒェン」なのも(関係ない)

・ホールについて
割と話題になることは多いホールなのですが、意外と自分がいった機会という点に絞ると、なんとこの前の千葉大まで遡ることになります。なんと、という言葉が似合うくらい、あたらしいのにすっかり馴染んできたホールでもあります。
この前は照明演出があるからか、反響板は正反・天反のみでしたが、今回は側反も入りました。そんなわけで、音響としての同ホールは初めての経験です。
いやぁ、このホール、この前感じた以上に、メチャメチャ優秀なホールです。刈谷アイリスのような落ち着きのあるベージュ様の色に、曲線美が印象的なデザインは、どことなく、津の三重県文化会館を彷彿とさせる。しかも見た目だけじゃなくて、このホール、その絶壁からなる客席の強みを活かして(!?)充実した音圧を届けつつ、残響も十分含んだ、バランスのいい響きをもたらしてくれます。特に、低音が美しく「響く」。舞台も広いし、いろんなことができそうな、今後に本当に期待が持てるホールです。

しかし、今日は何か、不思議な出来事が。なにかって、女性二人の指揮者だからか、高めの指揮台を使っているのは、まぁ分かるとして、一方で、足元には、箱馬まで噛ませてある。しかも、ピアノは上手側を少し客席側に振ってある。何か、初めてみる舞台構成の中に、団員は、例のESTスタイルで入場です。

・エール
混声合唱団名古屋大学コール・グランツェ団歌
小林秀雄「グランツェ それは愛」(峯陽)

名物。否本当、これ聞いたら、ああ、グランツェ来たんだなぁって感じがする。最近は、例の「グランツェ、グランツェ、グラーンツェー♪」って部分以外にも、三部構成の一つ目の主題でもグランツェ感が出てくるようになりました笑
さて、今年のグランツェ、割とこの段階で好感が持てました。もっとも、主題部、再現部では少しアッサリと流れすぎてしまったかと思いましたが、白眉は、「Glanze」の言い方。敢えて英語にしたのも正に意図するところ、「l」が非常に長くて好感が持てたところです。その他の部分についても、言葉がしっかりと読めていた。細かい部分に対する配慮に、期待が持てるところです。

第1ステージ
森山至貴・混声合唱とピアノのための『かなでるからだ』(みなづきみのり)
指揮:真野朱音
ピアノ:林真由

対して、この曲――弊団初演曲の再演ありがとうございまーす!笑 おかげさまで同曲、いろんな団で再演していただいており、ありがたい限りです。
楽譜上では3曲目「骨」にストンプが標準で記載されていて、弊団のオプションで2曲目「膝」にステップをつけました。で、今回の再演でも、それを両方演ってくれていて……否違う、それだけじゃない!? 何か、「骨」のロックンロールさに磨きがかかっていて、最初にポーズをびしっと決めたかと思えば、その後もノリノリに「骨」になりきって、なんならダンスまで付け加えて、バッチリ決めてくれました。
ただ、その動きに対して、歌が、今ひとつ淡白だったのが残念なところです。否、たしかに、「骨」はノリノリで、音の流れていく感じも、3年前くらいから続くグランツェの新しい流れをいい意味で受け継いでくれているというか、こういう、日本語の親しみやすい曲を素直に表現してくれているのは、とてもいい流れだと思います。一方で、きょうの演奏は、少し惰性的に流れてしまったような気がします。もっと、ハッキリと表現してもよかったような気がしますが、全体の表現が、音符を追いかけた飲みに鳴ってしまったのが残念。特に4曲目は、指揮も、手の振り(外→内の順)が逆ではなかったかな、という風に思います。こういう風に、どういうふうにしてもある程度構成できる曲だからこそ、「こう表現したい」というのを明白にして演奏すべきだと思います。「骨」こそ、動きに助けられましたが、動きがなくても、表現に対して意欲をみせたいところです。

インタミ15分。結構長めなインタミです。まぁ、次の曲も大変だしね……ちなみに、この時間を利用して白シャツ黒パンツ(男声は黒々だっけ?)から礼服・白黒にお召替えです。

第2ステージ
鈴木憲夫・混声合唱曲『祈祷天頌』(「祷」は繁体)
指揮:若井萌
ピアノ:林真由

今回にかぎらず、グランツェってすごく響きを揃えるのがうまい団なんですよ。で、それが強みとして生きることもあれば、逆に、それのみに依存してしまって表現が淡白になって弱みになることもある。ともすると、伊東先生が指導に入る合唱団すべてにおいて課題になる事柄でもあります。なにも、伊東先生のせいだけじゃないですが。
で、この演奏。この曲にあって、響きを揃えることがここまで武器になるとは思いませんでした。団歌から続く、言葉の表現の明白さも相まって、複雑な同曲をすごくわかりやすい表現に落とし込んでくれました。しかも、同曲については、音量の使い分けについてもすごく鮮やか。あえていえば、piano での息漏れ感が少し気になるといったところでしょうか。
否然し、先ほどとは対象的に、こちらは、同曲の聞かせどころがどこで、それをどう聞かせたいかということについてすごく意識が向けられた名演でした。それこそ、昨今の EST のような。そしてなにより、鈴木憲夫のこういう曲、年取れば取るほど好きになりますねぇ……ああ、歳取ったナァ←
ところで一点、「そこに生命が在った」の言葉がより浮き立つように演奏できると、この曲の立体性というか、古代言語と現実的な言語の狭間でゆらぐ音楽の立体声が増してよかったような気がします。

インタミ15分。また結構長めに取るのね、と思っていたら、ピアノの角度を、上手前→下手前に振り直したり、箱馬付きだった譜面台の高さを低くしたり(単に身長の問題だった……?)、はてにはバトンを降ろして団旗を片付け出したりとか……果ては「次のステージは1時間ほどの公演を予定しております」というアナウンスに合わせて、(何故か)男性トイレが大行列をなすなど、納得のインタミ15分であります笑
さらにここで、男女とも黒々にお召替え。

第3ステージ
山下祐加・混声合唱とピアノのためのメルヒェン『青をめぐるクジラ』(みなづきみのり)《委嘱初演》
指揮:伊東恵司
ピアノ:山下祐加
演出:二口大学
朗読:広田ゆうみ
(以上、「祐」は示偏)

昨年に続いて山下祐加先生に委嘱して作曲された作品。今年は、タイトルが出た段階で「メルヒェン」なんてあることもあってか、いったいどんな作品が出来上がるのだろうと(一部で?)盛り上がっていたりして……あるいは、みなづき先生いったい今度は何を、とか?←
少年がクジラと出会い、ふたりで、少年の死んだ父と会いたいという願いを叶えるために繰り広げる冒険活劇。そこで出会った身近な真実が、みるものの心をハッとさせます。あえてネガティブな点から。この演奏、皮肉にも、とても言葉が聞こえづらかった印象があります。ステージ自体よく響く(響いてしまう)上、動きが加わったこともあってか、それまでは気持ちよく聴かせていた響きは、むしろ曖昧に散ってしまった印象。語頭にかぎらず、何を言っているのか少し聞こえづらくしてしまったのが非常に残念です。あと、こういうとなんですが、割と、こう、説教臭いというか、事実こうです、と、自明でないことをさもありなんと言い切られる内容というのは、僕自身、どうしても苦手なものがあります。世の中の真実はこれですよ、というのは、主張としては何れも一聴の価値があるのでしょうが、物語の遡上に載せられるとなると、それは論理の飛躍じゃないか、とか、ちょっと抗いたくなる自分がいたりします。あえて言ってしまうなら、みなづき作品における、一種の苦手意識ともいえるようなことはその点、決めつけ観念の強さにあって、その点を丁寧に説明する、あるいはストーリーに変えることこそ、みなづき作品がこれからさらに飛躍していくための重要な結節点になるんじゃないかと思います。
しかしね、僕は言いたいんです。……この作品、ホントよかった。去年もそうなんですが、この、演出が、神がかっていいんですよ。この手の作品の直近の比較となると、会場も相まって、千葉大がそれにあたるのですが、特に演出について、当たり前のように比肩するものがあります。あえていうなら、照明が、担当をクレジットしている程に力を入れている千葉大よりは劣るかな、という点がありますが(千葉大はその点、正面反響板=正反に当たる、合唱団が群像でなす陰影がメチャメチャ雄弁だったんです)、それにしても、隅々にまで行き渡る(割りとリッチな)動きの仕掛けが、飛びづらい歌詞を補完して余りある。劇としてここまで優秀なものを見せられると、そりゃもう、文句なんて引っ込んでしまう(だから最初に書いておいた笑)。山下先生の作曲も、前説のとおり、あらゆる音楽のジャンルを包摂して、ひとつの組曲に仕上げるその柔軟性と引き出しの多さ。特に、「思い出はいつも」のグルーヴが個人的に大好きです。まして、それらを、改善点こそあれ全国クラスの合唱をきかせながらこなす団員たち。五感のあらゆる芸術観を刺激させられる、本当に素晴らしい体験でした。


・アンコール
松下耕「湯かむり唄」(島根県民謡)

最後は、全国大会の披露曲から。「貝殻節」の方は、地元民を沸かせたという話題の仕上がりだったという同曲。その点、イヤ、この曲についてもさすがの仕上がり。のぼせた変声もしっかり決めて、最後のストンプもバッチリ決めて、前のステージでは終わりが見えずにもやもやしていた「ブラボー」勢(自分含むw)も御発声にてスッキリでございます笑

・ロビーコール
「夢見たものは…」
「Every time I feel the Spirit」
「グランツェ それは愛」

いやぁ、なによりサ、このホワイエ、そんなに広くないんですよ……ぶっちゃけ、ロビーコールやると思ってなかった←
いやもっというなら、胴上げするなんて思ってなかったよ僕は←

・まとめ

なにより、メインは初演のシアターピース。実は去年も行っていて(レビューしていないのは、途中からしか聞けていないから)、去年のシアターピースも見ているのですが、その意味、今年のシアターピースは、より板についていたように思いました。よくいえばこなれているし、ある意味では、より新しい何かを求めたくなる演出ステージ。否、これまでなかったジャンルを開拓しているという意味では、ゼータクいってるんじゃないよって話ではあるんですが、これまでの作品の再演含め、是非これからも積極的に開拓されたいジャンルです。
合唱をレビューするとか、そこまで行かなくても、奥深くまで鑑賞しようと思うと、結構、頭使うんですよね。否、もちろん、そんなことしなくたって、単純に音楽を楽しもうという姿勢だけで、十分楽しめるんですが、いろんなトリビア知っているとより楽しめるっていうのは、あらゆるジャンルの娯楽について言えることですよね?(いいようによっては仕事だって……笑)
かつての合唱の流れでは、今回でいうと、2ステ的な知識があるとより深く楽しむことが出来ました。勿論、今だって、そういう知識があるとないとでは全然違う。でも、嘗ての合唱のジャンルに、例えば「骨」だったり、なんなら『青をめぐるクジラ』みたいな楽しみ方って、中々なかったんじゃないかと思います(バーバーショップとかなんとか、色々言い出すときりないんですけど)。
ポイントは、「他ジャンルとの融合」。ともすると、本当に色々なジャンルの音楽、演劇、娯楽を知っていないと、その作品の評価すべきポイントがわからなくなってしまうかもしれない。それで、本当に評価されるべきことが評価されることないまま流れてしまうかもしれない。でも、裏をかけば、いろんなジャンルを知っていれば、それだけ、新しいジャンルを知ることが出来るということでもある。

否、恐れることはありますまい。これからも、ワクワクさせて頂きたいと思います。
そのきっかけとして、グランツェ。なんだか、演劇でも見に行きたくなりました。