おおよそだいたい、合唱のこと。

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主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
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ゆっくりしていってね!!!

2013年8月31日土曜日

【東京混声合唱団いずみホール定期演奏会No.18】

2013年8月30日 於 いずみホール

〈予備知識〉
東京混声合唱団:日本を代表するプロ合唱団。桂冠指揮者・田中信昭の創団時の方針もあり、日本人作曲家による委嘱作品をこれまで多く扱い、日本の合唱シーンに与えた影響は計り知れない。なお、アメリカの Chanticleer と並んで、団員に月給が出る、世界的にも数少ないプロ合唱団でもある。

さて、せっかく大阪に住んでいるからには、外せない公演のひとつ。

チケットどうしようかなぁと思っていたところで、ある日、郵便受けにハガキが。

しかも、住所がラベルシール。一体何のハガキ?と思ったら。

《ご招待・東京混声合唱団いずみホール定期演奏会No.18》

ふおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?

実は、名古屋演奏会の以前から度々こういったご案内を頂いてはおりましたが、いずれも東京の定期。前回の大阪定期の招待状も戴いたかもしれないものの、当時は名古屋在住。

まさか、こんな栄誉にあずかるとは……

ということで、愈プロの楽団の招待状受付を使用するに至りました。ちょっと手が震えました。

ハガキと引き換えに返ってきた券はS席相当。ソプラノ寄りの、真ん中の通路挟んで2列目。非常に素晴らしい位置で聞かせていただきました。

ここに改めて、事務局の皆様、殊K様に心から御礼申し上げます。会場でご挨拶出来ず申し訳ありません。

そんなわけで、少し気合入れて書かせていただきます。否、そんなこというまでもなく、凄まじい公演でした。全て東混のために作られた(!)、新しいものづくめの演奏会です。

〈ホールについて〉
いずみホールについてはもう知っているよぉ、という方が多いかと思いますが。
とは言え、実は私、いずみホールのよさというものをイマイチ理解できないでおりました。どうも、音がふわっとして、どっかに飛んでってしまっているような感じがして。
でも、わかりました。あのホールのすごさ。
もっとも、推測に過ぎませんが、あのホールは恐らく、ホールの中央付近の音響を最大限高める音場設計をしてあるのだと結論するに至りました。実際、今日聞いた音の凄みは、ホールの音場というのも有ると思います。正直、いずみホールをいい席で聞くなんていう機会はこれまで殆ど無かったので。1番良くて後ろ寄り。でも、いずみ・サラマンカの後ろ寄りの席って少し高くなっているから見下ろす形になって実はあんまり音響良くなかったりする。
ホールのありがたみをヒシヒシと感じるに至りました。すごいわ。いずみホール。

〈観客マナー〉
実を言うと、一昨日の同志社金グリ立グリのジョイントコンサートは、凄く観客のマナーが悪かったのです。Twitter参照。
それに対して、今日のお客様方は、本当にマナーが素晴らしかった。もっとも、最初の曲が曲だった(後述)というのもあるかもしれませんが、一音一音聞き漏らさないでやる!という思いがヒシヒシと伝わってきた。凄く、音楽を聞くにはいい時間だったように思います。

〈第1ステージ〉
・小出稚子(1982-)『入れ子』(東混2011委嘱作品)
たまげた。
本当に、たまげた。
極度の緊張感の中、僅かな気息音がホールの音響を満たし、それが段々と広がってゆく。
席一つ、あるいは、足を組み替えることさえままならないような、そんな沈黙と、「赤子が発する」(パンフ)気息音、あるいは、「赤子をあやすときの」(同)リップノイズ、「そしてそのときの身振り」(同)の擬音化など、様々なモティーフが断続的に、刹那的に繰り返された後、最後にはまた気息音に収斂し、静かに曲が閉じられていく……。
端的に言うと、曲中、最後まで、ピッチの付いた音を鳴らさなかった。プロの声楽家集団でもある東混が、その最大の武器を使わずに演奏しきった。観客は、最初っからド直球の現代音楽に相当戸惑っている様子だった(正直、リスポンス的には最悪で、カーテンコールを呼び出すのが精一杯だった)。でも、少なくとも自分は思った。傑作だ、これが出来るから、東混なのだ、これが出来るから、東混は日本の音楽史を塗り替えてきたのだ、と。

とは言え、客席の誰も(そして自分も)、思っただろう。
次 は ピ ッ チ の あ る 音 を 鳴 ら し て く れ ! w w

〈第2ステージ〉
コンサートマスター・徳永さん(ぷー……)←ピッチパイプの音
ほっ(笑)
・池辺晋一郎(1943-)『窓の声、光の声〜混声合唱のために』(東混2012委嘱作品)
今度は打って変わって、東混で何度も発表している、池辺晋一郎作品。
やはり、東混、この年代の日本人作品は昔からお手の物です。勿論、メンバーは変わっているでしょうが、日ごろのトレーニングの成果が活きている。
テキストは小池昌代さんのもの。テキストを追うように、最初はランダムに発されてゆく音列が、段々と一点に収束していくように、だんだんと「わたしという小さな窓」へと纏まってゆく様子がよく描かれた佳作。
あえていうなら、東混特有、少し歌詞が聞こえづらかったか。しかし、なにより、和音を当てるのが難しい曲ながら、そつなくこなしてゆく。まるで、その和音であるのがさも当然であるかのように。
初めて聞いた曲なのに、何処か懐かしくも聞こえる、そして、何より、非常に安心して聞ける演奏でした。
とはいえ、現代曲であることには変わらない。観客はまだ反応を探りかねている様子。厳しいなぁ(笑)

インタミ20分。
前半所要時間はわずか30分。しかし、このボリュームこのプログラムにして、この長さは妥当だろう、という長さでした。
しかし、舞台には早速、次のステージへ向けて謎の黒い筒のようなものがセッティングされる。
さすが、期待を裏切りません←

〈第3ステージ〉
作曲家・酒井健治さんプレトーク。
大阪府池田市出身と堂々とチラシに書いてあった割には、幼年時には既に親の都合で兵庫県宝塚市の住民になっておられた様子。裏切られたー!w
また、この曲の着想は、大学時代にハマったフランス映画が元になったとのこと。とりわけ、「勝手にしやがれ」の最後のテキストに感銘を受けられたとのこと。なお、本人は、フランス映画が最終的にフランス行きを後押ししたとおっしゃっていた。
・酒井健治(1977-)『Je est un autre II〈私は他人であるII〉』(本公演委嘱初演)
事前情報にあったとおり、24声部曲を24人の選抜で歌い切るという、プロの技倆を贅沢に使い切る編成で乗り切られました。まずはそのポテンシャルに何より敬服。
で、肝心な曲ですが。総合力を求められる作品でした。1ステと2ステで見せた東混の2つの顔を総合させるような曲。孤立している和音を一つ一つはめる作業の先に一つの和音が浮かび上がる。そして、その分散した和音が、やはりひとつに収斂していく。私は他人である、という、何とも雲を掴むようなテーマのもとに。
プログラムとしても、前プロが上手く伏線として成立し、かつ、それを止揚する形で、より次元の高い作品に仕上げていくその姿。3ステージを通して、現代音楽家集団としての今の東混の存在を再確認させる傑作だったと思います。曲も、東混がやるべき曲、東混にしか出来ないような実験的かつ明確な形をもった作品でした。また聞きたい。なお、東京再演があるそうです。
個別のエピソードだと、第2曲のソロを歌われている時に、徳永さん(本日2回目の登場)が僅かな休符のスキに音叉を叩いてピッチを確認しているところにプロの凄味を感じました。コンサートマスター。あれこそ、アンサンブルをする、という点においての究極の姿勢なのだろうなぁ。
なお、黒い筒は、振り回して、反響のゆらぎを作っている様子でした。

〈第4ステージ〉
・若林千春(1961-)編『NEW 東京混声合唱団愛唱曲集「ローレライ」』Pf. 若林千春
東混のもう一つの姿。最近のこの手の東混が結構好きだったりします。
特に、松井・東混ペアは、今年、小学校巡回公演で何度もこの手の曲を合わせてきたであろう中。阿吽の呼吸で、すんなりと音楽が進んでゆきます。
編曲者の自作自演の、ちょっとジャジーな(プレイスタイルが)ピアノも相まって、とてもしなやかな、のびのびとした、東混の各団員の声の良さが最大限活かされるステージとなりました。前3つと比べても、上手く着地できていたのではないかなぁと笑
個人としては、「月の砂漠」(佐々木すぐる)の最後の方に出てくるような、カデンツとでもいうべき、東混がフォルテでガンガン協和音を鳴らすところとか大好きなんですよね。大人向けにも、もっとこういう公演増やして欲しいところ。もっとも、僕自身ゴリゴリの現代曲も好きなのでややこしいのですが笑
他、「アニー・ローリー」「峠の我が家」など、佳作。演奏会全体のプログラムの順序および選曲に心からブラボー。

〈アンコール〉
・翼をください(若林千春編曲)Pf.付
・となりのトトロ(若林千春編曲)a cappella
いずれも、子ども向け公演で「子どもたちに育てていただいた」(事務局Twitter)曲とのこと。手慣れたもの、といった様子、松井さんの指揮もさながらカルロス・クライバー。最後に楽しく終わることが出来ました。特にとなりのトトロは、普段の子ども向け公演の楽しさが伝わってくるような出来!ボイスパーカッションで隣の団員にちょっかいをかけ、トトロ扮した団員が飛び上がると衝撃でよろける、などなど、小ネタ満載でした。いいなぁ、小学生。あと、どっちも、アレンジがカッコ良かった。トトロとか人気出るんじゃないですかね。

〈総評〉
東混の総合力の高さを見せつけられたような気がします。特に最近の東混、物凄く調子がよいような気がする(以前がダメだったわけでもない)。今後共、東混にしか出来ない技で観客を楽しませていただきたい処。心から期待しております。

〈前哨戦〉
コメダ珈琲店・天満橋筋六丁目店
初めての関西コメダ。本当にコーヒーが20円高くてビビった。アイスコーヒーとエッグバンズを注文して2時間半ほど暇をつぶす。ええ、名古屋人ですもの。通り沿い、街中の店舗ということもあったものの、周りの客の回転率がコメダの割に異様に高くても、2時間はいないとコメダで元がとれる気がしない。しかし、接客の雰囲気が、喫茶店というよりカフェっぽい、悪く言えば媚びている感じでいかん。単純に、喫茶店文化が浸透していないんだろうなぁ。コメダのブランドイメージ定着は案外前途多難かも。あと、店が寒かったから単純に長居きつかった。その割には、無駄な思考は進んだ。これだからコメダはやめられない。もっとも、良さに気づいたのは学部のときくらいからだが。

〈メシーコール〉
九州博多ラーメン・一福
おかしい、水曜日もラーメン食ったはず……カネが飛ぶ……
演奏会の興奮冷めやらぬ中、かねてから気になっていた阪大坂下のどぎつい黄色をした看板の店(笑)へ。
フッツーに美味かった。個人的には、名駅の驛麺通りのやつより好き。ネギの味の濃さ、スープの甘さとコクのバランス、紅しょうがや高菜の安心する味、などなど。博多ラーメンなめてた。スガキヤと肩と並べる味を出せるんですね、アヤツは←
後は、今日は試さなかったが、にんにくが青森産らしい。全体的に素材を活かしている感じが伝わる。今度は最初麺硬め、次バリカタくらいで試してみたい。

シェアした画像は、東混さんのアップした、1ステの風景から。最初の衝撃は本当にすごかった。さらに、演奏以前の話を言うなら、松井さん、背、高っ!という、素直な印象は今も尚鮮明である(笑)

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