おおよそだいたい、合唱のこと。

ようこそお越し頂きました。
主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
やたら細かいレビューからノリツッコミまで、現状、合唱好きな方の暇つぶしには最適です。
ゆっくりしていってね!!!

2018年10月14日日曜日

【合唱団天上花火 創団25周年記念第13回演奏会】

2018年10月14日(日)於 伊丹アイフォニックホール

定価ベースにして往復7,000円あまり、と聞けば、確かにちょっと高く思える。でも、高々片道3,500円程度。例えば名古屋から内海駅まで1,000円程度ですし、名古屋から豊橋まで1,500円程度。浜松まで2,000円程度かかる。もっと言えば、交通手段を考えれば、定価ベースでも、名古屋〜大阪間は1,900円まで落とすことができる(昼行高速バス早割利用)。
いやね。思うんですよ。
名古屋から見れば、大阪は安い。
そんなわけで、先週の広島に続いて、今週は大阪です。時間はかかれど、正直、広島と比べるでもなく、全然近いので、本当に気が楽なところ。移動の車内で読書するなり、こうやってレビュー書くなりすれば、せっかくの休日が〜となることもない。ちなみに、近鉄ローカル線乗り継ぎでした。定価ベースで、大阪までは2,400円。うむ、やはり安い。
否ーー嘘です。今日は伊丹なので、行き先は兵庫県です爆

さて、今回は、大阪にいるうちに行っておきたかった団の演奏会。天上花火という合唱団があって、なかなか意欲的なプログラムを組んで活動されていることは承知していたのですが、なかなかタイミングも合わず。活動期間の長い一方で、Ken-P への新曲委嘱の履歴もある、まさに、柔軟な活動が目を見張る、前々より期待をしてみていた団のひとつでした。
今回の演奏会、もともとずっと手帳に書いてあって、行こう行こうと思っていたものの、チケットはまぁ当日でいいかなと高をくくっていた一面も。そしたら、演奏会一週間前にして、公式FBがまさかの満席予告&残券僅少の告知。こりゃイカンと、大急ぎでチケットをとったのでした。結果、蓋を開けてみれば、見事満席。文字通りの満席。素晴らしい。否然し、この時代、座席にハンカチがたくさん引っ掛けてある光景なんて、なかなか見かけませんよ笑

・ホールについて

伊丹は伊丹でも、ちがう伊丹。まだ東リに魂を売る(違)ようなマネはしていないオリジナルな名前で頑張っているホールです笑 とはいえ、位置関係としては、ほぼお隣さんといってもいいくらい、いたみホールの近所にあります。若干JR寄りですが、こっちまで来てもまだ阪急側から歩いたほうが近い様子。すぐとなりにコミュニティFMがあります。近所と一体開発されたのか、基本的に真っ白な蔵の街伊丹にあって、ブラウンの外装が街にも溶け込んでいておしゃれです。
そう、そして、これもまた気になっていたんですよ。私、実はこのホールに大阪にいる間に来たことがなかった! いたみホールには4回も5回も行っていたのに笑 1,500人近い規模を有するいたみホールと違って、こちらのホールのキャパは500人程度。でも、これくらいの手近さ、手軽さが、ちょうど使いやすいこともあるんですよね。螺旋階段を登ってホールに入ると、札幌もびっくりの絶壁笑と木質仕上げのオシャレな内装が目に飛び込んできます。そう、円形タイプのシューボックスステージは、見るにオシャレなホール。天井に光る照明は頂点からホール全体を照らし、その周りを彩る楕円の組み合わせは、さながら花開いたよう。さらに、ステージ天井の意匠は葉っぱのように、スピーカーのような灰色のキューブも、丸みのある意匠の中にアクセントを加えて新鮮です。否、すごくいい。なんでこのホールでこれまで聴いてこなかったのかと後悔するレベルです。ほら、オプションのミラーボールだってあんなに低い位置にあるし……え、なんであんな低い場所にあるの? え?
で、響きの方ですが、ホールの大きさ相応に、室内楽がよくあいます。否、これがとても重要で、見栄を張っている感じも、音がならない感じも特にない。特に今日は満席だったので、残響という意味では非常に控え目な面もありましたが、ちょうどいい残響の音が、確かなボリューム感で返ってくる。シューボックスタイプでボリュームが返ってくるというのも、これまたなかなか新鮮なホールです。否然し、上述からして、芸術を楽しむための要素は確実に揃っている。いたみホールがちょっと上級な芸術を楽しむための場所だとするなら、アイフォニックホールは、ふらっと来てちょっと芸術を楽しむのにちょうどいい。ふらっと来るだけで、確かに音楽を楽しむことのできる、この安心感。
ちなみに、今日は公演中、客電が落ちることがありませんでした。ホールの特性上、舞台照明を作りづらいのかな、という風に見えたので、その影響もあるのかも。見た感じのイメージですが、全照にしても、舞台照明だけだとちょっと暗いかなって感じでした(客電上がっているおかげで、見てる分に困ることはありませんでした)。もっとも、公演が終わった直後、何かがミスって、一瞬客電がフェードして真っ暗になったので、特に客電が落とせないというわけでもないようです笑
ところで、このホールのベル、なんだか、いたみホールと対になっているような気がしてならないんですが……気のせい?笑

Opening: ジョン・ラター「ルック・アット・ザ・ワールド〜世界はたからもの〜」(ヘルビック貴子・日本語訳詞)
指揮:根津昌彦
ピアノ:鹿島有紀子

どうもこの合唱団、団員の子どもたち有志を「ジュニア」として活動しているようで、ジュニア若干名と、そのOG若干名も含めてのステージ。満席のお客さんと、下がりきらない客電が逆に助けとなって、雰囲気はさながらファミリーコンサートのよう。ジュニアだけで歌う部分は、もっと息をしっかりと声にできるといいですね。あとは、もっとイキイキと歌いたい。否、子供らしさを追求すると言うより、もう少し勢いつけて声にしたほうが、もっとメロディが動いただろうな、というところ。子どもたちにとっては、このホールも広かったでしょうから、もっと広々とホールを使った音作りをしてみてほしかった。でも、満席のお客さんの中で、よく頑張りました。
そして、そんな、まだちょっと頼りなげな子どもたちの歌声を、大人たちが寄り添って、包み込むような温かいオープニング……。
そう! 子どもたち、このステージの大人たちのように! 柔らかなアンサンブルでありながら、しっかりと音が鳴っているさま、長年愛唱していることもあって、実にお見事な音作りでした。しかも、しっかり鳴っていながら、響きは非常に高いところから鳴っている。その音色、うん、こんなにラターをおのがものとして歌いこなせる団、そうないですよ。ある程度平易で、言ってみりゃ誰でも歌える音だけど、ラターのつまんない演奏って、結構頻繁に見かけますから(失礼)。聴かせるの難しいんですよね、ラターって。良くも悪くも、簡単だから。シンプルなものを味をもって聴かせるには、充実したレガートなんだなぁと思い知らされました。いやはや、お見事。

そして、根津さんはよく喋るタイプの指揮者でした笑 関西こんな人ばっかやな笑
初めての演奏会もアイフォニックホールだったんですって。此度堂々の凱旋公演。

第1ステージ
森田花央里・混声合唱組曲『青い小径』(竹久夢二)
指揮:大坪真一郎
ピアノ:鹿島有紀子

森田先生をレッスンだけでなく、当日の客席にも呼んでの演奏。森田花央里の名を知らしめた朝日賞受賞作「鐘」を含むこの組曲は、森田音楽の導入という意味では、音響的にも、技術的にもとても意味のある作品となっています。今現在の先生のライフワークですからね、竹久夢二っていうのも。
そう、前のステージでも指摘したところなんです。「しっかりと鳴っている」。否、このステージでは、ちょっと狙いが外れてしまったようです。特に前半2曲、女声がメロディで音の勢いを絞ってしまっていたかな、というのが残念なところでした。確かに最初の部分は強く出るようなパートでもないのですが、だからといって、勢いを失ってしまっては、音量はともかく、メロディが推進力を失ってしまうので問題です。各メロディがある程度芯を以て鳴らないと、そのメロディ同士が絡んでも迫力不足になってしまいますし。でもだから、勢いを増す3曲目は、むしろちゃんと鳴っていたというのは、象徴的な出来事のような気もします。派手な音、ってわけでもないけど、もう少し華々しい音が鳴っていてもよかったように思います。もっと伸びのある音、といいますか。確かに透明な音が似合う曲で、ゴリゴリ鳴らすよりは、ちょっと引いた音作りのほうが似合うかな、と表面的には思わされる面もある。でも、この曲、なんならこの団のもとの音にしたって、もともととても透き通った音が鳴るし、そういう風に出来ている。だったら、奇を衒う必要なぞなくて、楽譜に書かれている音を、自分たちが提供できるベストな音響で響かせることが出来たなら、それで十分なのではないでしょうか。
でも、ここで特筆しておかなければならないことがーーこの団、テナーが抜群にうまい! テナーが刻み、オクターブで下から上昇音型を支え、ときにヴォカリーズのハーモニーを作り、女声に寄り添いメロディを作るーー高い響きと、無理をしていないながらもしっかりとホールを響かせる力強さ、アンサンブルを引き締めていて非常に素晴らしかったです。否、普段テナーなんてけちょんけちょんに言われてなんぼみたいな世界で生きている自分がいうんだから、間違いないですよ、これは笑

インタミ10分。

第2ステージ・Tenhana Entertainment(T.E.T.) vol.8〜ウタッテ25〜
サザンオールスターズ(arr.信長貴富)「みんなのうた」
嵐「HAPPINESS」
次郎丸智希・編曲「ザ・ベストテンメドレー」〈初演〉
Mr.Children(arr.石若雅弥)「ヒカリノアトリエ」
ゴダイゴ(arr.石若雅弥)「銀河鉄道999」
指揮:根津昌彦
ピアノ:鹿島有紀子

で、このステージ。パンフには、その段になったら、皆で立ってYMCAやってね!とか書いてあるんだけど、まさか……ねぇ笑 と思っていたら、ステージ上に団員たちが80年代風ファッションで登場して、その瞬間から客席の笑いをかっさらってるんだから、もうイヤな予感しかしない爆
いやね、さっきのステージからの引き続きで、ソプラノとかメロディ張ってるしもっと出したほうがーーとかいろいろ考えてたんですけど、なんかだんだんどうでも良くなってきた←「HAPPINESS」では早速踊り出すし笑 あれなんですか、関西では嵐ぐらい踊れないとポップスステージもやらせてもらえないんですか←
「ーー前のステージから、随分毛色が変わるもんですね!」とか、根津さんも赤いアクセントの入った真っ白なブーツカットとか履いて言ってるけど、もうなんか、変わりすぎでしょうよ、いろいろとw こんなに説得力のない説得力のある言葉初めて見たw
「あんまり(先生に)ライト当てないで!」(根津)→「ハレーションが……」(次郎丸)とか、編曲の次郎丸先生(スキンヘッド)を上げてもやってるし、もはやなんでも有りですね、このステージ笑 3曲目の初演は、根津さんがやりたい曲を順番適当にリストアップしたものを、次郎丸先生が「その順番のまま」編曲してしまったという逸品笑 とりあえず黒柳徹子さんがあz……根津アナウンサーとともに登場したところから、その後はベストテン世代の曲を、モノマネありダンスあり指揮者のパフォーマンスにピアニストの歌ソロありとなんでもありの大団円笑 件のYMCAが始まったと思ったら客席皆で拍手よりもYMCAしているもんんだからむしろそこで拍手が止まるというぶっ飛び具合爆 大盛り上がりのまま、ミスチルでアイスブレイクしたあとに始まったゴダイゴでは、ついにミラーボールが光りだす笑 最後にはもはや、さっきのステージよりも女声が良くなっていた気がする爆
「合唱を知らない人にも楽しんでもらえるように」(根津)ポップスステージを企画する団って少なくないけど、やったとしても、ポップス歌っときゃどうにかなるんでしょ? くらいに選曲だけでゴリ押すステージもまた少なくない。そんな中で、関西ってやっぱりすごくて、この団も例外ではないのは、結構な確率でガッツリ盛り上げようとステージ構成を考えているんですよね。だから、単なる余興みたいなステージにならずに、全力のエンタテインメントが完成するんですよね。いやはや、どこよりもぶっ飛んでいた。ある種、ドラフト並の感動だった。本当に見習いたい。
……そういえば、某安積黎明と違って、ミラーボールは回してましたけど、スモークは焚いてませんでしたね?←

インタミ15分。しかも何がすごいって、この次のステージで高田三郎の宗教音楽をやるっていうことだ爆 天に召された折には高田先生から譜面台か何か投げられても何ぞ不思議ではあるまい←

第3ステージ
高田三郎・混声合唱とピアノのための『イザヤの預言』
指揮:根津昌彦
ピアノ:大岡真紀子

いや、この曲はこの曲で、尋常ではない思いで演奏している由。だからこそ余計に、演奏前はギャップが……笑 
然し、演奏が始まれば、なんてことはない。本当にすごかった。別に、ギャップがどうとか、そういうのじゃない。本当に久々に、完成された高田音楽を堪能することが出来ました。お客さんも、先のステージとは打って変わって、水を打ったように静かです。しかも、その静寂の中に、確かに緊張感を感じる。それだけで素晴らしい時間であります。
否きっと、全国に点在するとされる、高田音楽の伝道者の皆様方に言わせたら、まだまだはるかな高みを目指すことのできる部分はあるのかもしれない。でも、高田音楽に必要とされている要素ーー子音や助詞の処理、デュナーミクの徹底という面については、非常に洗練されたものを聞くことが出来ました。その点、根津さんの師匠の一人は須賀先生、高田先生の教えを現代に繋いでいる貴重な生き字引からの(本当に!)厳しい教えを守ってこられたのだと心から思います。なにも、須賀先生のレッスンを受けたというだけで、こうなるわけではありますまい。
そう、アンサンブルに込められた思いなんです。その意味もあって、特に徹底していたのは、アンサンブルにおけるデュナーミクの部分でもあります。ときに力強く訴えかけ、ときに静かに祈りを捧げる。その緩急の付け方の、細部に渡る配慮、まさに、この曲に対する理解そのものが、よく現れていました。
途中で、内声がやや濁っている部分もあったような気もします。でも、全体をして、フレーズの伸び、あるいは、表現するべき対象に対する敬意に満ちた、素晴らしい演奏でした。その中でもさらに特筆しておきたいのは、終曲の和声! 始まりも終わりも、いい脱力といい緊張感、その塩梅の素晴らしさが音に乗り、ホールを目いっぱいに鳴らす充実した音が鳴っていました。メロディの美しい音列の中に寄り添う自然で豊かな和声ーー高田音楽の真骨頂は、この、心にすっと入り込んでくる自然な心の豊かさにあるのかもしれません。
あ、とはいえ、女声も含めてアンサンブルに力が戻っていたのは、もしかしてYMCA効果だったりするのかしら←

・アンコール
ジョン・ラター「主はあなたを恵みて守り」(ヘルビック貴子・日本語訳詞)
指揮:根津昌彦
ピアノ:大岡真紀子
森多花央里・編曲「ふるさと」(文部省唱歌)
指揮:大坪真一郎
ピアノ:鹿島有紀子

イザヤは比較的厳しく強い信仰に対する思いが描写された曲。とすると、まるでラターのこの曲は、そのアンサーソングのように、いわば救済となって観客のもとに降り立ちます。そして、私達の心をもふるさとに戻す森田編曲。でも確かに複雑に絡み合い、新鮮で途切れない和声の中にたゆたう旋律ーーラターがこの団の来し方だとすると、森田はこの団の行く末であるかのような。これからの25周年をも予感させる、美しい橋渡しとなる2曲でした。

ストームはなく、そのまま終演。階段が多くてちょっと狭いのが、このホールの玉に瑕、かも。混み合うと出るのが結構大変です。

・まとめ

全力、ですよ、全力。
何事にも、全力って大事だなと、折に触れて思わされました。第1ステージでは、全力で音を鳴らすことで解決できたかもしれない課題を提示され、第2ステージでは、全力のエンタテインメントが見せうる底力を思い知らされ、第3ステージでは、全力で曲を余すことなく表現することによって、高田音楽がこれ以上ないほどの魅力を以て鳴っていた。
演奏者をして、脱力ってよく言われるじゃないですか。ちゃんとした発声を、高く澄んだ音を出すためには、全身をよく脱力する必要があるって。脱力することで、音がよく響いて、きれいな音が鳴るようになるって。
なんも間違っちゃいないと思うんです。それ自体は。でも、その捉え方を、ときに私達は間違えているのかもしれない。
違うんです。やるなら全力で、なんです。私達は、全力で脱力しなきゃいけないんです。
もはや合唱に限らないかもしれない、常に100%を出すことがかっこ悪いというか、それだといわゆるバッファがないから、80%くらいの力でものに当たる必要がありますよ、みたいな風潮。まぁそれも一理あるとは思うんです。でも、同時に思うのは、最初からそんなこと考えてたら、80%の八掛けで64%しか出せないんじゃないの、って。
なにかのタイミングで、全力を出すタイミングを作るべきなんだと思います。自分の100%を知らないと、八掛けする余裕がどこにあるかだってわかる由もない。もしそれが、真の意味でコントロールできるっていうのなら、そりゃ、八掛けでもいいのかもしれないですけれども、でも、私達ってアマチュアですし。よほどの人間でないと、八掛けを探すのにも、全力を費やさなければいけないのではないでしょうか。
創団25周年をして、30余人いる団員の中核メンバーが文字通り中年揃いな中にあって、天花のステージは、文字通り全力を目掛けていたものでした。その泥臭さを、斜に構えて見ている若者も、今や多いのかもしれません。でも、そこに大いなる輝きを見出した若者は、確かにここにいます(もはやアラサーなのは否定しませんが笑)。どうぞ、自信を持って、これからも全力で突っ走っていってください。

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