おおよそだいたい、合唱のこと。

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主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
やたら細かいレビューからノリツッコミまで、現状、合唱好きな方の暇つぶしには最適です。
ゆっくりしていってね!!!

2018年7月15日日曜日

【Joint Concert 2018〜祈り〜】

2018年7月15日(日)於 東リいたみホール 大ホール

なんていうかもうね、
プログラム書くだけで十分大変でしたわ笑
いやね、あるときからしばおうさんもプログラム書き直すのやめたって言ってましたけど、ぶっちゃけ気持ちはよく分かる笑(そういえば最近あまり更新されていませんね……)
とあるところで「関西のいぶし銀的ジョイントコンサート」について案内を受けたところの2件目。曰く、「いぶし銀かはともかく、プログラムが異常(意訳)」の由。なるほど、確かにこれは異常なプログラムだ。その……量的な意味でw
いぶし銀、ってことで、名前が全国に知られている程メジャーってわけでもないけど、しかし確実に実力を持っている団による演奏会。そういう意味では2週間前よりも趣旨に沿っているような気もしています。しかし、そんな中に、各団工夫を凝らした演奏会は、とある方曰く、演奏会では演奏しないかもなんて話になっている曲も団によってはあるとかないとか。大変だなぁ……。
でも、なんだか、この、なんでもかんでもやりたいこと詰め込んでみたって感じのジョイント、いかにも関西のジョイントって感じが好きです。各団演奏も合同演奏も、普通の演奏会くらいの分量、いやそりゃ、時間もかかりますって……このプログラムを見るためだけにでも、時間をかける価値がある。
ちなみになんですが、シェンヌの演奏会が今日あったってのは、つい先程知りました←
……アルティとの被りは知ってたんだけどなぁ……笑

・ホールについて

なんか見慣れない名前のホールだな……っていうのは、関西の知識について浦島太郎な自分だけ?笑 まぁ、要はいたみホールです(って書くと、なんだかサバサバしてるなぁ……笑)。ついにこの目で目撃してしまいましたよ、あの、憩いの場だったミスドが、いい部屋ネットに変わってしまっている現場を……え、もう古い?
高槻あたりではブルーシートがしっかりかかっていて、ああ、豪雨の影響かくありという感じで眺めておりましたが、伊丹のあたりは被害は少なかったのでしょうか。否、そんな、豪雨だったなんてこと、外様の人間だと忘れちゃうくらいに、もう、とにかく今日は暑かった。数字にも顕れていたみたいですが、中でも伊丹は、蔵の街を模すまちづくりの特性上、白色をふんだんに使って道路や建物を作っているんですね。それが、照り返しとなって余計にもう。
しかし、相変わらず良いホールです。共用ホールから大ホールホワイエに至る通路のトップライトのやさしい明かりと、その先に広がる(飲み会だって出来てしまう笑)開放的なホワイエ。ひとたびホールに入れば、コンパクトながら非常に天井の高い、音楽をやるにも何をするにも非常に使い勝手のいい空間。特に今日なんて大規模な合唱団に最後はなるから、その時の演奏効果もさることながら、白眉はやはり、前述の通り、「使い勝手の良さ」にあるんです。なにか。小規模の合唱団でも非常にいい音を返してくれる。もちろん、実力によるところもあるのですが、ちゃんとボリュームをしっかり返しつつ、さり気なく美しい残響についても、小さい合唱団が使っても申し分ない。そう、どういう環境にあっても、その団が求める音をしっかり返してくれる。そりゃ、コンクールに使うのも納得ってもんですよ。

予ベル後アナウンスの裏で団員入場。うん、多いですからね……とはいっても、別にサクサクと歩いている印象なので、何もそこまでしなくても、とも思わないでもない。最終的にちゃんと入場が終わって、3分弱ほど団員と客席でにらめっこ。ちょっと緊張しちゃいました笑
それ用のバトンはあるけれども、団旗はなし。実は5つもかけられなかったからとか? そんなことないか笑

・エール
大阪市立大学合唱団フリーデ
大阪府立大学混声合唱団EWA CHOR
大阪市立大学混声合唱団
大阪大学合唱団TEMPEST
関西大学混声合唱団ひびき

いやぁ、まずエールだけでお腹いっぱいになるっていうのも。これまた。順番に。
フリーデ……素直かつキレイな発声。ただ、特に高い音でもっと息を使って、あるいは息をちゃんと超えにしてあげると、よりしっかりと、充実した音が鳴ると思います。
EWA CHOR……優しく充実した響きのベースが印象的。他方で、テナーが歌い上げたときに浮いてしまうのが気になる。方向性はいいので、音質を他パートに寄せたいか。
市混……5団体の中で最小勢力。それにしたって、他と比べて遜色ない音量。最初の狭い和声での音作りはお見事。味わい深い音を作れているので、もう少しテンポを落としても良いかも。
TEMPEST……素直な音なのはいいが、それにしてもテナーがやや正直すぎたか。喉を鳴らしているように聞こえたのは、この曲にあっては流石に弱点となってしまったか。
ひびき……曲の所為もあろうが、勢いのままに歌いきったのが気持ちのいい演奏。輪郭がはっきりしていて、こと関大校歌にあっては好印象。
ひとまず、この5団体にわたるエールだけで15分経過していることを御報告申し上げます笑

第1ステージ・大阪市立大学合唱団フリーデ
鈴木憲夫・混声合唱組曲『未来への決意』(片岡輝)より
「歴史」
「人間」
「自己」
指揮:榎本和真
ピアノ:石毛明生

男声のブレザーの鮮やかな赤色が、何よりまず印象的です。……と思ったら、団が委嘱しているピアニスト(≠市大OB)まで赤ブレザー!指揮もピアノも赤色が鮮やかで、もうむしろ、見るに壮観といったところでした笑
内面的な事柄を壮大に歌い上げる同局にあって、段々広がっていく世界観をよく歌えていたように思います。1曲目の最初のハミングの入などは、非常に美しかった。ただ、例えば1曲目で歌詞が入ったあとは、いまいち情熱が足りなかったような気がする一方、2曲目は勢いに任せすぎてしまっていた印象も。3曲目はピッチがずれてしまい、斉一性に綻びが見られたのが残念なところ。
広がっている世界を広げたまま放置するのではなく、しっかり自分の目の届く範囲で管理した音が鳴らせると、より良いのではないかと思います。なにかっていえば、一番最初のハミングが思い起こされるのです。これがよかったから、もっとよくできる、と、直感的に思わされる。注意して、配慮した音を鳴らすと、こんなにキレイに鳴るんです。そして、最後の盛り上げ方も、50人程度の人数にして、しっかりと鳴らしに行くことができるんです。もっともっと、アンサンブルの隅々に渡るまで、注意を広げてみてほしいなと思います。
個人的に歌詞が嫌いとか置いといて爆、音楽的には、未来への可能性を感じる、感動できる音作りだったように思います。

第2ステージ・大阪府立大学混声合唱団EWA CHOR
千原英喜・混声合唱のための『方丈記』(鴨長明)
指揮:遠田隆人

こういうジョイントだと、やっぱり、団服気になりますよね。こちらは、グレージャケットに緑のネクタイ。女声も普通の白・黒サテンの胸元に赤色リボンのアクセント。さり気なさがおしゃれです。
パンフレットの触れ込みに、バイオリン上がりの指揮者の素晴らしい耳が支えるピッチ、なんて話が書いてありまして。音程については、その触れ込み通り、非常に美しくまとまっていました。ただ一方、その音たちの連関がどうかというと、どうも交わりに欠ける音が鳴っていたように思います。各パートがよく歌えているのはいいんだけれども、それがうまくアンサンブル出来ているか。
全体として、アンサンブルがどういう方向に向かおうとしているか、そんな、アンサンブルの流れのような目線が、もっと必要な気がします。交わりに欠ける、すなわち、和声が見えづらいから、すなわち、どこか冗長にも聞こえてしまう。同様に、音は気にできていても、言葉に対しての注意をもっと向けると、例えば4曲目の叙情性をもっと深みを以て表現できるような気がします。
一方、その方向性がよく出ていたのが「夜もすがら」でした。よく音質にあっていた、というべきでもあるかもしれません。ピッチが揃うと、あの曲は非常に叙情性を光らせるんですね。ーー否でも、そういう光った演奏が聞けるからこそ、ますます期待しちゃうんですよ。
4曲目でリフレインする「ゆく河」のモチーフを、1曲目でいかに叙情的に記憶させ、無常観を聞く人の頭の中に去来させるか。そんなことを、悶々と考えていきたい演奏です。

インタミ15分。ホワイエにしれっと当間先生がいたような気がしますが、さすが関西というべきか笑 EWA CHORを指導されているみたいですね。

第3ステージ・大阪市立大学混声合唱団
千原英喜・混声合唱組曲『あなたにあいたくて生まれてきた詩』より
「あなたにあいたくて生まれてきた詩」(宗左近)
「雲は雲のままに流れ」(工藤直子)
「あげます」(谷川俊太郎)
「風のうた」(安水稔和)
指揮:水野怜香
ピアノ:石若雅弥

白ブレザーに赤ネクタイ。ある意味では定番どころですかね。もっとひな壇を広く使ってオーダーしても良かったような気がしますが、まぁ、このへんは考え方の問題なので、一概に答えは出しづらいところです。
合唱団、実に18人。人数の割に本当によくならせていると思います。だからこそ考えるのは、このよく鳴らせるという特徴をもっと活かす、というアイディア。シンコペーションで音がよく弾む曲。だからこそ余計に、しっかりと、母音を鳴らすということに対し、今一度視線を向けてみてほしいところです。もっと時間をかけて、しっかりと鳴らすこと。子音を言うことに大変なのはわかりますが、それにしても、そんなにセコセコと鳴らさなくても良いんです。オブリガードだって、薄くキレイになんて意識を、この人数で持たなくたって良い。しっかりカーンと上の方で鳴ってこそ、オブリガードの真骨頂なんです。その下でメロディがしっかり支えていて、2つの旋律が戦ってこそ、オブリガードなんです。
そしてこの歌、千原作品の中でもあまり深刻ではない方の歌(どういう表現だ笑)。もっともっとあっけらかんと出してやると、音もさながら、表現としてもしっかり成立するような気がします。そう、逆説的ですが、私だったらこんなにファララっとした気持ちで、私のファーストキスあげます、なんて歌えませんわ← 詩を深く読み込むと、どうしても頭の中でドラマチックに仕立てたくなってしまう。その気持をぐっとこらえて、いうなれば「東京ラブストーリー」のような心持ちでこの音楽を作って欲しいところです(私、世代じゃないですからね?笑)。
しかし、この指揮者なら、ちゃんとしっかりやれるはず。見逃しませんでしたよ、タイミングミスしたところで、転けそうになった男声に、強く頷いたその瞬間。本番中にそういう自身のもたせ方、なかなか出来たもんじゃない。
でも、なにより、この無鉄砲で、やりたいことに向かって真っ直ぐな、若い若い音作り! このみずみずしさ、いつまでも忘れないでいてほしいところ。

第4ステージ・大阪大学合唱団TEMPEST
“不思議”に指が触れるとき
田中達也「水のたとえ」(谷川俊太郎)
長谷部雅彦「神はサイコロ遊びをしない」〈初演〉
石黒晶「銀の滴降る降るまわりに/カッパ・レウレウ・カッパ」
Mäntyjärvi, Jaakko "El Hambo"
指揮:山本尚義

しかしまぁ、この中で言ったら、合同すら含め、意味わかんない(褒め言葉)ことをする団。だってほら、衣装は男女ともに黒・黒だし、オーダーも唯一弧を描いたりしちゃうし、この団だけ歌詞カードついてたりするし、パンフレットの指揮者様(多分)が書くライナーノーツは読み応えたっぷりだし、なんならしれっと秘蔵の曲を拾ってきて初演しちゃったりするし←
初演曲は、朝日賞審査(2005年佳作)以来しっかりと演奏されたことのなかった曲だそうで、作曲家から取り寄せた由。よくもまぁそんな曲が出てくるもんです笑 下降側の跳躍と、アルペジオがポリフォニックに絡む非常に難しい曲。アインシュタインの言葉からタイトルを取って作曲家が膨らませたテキストは、解釈としても難しい曲。ただ、その中を包む不思議な空気感が、なんだか、もっと聞いてみたいと思わされる曲です。
演奏は、キレイに決めようとする意思は伝わってくる演奏です。するとどうなるか。特に高い音が、声門が閉じきらない、シャラシャラとした音になってしまっているのが気がかりです。やはり、なんのために鳴らすのか、その視点を今一度見直したいところです。先程少し述べたフレージングの行き先の問題だったり、或いは、めくるめく変わっていくテーマに振り回されてしまったり、曲の聞き所を理解して、その聞き所に向けて音を作っていかないと、お客さんのほうがついていけなくなってしまう。その点、前述の初演曲は、とても難曲だった言えるでしょう。
これからのヒントとなるのが3曲目。ストーリーがある曲だから、風景描写とその変遷という音作りが非常に明瞭に顕れてくれました。あるストーリーに向けて、旋律をなさない音も含めて、非常に決然と鳴らすことが出来ていました。ちなみにこの曲に関しては、ストーリーに合わせて少し動いてみても良いのかもしれないな、と思いました。
El Hamboはややゆったり目のテンポでの構成。せっかくだからもっとはっちゃけて、何なら母音も少し扁平にしちゃっても良かったんじゃないかなとは思います。いかんせん、あらゆる意味で勢い不足だったか、ピッチがみるみる落ちていくのが残念でした。
何にせよ、もっと鳴らしに行きたいですね。鳴らすだけで解決できることが、なんだかたくさんあるような気がします。

第5ステージ・関西大学混声合唱団ひびき
信長貴富・寺山修司の詩による6つのうた『思い出すために』より
「かなしみ」
「ぼくが死んでも」
「思い出すために」
「種子」
指揮:片瀬達喜
ピアノ:坂田佳央理

ロゴ付きの団服。ロゴがカッコいいから余計カッコよく見える。役得(っていうと、ただの僻みか←)。
とにかく、テナーの響きが非常に良い! 特に一人ガッツリカッコよく鳴らしてる子がいたとか、そんなような気がしないでもないけど、でももうそれで良い!笑 他も全パートに渡り、鳴らすべき音を、決然と、頭っからかっちり鳴らしているのが本当に聞いていて爽快でした。音を出す前から、出す音の向かうべき道がわかっているから、はっきりとした音が鳴らせるんですね。歌心を歌心のままに、非常にいい意味でコントロールせずに鳴らしに行けている。
「ぼくが死んでも」なんて本当に大好きな演奏でしたけど、それに加えて「思い出すために」! むき出しの感情がはっきりと顕れて、カオスのように絡みゆく大団円。なんなら、もっとロマンチックに音を作って見てほしい。特に、恋や愛情に関する表現は、この組曲の中でも要になる表現。さらに、こういう音楽づくりをしているなら、恥じらいだったり、慎ましさだったりといった表現は廃していい。「思い出すために」のダバダバだって、もっと派手にダバダバしてほしい。むき出しの感情をもっと、さやにしまわないナイフのようにこちらに向けてみてほしい。
ガンガン歌い込める、非常に秀逸な音をすでに持っています。だからこそ、もっと攻め込んだ音作りをしたいところです。否、今でも十分及第点。だからこそ、その先に期待を持っていきたいんです。ここで満足したら、ここで止まってしまうから。これから演奏会でも披露予定の由。ここからさらに磨き上げたら、このステージは間違いなく、名演になりますよ。

インタミ15分。石若先生が早くもホワイエに降りていた……のを遠巻きに見かけました←
ステージ前には「今宵最後のステージは……」との定型文句。何を、そんな、15時半から始まった演奏会に……と思って時計を見てみたら、なんと17時40分。すでに開演から2時間経過ーーホントに今宵になりかけとるやないかい!w

第6ステージ・合同ステージ
"Alleluia"
by Gregorian Chant, Ambroz Copi, Ralph Manuel, Jake Runestad, and Eric Whitacre
指揮:飯沼京子(客演)

しかしまぁ、この、古典的にしてあまりに斬新な企画!
グレゴリオ聖歌に始まり、グレゴリオ聖歌に終わっていく、その中に見せる、ヨーロッパ、南北アメリカ、そして、静と動で織りなすアレルヤの諸相。その一言にして、旋律に、和声に、時代に、表現に、実に様々な顔を見せるその様に、音楽の奥深さを見出します。否普通に、勉強になりました。
どの団も、非常に素直な音作りをします。素直に、自分たちの声を無理して変えるようなことをしないで、自然に出せる合唱団。だからこそ、このような音作りをする団の合同演奏は面白いんです。まるで、群衆の合唱の中にいるような、お互いの声が混ざり合う感じ、それでいて、決してバラバラというわけではなく、一所懸命、一つの音楽・表現を作り出そうとしている様子。その相乗効果は、おそらく本人たちが思っている以上ですらあるのだと思います。
爽やかな音が見事に一つの音を作る。Runestadだとその音にはちょっと不足感もありました(単に、もっと音圧がほしい)。ただ、Manuel、そしてなによりWhitacreに関しては、その叙情性が見事に表現されました。Whitacreはもっと広がりに対するイメージがあってもよかったかな? でも、意外と和声の決まるこの曲、その表現をしっかり作れていたように思います。特に最後の和声、最後のテナーの動く場所へ向かっていく表現、すっごい、大好きなんです、自分。そこに見せた充実した世界観にそっと入り込んでくるグレゴリオ聖歌の旋律のさり気なさ。なにかと、大きなことをとりあえずしてみようと、曲頼りになりがちな中にあって、明確な意思を以て、最終ステージとしての大団円を作り出すアンサンブルと企画の絶妙なマッチングに、心からの拍手を贈りたいと思います。

アンコール前には飯沼先生と実行委員長が挨拶。途中、立て続けに起こった地震と豪雨の被害に対して感極まる場面も。そう、名古屋にいると滅多意識できませんが、西日本一円、この災害の被災地なのですよね。高槻でも思いましたが、まさかあんなに線路のすぐ近くに、ブルーシートのかかった屋根がたくさん並んでいるとは、よもや思いませんでしたもん。本当に苦労して作り上げたこの演奏会、その開催自体が、奇跡であり、努力の結晶なのだなと強く思わされました。

アンコール
松下耕「今、ここに」(伊藤玲子)
指揮:松岡哲平(大阪大学合唱団TEMPEST)

そしてそんなところに、この曲です。いわば、合唱人のためのアレルヤ、歌うことに存在理由を見出す、そんな、生存の証明とでも言えるような、力強い宣言。思えば、Sing for Japanのために書かれた同曲。まさにこんな時だからこそ、強く心に沁み入り、そして、歌う人自身をも強く勇気づける、決然とした旋律が今も心に残っています。

最後には、飯沼先生に押されるようにして、学指揮くんがカーテンコールに登場し、居心地悪そうに飯沼先生のマネをして動いている様子も可愛げに、無事お開きとなりました……18時20分、と、手元のメモには書いてあります笑

・まとめ

先々週も書きましたが、この時期のジョイントは、関西の夏の風物詩、すなわち定番イベントです。そういえば確かに聞こえが良いのですが、裏を返せば、冗長に同じことを延々と繰り返すことにも繋がりかねないリスクも潜んでいます。無反省に同じことを繰り返すのは、とどのつまり、一種の癒着に繋がり、最終的にはその団のあり方が曖昧になり、団体の崩壊にすら繋がりかねないものとなります。繰り返している当人たちは気付きにくいから質が悪い。
でもーー関西の底力は、実はこちらの方にあるのかもしれません、どのジョイントも、持てる力を総動員して、今自分たちにできること、今自分たちがしたいことを、ありったけ表現しています。それだから、ただの夏の恒例行事に成り下がることなく、常に新しい驚きに満ちたイベントに昇華出来ているのです。だからこそ、私は、関西のジョイントに心を寄せているのかもしれません。
アレルヤ集、身近に転がっているようで、なかなか見つからない、提案する人も、それを受諾する人も、本当にすごいと思います。そして、それが、大きな感動となって確かに私達の目の前に提示される。しかもこの演奏会、無料ですよ? こんなにオトクなことって、あります?笑
どんな演奏会だって、そこに新しい価値を見出すために存在しなければならない、これは、プロ公演にとどまらず、ある意味においてはアマチュアのホームコンサートだってそうなんです。聴きにくるお客さんのために何ができるか、あるいは、何をすべきか。そのことを必死に考えて出来上がる演奏会は、もはや存在自体が美しい。
のべ30分の休憩を含め、3時間弱もの長尺にわたり、関西圏の合唱団の「今」が切り取られました。どの演奏だって、今見せられる最高のパフォーマンスだったのだな、と、本当に納得させられる素晴らしい演奏でした(そうでもなかったら、逆にああせいこうせいとつべこべ言いません)。連綿と続く伝統の「過去」を映し、各団体の「未来」をつなぐ、その可能性を心のそこから感じさせる「今」が、まさにそのステージにありました。
飯沼先生のライナーノーツに、「年々歳を重ねる私にとって、大学生と共に音楽に携わることは、感性の更新〔です〕」とあります。上の世代にとっての「感性の更新」は、対象となる各団の感性自体が更新されていないことにはなし得ません。今日もまた、新しい発見を、私も得ることが出来ました。
伝統って、こうして続いていくものなのだと思います。

・メシーコール
すし定食@「松葉」(伊丹ショッピングデパート2F)

その土地土地のさりげない食事って、その地域の本当の強さを映し出すものがあります。今回、着いたのがギリギリで、昼をどうしようかと考えあぐねていたところにしれっと入ったのがこの寿司屋。一見するに、寿司屋と言うには不釣り合いな、地元百貨店(否正直スーパーという程度の規模か)のミニ・フードコートの一角に構えるその店。すし定食を頼んで出てくるのは、握り3貫と海苔巻き3つ、そして小さいわかめそばが一杯。これで700円。しかし、侮るなかれ。このお寿司、そんな中にあって出されるのは大将手づから握る、こじんまりとしていながらしっかりとした労作。そのシャリの具合に確かな技術を感じます。そばも、関西の、薄口醤油の塩がしっかり効いたおつゆの味に軽く啜れるいぶし銀の一杯。今回は定食だけにしましたら、言ったらちゃんと個別にも握ってくれる本格寿司。そう、さりげないこんな場所に、まさに、いぶし銀の食事が潜んでいることだってあるんです。いぶし銀の演奏会を探す旅、まさにその昼餐にぴったりな、伊丹の地の力を感じるささやかな盛夏のひととき。

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