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2018年3月10日土曜日

【法政大学アカデミー合唱団演奏旅行名古屋公演】

2018年3月9日(金)於 名古屋芸術創造センター

ボールペンvsカレーの仁義なき戦い
いやー、つけるものはやっぱり提供ですよ(何
アンケートについているのはペグシル……ではなく、なんとパイロットの提供による「アクロボール」0.5mm。なんだ、ボールペンなくてもよかったのか(何)その代わり、ノートと思って出してみたら岐阜聖徳のサブパンフだったりしたけど(何)

そんなわけで、名古屋に珍しく演奏旅行がやってきてくださいました。ほんとに珍しいですよ、なにせ、東京―大阪間よりも東京―名古屋間の方が距離があると信じてやみませんからね←
おいで戴いたのは法政大学アカデミー合唱団。福永陽一郎の傘下に1962年創団。その翌年から演奏旅行を始めているという、旅行にはじまり旅行に終わる合唱団。六連、サマーコンサートと合唱祭、さらには定期演奏会と、通常運転にみせつつ比較的演奏機会を増やしている合唱団。否、お外だと学生団でも演奏本数ってこんなもんなんですよ名古屋の皆さん?← とはいえ、これに加えて、最後は毎年演奏旅行でその代を締めくくるという、比較的タフな合唱団といって差し支えないのではないでしょうか。ちなみに、名古屋公演は8年ぶり6回目の演奏とのこと(実は結構来ていただいているのね笑)。この演奏会のために渉外スタッフは名古屋に1ヶ月前から詰めているというのだから驚きだ……笑
そんな努力の成果は、キャパ7割程度。うーん、渉外さんはでも、本当に頑張った結果だと思う。最近の名古屋人、内向きさに磨きをかけているから……←

・ホールについて

個人的に思い入れの強い同ホール。やっぱり、今行くときもワクワクします。19号挟んで隣の病院とは、もう迷わなくなりました笑 幾分、現ヤマザキマザックが嘗て自走式立体駐車場だったころから知っていますからね笑
さて、このステージ、例によって響かない、鳴らない、と、決して条件自体は良くないホール。ちなみに、地下にあるリハーサル室では、無響室にすら近いくらいの全く響かない空間でのリハーサルというのを楽しむことが出来ます。是非、機会がありましたら笑 ホワイエも古く、トイレも古い。なにもかも古い。なんなら、ラウンジのバーカウンターではなく、誰でも入れる場所に喫茶店があるのも、まぁ、古い(悪口ではない)。
でも、その古さにも魅力がある。このホール、栄から歩けて、新栄町駅からだと徒歩5分足らずで辿り着くという絶好のアクセスに加えて、すごく街に馴染むんです。建物の外壁を照らすようにしてオレンジの光が当てられてぼやっと暗いうちに浮かぶホールは、中々見るに芸術的なホールです。ヘキサゴンの中身に合わせるように、外見も中々面白い形をしていて、階段に向けて張り出すカーテンウォールは、これから鑑賞と言う時にとてもワクワクさせた気持ちにさせてくれる。
過去の記憶かもしれません。でもやっぱり、どんな品質であろうと、このホールには、ワクワクさせられっぱなしなんです。憎めない、嫌いになれない。ほんと好きなホールです。

・エール
「法政大学校歌」(佐藤春夫)

暗転の中入場、指揮をピンスポにし、団員列より歩み出て一例、その後、音を取り、音が出たところでカットインで全照。そうそう、こういう細かい演出は、名古屋ではめったにないのでね、なんだか県外に来た気分です笑
ホールのせいもあってか、イマイチ鳴っていないのは気になったところ。でも、これはさすがに聴衆の慣れの問題かなぁ。とはいえ、やや全体的に投げ飛ばすような音が飛んでくるものの、よくまとまってはいて決して悪くない。ちょっとこじんまりとした感じは気になるところ。

団員数80名程度のこと、そんな中、オンステは50名程度か。ちょっとした舞台転換のまどいもありつつ、本編へ。

第1ステージ・武満徹の「うた」
「翼」(武満徹)
「◯と△の歌」(武満徹)
「明日ハ晴レカナ、曇リカナ」(武満徹)
「小さな空」(武満徹)
「島へ」(井沢満)
指揮:菊間翔太

まずは、小技を色々と要求されるこの曲。聞いている分には聞き馴染みがいいんだけど、歌うとなると大変なんですよ、この曲……笑
エールから引き続き、この曲も、比較的よく整理されていて好感の持てるところ。寄付上のデュナーミクが異様に多いのも、武満、あるいはこの世代の音楽の特徴ではありますが、そんな中においても、結構しっかりと再現できていたように思います。で、音も、ちゃんと、あるべきところに収まっているように思えたので、その意味でも良しとしたところ。込み入ったところでは時折崩れてはいましたけどね、さすがに笑
とはいえ、何より気になってしまったのが、「心ここにあらず」といった音が飛んでくる点。今思えば必死だったのかもしれませんが、言ってみれば、黒か白か、物凄くベタ塗りの音が鳴っていたように思います。特にソプラノ。非常によく鳴らしているものの、他3パートと比べて非常に浮いた音が鳴っていたように思います。これは特に鳴らし方の問題が一因にあるような気もしますが、一方では、音に柔軟性が失われてしまっていて、他のパートと交わることが少なかったように思います。技術でしっかり表現しに行けることは当然評価されるべきですが、それでもなんだか、寂しい音が鳴ってしまっていたように思います。特に、「◯と△の歌」。音の端々から、事故らないようにという配慮ばかりが見えていた。崩れてしまっていいから、もっと歌い込んでも良かったんじゃないかなぁ。
次の音へ向かうワクワク感が少ないのが非常に残念だったところ。その意味で、この曲の音源で一番出回っているのは東混だから、難しいところでもあるんですがね。あの団、音を進めることについては一級の実力を持っていますし。

第2ステージ
千原英喜・混声合唱とピアノのための組曲『みやこわすれ』(野呂昶)
指揮:増田茜音
ピアノ:久邇之宜

そして、続いては、最近の千原の流行りどころの一つ。順徳上皇の佐渡流しにまつわる「みやこわすれ」という花をめぐるファンタジーとも言える同曲。美しいメロディとともに、叙情的に切情が語られるという意味では、千原英喜の最近の作風によくある流れとも言えます。でも、この流れ、本当好きなんですよねぇ……様々な文化における信仰心を取り扱ってきた千原英喜だからこそわかる、万物に対する共感の念。これがこんなにもわかりやすくパラフレーズされているというのがなによりの魅力といったところです。
でも、そんな中でも、やっぱり気になってしまうのが、表現の硬直性というべきか。確かに非常によく音に出来ているんですが、切るところがザクッと切れてしまっていたり、音符の中での柔軟性というのが失われてしまっていたり。なんだか、確かに表現はされているものの、あくまで言われたことの範疇を出ていないというか。
その点、必要以上に「完成形の追求」に心を取られっぱなしなのではないかと思ってしまうところです。完成形って確かに、楽譜を全てさらった先にしかないとは思うのですが、完成形は決して、楽譜を全てさらったまさにそのところではない。もっともっと先にあるのだと思います。逆に言えば、この団、楽譜をさらうことは出来ているのです。現に、聞いていて少なくとも違和感があるような音は鳴らさない。でも、もっと先の方へ行ってもいい。
例えば、各パートのブレンドというところから始めても良いのかもしれません。パート内での響きは非常に良く合っているので、今度はその先、各パートの音をよく聞き合って、和音がよりひとつの音として鳴るようにもっと工夫をこらす。例えば、ユニゾンからはじめてみるのが良いのかもしれません。響きが揃った、という実感をまず得ることが大事かと思います。

インタミ15分。

第3ステージ・賛助出演ステージ
団歌「グランツェ、それは愛」
相澤直人「チョコレート」(『小さな愛、4色』より)
松本望「Tempestoso」(『天使のいる構図』より)
*Whitacre, E. "Leonard dreams of his flying machine"
*, **相澤直人「カレー作りなんて簡単さ」「おかわりのうた」(『僕らのカレークエスト』より)
信長貴富「リフレイン」(『等圧線』より)
演奏:混声合唱団名古屋大学コール・グランツェ
指揮:伊東恵司*・山崎浩
ピアノ:阿部夏己・近藤千紘**

さて、地元合唱団の演奏。というには、随分土臭くない(?)合唱団の演奏です笑 幾分、全国金賞ですからね、ええ、地元の誇りですけん(どこの土地のもんだお前)。団歌を皮切りに、この前の演奏会のベストセレクションとばかりに抜粋。そのうちウィテカーを除くすべての曲がグランツェ初演ときたものだから、さすが10年の積み重ねです。
演奏会直後という意味では、よくも悪くも、演奏会のクオリティそのままに。とはいえ、今回のオンステは約半数(80人程度←)、それでもこれだけのクオリティを確保しているのだから、スゴいものです。噂では、会場キャパ入らないから、必然的に練習が半分半分になってアンサンブル練習状態だとか←
でも、何がスゴいかっていったら、やっぱりこの団の魅力はアンサンブル力にあるんですよ。この前の演奏会のレビューでは、確かに、もっとアンサンブルを、と言ってみたものの、規模がよかったのか、或いは単なる相対論に過ぎなかったのか、必ずしも正確に歌えているわけではない部分も、しっかりと音楽を進めようと全員の息を合わせるから、いつまでも聞いていられるし、次の展開に向けて耳を、意識を持っていくことができるんです。ワクワクする演奏。完璧ではないにしろ、そこへ向けての意識を向け方は、やっぱり、ホンモノなんだなと思います。
ちなみに、後ろのオジサマ方が、「やっぱり、卒業間近の子がオフステなのかねぇ」みたいなこと仰っていたんですが、私、見ちゃったんです。なんか、今年 M2 を修了するヤツが、そのステージに乗っていたのに……笑

第4ステージ・Oh sing unto the Lord a new song〜近代イギリスの合唱曲〜
Rutter, J. "A Choral Fanfare"
Stainer, J. "God So Loved the World"
Walton, W. "What cheer?"
Delius, F. "To Be Sung of a Summer Night on the Water I"
Rutter, J. "Cantate Domino"
指揮:小久保大輔

そして、このステージ。イギリスといえばクラシック不毛の地、というのは、そろそろやめにしたいところ。特に合唱曲に関して言えば、ラターに限った話でもなく、非常に多くの曲、ジャンルで楽しませてくれる地域です。そんな、イギリス曲のセレクション。
このステージにおいても、先述していたような音の硬さの問題は残っていました。英語の発音も、もう少しクチを柔らかく、多彩な母音の表現に力を注ぎたかった。まぁもっとも、そりゃ、その意味ではこの団の音色は硬い音にあるという意味では、そう簡単に変わるものでもないのだと思います。
ただ、特に "What cheer?" や "Cantate Domino" のあたりでは、その硬い音が逆にいい方向に働いていたようにも思います。硬い音が逆に、こういうキャッチーな曲だと、音のハマるべきリズムを明確にして、しっかりと聴かせてくれる。ある意味では、イギリス音楽の特色なのかもしれませんが、非常にいい意味で典型的な音が鳴るから、リズムをハメると非常に効果的に音楽が進行していく。その意味で、この団にとって非常にいい選曲となったのだと思います。
小久保先生の指揮も、ある意味、団員を解き放ってくれた面があるのだと思います。音に対して、音楽としては、前半よりもよく流れていたのが印象的です。思いっきりノッていて、それでいて非常によく叩く小久保先生の指揮、非常に歌いやすそうだなぁという印象。そう、全体で揃えるのは非常に上手い団。指揮が良いと必然的に音も良くなっていくという意味では、非常に素直な音を鳴らす団なのだと思います。ソプラノの音なんて、まさにその典型と言えるのかもしれませんね。

・アンコール
法政アカデミー×小久保
「Hey Jude」
合同×伊東
「ここからはじまる」

まずは、法政の単独で。この曲ともなると、ロンドン・オリンピックでもそうですが、やっぱり、大団円しなきゃいけないんですよね笑 最後のスキャットに手拍子で楽しんでいると、ホワイエからグランツェの面々が入場。皆ステージに上がって、大団円となりました。いやぁ、気持ちよさそうだ笑
そして、そこで伊東先生にバトンタッチ。伊東先生と言えば、同グリの出。そう、同グリといえば、福永先生。その親近感に思いを馳せて、時代や地域を越えた繋がりに、思いを込めて、これもひとつの大団円。なんだか、ひとつの思いのもとに見事昇華されていった印象です。

・ストーム
1曲目(曲名情報募集中)
Sinatra「My Way」
指揮:増田茜音、菊間翔太
ピアノ:久邇之宜

ステージストーム。1曲目はごめんなさい、どこかで聞いたことあるような曲ですが……2曲目も、「S◯NGのアレ」みたいなメモが残してある程度です←
2曲目では、熱い思いを歌い上げる団員。そう、当代最後のステージですものね。聞いているこちらが次第に引き込まれていく、控え目ながらとても美しいステージであったように想います。

・まとめ
考えてみたら、中々体力の要ることをやっているなぁと思います。
幾分、それこそ福永陽一郎の名前が出て来るくらいには歴史の長い団。積み重ねてきた歴史と自負、充実したマネジメント体制と手厚い支援。そしてなにより組織力。その全てが自分たちの手によるものではないにしても、この団が持つ底力には凄まじいものがあります。演奏面でも、当初は少し硬かったのが、段々とほぐれてきて、第4ステージでは自分たちの音楽を見せてつけてくれました。
なにせ、名古屋です。下手したら大阪よりも遠いと目されているだろうこの土地に、おそらくそこだけでなんでもできるであろう土地からわざわざ出向いて、しかもそこが最終学年の最後のステージとなる。昔からやっていることだとしても、中々出来たものではありません。まして、渉外なぞ3名も1ヶ月前から現地入りして、そのうちオンステはわずか1名。それだけの努力と犠牲をはたいてこのステージを完成させたことに、まず何より心からの敬意を表せねばなりますまい。
なにせ、学生団です。それは、合唱団である前に、部活であり、サークルであります。サークル然としていよ、という意味ではない。ただ、イベントごと自体にこそ、重要な意味を持つというのは、サークルである以上、およそ間違いのないことではないでしょうか。そして、それは絶対に、本人たちの血となり肉となり、今後の人生において得難く、かつ絶対に活きてくる経験となるでしょう。
残念ながら今回の演奏会は――日取りも原因ではあったか――満席というには少しさみしいお客さんの前での演奏でした。でもこんなの、彼らの熱意に応えられない名古屋のオトナたちが悪いのです(本当、つれない地域でごめんなさい←)。最後には非常にスッキリと終わっていき、そして熱い涙の中に大団円を迎えたこの代の皆様に、心からのエールを贈りたいと思います。どうもお疲れ様でした!

そんなわけで、名鉄遅れで乗れず振り替えた飛行機で執筆、札幌市内某ホテルにて上梓。
今から、合唱団の演奏会行ってきますよ〜!

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