おおよそだいたい、合唱のこと。

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主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
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2014年7月5日土曜日

【第53回明立交歓演奏会】

2014年7月5日(土) 於 杉並公会堂 大ホール&YouTube LIVE&ニコニコ生放送

かがくの ちからって すげー!

いまじゃ ネットはいしんで ぜんせかいに えんそうかいを とどけられるんだと
(ネット配信協力:東京コンサートシステム、NTT東日本フレッツ光)

そんなわけで、今日は珍しく、ネット生放送からレビューを起こしてみようかと思います。ちなみに、相手がライブ配信ということで、こちらもライブ配信で書き連ねてまいります。果たしてどうなることやら。中継途切れることなく無事見切ることが出来るかしら。

御託:いつからか、というのははっきり記憶しておりませんが、明治大学グリークラブ(明グリ)が、こういった演奏会のネット配信をはじめて、以下、明グリが絡む演奏会は大体ネット配信されるようになっています。時折音声や動画が途切れたり、そもそも音質が悪かったり、会場にいた人が若干そんなんじゃないかとか色んな声が聞こえてきているみたいですが、概ね好評の様子。かくいう自分も、支持派です。なにより、男声合唱音楽へのアクセスを容易にするという意味でとても良いですし、演奏家としても、衆目に触れる形での演奏というのは、叱咤激励を通して成長する良い機会になると思います。ほら、僕みたいに変なことやりだす人間も出てくるわけだし笑
四連同様、この時期のジョイントコンサート文化を支える重要なジョイントの一つですね。回数も53回と、どこぞの合唱祭と同じような重ねています。すごいもんだ。立命館大学メンネルコール(立メン)は、歴史のある男声合唱団としてしられています。歴史数えて実に60年とのこと。いやはや、素晴らしい。彼女作りたいという質問に無慈悲な回答で合唱に誘う、非常に歌に対してストイックな団だという印象でおります。明治大学グリークラブは、Twitter界では非常に名の知られたツイ廃集団です。深夜のお散歩を実況中継したり、はては自大学の別サークルがやらかしてしまったことをネタにしてRT数を稼いだりする中々出来る集団です。たまに生放送配信したり、ブログ書いたりと、まさに、インターネット界期待の寵児であります。どうやらTLをみていると男声合唱も熱心にやっているらしく、今日はそのお披露目の機会だそうです。……ん?笑
なお、彼らの名誉のために申し上げておくと、立メンは、廣瀬量平『五つのラメント』、明グリは、多田武彦『雨』などをそれぞれ初演した、実に由緒正しき男声合唱団であります。

・ホールについて
僕はこのホールのことをよく知らないので皆さんネットで各自勉強して下さいね☆
響きが良いと評判だった記憶があります。

第0ステージ
エール交歓
Rits:やや上昇音型の勢いに欠けるか。トップに蓋の付いているような、響きの最小上界。ただ、響きの作り方、発声、和声、いずれも好感の持てる快演。
MG:内声の地声感が気になる。加えて、高い音から入るフレーズで決然さがない。決まるべきところは十分決まっている。まっすぐで良い。
演奏は同点。いずれもよく、今後の快演が期待できる演奏である。

第1ステージ
明治大学グリークラブ「友よ」
水野良樹「YELL」arr.鷹羽弘晃
佐藤賢太郎(Ken-P)「前へ」
安岡優・松下耕「言葉にすれば」安岡優)
指揮:岩倉克樹(学生)
ピアノ:松元博志

互いのアラカルトステージから入るこのステージ。まずは、ポップス系の曲で攻めていくツイ廃……じゃなかった明グリ。「YELL」の編曲者は「手紙」などの編曲でも有名ですね。休符が指定されているのでしょうか。各音止めるのが早く、フレーズが短く聞こえるのが惜しい。トップに対して内声がデカイのは、どちらが調整すべきか。多分トップでしょうが。2番のリズムパートの主従の作り方などは見事。歌詞と楽譜をともによく読めていて印象良いです。大サビが興奮しすぎてやや崩れたか。「前へ」トップの弱さが前半で出てしまったか。支点を失ったアンサンブルがやや散ってしまった印象。その後、しっかり盛り返しました。強弱の設定はお見事。よく研究されている。「言葉にすれば」彼らの一回り上の高校合唱人にとっては定番中の定番。翻って合唱人のマスターピースへ。音取りなしで臨んだところ、しっかりハマっているのは素晴らしい。その後も、全般的によく決まったハーモニーを聞かせてくれました。サビでリズムがズレて言葉が間延びしがちになってしまう曲なのですが、その点もよく克服されていたように感じます。ステージ通して、なにより、生放送特権か、学指揮の丁寧な仕事ぶりが正面から垣間見れたのもよかった笑快演でした。
こういう、ポップス系のステージの、曲間拍手は、難しいですね。結局はその場の「空気」なんでしょうが。

第2ステージ
立命館大学メンネルコール「メンネルと黒メガネの指揮者~ありのままの姿見せるのよ~」
湯山昭「日まわりの歌」男声合唱とピアノのためのディアローグ『流氷のうた』より(阿部保)
千原英喜「もう一度」「明日へ続く道」男声合唱組曲『明日へ続く道』より(星野富弘)
鹿紋太郎(arr.朝倉正一郎「やっぱ好きやねん」
指揮:内山倫史(学生)
ピアノ:上野順子

「日まわりの歌」浅学な私なぞは、湯山昭というと、「ゆうやけの歌」が思い出されます。激しい曲調の変化を、惑わされることなく、忠実に再現しきれていたように思います。子音がよく飛んでいたのが印象的。音楽としてもよく流れていました。『明日へ続く道』かつてのNコン課題曲。特に「明日へ続く道」が組曲化に際し大きく改訂されました。「もう一度」最初の和声がぼやけてしまったのが惜しい。その後はよく表現できていたか。ところどころ、パートソロを喉で押してしまっているような声が聞こえたのは留意。メロディ、トップもっと頑張れ。こここそ、押してでも表現しなければなるまい。「明日へ続く道」冒頭のピアノの、イン・テンポでのあっさりとした決然さ、非常に好感の持てる名解釈(偶然の産物だとしても)。前半部から中間部へ遷移する際の和音、内声が飛び出すぎたのが脳裏で印象を引きずる。速いテンポ解釈に負けずに、滑らずに演奏しきれているのはお見事。「やっぱ好きやねん」歌詞に対してややむさ苦しい爆せっかくのネタ枠なんだから、動け、とも言わないが、もっと大胆に表現しても誰も(?)怒らないはず。ハーモニーをキレイに納めるという第一条件をクリアしているのだから、ガツガツと表現する勇気を。その「キツく抱いてよ」では誰も抱いてもらえへんで!w
ところで、「アナ雪」はやらないんですか?w

インタミ15分。チョコでも食べよう……笑

第3ステージ
明治大学グリークラブ
新実徳英・男声合唱とピアノのための『花に寄せて』(星野富弘)
指揮:佐藤賢太郎(Ken-P)
ピアノ:松元博志

前半のお楽しみ感とは打って変わって、各団の本気が試されるステージ群。特に観客からの目線も厳しくなるのが常です。個人的には、Ken-Pがいつもの真っ黒赤ネクタイで日本語曲を振るというだけで新鮮な驚きを感じます。「たんぽぽ」内声の音の迷いが気になりますが、他方で、主旋律、副旋律の描き分けが非常に鮮明に現れた演奏。何より、Ken-P織りなす空気感が素晴らしい。「ねこじゃらし」もう少し軽い演奏が聞けると良かったかもしれない。ややこの強弱は、楽譜に「張り付いて」しまっているような。より楽譜から自由な表現を試みられたい。裏でオブリガードがややズレたことにあえて言及。「しおん」語頭を強く、というKen-Pの指示(が多分ある)を浅い所で解釈してやいないか。ヴォカリーズの表現に重みが見られたことが、この曲の消化不足感を想起させる。音は非常に忠実である。「つばき・やぶかんぞう・あさがお」このイントロいいですよね……笑 頭のユニゾンをしっかりハメてくるポテンシャル。モノフォニーは時にポリフォニーより難しい。この曲は上手く消化できていた。最後のヴォカリーズも、よく耐えた。「てっせん・どくだみ」低声のヴォカリーズが何か、低い所でうごめいているように聞こえて鮮明さを欠いた。もう少し、旋律を歌う声に優しさが欲しい。救いを。後半の収まりは非常に良い。「みょうが」高声、もっとちゃんと揃えたい。歌い上げる終止和音は聴き応え十分。「ばら・きく・なずな−母に捧ぐ−」トップがこんなに無邪気に歌う歌なのだろうか。全声に言えることではあるが、声が生のママなのはやや気になる。これはこれで聞けるのだが。中間部のユニゾンは、もっと揃えるという心意気を。終曲として、捧げ物としての十分な落ち着き。後半からは、満足の行く音が鳴っていたのではないか。最後の和音にこの曲全体にわたる救いを感じる。
しかしまぁ、この指揮姿、惚れる人が多いのも納得だわ笑

第4ステージ
立命館大学メンネルコール
佐藤眞・男声合唱のためのカンタータ『土の歌』より(大木惇夫)
指揮:山口英樹
ピアノ:上野順子

奇しくも、この時期にこの曲をやるということ。といっても、この曲、2011年震災直後に再演されたりもしているので、そもそも再演回数が多いだけ、という話もありますが笑 合唱をおやりでない皆さんも、終曲「大地讃頌」はご存知かと思います。「土」を通して垣間見る、反戦への祈り。男声版の成立はつい最近。2008年です。見譜。「農夫と土」主客の逆転が主題部で見られたのが気になります。あくまで抒情詩として淡々と。そのあっさりとした演奏も、また乙。さらっと進んでこその魅力のある曲。「祖国の土」音量。もっとあってもよいのでは。いや、これ以上は厳しいか笑 ところどころ、入りがミスしているように聞こえるのが気になる。勢いの中に冷静さを。「死の灰」前半の、疲れの抜け切れていないような音作り、「文明の不安よ」の入りのボリュームがやや大きいこと。細かいところが曲全体を支配する。呪の音作りにしては若いか。再現部の音作りは評価出来る。「もぐらもち」なんと止まっている間にリロードしたらバッファの都合で聞けず。一番好きな曲なのに。なんてこった。「天地の怒り」前半は良く揃いきっていたか。「Wow Wow」部のパートバランスならびに音程は再考の余地あり。テナー、より突き刺さる音を。そして、強い曲だからこそ、弱音により配慮を。「地上の祈り」出だし強い。より繊細に。中間部は及第点。鳴るべきベースが良く鳴っている。「大地讃頌」組曲を通して演奏すると解釈が変わる、童謡「シャボン玉」のような曲。前節までをよく捉えた解釈になっていたのではないか。演奏としても、迷うことなくしっかりと響かせきった。安心して聞くことの出来る、祈りの終曲。……後半、やや和声ぶれましたけどねw
ただ、全体として表現が若かったか。山口先生の指揮が安定していただけに、もっと応えきれたのではないか。

インタミ15分。

第5ステージ
明治大学グリークラブ・立命館大学メンネルコール
多田武彦・男声合唱組曲『わがふるき日のうた』(三好達治)
指揮 佐藤賢太郎/Ken-P

男声合唱、珠玉の名曲。叙情的で美しいメッセージ性と高い難易度が、数多くのグリーメンを魅了し、そして翻弄してきた。1977年、明治大学グリークラブ初演曲。歴代の名曲を、Ken-Pという、アメリカで修行した新進気鋭の指揮者が振る、歴史の偶然。乃至必然。音取りは音叉。「甃のうへ」頭の進行はもっと明瞭でもよかったのではないか。全体として音の明るい団のジョイント、この曲向きといえるのではないか。とはいえ、「をみなごに花びら流れ」がやや浅いか。音の円熟が欲しいところである。「湖水」解釈の問題。やや重いテンポ使い。それに引きずられるように冒頭の音もはっきりとしなかったのがよりネガティブに鳴ってしまったか。高音の弱さがどうしても気になる。「Enfance finie(過ぎ去りし幼年時代)」和声を積む冒頭、僅かな音のズレ。極限の緊張感を。中間部「約束はみんな壊れたね」以降、の叙情性、いつまでも聞いていられる美しさ。ソロ、Bravo. マクロの完成度は非常に高い。「木菟」Ken-Pの指揮とも良く合った、軽い入りに好感。より/m/を飛ばしても良かったかもしれない。中間部の美しさよ!「郷愁」出だしから洗練されている。後半に行くにつれ洗練されていくアンサンブル。広がる和声に対して過剰に華美にならないのもまた、洗練された演奏の証左。残る音に対して乗るメロディの雰囲気がちょうど一致しているこの快感。「鐘鳴りぬ」楽に出ているようで、この音圧、そして、適切なバランス。完璧。中間部出だしにもう少し繊細さこそ欲しい所だが、最初の印象は、重く、重要である。「われは征かん」以降の重めのテンポ設定、個人的には好感が持てる。なにより、後半との接続がこのテンポだと焦らなくて良い。しかし、主題、トップ、もっと頑張りたかった。ここまできて、それは、惜しすぎる。「雪はふる」ここまで名演を重ねて、この曲にいうことこそあるまい。降るべくして、雪は降るのである。迎えられるべくして、名演は迎えられるのである。ソロがここまで叙情的に歌い上げられるのであれば、そして、切々と合唱が和声を積み重ねられれば、それ以上のものは、いらないのである。
この曲でちゃんと歌詞が聞こえてくるというのは、最低条件にして、Ken-Pに振られるべくして選ばれたような気もする。抜群の相性であった。
(だからこそ、「鐘鳴りぬ」の主題……)

どうやらセレクションがあった模様。

・アンコール
佐藤賢太郎(Ken-P)「僕が歌う理由」〈初演〉
指揮:佐藤賢太郎
うってかわって爽やかな和声。まさにこの声質に、そしてこの年齢の団によく合った曲です。まるで、『わがふるき日のうた』に対するアンサーソングのようにも聞こえます。演奏にも過誤なく、非常に素直に聴くことが出来ました。素晴らしい演奏会の締めくくりに。Bravo。

・ステージストーム
学生(明グリ)「斎太郎節」
「そこそこ」楽譜に忠実な演奏笑 何時聞いてもいいですね、この曲は笑 言うことはございますまい笑
学生(立メン)「Ride the Chariot」
こちらも、ご定番中のご定番。演奏の巧拙にいうことはない。というか、歌い慣れの都合、ここらへんの曲の方が完成度が高いこともしばしば……笑今回は、そんなこともなく(!?)どちらも大満足です。

配信はここまで。もちろん、ロビーストームは会場の皆様だけのお楽しみです笑

・まとめ
全体としてとても充実した演奏会でした。ジャンルとしてカヴァーしていない範囲は宗教曲程度ですし(否、『土の歌』は如何せん……?)、また、特に後半3ステージは、男声合唱名曲総覧のような充実したプログラムでした。実力としてはいずれも均衡した団二つだからこそ見せられる、単独演奏会にも比肩する充実の「音声」。これぞ、まさに、この時期のジョイントの魅力と言えるのかもしれません。何より、ストリーミングをして伝わってくる、演奏の圧力!細かい所に過誤こそあれ、それを全体評としては無視してよいでしょう。素晴らしい演奏会でした。とくに「わがふるき日のうた」は絶品!現代の名演を生み出してくれたようにすら感じています。しかし、それにも増してこの生放送、私達はよい時代に生まれました笑 ただ、回線の都合、どうしても、途切れてしまう(しかも大抵いいところで!)のは、残念。それこそ、会場行けという話ですかね。なお、レビューとしては、生よりも若干厳しいことを書き連ねる傾向にあるようです、この期に及んで勝手申し上げるようでなんですが、ご理解いただければ幸いです。
ちなみにKen-P、明日も演奏会ですね。しかも名古屋。大変だ……ご盛会を笑

・追記
「レビュー生放送」にお付き合い頂いた皆様、ありがとうございました笑

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