おおよそだいたい、合唱のこと。

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主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
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ゆっくりしていってね!!!

2014年6月24日火曜日

【第63回東西四大学合唱演奏会】

2014年6月24日 於 京都コンサートホール 大ホール

大阪在住ですけど、この日、京都に宿泊しました。どうしてでしょうね……(遠い目
行きの阪急は、新1000形でした。めちゃ快適ですねアレ。素晴らしい車両だ。
さて、そんな中で行ってきました。調子乗ってS席購入したら、関係者席の次にいい席で聞けました。お金出してよかった。

・演奏会について
おそらく、世界的に見ても、同じ団同士のジョイントコンサートでここまで回数を重ねているものはないのではないでしょうか。普通にギネス狙えますよ、これ笑
合唱人界隈では「四連」というだけで話が通じる程に有名な演奏会。福永陽一郎=同グリ『月光とピエロ』などを始めとする、あまりにも有名な名演を数多く残してきた演奏会です。
毎年、早稲田大学グリークラブ、慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団、同志社グリークラブ、関西学院グリークラブの4団体が集い、歴史に名を残す名演を繰り広げる演奏会。何れも、男声合唱の世界では、歴史も長く、実力もトップクラスの団なので、ジョイントコンサートながら、単独演奏会並の重要度を持った演奏会です。チケットも非常に売れ行きが良い。今回は空席が出ていましたが……時代でしょうか。

・ホールについて
京都のホールには馴染みがなかったですが、入った瞬間、「ああ、ここかぁ!」と納得笑
「世界合唱の祭典 京都」なんかでも利用された由緒正しきホールですね。
建築意匠からして美しく、重厚かつ凛とした美しい佇まいに、ホールへと続く螺旋構造、十分に広いホワイエ、そしてきっといい音が鳴るであろうオルガン(聞いたことはないので……笑)、そして、完全に整ったコンサートホールながら、上手い具合に団旗を架けられるバトンがあるあたり、まさに四連向けな名ホールです。響きも、無理なく控えめにしっかり響く、まさに理想中の理想とも言えます。ホールの客数に対して小さめな構造なので、音量も潤沢。加えて、貴賓席なんかもあるので、ひょっこり皇室の方が来られた際も安心です。さすが京都笑。一般席も、席の硬さがちょうどいい笑
なにより特徴的なのが、半円形のひな壇。必然的に響きが中心に集まってから拡散するので、よく合ったアンサンブルに対しては非常に良い音を返してくれるホールです。加えて、このひな壇、入退場の動線がとても美しい!一度中央へ寄ってから踵を返し、ひな壇を上がる……舞台上での動きがかくも美しくなる構造というのは、初めて見た気がします。京都府民羨ましい。

0, エール交歓
早稲田:声量が豊か。ホールをちょうどよくならせていました。
関学:やや響きに欠けたか。揃い方は申し分ない。
慶應:発声が格式的(ご定番)ですが、団内でよく調和する。
同グリ:所謂主管校。やや細かい部分が揃いきらなかった。
お客様の反応は、さすがに、同志社が圧倒的で御座いました笑 曲もいいですしね、ふぉーがっ!ふぉーどーししゃっ!

1, 早稲田大学グリークラブ
多田武彦・男声合唱組曲『富士山』(草野心平)
指揮:松井慶太
1~4までが非常によかった分、5番が非常に惜しいと思わせる演奏でした。
出だしのピッチが終始不揃いなままだったこと、下降音程が妙にずれるとか、そういった程度で、それ以外、とても仕上がりのよい演奏が聞けました。だからこそ、5番目はもっとドラマチックに歌い上げられたはずです。前半4曲に比べて、スケールの小さい演奏になってしまったのが本当に残念でした。
松井先生は相変わらずの長身イケメンで(関係ない)、楽譜に忠実かつ明白な輪郭を持った鮮明な音作りをしていました。その意味でも、強弱設定には特に迷いがなかった。その意味では、合意の上だったのでしょうが、だからこそ、宇宙線富士だけはどうしても、もっと聞きたかった。
とはいえ、上述の意味で、良い緊張感に包まれた名演だったと、はっきり言えるような気がします。オープニングにしてエンディング、その意味では、あっさりと終わった宇宙線富士もまた機能的だったのかもしれません笑

2, 関西学院グリークラブ
新実徳英・男声合唱とピアノのための『ことばあそびうたII』(谷川俊太郎)
指揮:広瀬康夫
ピアノ:山形明朗
弱音で音がブレる、そんな弱みが2曲目に顕れてしまったかもしれません。
素晴らしい緊張感、刺さるような音の応酬に始まった1曲目につづく2曲目。1曲目冒頭でも感じましたが、弱音部での音の微妙な揺らぎが、曲全体の緊張感を支配してしまったかもしれません。
例えばトップがごくわずかに弱いことだったり、下3声の和音がごくわずかに噛み合わないことだったり、ほんの僅かな詰めの甘さが、曲の持つ独特の緊張感を壊してしまったのは本当に惜しいと言わざるを得ません。
広瀬先生、腕を怪我されているのでしょうか、左腕一本で振りきりました。音量については、特に完璧だったように思います。

インタミ15分。ホワイエのラウンジが大盛況でした笑
関西はいいですね。いずみホールもそうですが、ラウンジの場所が良い。愛知県のホールはラウンジが意味不明な場所にあることが多いので……

3, 慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団
Francis POULENC
“Laudes de Saint Antoine de Padoue”
“Chanson à Boire”
指揮:佐藤正浩
そつなく演奏をこなしきれていた印象。
特に目立ったアラがあるわけでもなく、特に、1曲目のベースなど、構造的な特徴がよく描写されていました。もっとも、語尾の処理など、もっと出来る部分もあるだろうとは思います。発声に対しても、特徴的だとよく言われるものですが、よくハモっていたことで非常に好印象でした。佐藤先生の厳しいリハーサルの跡が感じられる名演でした。
対して、5つ目の“à Boire”、酔った様子が非常に的確なことなど笑、色んな意味で完成された演奏でした。ただ、この曲、やはり語尾はもう少し丁寧に表現すべきだったかもしれません。
いずれも、良い意味でよく流れた演奏でした。一番よかったかもしれない。

4, 同志社グリークラブ
三善晃・男声合唱とピアノ(四手)のための『遊星ひとつ』(木島始)
指揮:伊東恵司
ピアノ:荻原吉樹・平林知子
正直、課題の残る演奏となってしまいました。
セカンドが十分に鳴っていないこと、トップが荒いこと、縦が揃っていないこと……論えば、いろいろ出てきてしまいます。むろん、実力がある団だけに、音は当たっていたとは思います。しかし、正直、音楽として成立していたかは疑問視せざるをえない演奏です。
名演になるか、駄演になるか、究極の二択を迫るのが、この曲でもあります。だからこそ、どうしても私達は名演を期待してしまいます。伊東先生の指揮も、いつも以上に気合が入っていたと見受けます。いち三善ファンとして、という意味でも、この団には、より、この曲の高みへと挑んで欲しい。未来を期待する意味も込めて、ここでは、残念だった、と言っておきたいと思います。コンクールの自由曲にも採用とのこと、是非、今後研鑽を積まれたいと思います。
なお、ピアノおふたりとも、非常に素晴らしかったと思います。なにより、相性が素晴らしい!

インタミ15分

5, 四大学合同演奏
北川昇・男声合唱組曲『まだ見ぬあなたへ』(みなづきみのり)
指揮:伊東恵司
ピアノ:水戸見弥子
さすが作詩者の指揮ですね!非常に、四連らしいサウンドが聞けたような気がします。
大声だけで押すのでもなく、数の力で乗り切るのでもなく。丁寧かつ大胆な演奏が光りました。ともすると、流れてしまいがちな曲ですが、和声を要所で収める力、そして、subito piano のキレのよさで〆る場所がよく〆られた名演でした。
もっとも、急激な変化以外にはどうしても乏しい部分はあったような気もします。旋律中心の曲である点、どうしようもないことかもしれませんが……。3曲目、5曲目の迫力は、四連ならではなような気がしています。

・アンコール
北川昇「翼」(みなづきみのり)〈男声版初演〉
指揮:伊東恵司
うってかわって、和声的に構築していく、感動的な一曲。実力の十分揃ったあの大人数でハモられると、大迫力です。特に今回、ホールが狭いので、ハモった時のボリュームが甚大なんですね。正直、ステージが狭いくらいなので、ガンガン鳴ってくれました。ああ、男声合唱って、よい笑

・ストーム(曲情報提供ありがとうございます!)
四連を聴きに来る人は、ココらへんをもっとも楽しみにしてくる、とか←
W・斎太郎節:ややテンポがユル目の演奏。とはいえ、この楽譜無視な強弱、これでこそワセグリだ!w
KG・U BOJ:うぼいうぼい!細かいところに技術を感じる、良い演奏でした。
KO・Trinklied:やや気が抜けてしまったか?主題部がハメきれませんでしたが、1番中間部から盛り返しました。
D・O Sacrum Convivium:意地を魅せてくれた!特に後半、良いハーモニーがはまっていました。

・ロビーコール(曲情報提供ありがとうございます!)
斎太郎節、Ride The Chariot、Slavnostní sbor、最上川舟唄
男声合唱のご定番曲の並ぶ演奏。個人的には、その日さいたら3回目、らいちゃり2回目でした(大阪府合唱祭の影響で……w)
もう、巧拙関係無いですし、飽きるほど皆さんが歌って来た曲。何の申し分も無い出来でした。スメタナは、ホールで聞きたかった!笑

・総評
さすがに、全体としてとてもレベルの高い演奏会でした。ただ、もともとレベルが高いことが「要求されている」演奏会だけに、ただレベルが高いだけではどうにも評価されづらい、中々主催者にとって厳しい演奏会であるのも事実かと思います。
甘えていられないんですね。よりよい演奏で伝統を塗り替えていくためには。
伝統が「権威」になってしまうと、それは、演奏そのものの死に繋がる。中々恐ろしい世界です。ただ、アマチュアで、なおもその緊張感に包まれて演奏活動を続けている学生の男声合唱団というと、もはや四連ぐらいではないでしょうか。
もちろん、それ以外の合唱団を否定するつもりはさらさらありません。ただ、他方で、なおも四連がリーダーであることにかわりはない。
だからこそ感じるプレッシャーというのは、おそらく中にいる(いた)人でないとわからないと思います。ライバルは過去の音源、しかし、その音源は、今もなお日本一の演奏と呼ばれて久しいものばかりなのです。客席には、その、日本一の演奏をしたOBたちが難しい目をしてステージを見つめている。最早、身内も敵である。
その中で今もひたむきに演奏を続けている点、それだけで、十分賞賛に値します。
今回のレビュー、各団の演奏に対しては、かなり厳しいことを書いたつもりです。しかし、これでもまだまだ全然甘いのではないかと思います。もっと厳しいことを言い募る人は、いくらでもいるでしょう(実を言うと、もっと厳しいことも書けたりします)。
ただ、そのどれもが、今後の男声合唱の発展のためにあることを、どうぞ諸氏忘れることのないよう、今後の演奏につなげて行かれることを希求してやみません。

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