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2018年3月3日土曜日

【岐阜聖徳学園大学Voice Harmony第20回記念定期演奏会】

2018年3月3日(土)於 大垣市スイトピアセンター学習館音楽堂

久々に、電車の中で執筆です。……とはいえ、名古屋在住にして、大阪へ行く道すがら笑 行きは18切符を使って、大阪へ弾丸日帰りの飲み会であります笑 そして、アップロードは帰りに。結局、近鉄特急で戻ってくるという。滞在時間わずか3時間弱……笑
そんな中途中下車して大垣へ。以前当団の演奏会を宣伝しに行った際に「逆情宣」された演奏会に伺ってみることにしました。岐阜聖徳学園大学、キャンパスはキレイですが、大垣駅からバスに揺られて終着までいったところで辿り着く、周りには田んぼと少しの住宅が広がる大学。岐阜県の大学合唱団と言えば岐阜大学コーラスクラブ通称「岐コラ」というイメージはいやが上にも強いのですが、そうはいっても、他の大学合唱団だって頑張っているのです。そんな頑張っている大学合唱団の一角、岐阜聖徳学園大学ボイスハーモニー。……正直、岐阜聖徳といえば合唱というくらい、岐阜聖徳のことを知らなくて困っている……苦笑 とはいえ、宣伝に行ったくらいで、当方がここまで合唱団に関する前情報もないまま演奏会聞きに行くのは久しぶりかも。幾分、情宣しに行ったときも練習終わりで非常に人数少ない中でやってたし←

・ホールについて
スイトピアには以前も興文混声の時に書きましたね。大垣市の複合施設の中にある音楽専門ホール。控え目なシューボックスが見せる響きは、地方ホールの中でも屈指の実力です。しかし、サラマンカホールといいなんといい、岐阜には良いホールが多いもんです……笑
このホール、響きだけに留まった話でもなく、鳴りが非常に良い。その印象はどうも間違っていなかったようです。以前の興文の時にどうやって書いたっけと思いながら記事を読み返していたら、実際に、そのようなことが書いてありまして……笑 意外と、自分の耳って間違ってないんだなと、ちょっとだけ自信を持ちました←
さて、このホール、大垣駅から徒歩圏内ではあるのですが、ちょいとばかし歩きます。時間を合わせられたらバスで行ったりすることもできるのですが、歩くと実際20分くらいかかるかしら。結構頑張って歩く必要があるので、実際は車で行くって人が結構多いのではないでしょうか(車があるなら、ネ)。
そんな中、皆様に是非オススメして起きたいのは、この演奏会に「電車」で行く可能性。最寄駅は実は、大垣駅ではないのです。真の最寄駅は、歩いて5分程度のところにある、養老鉄道・室(むろ)駅。地域ローカル鉄道の中でも随一のブランドを持つ(当社比)この路線。一部列車には自転車と一緒に乗ることもできるというのが特徴です。近鉄から切り離されて子会社として養老線を持っているこの鉄道、全線電化ということで乗り心地も快適ですよ! 大垣駅からはわずか一駅、便利ですね!
……え、自分?……今回「も」徒歩で……否、養老線、いいんだけどさ、一時間に一本くらいしか来ないし……←

団員数2〜30人。色々見てきましたけれども、学生団って、ちょうどこれくらいがいい規模なのかも。

・オープニング
木下牧子「おんがく」(まど・みちお)
指揮:志茂絵里歌

まずはエールに代えて、演奏はじめ暗転→曲進むに連れ明転という演出、この曲何かとしっくり来るものがあります。
とても素直な発声が非常に印象的な演奏。ソプラノの音圧を弱めに、テナーの音圧を少し抑えた方がバランス的には良いような気もしましたが、それにしても、内声が安定しているから、アンサンブルが引き締まっていて非常に好印象。

指揮者から挨拶があり、第1ステージの開演と相成りました。
発声に力を入れてきたという言葉の通り、確かに、鳴らすこと、奏でることについて、非常に配慮の行き届いていた印象。

第1ステージ「つなぐ」
AI「Story」
miwa「結〜ゆい〜」
槇原敬之「僕が一番欲しかったもの」
コブクロ「今咲き誇る花たちよ」
ゴスペラーズ「言葉にすれば」
(編曲者未公表)
指揮:冨田圭哉
ピアノ:夏目広大

実を言うと、「イ」を中心に母音が少々潰れていたかな、というのが気にはなったのですが、否それにしても、この選曲を見るに、むしろそれがいい効果をなしていたような気もします。全曲ポップスで編成された同ステージ、特に「Story」では、言葉が非常に明るく飛んできているのが印象的でした。そして何より、どの曲も、非常に発声が明るい! 上昇音型も下の方にくぐもることなく、躊躇なく上昇してくから、非常に爽やかなサウンドが鳴り、アンサンブルがまとまります。
ただ一方で、フレーズ感については少し課題というべきか。どの母音も等価に、平板に聞こえるというのは、時によってはいい効果をみせることこそあるものの、特にポップスのようなメロディのしっかりした曲たちについては、逆に、非常にのっぺりした仕上がりになってしまいます。楽譜は追えているけれども、表現としては少し不足している。
例えば、印象的な言葉――「結〜ゆい〜」だったら例えば、「信じること」とか、なんでもいいです――をひとつきめて、その言葉にどんな思いを込めるかから考える。その込めた思いをたっぷり音に込めて歌ってやる。それだけで、フレーズ感って、変わるんです。突き詰めれば色々理論的な部分というのもあるにはあるのですが、まずは、思いを込める、その有り様を追求することから始めても良いのではないでしょうか。
しかしそれにしてもこの団のスゴいのは、「歌が好き!」という思いが、歌を通じて否応なく伝わってくること。これは本当にすごかった。心の底から、歌いたいように、気持ちよく歌って、お客さんに私たちの歌声を届けてやろうと、その意欲が、決意が、しっかり伝わってくるんです。確かに、私たちも普段歌が好きで歌っているのですが、それがしっかり伝わってくるというのは、実は意外と少ないこと。上記と相反するようですが、歌が好きな余り、溢れた思いが抑えきれずに「言葉にすれば」のアンサンブルは途中で崩壊してしまっていた部分も。でも、それで良いような気すらしてくる。だって、こんなにしっかり歌ってるんだもん。その思いを無駄にはしたくない。

興奮さめやらぬまま、インタミ10分。

第2ステージ「Soul Singers〜我ら魂声合唱団〜」
V6「WAになっておどろう」
中島みゆき「銀の龍の背に乗って」
松任谷由実「春よ、来い」
杉本竜一「BELIEVE」
松井孝夫「マイ・バラード」
監督・演出:鬼塚竜次、稲見佑太
ピアノ:富永祐弥

……誤字じゃないですからね?笑 新設合唱団によるはじめての演奏会までの姿を追ったドラマ。練習前に勃発した「魂」のこもった歌についての議論と、それに対する答えを見つける、合唱団員の姿を追いかけます。演出上、男声団員からの提案→女声団員からの提案、と続いたので、この箇所はそれぞれ男声・女声合唱にしても良かったのかもしれません。ってのはさておき。
演技面で非常に良かったのは、主役でない周りの細かい演技に対する配慮。ただ突っ立っているだけでなく、しっかり演技して、リアクションを取れている様が非常に印象的でした。
最終的な答えは、「音は心、心は音」。心の底から歌うことが魂の歌声だ、ということですが、もう既にこの団は実現できてしまっているんではないでしょうかね笑 このステージでもいたるところで「歌が好き!」というのを感じ取ることが出来ました。特に賞賛したいのは、「マイ・バラード」。幾度となく聴いてきたはずですが、こんな胸のすくマイ・バラード、はじめてだったような気がします。しっかりと明るい発声と明るい顔で、心の底から「みんなで歌おう」と歌いきれているのは、この団の何よりの強みであるような気がします。
しかし、このステージ、だいぶスッキリと終わっていったなぁ笑 なんせ、演出が付いて、5曲もやってるのに、正味30分程度で終わってるんですよ笑

インタミ15分。3ステ始まる前、祝電披露がありました。……と、聞こえて来たのが、思いっきり個人様からの祝電。いやぁ、本当に心の底から祝電が届いていたんですねぇ。。。愛されてるなぁ笑

第3ステージ OB・OG合同
松下耕『信じる』(谷川俊太郎)
指揮:志茂絵里歌
ピアノ:伊藤昂大

そして、メインステージ。各パートOB・OGの力を得て合計4〜50人程度比較的充実した人数で歌うことが出来ている中、テナーはなんと現役のみ!笑 否、それでも十分な人数が確保できているパートではあるのですが……笑
比較的優しい曲集とは言え、なにかと込み入った部分も多く、色々な配慮が求められる曲でもあります。特に「ふるさとの星」での歌い上げなど、思いが溢れすぎて、声が散ったり、喉まで響きが上がってきてしまったりして喉声になるなどして、アンサンブルどころではなくなってしまう部分が要所要所に見られるのは、特にこの曲に関して言えばなにより残念なところか。幾分、「くり返す」では比較的整ったアンサンブルが聞けているだけに、残念な部分も多い。特筆すれば、「高音部で喉声になってしまう点については、今後十分に研究されたいところでもあります。逆に「泣けばいい」ではもっとスウィングに乗ってしまっても良かったような気がする。もっとゴリゴリとスウィングしてしまったほうが、この曲の一種シニカルな感情を効果的に表現できるような気もします。
否それにしても、この団の演奏する終曲「信じる」は、絶対にいい演奏だと思っていました! 否、本当に素晴らしかったです。メロディも骨太に、何より主題部の歌い上げは、この曲に対する愛情で溢れていました。気持ちの良いメロディを、何の気の衒いもなく、気持ちよく歌いきることが出来る。そう、この団は本当に、歌うことを愛している。そして、その感情を惜しげもなく顕すことが出来る。そういう意味で、この「信じる」は、心の奥底から楽しむことの出来る、抜群の名演でした。

指揮者・ピアニストへの花束贈呈を経て、イケボ団長による団長挨拶。紆余曲折を経て「歌うことが好き」と涙を流しながら語るその様、正に、この団の、この演奏会の象徴といえるでしょう。

・エンディング
筒井雅子「あなたへ―旅立ちに寄せるメッセージ―」
指揮:志茂絵里歌
ピアノ:伊藤昂大

最後まで朗々と、そして、男声が、涙を流しながらもまっすぐ正面を剥いて歌い上げている、その心意気に心の底から拍手したい!

ロビーコールは、「マイ・バラード」をアカペラで。一緒にカウントを取りながら歌い上げる若々しい歌声。思わず、ワクワクしてしまい、彼ら・彼女らの明るい将来に思いを馳せる、温かい演奏でした。

・まとめ

否、みんな、嫌いななか歌ってるわけじゃないと思うんです。歌が嫌いだったら、少なくともそれが趣味なならば、やめちゃえばいい。世の中娯楽なんかいっぱいあるんだもの。みんな、歌が好きなんだけれども、少しばかりうまくなろうと思ったら最後、うまく歌おうともがき苦しみ、時に自分の意に反する音を出したりして、なんとかごまかしながら、キレイな音とは何かについて考えて、趣味なのに妙なストレスを抱えながらなんとかその場しのぎに歌っていたりする。否それは言いすぎなのかもしれませんが、必ずしも、歌が好きというだけで歌いきれるわけでないのも、悲しいかな事実だったりします。
正直、プログラムを見たときには、うわ、ポップスだらけだな、と思ったりもしました。でも、この演奏会終わってみて感じた一番の感情は、ああ、この演奏会、来てみて、聴いてみて、すごく良かったな! 正にその一点だけでした。みんな本当に楽しそうに歌っていて、歌が大好きで、その歌をお客さんに届けたくて、技術は荒削りで物足りないかもしれないけれど、それでもなんとか届けようと一生懸命頑張っている。
決して同情だとか老婆心とか、憐憫の情とか、そういうのでもないんです。共感。まさに、私も、同じことを考えているはずなんです。私だって彼らと同じくらい歌が大好きで、お金ももらえないのに歌の世界に生きてその享楽に思いを致している。でも、楽しいから歌っていて、楽しいから聞いている。そんな感情の、もっとも初心の初心を思い出させてくれたのが、この演奏会のように思います。
決して、レベルが高い合唱団というわけではありません。正直。でも、このステージ、きっとすっごく気持ちよかったと思うし、聞いている私だって気持ちよかった。力いっぱい歌って、声を合わせて、そんな中で生まれる、一寸響きがズレている、でも、確かに、息の、心意気のあったユニゾンが、この合唱団の答えです。大人になるにつれて段々と忘れていく、あまりにピュアで脆い、歌が好きというシンプルな感情。その感情に真正面から向き合って、大好きな歌を最後まで歌いきろうというその心意気に、心の底から楽しむことが出来ました。
言葉にするだけじゃ物足りないのかもしれない。「歌が好き」とか、「やっぱり歌だよね」とか、アトラクで何十回みたところで、彼らの、声に、顔に、自然に揺れる体に顕れる「歌が好き!」って感情には、勝てないんです。
本当に、良い物見せていただきました。今後共がんばってください。本当、応援したくなる。これからも、愛される合唱団でいてほしいと願ってやみません。

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