おおよそだいたい、合唱のこと。

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主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
やたら細かいレビューからノリツッコミまで、現状、合唱好きな方の暇つぶしには最適です。
ゆっくりしていってね!!!

2015年2月16日月曜日

【中部大学混声合唱団第36回定期演奏会】 


2015年2月15日(日) 於 熱田文化小劇場


さて、練習もあり、なんならもうすぐ本番もあり、ということで、名古屋におります。(少なくとも直接的には)このブログでは宣伝も身内レビューもしないつもり、ということで、中京混と「もうすぐある本番」のお話はパス。とはいえ、今週末は色々ありました……2日間連続で練習でしたし。ちなみに、今日は大学院2年間インクをつめ替えて使ってきたボールペン(原価100円程度)を落としてしまったみたいで、軽く激しくショックです……(´・ω・`)しかもこれを書いている途中も、気付いたら風呂で寝ていた。もうね、終わりはどうしようもない週末ってかんじですねw
なお、音叉もなくしたかと思っていたのですが再発見した模様です。よかった笑
その週末の終わり、ちょうど、練習場からほど近い熱田文小で中部混の演奏会があるってことで、久々に、名古屋ー!な感じの、「他団の」演奏会。何が名古屋ー!なのか、っていうのは、こう、あれですよ、色々、名古屋なんですよ(その割にあえてその点には突っ込まない←)。とはいえ、中部混、メンバー全員で頭でも打ったのか(ォィ)、名古屋でも、否、全国見回してもそうそう観ることの出来ないステージを繰り広げてくれました。

・ホールについて
名古屋では非常に有名なホール。もちろん、しらかわホールや、市民会館など、規模の大きくて有名なホールはたくさんあるのですが、このホールをはじめとする名古屋の政令区にそれぞれほぼ一個ずつある「文化小劇場」は、色んな意味で使い勝手がよくて、中小規模の大学合唱団が好んで使うのです。何がいいかって、まずは使用コストの安さ。この点の具体的なことは価格表を御覧ください←。そして、規模。たびたびこのブログに出てくる300~400人規模の客席を持つホール、というのは、これらの文化小劇場のことを指しています。これが本当に、他の地域にはなかなか見られないものです。小さくて200人規模、その次に500人規模、というのをよく見てきましたが、300人、400人というのは本当に中々見られない。そのコストの安さと規模感が、何より文化小劇場の重宝される理由といっていいでしょう。
それにくわえて、熱田文化小劇場は音楽専用ホールとして建てられ、文化小劇場の中でも響きがいいホールとして知られています。加えて、上の利便性から、場合によってはしらかわホールを上回る程の評価を受けているようにみえることもしばしば。とはいえ、そこは、多目的にも使えるように設計された市民・区民ホール。あくまで舞台と客席を分断する形で設計されているため、響きには限界があります。具体的には、残響はとても豊かなのですが、他方で、響きが舞台の方にのみ篭ってしまい、結果、音量としてはあまり返ってこないこと、また、客席側に鳴っている音も、ステージへ帰ってきた時にまた拾ってしまうようで、結果、響き方が必ずしも単一の音にならず、やや濁っているような印象を受けます。その意味で、「響いている気分」を味わうのにはいいんですが、本当に美しい響きを得るのは難しいというのが、このホールについての僕自身の感想です。やや、名古屋の学生団界隈では過大評価されている気がしてならないのでした。とはいえ、コストパフォーマンスという意味では至極まっとうなホールなんですけれどもね。抜群に安くて、気分だけでも残響は味わえる。それで、団を選ばないのもまた、このホールの特徴かもしれません。ちなみに、ロビーが大変狭いので、ロビコ如何に関わらず、終演後はロビーが混雑します。エグいです。
そういえば、予ベルを鳴らした後、普通照明を絞らないところ、7割まですべて絞っていました。回顧するに、中京混の時もそうだったような。これは、会館側の運用が変わったのでしょうか? 少し気になるところです。

指揮:山崎友花(学生)
ピアノ:近藤茂之

ほかにもうひとり指揮を振る予定だった子がいるそうですが、オンステキャンセル。あと、もう一人、団員がオンステキャンセル。ベースの、2ステではソロもやる子。そのため、演出が一部変更になった、とのこと。演出……? 本日は大体17人くらいでのステージだったでしょうか。

そして、なんと本日は奇跡の2ステージ構成! それなのに、堂々の2時間10分公演予定の案内! 何が起こるのか、もう、何が飛び出してきても怖くない、そんな気分でしかありませんでした笑 だって、2ステージ構成なのに、開場は5分遅れてたらしいし……笑

・第0ステージ
大中寅二「校歌」(佐藤一美)

さて、この団は、中々レビューが難しい団でもあります。というのも、歴代、所謂発声だとか、アンサンブルの流行という面からは「とてつもなく」かけ離れた位置にいる団だからです。団歌だけを見ても、発声はしっかりしていて、ユニゾンもいい、音圧は十分なんです。非常に響く声を出している。でも、ハモるとなると、途端に、どうしたんだ、となる。所謂、ハモってる!って感覚は正直得られないんです。各パートの出す音が対立しあっている。オペラを思い出していただけるとわかりやすいかもしれません。上手い歌手同士ではハモり合うことはあって、そういう瞬間はもちろん時折あるのですが、どうしてもコントロールし切れていないのか、完全にそういう状態に仕切ることはどうしても出来ない。他方、しっかりした発声と構築から、間違いなく音楽は進んでいく。下手にメッセージを気にするとお題目を唱えるまでもなく、全パート独唱してるので、そりゃもう、嫌でも言葉は聞こえてきます。ちなみに、以前聞いた時より上手になっているな、というイメージは持ったのですが、それにしても、他団と比べるということは上述の理由から難しい状況にあります。

さて、団長挨拶。これも珍しいのですが、この団は思い返せば、いつもこの時に団長挨拶をしていたような気がします。
運営上、中途退団者が続出したり、他色々あったりしたようで、「運営がうまくいかなかった」とはっきりと告白し、「この日を迎えられたことが本当に奇跡のよう」と表現した団長さんの姿、それは紛れも無く、1年しっかりやり通した団長さんの姿のように思います。オープニングのうちに挨拶を済ませておいたから、にっこり笑って「第一ステージの開幕です!」ってやることが出来るものの、これがエンディングに来てたら、これはもう、泣くしかなかったでしょうね……笑

第1ステージ
〜ロマン派の音楽を合唱で〜
G. Rossini(arr.富岡正雄)「信仰」(鈴木一郎訳詩)
G. Verdi「乾杯の歌」(オペラ『椿姫』より・鈴木一郎訳詩)
R. Schumann(arr.広瀬正憲)「トロイメライ」
J. Strauss II(arr. 西岡文郎)「美しく青きドナウ」(堀内敬三訳詩)

大上段にこの時代の曲をステージに上げることって、特に最近の合唱団になればなるほど少ないような気がします。そんな、数少ない機会の一つがこのステージ。今日の「まともな」合唱ステージはこのステージだけです←
ともすると、オペラが専門と見受けられるボイストレーナーの好みからこの発声を守り続けているこの団、ある意味、この時代の曲は聴かせてくれるものがあります。旋律線がしっかりしていて、表現を十分付ける必要があって、翻訳の詩とはいえ、言葉に合わせてメロディを歌い上げていく必要がある。特に、聴衆の拍手を誘った「乾杯の歌」とは、とても相性が良かったように思います。他方、良くも悪くも、周りを気にせずかっ飛ばしていた演奏でもありました。ええ、もう、音をずり上げようと他パートとピッチがずれていようと、全くお構いなしです笑 自分たちが出したい、出すべきと思っている音を思いっきり出す。前述のように、うまくハモらずアンサンブル出来ない可能性があるというのだけならともかく、「ドナウ」では、確実にこれは表現の解釈が違うだろ!という程の音量で最後までかっ飛ばしていったのが、ものすごく印象的でしたw よかった部分もあるだけに、非常に残念。ほんの少し他パートを「気にする」だけで、変わりうるアンサンブルです。また、表現が結局、個人の声域に限定されてしまい、高音を苦しそうに歌ってしまい、ハモり切れないことも相まって、表現のバリエーションが狭くなってしまうのは、やはり残念なことのような気がしてなりません。
そして、近藤先生のピアノ! 限りなく伴奏としての立ち位置を確保しつつ、それでいて主張すべきところでは控えめながら確実に主張する。前々から拝聴していても、本当に素晴らしいピアノです。特に「美しく青きドナウ」の前奏部の上品かつダイナミックレンジに豊かな演奏は、これだけでも聴く価値が十分あった。そう! だからこそ、特にこの曲でかっ飛ばしてしまうのは惜しかった! オトナなアンサンブルをするヒントは、きっとこのピアノにもあるのだと思います。

・全体合唱
滝廉太郎「花」(武島羽衣)
でもって、もう一つ。全体合唱。これも見たことない企画のような。お客様も巻き込んで歌いましょう、という、フロイント方式。フロイントと違ったのは、ちゃんと(?)“合唱”譜(2部合唱)でやったということでしょうか。段取りとしては、
団員によるお手本演奏→主旋律練習斉唱→副旋律練習斉唱→会場全員で合唱
ということでした。さすがに副旋律を1回で取り切るのはキツかったか笑、最後の合唱は団員は下パートで歌っていました。僕? 下パート挑戦しましたが何か?(聞いたらごく普通の音なのだが音感のない僕には意外と難しかった←)
団員は、こういう、主旋律のしっかりした曲はやはり上手いなと思いました。素直に上手でした。せっかくなので、全体合唱は、朝・昼とあった練習の整理運動とばかりに、出来る限り全力で歌わせていただきました笑 むしろうぃろうは色々気にしながら歌うから、こっちのほうが余程何も気にしない全力だったような気がする←

そして卒団生紹介。恐らく台本だろうという、一緒に聞いていた某氏の指摘こそあれ、問題なのは、その台本からして十二分にエグいことを聞いてくる点wさっそく女声に対してダイエットトークから展開し、その他、中国語を喋らせておいてろくに翻訳しない、果ては、ネタに走るなとネタに走ってる司会者が言い出すなど、紹介と言いながら基本投げ捨てていくスタイルの卒団生紹介。これを相手する卒団生も大変だ――w

インタミ15分。……って、そうだった、インタミって言わないんでしたね。……なんでもいいや←

第2ステージ
ミュージカル「リトル・マーメイド」
構成・演出・脚本・歌指導ほか指導:田島はるみ
配役:省略……させて……?笑
第一幕
「トリトンの娘たち」人魚姫姉妹 三重唱
「パートオブユアワールド」人魚姫アリエル 独唱
「アンダーザシー」蟹セバスチャン 独唱
第二幕
「パートオブユアワールド」人魚姫アリエル 独唱
「哀れな人々」魔女アースラ 独唱
「ヴォカリーズ」人魚姫アリエル 独唱

第三幕へ行く前に、インタミ10分。祝電披露。

第三幕
「ハーヴォイス」王子エリック 独唱
「蝶々」モラン男爵夫人 独唱
(canceled)「忘れな草」モラン男爵 独唱
→差し替え・「ピアノ独奏(曲目不明)」近藤茂之
「パートオブユアワールド」王子エリック・人魚姫アリエル 二重唱
「アンダーザシー フィナーレ」全員合唱

何をやったかといったら……ミュージカル! それも、なんと、独唱ステージ! 衣装も照明も大道具小道具も完ぺき! おかしい! 僕は合唱の演奏会を見に来たはずなんだ! 何が怖いって、この言葉が冗談でも何でもないことだ!ww
第三幕の「パートオブユアワールド」まで、見事に合唱していないという、とてつもないステージでした。人魚たちの三重唱に始まり、蟹が出るわカモメが出るわ犬が出るわ猿が出るわの大騒ぎ……否、別に動物群像劇ではないけれど笑 突然の欠員に対する原稿・演出の変更にもバッチリ応え(そして近藤先生がその時弾いていたのは確実に歌曲の伴奏流用ではない!)、最初から最後まで、ミュージカル仕切っていました。もっとも、若干オペラぽかったっていうのはまぁいいかしら……笑 インタミも、衝撃から、休んだ気がしない笑
元々田島先生指導でむかしミュージカルをやったこともあったようです。この方、中部混のボイストレーナーでもあるわけですが、この先生の発声指導は、こういうところで全開に作用するようです。言ってみれば、独唱に限りなく近い声づくりをしているので、しっかり歌えれば独唱においてもこれ以上強いことはないわけです。歌についてはもう、多少ピッチがおかしいなと思う部分があってもそれは、ホルンをピッチ通りに吹くのが難しいようなものです。どのソロも十分歌いきっていました。個人的には、アースラを特に評価、歌と役作りがアホみたいに噛み合ってて気持ちよかったです笑
劇についても、セリフの声もよく張ってて、抑揚をつけようと努力している様子は、すごく伝わってきました。ただ一方で、いろんな団のアトラクでよく見る現象ですが、やっぱり固い。そりゃまぁ、(「それでも」)この団もご多分に漏れず合唱団なのですが、人によっては、独唱しているときの腕の動きが迷っていたり、セリフがただ声を張っているだけで会話に聞こえなかったりする。特にこの団の真面目さは、実直に歌う合唱そのものにも顕れていて、その意味で、表現者として、どこまで柔軟に考え、自由な発想で表現をしようとすることが出来るか、言ってみれば、歌以外の部分から、表現の根本について色々観察出来る部分もあるような気がしています。なんかもう、合唱団に対しての指摘ではないような気がしますが笑
大道具・小道具については特に言及しません(出来ませんw)し、衣装も含め、むしろ大変よく出来ていました。素晴らしい。一方、直近の課題としては、独唱曲にQ出し以外の指揮がどこまで必要だったのかは大変気になります。非常に頑張って振ってくれていましたが、独唱は基本ピアノとのアンサンブルと考えれば、指揮者はプロンプタ的な役割に徹すれば十分なような気がしました。あと、原作見てないのでアレですが、伏線回収が非常に強引だったようには感じましたwアレはアレで面白かったですがw
あとそうそう、これはもう言ってもしゃあないことですが、このステージは熱田文小でやらないほうが良かった気がする。否何がって、緞帳の両端が光を遮断し切れないから、照明の色で次のステージの流れが予想できちゃうんだ!w

カーテンコール:主役陣アリア・ハイライト
花束贈呈などあった後、主役陣がそれぞれのアリアの一節を歌って自己紹介。どの子も本当に良く頑張りました。もう、ここまで来ると親心ってやつです笑 最後は皆で歌って、指揮者・ピアニストが礼しておしまい!

・ロビーコール
大友良英「あまちゃんオープニングテーマ」
ストーム、と呼ぶ団がないのも名古屋の特徴かしら。もっとも、これは全国見ても傾向がなさそうであれなのですが。
一斉を風靡した例の曲で〆!非常にまとまったいい演奏でした。声にもよくあってましたね。僕自身手が塞がっていたのもあったが、手拍子が観客の間でもおこらなかったのは残念。しかし、アレンジのバージョンが多すぎて、これがどの編曲なのかまったくアテが付かない! アカペラだった! 石若版か! 石若版なのか!?w

・まとめ

本当、すごかったの一言! 喩え発声が好みに合わなかろうと、アンサンブルに難ありと言ってみようと、このミュージカルの前には何も言うことできますまい。だって、そもそも、2ステはほとんど合唱してないし←
さて、上で述べたように、合唱団としてどこまで旨かったかと言われると微妙なところでもあります。確かに前よりはうまくなった。でも、正直アンサンブルはしていない。ただ一方で、確かにこの団は音楽をしている。合唱における価値基準がどこにあるか、というのが最大のポイントであるように思います。つまり、和声であったり、言葉(主に子音)であったりといった、私たち――少なくとも僕が普段気にする基準とは違うアプローチで音楽をしている。でも確かに、音楽をしている。その点、音楽というのは定性的なものというか、一つで語り切ることの出来るものではないのだなぁと思わされました。
さらに言えば、この演奏会は中部混にとっても一大転換点となりました。これから先もこの方針を持続してくかどうかはわかりません。実際、人数だけでものを測れば、この規模であったとしても全国で金賞取れる程です。その中で、このミュージカルを今年は選択し、新しい領域をみせてくれた。来年以降どうなるかはわかりませんが、まずこの演奏会があったという事実そのものが、誇られるべき事実のように思います。学生団ですもの。自分たちのために歌ったっていいじゃない。それも、それだって、ちゃんとどのステージも堪能することが出来た。それだけで十分。いいステージでした!

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