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2014年12月13日土曜日

【神戸大学混声合唱団アポロン第52回定期演奏会】

2014年12月13日(土) 於 尼崎市総合文化センター あましんアルカイックホール

さて、ちょいと用事がありまして、アーバンライナーの中でこの原稿を書いております。土曜日夜便だからか、いつも以上の混雑。ぶっちゃけ言うと、自団の練習がないこともなかったのですが(ぁ)、今回は帰省前に、以前弊団の演奏会に来てくれた子(と、その関係でも増えたTwitterのフォロワーの皆様)が所属している、神戸大学混声合唱団アポロン、通称アポロン(尾高型)の演奏会へ、お礼も兼ねて行ってまいりました。今年度初の学生団。『まだみぬあなたへ』の初演で有名でしょうかね。一度は聞いてみたかった神大の合唱そのイチでした。あとエルデ、そして男声。

・ホールについて
このブログを始める前に書いた(転載済み)去年のパナ・阪混・京大のジョイントでも来たことがあるホールです。何気2回目。ひとまず来てみると、そもそも尼崎駅前がイマイチ使い勝手がよくない……っていうとアレですね。単に、喫茶店に乏しいってことです。こればっかりは事実。文化センター2階に喫茶店が出来てくれて、本当にありがたかったです。
さて、ホールですが、さすが!ザ・市民ホール!笑 おしゃれな多目的ホールッて感じです。反響板がですね、なにかおしゃれなんです。ちょっと四角く装飾してあって、それだけで何か雰囲気見違えるようですが、客席は横に幅広く、席はゆったり赤色シート、そしてこのシートピッチの狭さはやみつきです←
今回私用でスーツケースを携行していたので、クロークがないのは難儀しました。ホールのロッカーでは入らないだろうと踏んで、駅で600円お布施して大型ロッカー利用。ううむ、ザ・市民ホール。しかし客席上部にはバルコニーがある。おしゃれ。しかしブザーは、あの懐かしの「B-----------------!!」しかも、反響板の舞台扉にはなぜか段差があり、出るときはそこを踏み越えないといけない。トイレがやたら広いのも含めて、うん、この感じ、ザ・市民ホール。
反響板に小細工してあるって点でお察しの通り、まぁ声はそんなに飛んできません。でもこのホール、響きという意味では結構優秀なんです。音をパッと切った瞬間に残る残響は、自然にふわっと、客席の方へ飛んで行く。確かにボリュームという意味ではもうどうしようもないんですが、音楽を楽しむという意味では、中々楽しいホールです。和音の綺麗な団が使うと、とても楽しむことの出来るホール。
ちなみに今回は、2階はカメラ用に確保、1階を7~8割埋める集客でした。そもそも、このクラスの団が、無料ですからね。

入場は前から一列ずつ。四段使っていたので、歩くスピードは快適なものの、ちょっと間延びした感がありました。団員数名簿で85人、ですからね。普通に入場するだけで結構な時間がかかります。あと、全面的に照明が安定しなかったのは少し気になる。本編関係ないんですけどね、集中するって意味でも。

0, 学歌「商神」
タイトルかっこいいですよねぇ……さすが旧高等商業学校というべきか。団旗と指揮者にピンスポ→照明約10%で演奏開始→ユニゾンを歌う間に明転、というこの一連の流れを見ると、ああ、学生団の演奏会に来たんだなあって感じがしてきます笑
作らず飾らず、素直な発声でしっかり鳴らす、ピッチもよく揃っていて印象的。ボリュームという意味では味方してくれないホールも、ハーモニーや響きという意味では相性が良かったようです。軽い響きで、前に飛んでくれるわけではないものの、明るい声によく味方していました。市民ホールとしては全然あり。
演奏面。縦はよかったものの、ここは、たかが学歌、されど学歌。演奏会ではオープニングを飾る曲。今ひとつ、フレージングに疑問です。よく言えば歌い慣れしていますが、悪く言えばやや惰性が入ったでしょうか。今一度、フレージングを見なおしてみてもいいと思いました。

第1ステージ
尾形敏幸・混声合唱とピアノのための『五つのギリシャ的抒情詩』(西脇順三郎)
指揮:鈴木勝利(学生)
ピアノ:前田裕佳(客演)

個人的にはあまり見たことのなかったこの曲。西脇順三郎の初期の詩に付曲されたものだそう。
描き分け、という意味で、もう少し頑張れたかなぁと思いました。本当に、ピッチコントロールという意味ではどのステージもこぼさない秀逸さなのですが、曲の風景がめくるめく変わる曲です、その変化の機微をもっと貪欲に表現してみたかったような気がします。緩急の入れ替わり、「急」の部分の入りは、ホールが響きづらいこともあり、もっと突き刺すような音で良かったですし、最後の曲はもっともっと歌いたかった!特に終曲の最後の縦和音も美しいのですから、そこに向かってのフレーズ設計という意味でも、もっと流れに乗ったまま最後の和音へ繋ぎたかった。一方で秀逸だったのが、組曲としても肝にあたる、4曲目「手」。この表現を他の曲でもしたかった、といったところです。
どのパートもよく歌えていました。特に、2,3曲目のアルト、5曲目のテナーは良い仕事。ソプラノは、音の跳躍が大変でしょうが、高音がどうしてもアテに言っているように聞こえたのが残念。そしてピアニスト!この複雑で繊細な曲を非常に見事に弾き分けていたのが印象的です。ベース?……うん、よく鳴っていたと思うよ←
そして、はっきり申し上げておきたい。この曲、大好きだ!すごくいい!笑

ここで小休止代わりの祝電披露。なんか懐かしくなって、全部メモっちゃいましたよ←
ただ、愛知県の合唱団みたいに、ことあるごと全部の学生団に祝電出すっていう習慣はないんですね。それぞれ仲の良い団が中心というか。まぁ、出し過ぎても仕方ないですし、関西圏広いですから、ねぇ笑
エゴラドから祝電が届いていたのが印象的でした。あちらのプログラムもよかったんですよね……興味あった。知り合いがオンステしてましたし。

第2ステージ
阪神淡路大震災20年 追悼ステージ
臼井真(arr. 松下行馬)「あじさいを咲かそう」(坂本繁)
菅野よう子(arr. 北川昇)「花は咲く」(岩井俊二)
臼井真(arr. 川上昌裕)「しあわせ運べるように」
指揮;和田爽良(学生)
ピアノ:中村一輝(学生)

もともと神大という柄からして、神戸出身が多いわけでもありませんし、まして今年の1年生は現役ならば確実に全員、震災を知らない世代ということになります。もっとも、僕とて、小さい頃からずっと名古屋にいたので覚えてないんですけどね。震度3は揺れたらしいです。この時神戸に住んでいた同期は、今でもよく覚えていると証言することが多いですね。しかし、神戸にいるからには、知っておかなければならない曲がある、ということでのステージ。時の流れと、記憶の継承。ちなみに、2曲目アレンジの北川昇先生は神戸出身だそう。
1曲目は、全体が平板な表現になってしまったか。フレーズの膨らみが均質で、どのサビも同じように聞こえてしまった、というのは残念です。その影にある心境の変化をうまく表現したかった。「あじさいコンサート」というイベントの全体合唱曲だそう。2曲目は、北川昇アレンジということ、そして、むしろ馴染み深い震災のキャンペーンソングだということもあり、とてもよくまとまっていました。美しい!ピッチが揃うことが、北川音楽の一番の表現です。3曲目は、演奏云々通り越して、しみじみしながら聴いていました。神戸が乗り越えてきたものと、これから創りあげていくもの。世代をも乗り越えて、これから、受け継がれていく思いが、この曲に描かれているというかなんというか。よく表現されていたように思います。しかし、ソプラノの旋律は、今ひとつ踏ん張りたかったか。

インタミ15分。ひたすら、ロッカーの両替のために買ったりんごジュース飲んでた記憶が←

第3ステージ
Federico García Lorca の詩による合唱曲
Whitacre, E.「With a Lily in your hand」
Rautavaara, E.『“Suite” de Lorca』
「Canción de jinete」「El Grito」「La luna asoma」「Malagueña」
信長貴富『無伴奏混声合唱のためのガルシア・ロルカ詩集』(長谷川四郎/訳詩)
「1. ギター」「5. 傷口の最後の詩」「6. さらば」
指揮:和田爽良

自身のメインステージで、このような、しかも、詩人個展というステージを準備するセンスと勇気。ステージとして非常に秀逸なプログラムだったと思います。ガルシア・ロルカ、たしかに名前は聞くけれど、こうやってまとめてみると、また一つ、新鮮な感覚を覚えます。どことなく、刹那的な詩の多いような印象ですね。国籍でみても、スペイン人の詩に、アメリカ、スウェーデン、日本と、非常にバランスが良い選曲だったのでは。でもって衣装は黒カッター黒ズボン。コンクールによく出る合唱人にとっては「クロクロ」と唱えれば通るくらいに有名な組み合わせです笑
ウィテカー。またしてもピンスポでスタートです。「O, Oh my love, la la!」と歌う間に明転。にくいねこのやろう← で、ラウタヴァーラ。曲がすごくいい曲でびっくり。またじっくり聞きたい。で、信長。ああ、これぞ信長!リッチなパート構成とリッチな和音でガンガンハモる、そしてその和声を捉えるのはこのホールは上手いんだっ!
……と、演奏面について何も書いてないんですけど、どういうことかっていうと、指摘する点がもはやないなって。びっくりしましたし、感動しました。最初のウィテカーから、機動性あふれるいい演奏を聞かせてくれて、表現もバンバンうねらせて。もう外国語がカタカナとか目を瞑る(あるやん指摘するところ←)。素晴らしい。ラウタヴァーラのポリフォニーから縦に揃うtuttiへの入れ替わりの瞬間の音の鳴り方もゾクゾクしちゃいますし、そして信長を鳴らすなんてこの団は朝飯前(先生に失礼←)!次に出てくる音がこんなに楽しみな演奏、本当に久しぶりでした。某ジョブスよろしく、顎をつねりながら聴いていたら、演奏終わる頃には親指がつっているくらいにすごかった(意味分かんないかもしれないけど実話)! 演奏後ブラボーしたのは自分です←

再びインタミ10分。まぁ、次へ向けてのアイスブレイクにはおあつらえ向きです笑

第4ステージ
ヨーゼフ・ラインベルガー『Messe in Es op.109』
指揮;本山秀毅(客演)

巨匠のお出まし。曲も、このプログラムの中では古典。最近、若い世代の団がこの時代の曲やること減りましたね。気のせいかしら? どのみち、人のことは言えないが。
前半は白に黒スカートだった女声は、クロクロを経て白のロングワンピースにお召替え。あら素敵。学生団だとここまでガッチリとドレスを着ることも少ないような。卒団生はコサージュってのはおなじみですね。
もちろん、この前のステージの名演があるからして、何の心配もなく、落ち着いて聞いていることができました。ただ、二群であることに加えてミサ曲、それも、特に Gloria と Credo は長さには定評があるので、その点、中々体力を持たせるのが大変だったか。テナーが他のステージと比べて力んで聞こえた気がしたのに加え、Benedictus ではソプラノがハスキーだったか。また、Credo で特に、入りの弱さが気になりました。本山先生の指揮の含意は、もっと深いところにあるような気がします。やや反射で捉えていなかっただろうか。しかしそれにしても、/u/の深さと響きの美しさ、Sanctus の男女の交唱、そして Agnus Dei の終末の美しさなど、この団の良さは存分に出ていました。大変な曲を、本山先生にも導かれて、よくぞ歌い切りました。
更に言えば、はじめてこのホールを憎みましたね……もっともっと響かせてくれないと!笑

・アンコール
本山:「見上げてごらん夜の星を」(arr. 若林千春)
指揮者:千原英喜「我が抒情詩」(『コスミック・エレジー』)
「見上げてごらん夜の星を」は初めて聞くアレンジ。聞くところ、未出版だそう。二群のままで演奏。しかも編成も二群。アンコールであることを忘れさせるくらいの集中力の高い演奏! 特に「見上げてごらん」の中間部で、弦のピチカートを模した部分があるんですが、その表現の繊細なこと繊細なこと! ポップスで唸った作品は、どうでしょう、『アニソン・オールディーズ』以来でしょうか。で、ご挨拶を経て、団員アンコール。中間部の熱い指示に団員が全力で応えていたのが印象的です。仲がいいんだなぁと思わされます。つくづく。

・ロビーコール
「Ride the Chariot」「夢見たものは…」「狩人アレン」
最後の曲は、初めて聞いた曲。話によると、アポロンの定番曲だそう。でもって、アポロンで第1回から歌い継がれていて、おそらくアポロンオリジナルとのこと。いい文化じゃ。
らいちゃりのソロをどんどん回していくスタイル、団員のみんなの笑顔が印象的でした。そして、ここでもやっぱり音ははずさない。さすが。最後は「総員撤収!」の号令でササッと舞台裏へ。もう午後8時超えてましたからね。午後9時までに現状復帰がルールです(たぶん)長丁場お疲れ様でした。

・まとめ
団員から宣伝を受けた、また、前来てもらったお礼、っていうのは事実だったんですけど、それを凌駕して、アポロン聞けてよかった!って心から思いました。何かと、学生団で人数が多いと大体なる音に想像がいくのが普通なんですが、今回はそれをいい意味で、とてもいい意味で裏切ってくれました。心から音楽をしているその音に陶酔することが出来たのは、本当に、来てよかったと心から思えるものでした。同時に、自分も負けてられないな、と、色んな意味でギアチェンジしてくれる、そんな演奏会。なんだか歳下から励まされるっていうとかっこ悪くみえますけど、しょうがない、彼らが心の底からカッコ良かった! 今回に限らず、これからも、どんどんと躍進を重ねていってください。応援しています!

「まもなく、津、津に到着でございます。」あ、わたべは名古屋下車です。
なおこの後、更新作業の間に津は過ぎた模様←

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