おおよそだいたい、合唱のこと。

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主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
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合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
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ゆっくりしていってね!!!

2016年2月1日月曜日

【CANTUSNOVA CONCERT 2016】

2016年1月31日(日)於 名古屋市名東文化小劇場

寒中お見舞い申し上げます(都合により)
……っていっても、もう2月だしなぁ……笑
この年末年始、合宿に2回ほど行き、夜行バス・急行(ムーンライトながら)に7回ほど乗り、昼行バスに1回ほど乗り、飛行機には4回乗る予定だったのが往復2回に減り、その代わり釜山で足止めを喰らい、韓国で演奏する予定が千葉で演奏をすることに変わり……なんだか、テキストにするととてつもなく忙しい1ヶ月あまりを過ごしていました。おかげで疲れて風邪引いたり、「お礼参り(笑)」に行った神社では時間遅くて神殿の扉閉じられてて賽銭入れられないし、他トラブル発生で、なんだかもう、1年終わったんじゃないかという錯覚に囚われるレベルですね。はい、まだ年始です。
さて、そんな中、久々のレビュー記事です。皆様、記事の更新がない間もたびたびご覧いただきまして誠にありがとうございます。まず隗より始めよ、ということで、現在住んでいる名古屋(たびたび勘違いされるけど、名古屋)の団からスタートです。団員個人のポテンシャルが高く、この団だけに留まらず様々な場所で歌いつなぐ団員がとても多い中、団としては残念ながら団員数を減らしてしまっている団。嘗ては40人を覗く程度の人数がいたこの団が少人数団となってから何を表現しようとするのか――プログラムも、1ステに組曲、ほかは全てアラカルトという、ちょっと特殊な編成でした。

・ホールについて
このブログでもたびたび登場する「文小」です。キャパ約350席。以前は熱田文小について書きましたね。この文小、あくまで音楽のためだけに各地に建てられているわけではないので、実は、音楽専用ホールは熱田文小くらい。今回の名東文小はじめ、多くの文化小劇場は所謂多目的ホールとして建てられています(ちなみに、北文小は伝統芸能用ホール、千種文小は演劇向け円形劇場など、特色あるホールもしばしば)。このホールもご多分に漏れず、白い反響板と、控えめな残響がある意味特徴的な、非常にオーソドックスなホールです。よく言えば何にでも使えるホール、悪く言えば響きの悪いホール。響きの悪いホールを嫌う方って結構いらっしゃいますけど、僕は必ずしもそうは思いません。多目的ホールは多目的ホールで、独特の響きを持っています。特にこのホールは、とても素直な響き方。文化小劇場って、たまにワンワンと鳴る(犬じゃないよ)ホールもあるんですが、客席の奥行きも広いこのホールは、そういったいやらしさも無い。ベルの音も荘厳ですし、例えば僕は、こういうあまり響かないホールで三善晃や西村朗のような、早いパッセージを特徴とする作曲家の作品を聞きたくなったりするんです。要は、使い方なんだろうなと思います。

観客は大体100~200人といったところか。世知辛い。


指揮:川口昂彦、青木悠途*
ピアノ:後藤紗千、青木悠途**

・オープニング
江口斗「音楽のように」(谷川俊太郎)〈委嘱初演〉

まずは1曲。話によると、初演だそうです。なんでも、指揮の川口さんと大学団で同期で、その流れで、とか。作曲の江口さんは会社勤めの「日曜作曲家」とのこと。ハマるとすごくキレイに鳴りそうな、和声豊かな曲でした。でもだからこそ、もっと豊かな響きで――否違うな、もっと豊かな「音圧で」ガンガン鳴らして欲しかった。否、声は鳴らしているというのはなんとなく伝わってきたんだけれども、いまいち、ちゃんと「張れて」いなかった。特に高声がちゃんと旋律豊かに声を張るだけで、全然違ったんじゃないかなと思います。それだけで、和声にちゃんと輪郭を与えることができたんじゃないかと思います。

第1ステージ
木下牧子・混声合唱曲集『光と風をつれて』(工藤直子)

なんだかこの曲、最近また流行りつつあるみたいですね。愛知県中心、ですかね?
オープニングに引き続き、少し、全体的にまだ起きてないかな? と思わせるアンサンブルでした。例えば、言葉がより香ってくるように言葉を表現したい「いっしょに」、曲想に合わせた上品さを男声に欲しい「秋のまんなかで」、どこか減衰してしまうような感じのした「あいたくて」、そして、いっそのこともっとはっちゃけたかった「はじまり」など、課題は多岐にわたるような気がします。流すという意味ではよく音楽が流れていたとは思うのですが、この組曲が、組曲としてどのような含意を持つのか、思いだけで歌うことも出来ないとは思いますが、もっと思いを馳せてもよかったように思います。とはいえ、何気なく「雨」の独特の静謐な雰囲気をつくることのできるのは見事。

インタミ10分。今回のインタミは、突然預かったチケットを渡そうとする作業でした……笑

第2ステージ・CANTUSNOVA ALBUM
信長貴富「朝のリレー」(谷川俊太郎)*
名田綾子「祝日」(工藤直子)
大熊崇子「白」(立原道造
横山潤子「花と一緒」(ねじめ正一)
信長貴富「リフレイン」(覚和歌子)*,**

このステージのテンションで1ステをやってくれてもよかったのに……!笑 少しソプラノが薄いかな、という気がしないでもないのですが、1曲目からいいアンサンブルを聴くことが出来ました。「祝日」は、何かと無機質さが気になっていたベースが逆に活きるところ。器楽的な構成と、その構築に十分なパリッとしたベースがよく映えました。早い部分で言葉が散らなければ尚良い。子音のズレってやつでしょうね。「白」「花と一緒」は、サラッと流れていった印象。もっと表現の面で楔を残したかったところ。ただ一方で、所謂ミックスボイスを中心とした抜ける発声は、この曲に合っていたとは言えなくはないかも。ただ、特に「花と一緒」はテキストが面白い一曲(なにせ、ねじめ正一、ですからね)。よりパリッと鳴らしたほうが表現がおもしろい事になったと思います。一転、「リフレイン」の表現は白眉。逆に、思い全開の構成でしたが、逆にそれがいい。ちゃんと歌える人たちがちゃんと歌って歌モノを仕上げると、こういう風に聴き応えのある作品が仕上がるんですよね。感情移入も、大事な表現のうちの一つだと僕は思います。

インタミ10分。結局待ってた人、別のチケットで入ってるしさぁ……笑

第3ステージ・世界のヴォーカルアンサンブルより
松永ちづる「アカペラストリート」
John Lennon, Paul McCartney(arr. Bill Ives) "Ob-La-Di, Ob-La-Da"
arr. McGlynn, Michael "Danny Boy" (Frederic Weatherly)
Makaroff, Mia and Anna-Mari Kähärä "Butterfly" (Mia Makaroff)
宮沢和史(arr. 信長貴富)「島唄」

段々とパートが積み重なってくる構成の「アカペラストリート」、ベースを起点に、段々ストリートにアンサンブルが集まってくるようにしてステージが開幕。トライトーンや The King's Singers といった名門アンサンブルの代表的なナンバーをセレクト。ポップな中に重厚なハーモニーの鳴る曲が揃うと、この団は、それぞれがしっかりと歌い切る実力を十分に見せてくれます。特に、表掲の「アカペラストリート」、そして「Ob-La-Di, Ob-La-Da」、「Butterfly」といったリズムに特徴的な曲は特に見事。指揮者がいないほうがアンサンブルが自由になってこの団にとってはいいんじゃないかしら笑「Ob-La-Di, Ob-La-Da」や「Butterfly」では、特に楽器の多さが光りました。コーラスとしての出し方に留まらず、ヴォーカルとしての声や、金管楽器としての声の出し方など、さまざまな方法で音楽を表現していた様が聞いていてとても面白く、ワクワクさせてくれました。「Butterfly」は、メロディに対してよりコーラスがその雰囲気を受け継ぐことが出来るとよかったか。また、テンポの緩い曲は、「Danny Boy」然り「島唄」然り。「島唄」はクラスターの積みでも苦心の影が見られました。いずれも、伸びる音の中に音符を感じて、伸びた音の中で如何に表現するかをより磨くと、それだけで良くなるものがあるのではないかなと思いました。否なんにせよ、音楽の方向性に対して十分意欲は感じられたように思いました。


アンコール
佐藤賢太郎(Ken-P)「雪の思い出」

この団、冬に愛知県で行われた「コーラス・セントラル」に中心的に参加した人物も抱えているんですよね。これは、その時の1曲でもあります。さすが、嘗て歌ったことのある団員が多いだけに、十分な仕上がりでした。なにせテンポも、この団が得意とする、弾んだテンポですしね!笑
ただねぇ、僕もコーラス・セントラルの参加者でしたけれども……あの前説、曲、バレちゃいますよ笑 なんか、この曲かなって予感、しましたもん笑

ロビーコール
小林亜星(arr. 信長貴富)「積水ハウスの歌」(羽柴秀彦, arr. 一倉宏)
江口斗「音楽のように」(谷川俊太郎)
この曲の実演に触れたのは初めてな気がする……会場から出るのは遅れたから、全部は聞いていないんだけれども← しかしまぁ、いいアレンジで、しかも意外とロビーのほうが良く鳴るから(!?)、信長アレンジを粋まで楽しめるのですけれども、なんというか、CMソングだけに、そんな、積◯ハウスの宣伝されましても……となってしまう……笑 否、歌詩もいいんだけどもね。

最後は、「杯をー!」とカデンツで締めてくれました。毎回恒例だったそう。そういえば、最近この団聞いてなかったから、これも以前聞いたことあるとは思うのですが、久々でした。

・まとめ
前半は、割と不安を感じてしまうアンサンブルでしたが、後半、特に3ステに至っては非常に面白みを感じることの出来るアンサンブルでした。以前もどこかで書きましたが、少人数の団になると、どうしても団の方向性を定めるのに困難をみせるもの。どうしても、日本の組曲は、ある程度の人数を想定しているものが多いですからね。カントゥス(名古屋だと、この言い方でこの団を指します)は、その中で、アカペラアンサンブルという新しいジャンルを得るに至りました。アカペラというと、どうしてもアンプに繋いで、合唱とは切り離して、という風に考えがちな中、発声に裏打ちされたアンプラグドのアカペラというのは、ハーモニーが明瞭に聞き取れて、それでいて、しっかりと声を出してアンサンブルをするだけに、推進力のある、新鮮な面白さがあると思います。いつも言うこと、この団がこの方向性を続けるかどうかはわかりませんが、試みとしては、今後も是非、続けてみて欲しい一路線だと思いました。

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