おおよそだいたい、合唱のこと。

ようこそお越し頂きました。
主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
やたら細かいレビューからノリツッコミまで、現状、合唱好きな方の暇つぶしには最適です。
ゆっくりしていってね!!!

2016年12月20日火曜日

【第20回名古屋混声合唱団演奏会】

2016年12月18日(日)於 三井住友海上しらかわホール

金曜・土曜と本番で、日曜はまぁ、ゆっくりしていようかなぁと思っていたら、そういえば、手許には招待状がある。まぁ、知り合いも多いし、行けたら行こうなどと思っていたところ、改めてプログラムを細かく見てみると……
なんだこれ、東混かよ(真顔)
なお、そんなわけで行ったところ、さすがに疲れが溜まっていたのか、家で爆睡、週明けは(週明けなのに)終電まで飲み明かしていたため、こんなタイミングでの更新となったのでした……年取るとアカンね、無理が祟る(?)苦笑

・ホールについて
もう、このホールも来すぎているから、書くことが減ってきてるんですけどね……笑
今回は、合唱人があまり使わないスポットの話でも。それが、「クローク」。特に名古屋の合唱界だと、クロークといえばプレゼント預かりのことと思っている人が非常に多い。原因のひとつが、クロークを備えているホールが非常に少ないことにもあるのかな、と思っていたりはするのですが、ハッキリとしたことはわからない。まぁともあれ、自分も昔は、クロークを滅多使わなかった。でも、使ったらタマランですよね、あれ。特に、遠征に行ったときの演奏会なんか、本当に重宝してます。どうしても、荷物が多くなってしまうので。
……ってことで、最近は、クローク非常によく使っています。みなさんも使って、ホールの人忙しくさせましょうよ笑 「クロークの原義を取り戻す会」(会員一名)とか言ってみたりして笑

指揮:大橋 多美子(1, 2, 4)、小泉 孝(3)
オルガン:鈴木 美香(1)
ピアノ:石山 英明(4)、天野 浩子(3)

この日は2階席で聴いておりました。いやぁ、2階席だろうと響きが悪くならない。本当に優秀なホールです。つくづく。最前列は、柵の都合で若干視界が悪かったけれども、まぁ、気にしない笑

第1ステージ
Schütz, Heinrich. From "Kleine geistriche Konzerte I",
"Fürchte dich nicht" SWV296
"Ihr Heiligen, lobsinget den Herren" SWV288
"Schaffe in mir, Gott, ein reines Herz" SWV291
"Ein Kind ist uns geboren" SWV302
まずはクリスマスの雰囲気も鮮やかに。ステージにツリーが飾ってあったので、すわ踊るのか!?なんて思いましたが(んなわきゃない)、思うに、この4ステージの中で、もっとも「大人しい」ステージのひとつといえそう笑 とはいえ、編成は、男声アンサンブル→女声アンサンブル→混声アンサンブル→混声全体。ただでは転ばない(?)のがこの団……笑
アンサンブルはといえば、概して、声の伸びに少し不安を感じる演奏でした。勿論、歌い上げるような曲たちではないのですが、いまいち、意志を持ったフレーズとは中々巡り会えなかった。理由は割と単純に、発声が心許なかったからとでもいいますか。声が出てなかったとは言わんのですが、最近流行りの、薄く出してキレイに合わせましょうという意識が裏目に出てしまっていたような気がします。確かに表面上、ハモらせると言う意味で間違っていないような気もするのですが、如何せん大元の話、しっかり鳴っていないことには、ハモらせる云々以前の話となってしまうような気がします。
比較的にいえば、低声は概ねよかったような気がするので、その意味では、まだいい方と言えるかも。

第2ステージ
間宮芳生・合唱のための『12のインヴェンション』日本民謡による より
鹿児島県民謡「知覧節」
青森県民謡「おぼこ祝い唄」
長崎県民謡「米搗まだら」
富山県民謡「まいまい」
長野県民謡「のよさ」
以降、名古屋混声のお得意どころが並びます。いきなり前プロに間宮ってあたりが何ともそれらしいのですが笑
ただこちらのステージ、どうしても不安が残ってしまいました。何が。一曲目は「知覧節」。去年の全日本課題曲ですね。この曲の、最後の和音がハマらずに終わってしまった。
このステージ、この一点が、このステージ全体の印象を左右してしまった。みんながよく知っている曲で、耳馴染みのいいトニックを、耳馴染みのいいタイミングで決めなければならないところで外してしまった。厳しいこと言ってるんですけれども、しかし、そのせいもあってか、その後の曲も、テンポの遅い曲がパリッとしないという方向に印象がどんどん持っていかれてしまった。いつもだったらこういうステージ、勢いのある曲が気持ちよく聞かせた、とか、そんな感じのことを言い連ねるんですが、今回はもう、思い出せるくらいに、知覧節の最後のトニックが頭を擡げる。細かい所への配慮がもっと欲しかった。実にもったいない。この団ともあろうものなら、勢いだけで誤魔化すような水準にはありませんでしょうに。
否、逆にいえば、3曲目とか、爽快に飛ばしていて気持ちよかったんですけどね笑 入り直しなんかも、1曲目最後のトニックと比べたら全然マシですって爆

インタミ15分。なんか、ひたすら隣にいた某に演奏について語っていた記憶が……もう、書いていたようなものですね、だいたい笑

第3ステージ
上田真樹・混声合唱とピアノのための組曲『夢の意味』(林望)
さて、わたべを途端に厳しくする同曲(←)。なんだか今回は、個人的な事情から、あんまり書かないほうがいいんじゃないかなぁなんて思ってしまう……イヤイヤ。そんなことは言いますまい。
ところで、『終わりのない歌』がついに混声初演なんですってね。この曲のレビューで書くのもなんなんですが、個人的に上田先生の曲の中で一番好きな同曲、結婚式で歌ってもらう or 歌うなら組曲でこの曲やろと心底思う同曲の初演。ワンステ出演もあるようで。え、僕? そりゃもちろん、この成功間違いなしの演奏を記録する側に……回りたいなぁ……東京遠いなぁ……←
閑話休題。今回の演奏、減点方式で見ると、正直あまりよろしくない。1曲目の強弱設定、外れがちな和声、あっさりと流れる2曲目、3曲目の変拍子で崩れたテンポ……改善の余地はいくらでもある。特に、楽譜を知ってしまっている人間が聴いたからか、ツッコミどころが色々とあったように思います。
でもねぇ、この演奏、何か、憎めなかったんですよね……引き込まれるものがあるっていうか。パンフレットにも書いてあったんですけど、団員が、この曲が好きで、この曲を歌えるっていう喜びを存分に発露している。そんな音がする。抽象的な話はよくないとは思うのですが、それでも、なんだか、これでいいような気がする。真面目に。

団員挨拶。「アマチュアとしては挑戦的――というか――な団。選曲については、大事にしていることとして、バリエーションに富んだ海外曲に加えて、時代を切り抜き、時代をつくる日本人曲を選んでいる。世の中にはこんな面白い曲があるんだと思って頂ければ幸いです。」
……東混かよ(褒め言葉)

第4ステージ
三善晃・混声合唱とピアノのための『縄文連濤』(宗左近)
数年前、指揮者がやたら喋る大阪の某団が何度も取り上げていたシーズンがあったがために、なんだか特段珍しくもないと妙な勘違いをしている当方ですが、冷静に考えたら、そうホイホイとやるような曲でもないですね笑 三善先生の名曲です。とある事情もあり(珍しく?ステマ笑:ご掲載ありがとうございます)、最近、宗左近先生の詩を真剣に読む機会が多いわけですが、改めて対峙すると、この縄文連濤も、本当に力のある言葉が並ぶ。宇宙的な、メタなスケールから一気にズームインして個人的な主観まで生々しく描ききるその筆致。苛烈な戦争体験の中で自分だけが生き延びたことへの贖罪の念、そしてその思いを同じくし、高い次元で作品へと昇華した三善先生の、宗先生との作品群。もっと読みたい、勉強したい、と思わされるものばかりです。寧ろ、リアリティ溢れている作品たちに心が持って行かれてしまいそうですが……
さて。今回の演奏、言葉の飛びについては素晴らしいものがありました。お陰で、音楽の立体性が増しました。音だけでなく、言葉によりフレーズが特色づけられることで、フレーズの表現が幅広いものとなるんです。
ただ、一方で、音の強弱や子音の歌い分けといった、細かな表現の部分については、あまりに淡白ではなかったでしょうか。明るすぎるというべきか、深刻さが足りないというべきか。デュナーミクを「置きに行く」ような、「つけるだけ」になってしまっていた様子がどうも気になりました。なぜそこにフォルテがあるか、訴える言葉が何であるか、それらの要素をうまく楽譜上の表現と絡めて、重く充実した表現で応えたかったものだと思いました。
否、言葉でいうのは簡単なんですけどね、ホント。

・まとめ
間違いなく、プログラムとしてはものすごく意欲的でした。去年の名混と比べると寧ろメジャーで厨好み(笑)な曲を集めているだけに、その部分がとても良く目立っていたように思います。
ただ、一方で、それに演奏がついてきたかどうか。詰め込みすぎが悪いってわけではないですけれども、どこか、どの曲も消化不良感が否めなかった。全体として、もっと磨きのかかった演奏が聴きたかったなぁというのが正直なところ。
それでも、聞かせる演奏は出来る団だと思います。なにせ、完成させるのですら大変な曲ばかり並んでいますし……笑 来年の、ひとまずプログラムがどんなものになるか、楽しみに待っていたいなと思います。