おおよそだいたい、合唱のこと。

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主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
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合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
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ゆっくりしていってね!!!

2017年4月3日月曜日

【混声合唱団アンサンブル・ファミーユ・ヴォア(Ensemble Famille Voix)第6回演奏会】

2017年4月2日(日)於 名古屋市芸術創造センター
〈Ensemble Famille Voix Op.6 ~Generations〉

悪い人の事例。
合唱団の練習が今日ありまして。ただその間に、別の某イベントのビラ込みを任されていまして。で、ちょうどその演奏会をやるファミーユの演奏会会場は、練習会場の隣でやっていまして……
なんていうか、行くしかないですよね。
……え、練習?
何いってんの?(今となっては反省している

はい、良い子は真似しないように笑
まぁ、なんであれ、ファミーユ(中々団の名前が読めなかった)。愛知芸大のOB勢が中心となって結成された合唱団です。とはいえ、今となってはいろんな出自の団員がいるだけでなく、決してコテコテの芸術作品をやりましょうだとか、なにか音楽的目標を高く掲げてぶっこんでやりましょうって感じの団ではなく、ちょうっど団員の皆さんに子供が生まれるような年代でもあり(だからってわけじゃないか笑)、マジメなクラシックからポップスまでなんでもこなす団になっています。才能の使い方、かくありなん、といったところか笑
ちなみに、指揮をされている山本先生、あまりにイケメンすぎてですね、だからってわけじゃないとは思うのですが、ってか、勤務されている志賀中学校の関係ですが、ボイメンの番組から花が届いていました……笑

・ホールについて
行きたかった理由のひとつが、「このホールだから」というのもあるにはあるホール。このホール、自分がはじめて舞台というものに立った思い出のホールです。地区の小中学校が一堂に会する音楽会で、器楽アンサンブルでリコーダーを吹いていました。曲はサザン「TSUNAMI」のアレンジ。あのときは、何もかもが大きかったなぁ……そう、まだヤマザキマザックがなくて立体駐車場があった時代、芸創センターと隣のビル型病院とを毎年間違えるという、そんな微笑ましい(?)思い出も笑
かなり古いホールです。コンクリートに土の塗り壁。舞台も天井も演劇も対応可能なように黒く塗られて、会場も暗目のないそうなものだから、その古めかしさを強調します。反響板はしっかりしているものの、六角形の形をした天井は梁のように骨組みが組まれ、天井こそ高いものの、どことなくコンパクトなイメージがある。ここもやはり、どちらかというと演劇へ向けた多目的ホールです。そう、設備こそところどころ新しくなっているものお、予ベルも「b--------------!!」とか鳴るので笑
残響は正直望めません。まして、鳴りも、今日がちゃんと鳴らす団だったから良かったものの、鳴らない団だったら聞けたものではない。ある意味残酷なホールです。でも、あえてこう言いたい。このホールには歴史がある、と。歴史が、音楽を、芸能をやりたい人を呼び込み、芸術を創造してきた。その事実だけをして、僕の中では立派な名ホールです。身勝手? いいじゃん、是非、音楽に限らず、訪れてみてください。

指揮:山本高栄
ピアノ:扶瀬絵梨奈

第1ステージ
Britten, B. “A Ceremony of Carols”
ハープ:佐々木遥香

第1ステージは、ブリテンから。どちらかと全体的に親しみやすいステージが並ぶ中で、一曲目はどちらかというとかっちりとした構成。これを一ステージ目に持ってくることで、どことなく家庭的な雰囲気のある客層を一気に演奏会へと持って行きます。現実から非現実へ。いいプログラムです。
でもって、演奏。なにより、最初の “Procession” から、全般にわたって、メロディを歌う力についてはどこよりもある合唱団。各種ソロをはじめとする個々の演奏技術はとても高い。だからこそ、こういうデッドなホールでも、この類の曲をしっかり鳴らせるわけです。ただ一方で、ハーモニーがハマりきらない部分が見えるのが残念なところ。旋律の音程が必ずしも正確に当たるというタイプの演奏をしているわけではなく、あくまで流れの中で歌っているため、ズレてしまうところはどうしてもズレてしまう。しかもそれが少人数なので余計に目立ってしまいました。
バランスの問題なのだとは思います。実際に、響き然り、言葉の作り方然りというのは素晴らしかったし、なにより “Interlude” のハープ独奏など本当に素晴らしかった(関係ない?w)。聴きあうというアンサンブルではなく、自分の旋律をしっかりと歌うタイプのアンサンブルをするのは、決してこの団だけではありませんし、実際、それで成功するアンサンブルというのはいくらでもある。この団は、そして、旋律をしっかり歌える人たちが揃っている。だから、あとすこしの配慮なのだと思います。あと少し、耳をつかったアンサンブルをするだけで、ハマり方が段違いに良くなるのではないかなと思います。その意味では、すごく惜しい演奏。
――否、それでも、しっかりと響く旋律線に身を委ね、とても没入することの出来る演奏ではありました。

第2ステージに先立ち、山本先生挨拶。
いつ見ても超イケメンなのですが、なんと中学の先生で、勤務校の合唱部を引き連れて賛助させています。否、この先生なら、きっと人気なんでしょうねぇ……笑

第2ステージ・Generation Stage
「平成の合唱曲 vs 昭和の合唱曲」
野田洋次郎(arr. 平野真奈)「なんでもないや」*
鈴木キサブロー(arr.橋本祥路)「想い出がいっぱい」(阿木耀子)
三木たかし(arr. 滝口亮介)「心の瞳」(荒木とよひさ)
中島みゆき(arr. 横山潤子)「時代」
村井邦彦(arr. 横山潤子)「翼をください」(山上路夫)
槇原敬之(arr. 信長貴富)「世界に一つだけの花」
森山直太朗(arr. 横山潤子)「さくら」(森山直太朗、御徒町凧)
アンジェラ・アキ(arr. 鷹羽弘晃)「手紙〜拝啓 十五の君へ〜」
友情出演:名古屋市立志賀中学校
ピアノ:片桐愛彩*

あるときは合同で、あるときはソロで、合唱部との共演。一応ダメなんだけど、わが子の姿を収めようとする親御さんのカメラを構える姿は、なんだかほっこりした気持ちにさせられます――とはいえ、さすが「平成」の子たち、わが子の姿を納めるのも、iPhone だったりするのでした笑
1曲目はRADWIMPSが映画『君の名は。』に描き下ろした劇中歌から。それがもう、誰よりも楽しそうに歌っているだけじゃない、ちゃんとバッチリ揃っているんだ! しかも、指導も良くて、しっかり声も出ている。もしかしたら、オトナよりうまいかもしれん←
2曲目と3曲目はファミーユの人たちと一緒に。……って違うわ、主役こっちだわ← 今度は昭和の音楽を。「心の瞳」が坂本九だって知らない人は、たしかに自分たちの時代ですら一杯いそうだ……笑 この曲辺りから顕著になってきたような気がするのですが、ちょっと男声のフレーズ処理が投げやりになる傾向がありました。でも、前述の通り、メロディの骨がしっかりしているから、ちゃんと意思を持ったアンサンブルとして聴くことが出来るんですね。
そして、再びファミーユ単独で4曲。何より、この「時代」、さらには「さくら」が顕著に、テナーのメロディが絶品なんですよ。力がよく抜けていて、それでいてかつ色っぽくて……そう、素朴。この言葉がよく似合う。すごく素朴なんです。押し付けがましくなく、ぐっとくる。こういう雰囲気作りを見ていると、必ずしも、合唱って、ハモリだけじゃないんだなぁって思わされます。
最後は、合同で、アンジェラ・アキ「手紙」で締め。「ラララ……」のヴォカリーズなど、ちょっと篭った音を作るのも、それはそれで、なんだかご愛嬌というか。否、けなすつもりはないですからね?笑

インタミ15分。この時点でお腹いっぱいな感じはあるんですが、ここからさらに、弦楽オケまで用意されていくのでした……笑

第3ステージ
arr. 源田俊一郎・混声合唱のための唱歌メドレー『ふるさとの四季』
弦楽:Strings Famille
友情出演:愛知県立名古屋西高等学校合唱部

ここんところ1週間で2本めの源田ふるさと。唱歌メドレーの名作ですからね。
今度は弦楽オケと一緒に。弦楽は、愛知芸大の関係者で編成されています。それに加えて、団員に現役高校生がいるとのことで、その子が部員として所属している高校の部活を賛助に呼んでの演奏です。女の子ばかり10人ほどしかいない部活ですが、なに、お姉さま方も高々15人といった様相なのですから、なんということはございますまい笑
さて、この、しっかり歌える団が歌う源田ふるさと、向陽にしてもそうですが、メロディがしっかり歌える団が歌うための曲なんじゃないかな、と思えて仕方ないというか。
とはいえ、この団のいいところは、こういったものを、あっさりと、自然な表現でやってくれるところ。こういう唱歌に対して、やさしさ、という表現を見出すことが出来るのは、比較するわけではないですが、向陽の年代の子達には中々出来ないことです。打楽器を加えて実験室のような作り方をしていた向陽のアレンジも好きなんですけど、今度の、この上品な表現を聴くのも又、否、これでこそ、ああ、唱歌を聞いているなぁというような気にも扠せられます。
そして、そういう表現があるのも、技術的な細やかさがあってこそ。山本先生も、音の響きが落ちたりしたら、即座に反応して、指示を送る。すると、合唱団もちゃんと反応する――演奏会のさなかにあっても、アンサンブルというのはちゃんと組み上げられていくんですよね。
そして、子供連れも多い、その会場の雰囲気の中で醸成されていく、その素朴さに、癒され、なんだか、元気だってもらえる。なんとなく流れていくようだけれども、しっかりと記憶の中に刻まれていく。名演じゃないかもしれない、それでも、手堅く、かつ親しみの持てる、いい演奏でした。

アンコール
千原英喜「雨ニモマケズ」弦楽版(ファミーユ・西高)
菅野よう子「花は咲く」(全員合唱)

千原雨ニモ弦楽版、生演奏に接するのは初めて……だと思ってたけど、なんか、当間先生の団で一回聞いたことあるかもわからん笑 大曲で、……あえてこういう言い方をすれば、この曲、長いんですよね。勿論、それが表現ではある。でも、だからこそ、どういう形でもいいから、その長さを利用した表現を是非してほしかった。ちょっと冗長になってしまったかなと思います。
そして、最後は花は咲く。この曲もまた、今後のスタンダードとして歌い継がれていくのだろうなと、なんだかしみじみしながら口ずさみ、演奏会は終演となりました――。

その後? 練習戻りましたよ笑 なんとマジメな←

・まとめ
古くから馴染んできた歌というのがあります。どの曲、と限ったわけではないですが、それは、古くから歌い馴染んできた童謡であったり、学校で習う唱歌だったり、あるいは嘗ての流行りの歌だったり、「あたり前田のクラッカー」だったりします(僕、その世代じゃないですよ?w)。
古くから馴染んできた歌は、やれ幼いだとか、やれ古いだとか、色々な難癖をつけて、一時期疎んじられることが、多かれ少なかれ会ったりします。そして、新しい流行歌や、あるいは現代音楽へと流れていったりします。そして、年を取ってようやく、古くからの唱歌にもどってきたりする。
その再評価のためには、しっかりとした演奏が必要です。また同時に、往時の記憶をインプットするときにもまた、確かな演奏が必要になります。その時のあこがれだったり、憧憬だったりといった感情が、音楽をやる原動力になるかもしれないけれども、少なくとも、心のどこかで、きっかけになったりする。実際、僕自身、音楽をやるきっかけは、この芸創センターでの音楽会であり、クラシックにハマったきっかけは、「大乱闘スマッシュブラザーズDX」のオーケストラコンサート(新日フィル)です。
そんな、幼いころの記憶を呼び覚ますのが、この演奏会なのだと思います。プログラムは、キャロルだったり、定番合唱曲だったり、あるいは唱歌だったり。いずれも、昔の記憶を呼び起こすようなプログラムばかり。ある意味では、凡庸だ、と思う人もいるのかもしれません。でも、思うんです。我々には、ちょっとでも現代音楽への憧憬を持った我々には、こういう音楽会が必要なのだと。私たちの出自をしっかりと見つめ直し、明日への原動力とする、そんな瞬間が必要なのだと。年取った? そりゃ事実だ。でも、そうして初めて気づく真実だって時にはある。
その、原体験を見つめ直す演奏会であり、原体験への招待ともなったこの演奏会。団員の構成としても、賛助としても、さらには、その知り合い・友達としても、子供たちの観客が非常に目立ったこの演奏会。原体験へのいい招待になったのではないかな、と、温かい気持ちになることが出来る、いい演奏会でした。

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